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2006/12/17

妊娠・出産に関する3とおりの政策(2)

1978年妊娠差別禁止法とその解釈(1)
 
第1回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_a84a.html

承前
 妊娠・出産に関する政策の3とおりのうちの第一は妊娠・出産・育児の負担は本来私的なものという伝統的な考え方に基づくものです。それが健全な社会の在り方だと思います。
 私は、連邦最高裁の判断、州の疾病保険の支給対象から妊娠を除外することは憲法の平等保護条項に反しないというアイエロ判決(1974)、GE社の運営する一時的労働不能に対する保険制度が通常分娩による一時的労働不能を適用除外としているのは1964年公民権法タイトル7(Title VII of the Civil Rights Act of 1964 )の性差別禁止に反しないというギルバート判決(1976)を支持することを述べました。女の我が儘を許さなかったという点でも気持ちの良い判決です。
 疾病保険で妊娠出産を除外することは性差別でないし、司法部が救済するような事柄ではない。立法政策も不要だ。ウーマンリブの前まではそれでやってきたわけですからそれでいいんですよ。もっともアメリカでは、70年代以降租税法の改正で保育にかかった費用の課税控除が拡大され、子育ては私的な事柄であるという伝統的な考え方が変化していったようだが、その程度のことはまだよいでしょう。

 しかし私は、妊娠出産のコストをあつかましくも企業や他人にしわよせさせて特定社会階層の女性を厚遇しようというフェミニストに強く反対する立場である以上、妊娠出産の負担は私的なものであるという伝統的な考え方が最善だと思います。しかし、アメリカではこの考え方が悪しき立法政策により潰されました。
 つまり1978年の公民権法タイトル7の改正(妊娠差別禁止法)により、ギルバート判決の意義は覆されることとなりました。この主たる立法趣旨は企業が採用している疾病保険などの給付から妊娠・出産を除外させないようにして、妊娠女性に便宜を図ろうとするものでありましたが、これが妊娠出産について3とおりの政策のうちの第二である。
 その解決方法の第一は公民権法タイトル7中の「性を理由とする」という文言は妊娠、出産、これらに関係のある状態を含むということ。第二はこのような状態にある女性は、このような状態にない者で労働能力の点で当該女性と同一状況にある者と同一に取り扱われることであった。
 つまり、妊娠・出産を一時的労働不能状況とみなし、疾病や傷害で一時的に労働不能な者と同等処遇をもって平等とする考え方である。
 この政策は、1978年に突然出てきたものではない。1970年のジョンソン大統領が設置した「女性の地位に関する市民諮問委員会」は妊娠・出産を他の一時的労働不能と同じように取り扱うべきで、すなわち不利にも有利にも扱わないという主張だった。これを受けて22州とコロンビア特別区で、妊娠・出産を一時的労働不能と同じに取り扱う法律が制定され、裁判所でも下級審でこうした公民権法タイトル7の解釈が受け入れられたが(註1)、連邦最高裁が真っ向から否定したのである。
 それがギルバート判決(1976)だった。既に憲法判例のアイエロ判決(1974)で妊娠による別扱いは妊婦と妊娠していない者を区別しているのであって、妊娠していないグループは男性だけでなく、女性も含まれることから男女の区別ではなく、性差別にはあたらないと判断しており、公民権法事件だからといって判断を変える必然性などなく、妊娠の別扱いは公民権法タイトル7の性差別禁止に反しないとして、6つの連邦控訴裁判所の判断を叩き潰したのである。これに驚いた連邦議会が制定したのが1978年妊娠差別禁止法であった。
 これは妊娠出産女性という特定の肉体的状態にある女性への利益誘導であって性差別禁止の脈絡とずれているし、基本的には私は批判的な見方をとる。賛同はしない。しかしながら、にもかかわらず、1978年妊娠差別禁止法は特に悪性のものとは考えないのでその理由を述べます。
 それは、女性の職場家庭両立支援のような厚かましくコストを他者に強いて特定の階層の女性だけの利益増進や、女性尊重という嫌悪する思想に偏った政策ではないから。
 妊娠差別禁止といっても母性保護という偏った思想がないこと。一時的に労働不能状況にある他の男性・女性よりも、妊娠女性が労働条件で有利に遇すればそれは差別ということである。妊娠女性がその他の医学的状態、疾病や傷害で一時的に労働不能な者より優遇はされないのであるならば、一応歯止めがきいていることになる。殊更妊娠・出産女性を優遇する趣旨ではない点については、女性尊重フェミニズムより良性であるという見方が可能なのである。

そこで、妊娠差別禁止法成立後の連邦最高裁判決をみていくことにする。

ニューポートニュース判決(1983年)
NEWPORT NEWS SHIPBUILDING & DRY DOCK v. EEOC, 462 U.S. 669 (1983) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.dj.pl?court=us&vol=462&invol=669

 事案はバージニア州の大手造船会社で、従業員に設けていた健康保険の入院に対する給付制度が公民権法タイトル7の性差別禁止条項に違反するかが争われたものである。
 女子従業員の妊娠出産による入院は他の疾病の入院と同じく全額が保険から妊娠給付の形で支払われることになっていた。女子従業員の配偶者(夫)の入院費も全額支給であった。
 対して男子従業員の入院費は全額支給されるが、配偶者(妻)の妊娠出産の入院は500ドルを上限として支給され他の入院とは同じように扱わないものだった。
 この配偶者の性別による別扱いにつき、男子従業員が公民権法タイトル7の性差別禁止に反するとしてEEOC(平等雇用機会委員会)に提訴した。対して会社側はEEOCのガイドラインの執行停止を求める反訴を提起した。EEOCは後に会社に性差別行為ありという訴訟を起こしたものである。
 第1審バージニア東部地区の連法地裁は1978年法は女子従業員にのみ適用されるもので男子従業員の妻の別扱いはタイトル7違反でないとしたが、第2審第四巡回区連邦控訴裁判所は男子従業員の妻も適用ありとして原審を破棄した。会社側はタイトル7は雇用上の性差別を禁止しており、配偶者の妊娠には適用されないという主張で上告したが、それは当然のことで、第九巡回区連邦控訴裁は、第四巡回区と異なる判断をとっていたのである。連邦最高裁は7対2の票決で第2審第四巡回区連邦控訴裁判所判決を支持する判断を示した。
 スティーブンス判事による法廷意見は、当該会社の健康保険制度は男性従業員を差別していて1978年の妊娠差別禁止法に反する。奇妙な論理に思えるが、男性も妊娠差別禁止法の受益者という司法判断である。
 「‥‥健康保険その他の特別給付の給付は、賃金その他の雇用条件に当る。女子従業
員も男子従業員も差別から保護されている。ゆえに女子従業員の扶養家族に対しては全額健康保険を支給し、男子従業員の扶養家族に対しては全く支給はないような制度はTitle VIIに反する。このような制度は当法廷がManhart判決[LOS ANGELES DEPT. OF WATER & POWER v. MANHART, 435 U.S. 702 (1978)] http://caselaw.lp.findlaw.com/cgi-bin/getcase.pl?navby=case&court=us&vol=435&invol=702#711で述べたTitle VII差別判定の単純な基準を満たさない。1978年法は妊娠に関連した状態をその他の医学的状態と同等に扱わないことは差別であることを明らかにしている。したがって本件における制度は、既婚女子従業員に支給する扶養家族給付より少ない額の給付を、既婚男性に支給している点で同法に違反する。この制度は男性従業員を差別することによってTitle VIIを侵害している」(註2)
 なお、法廷意見は、脚注で労働者自身と労働者の配偶者の給付内容が異なっていても性差別にはならないとしている(註3)。
 
 実にわかりにくいです。奇妙だと思いますがこういう理屈でしょう。この給付制度では女子従業員の配偶者の入院費は全額支給である。しかし配偶者は男性であるから妊娠はない。一方、男子従業員の配偶者は、妊娠出産の入院費は500ドルの支払いを限度としている。その他の疾病・傷害は全額支給なので、疾病・傷害と妊娠は別という一般的な観念に従えば、一見して男子従業員の配偶者の不利益はないようにも思える。
 ところが1978年妊娠差別禁止法は妊娠に関連した状態をその他の医学的状態と同等に扱わないことは差別であるとしたために、妊娠出産の入院費も他の疾病・傷害と同等にみなす。ゆえに女子従業員の配偶者にはあらゆる入院費を全額支給するのに、男子従業員の配偶者の入院費は全額支給しない場合がありうるということで、男性差別だというのである。配偶者に対する別扱いが、従業員本人の差別とされているのである。
 レーンクィスト判事は1978年法は女子従業員のみ適用されるという解釈から反対意見を記した(パウエル判事同調)。
 釜田泰介(註2)によると立法意思はあいまいで、妊娠による別扱いを性差別とするのは従業員のみか、従業員の配偶者を含むものかはいずれも結論できることが可能であったが、最高裁は後者の解釈が正しいとしてEEOCの解釈を支持したということである。配偶者に対する別扱いが本人に対する差別になるという理屈は70年代から憲法判例にみられるので、その手法を公民権法の解釈にも適用したということのようである。
 そうするとEEOCの解釈に加担した技術的な判決ということで、あまり評価することはできない。私が裁判官ならレーンクィスト判事反対意見に与することになるだろう。会社側に負担をかけたくない。根拠はあいまいなのに適用範囲を拡大する解釈は反対だというのが本音である。
 とは思いつつも、本判決はセックスブラインド型の理念からずれていない点は評価してもよい。セックスブラインドだから、男性も妊娠差別禁止法の受益者となりうるのである。妊娠差別禁止法は、同じ一時的労働不能状態にある他の妊娠以外の労働者と妊娠を区別しないという点で妊娠を隠していることなるから、ある意味ではpregnancy-blindといってもよいのである。妊娠を隠して、一時的労働不能状態の他の疾病・傷害と同等にみなすという理屈に徹していることで、法の理念には忠実だということもできる。

川西正彦
つづく

引用文献
(註1)武田 万里子「アメリカ合衆国のフェミニスト法学における妊娠・出産と男女平等 (フェミニスト法学の現在<特集>)」 『法の科学』日本評論社 / 民主主義科学者協会法律部会 編
通号 22 [1994]

(註2)釜田泰介「Newport News Shipbuilding & Dry Dock Co.v.EEOC,103S.Ct.2622(1983)--妊娠に困る入院費に対する会社の健康保険からの支給額が女子従業員の場合と男子従業員の妻の場合とで異なるのは男子従業員に対する差別である」『アメリカ法』1985(1)最近の判例
(註3)根本猛「アメリカ、妊娠の取り扱いをめぐる法と判例」日本労働協会雑誌353号31(1) [1989.01]

 

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