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2006/11/14

反女性・女性敵視主義宣言(2)

性差別禁止というなら母性保護はやめろ

 そこで、女性尊重フェミニズムに対する反撃として、まずはアンチテーゼとなる法理論をみておきたい。
 合衆国公民権法タイトル7の性差別禁止規定の判例理論ですが、鉛の被曝を避けるための胎児保護ポリシー(間接的母性保護)を性差別と断定し違法とした全米自動車労組対ジョンソンコントロールズ事件判決 AUTOMOBILE WORKERS v. JOHNSON CONTROLS, INC., 499 U.S. 187 (1991) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=US&vol=499&invol=187は、を取り上げたいと思います。この判例は我が国ではあまり紹介されていないが、根本猛(註1)によると公民権法が制定された「1964年以来、最も重要な性差別事件」判決と評されているとのことです。これほどの重要判決が我が国で無視されてしまっているのはいかがなものだろうか。
 事案は大略次のとおりである。ジョンソンコントロールズ社はバッテリーの製造工程における鉛の被曝が胎児に有害なことを認識しつつも女性労働者を排除していなかったが、1979~83年までに妊娠した女性労働者のうち8人の血中の鉛が職業安全衛生局の基準を超えていたため、鉛を被曝する職種から女性を排除するに至ったところ、女性労働者より公民権タイトル7に違反する性差別であるという訴訟が提起され、ウィスコンシン東部地区の連邦地裁、第七巡回区連邦控訴裁判所は合法判決を下したが、連邦最高裁は結論については全員一致で、原判決を破棄した。ブラックマン判事が法廷意見を記しマーシャル、スティーブンス、オコーナー、スーター各判事が賛同した。ホワイト判事が結果的同意意見を記し、レーンキスト主席判事、ケネディ判事がその一部に賛同した。スカリア判事は単独で結果的同意意見を記している。
 ブラックマン判事による法廷意見は、「ジョンソンコントロールズのポリシーに偏見があることをは明らかである。生殖能力のある男性は、特定の職種に就いて、その生殖能力を危険にさらすかどうかの選択の機会が与えられているのに、生殖能力のある女性にはない。‥‥被上訴人の胎児保護ポリシーは、女性に対する明示的な性差別にあたる。‥‥第一に、ジョンソンコントロールズのポリシーは、生殖能力の有無だけではなく、性と出産能力に基づいて、労働者を分類している。被上訴人は、その労働者のすべてのまだ妊娠していない子供を保護しようとしているわけではない。鉛の被曝には男性の生殖システムも衰弱させる効果があるという証拠が記録上あるにもかかわらずジョンソンコントロールズは、その女性労働者のこれから生まれてくる子孫にふりかかる危険のみに関心を示した。‥‥‥‥女性労働者にのみ生殖能力がないことの証明を要求しているのであるから、ジョンソンコントロールズのポリシーは文面上違法である。」そして最後に次のようにいう「女性の子孫を残す役割が彼女と家族にとって彼女の経済的役割よりも重要かどうかを決定するのは、個々の使用者にとって適切ではないのと同様、裁判所にとっても適切ではない。連邦議会はこの選択を彼女が決定すべきものとして女性に委ねたのである。」(翻訳前掲根本論文より)子どもをとるか仕事をとるかリスクを承知のうえで労働するか否かは個人の自己決定の領域との見解である。
 なお、スカリア判事の結果的同意意見は、法廷意見の「鉛の被曝には男性の生殖システムも衰弱させる効果があるという証拠」は本件と無関係で、端的に妊娠能力に基づいて女性を別扱いにすることが性差別だと言っている。
 ここで「真性職業資格」という例外規定の問題に立ち入る余裕がないが、1点だけ言及しておきたい。下級審判例で妊娠したフライト・アテンダント(スチュワーデス)のレイオフの合法性を支持した判例があるが、それは乗客の安全確保という業務遂行上に支障があったから、レイオフを支持したのであって、胎児を保護するためではなかったのである。本件は生殖能力のない人(閉経後の女性ないしインポテンツの男性)でなければ、バッテリーは製造できないという性質のものではないから、生殖能力の有無と業務遂行能力は本質的に無関係であった。
 本判決の意義について私は次のように思う。第一に合衆国最高裁が間接的母性保護を性差別と断定し違法としたことは、女子差別撤廃条約第4条2が母性保護政策を差別とみなさないとしている見解と一線を画す性格のものとみてよい。米国は女子差別撤廃条約を批准していないのであって、それを国際的標準とみなすのは大きな誤りである。母性保護とは女性を厚遇もしくは排除する口実となるひとつの性差別思想であって普遍的価値でもなんでもない。最高裁判事にそのような思想的偏向がなかったことを評価してよいと思う。
 1964年公民権法タイトル7は「報酬、労働条件、または雇用上の特典に関して人種、肌の色、宗教、性別、または出身国を理由に、どんな個人についても雇用を拒否したり、解雇したり、もしくは差別したりすることが、使用者による違法な雇用慣行になる」と規定する。要するに労働者を性別という集団概念で分類すること。雇用判断基準に集団概念を排除し、個人の能力で判断するものとしたのである。露骨にいえばその人の持ち物がペニスかヴァギナかによって労働者を分類し、雇用条件を設定することが性差別である。例えば女性のみの労働時間の制限、女性のみの重量物取扱規制、作業現場において女性のみ椅子が与えられる規則などである。従って同法により女性保護立法・規則やロマンチックパターナリズム(女性を庇護されるべき弱い性とみなし処遇しようとする)は排撃されたのである。
 この法の理念について憲法学者の釜田泰介(註2)は次のように解説する「この法律は、アメリカ国民が憲法上いまだ達成することのできないことを実現したのである。それは性別判断の恣意性のゆえに、雇用判断は個人に基づいて行わなければならないというルールの宣言だった。企業は募集、採用、配置、昇進、賃金、解雇、労働条件の設定等、あらゆる問題領域で幅広い裁量権を持っている。その裁量権に対し第七編は制限を加えたのである。しかしそれは裁量権全体を否定するものではなく、唯ひとつのことについてのみ裁量事項から取り去るということだった。それは、使用者は雇用領域で諸々の事項との関係で個人に関する判断を形成するのであるが、その判断基準として性を使用してはならないということであった。幅広い裁量権の中で制約を受けるのはこの1点だけであって‥‥法文はこの立法趣旨を、個人に対する性別を理由とする採用拒絶、解雇等の禁止と、個人に対する性を理由とする雇用機会剥奪の禁止という形で表明しているのである。この法律によって、雇用に関する決定は、個人の持つ当該業務遂行能力の判定に基づいて行わなければならないということが使用者に課された唯一の法的義務となった。これ以外のことは使用者の自由判断で行いうるのである。使用者は男性、女性というグループ概念に基づいて具体的個人にかかわる雇用関係の判断を形成してはならないということである。従って使用者は常に自己の雇用判断については、グループ概念を使用したものではなく当該個人の業務遂行能力を判定したものであることを説明する義務を負わされている。しかしこの立証責任も雇用権利を大幅に制限するような性格ではなく、個人の業務遂行能力を確かに判定したことを証明すれば事足りるのである」
 要するにグループ概念ではなく個人は個人として判断せよというのであるが、我が国の雇用機会均等法のようなフェミニズム的なイデオロギー的潤色はないので比較的良性なのである。
、日本の男女雇用機会均等法は、今年の改正で性差別禁止にしたとか言ってますが、合衆国の公民権法タイトル7とは理念的にはかなり隔たりがあると思います。第一条で「女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る」第二条で「女性労働者に母性を尊重されつつ充実した職業生活を」云々とあり、やはり女性という特定の集団の利益のための立法という性格が残されてます。性差別禁止とかいってますが、依然として性差別立法のように思う。
 ジョンソンコントロールズ判決は、胎児保護ポリシーという間接的母性保護が、性差別だという判決ですが、男女雇用機会均等法はいまだに母性を尊重といってますから、公民権法との隔たりがあることは明白なのである。

川西正彦

(註1)根本猛「アメリカ法にみる母性保護と男女平等」『法経論集』静岡大学法経短期大学部67・68号1992年

(註2)釜田泰介「雇用機会均等法案の比較的評価-アメリカの経験が示すもの」『日本労働協会雑誌』26巻11号 [1984.11]

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