公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2007年4月の3件の記事

2007/04/22

労働基本権が基本的人権だなどいうのは大きな間違いである(2)

  ストライキは本来犯罪である(コモンロー共謀法理について)-(1)

要旨-本来、団結は共謀法理により徹底的に弾圧されてしかるべきである。社会正義の回復のために共謀法理の継受復権を望む

川西正彦

 ここでは1800年小ピット政権の団結禁止法までのイギリスの法制を概観しておく。イギリスの労働を論じる場合1349年エドワード3世の治世の労働者勅令から取り上げるのが通例になっている。この勅令では日雇いを禁止、年期奉公を強制、就労場所の限定、契約満了以前の労働放棄の投獄、慣習的賃金より高い賃金の支払、受領を禁止した。これは百年戦争が勃発し、ペスト大流行による人口減少により賃金が極端に高騰し、過大な賃金を受け取らなければ働かなくなった在り方を旧に復す目的があった。年期奉公の期間満了まで解雇を規制したのは労働者の保護ではなく深刻な労働力不足から勝手な離職させないためのものであったといわれている。
 1543年法は、一定の賃金もしくは一定の労働時間でなければ働かないと共謀した労働者に対して重く処罰するものとしたが、コンスピラシー(共謀)に理由に労働者の団結が犯罪とされるようになったのである。
 1563年エリザベス1世治世の職人規制条例は、徒弟条項、移動禁止・強制就労条項、賃金条項があるが、賃金条項では治安判事にその年ごとの各職種の賃金を裁定する権限を権利を与え、裁定賃金を上回る賃金を支払った雇主と受領した労働者を投獄する権限を与え、この条例を無効、変更ならしめる労働者の団結を禁止した。
 1720年の主従法は仕立て職人の雇用期間中ないし仕事完成前の労務放棄および、法定、裁定賃金によって就労することの拒否には、治安判事が理由ありとしない限り2ヶ月以下の懲治監での重労働、その後主従法は、就労強制条項は含まなくなったが、契約期間満了前の労働放棄、非行や、仕事完成前に履行を怠る場合、懲治監での重労働が科された。中世の立法のような雇主の解雇規制はなくなった。

 しかし、産業革命以後、急速に発展してきた労働者の団結活動に対して、もっとも効果があったのは、刑事共謀法理を労働運動に適用することだった。
 そもそも、共謀法理は13世紀中世高期黄金時代の裁判手続に起源を有する裁判法上の不法行為概念だった。当時イギリスにおいて陪審裁判の手続でしばしば悪用が行われていた。損害賠償の不可能な12歳未満の者に告訴させたり、共謀して誣告的な告発がなされていたのである。悪用をなくすためエドワード1世の治世1285年にコンスピラシー条例により共同謀議を犯罪とした。1305年の共同謀議者令はコンスピレイターについて次のように定義した。「宣誓・誓約その他の約束により、互いに共同もしくは結合して虚偽の申立を行い、それによって他人を起訴ないし起訴の危険に陥し入れ、あるいは他人をして有罪の責任を免れせしめ、あるいは訴訟を提起もしくは支持し、あるいは12歳未満の者に、他人に対して重罪の告訴をなさしめるもの‥‥」。
 当初の適用範囲は重罪としての誣告だったが、「営業の制限の法理」に適用された。これは独占取引を禁止することにより営業の自由を確保するもので、使用者の団結に向けられたものだったが、18世紀から19世紀にかけてのイギリスの裁判所は、「営業」には使用者の取引のみならず労働者ないし労働組合の取引も含まれるという想定のもとに労働者の団結は「営業の制限」に該当するとして刑事共謀法理を適用した。
 コモンロー上の刑事共謀法理が初めて適用されたのが、1721年のジャニーメン・テイラーズ事件である。ケンブリッジの仕立職人が団結して賃上げのストライキをしたことが、1720年の主従法に違反するとして起訴された事件で、裁判所は制定法の有無にかかわらず、労働者の団結はコモンロー上の共謀罪で処罰しうること。個人で行えば合法的である場合でも、共謀すなわち団結することによって不法となることを明らかにした。さらに1783年のエックレス事件はリバプールに住むエイチ・ブースの営業を妨害する労働者の団結であったが、共謀罪は妨害がなされたか否かにかかわりなく、いかなる方法にせよ妨害を意図して数人が共謀することによって成立するとし営業妨害をたくらむ共謀それ自体が犯罪となることを明らかにした。さらに1799年のハムモンド事件で労働組合結成も刑事共謀罪とした。
 18世紀の裁判所の判断は正義であると思う。コンスビラシーの法理は大変優れたものである。労働者の団結とは営業を制限する共謀であり、犯罪なのである。犯罪であるべきものが、憲法上保障された基本的人権になる。こんな馬鹿げたことはないのである。価値観が顛倒している。悪魔を神として崇めることと同じである。労働組合は共同謀議を恒常化するものである。団結権は財産権を侵害し、本来個別契約であるべき雇用契約の自由を侵害し、個人の就労する自由を侵害し、コモンロー上の黙示的誠実労働義務を否定し働き方を統制することにより、個人の幸福追求権まで否定する。これほど悪い思想はないのである。
 もっともコンスビラシーの法理を継受しなくても労働組合を駆逐する方法はある。しかしこれを継受して労働組合(共謀犯罪団体)を絶滅させることも選択肢の一つと私は考える。

引用文献・参考文献
高橋保「イギリス労働法における共謀法理(コンスピラシー)の形成と展開」『創価法学』7巻4号1978
小宮文人『現代イギリス労働法』信山社2006
中西洋『《賃金》《職業-労働組合》《国家》の理論』ミネルヴァ書房(京都)1998
 

労働基本権が基本的人権だなどいうのは大きな間違いである(1)

(公務員に労働基本権付与反対シリーズ)

 自分の人生はがけっぷちである。非常にまずい状態です。昨年のある要因があって5月頃から異常な無気力状態でした。ワールドカップ日-豪戦でロスタイム大黒投入というほど絶望的というわけでもないけれど、自分が怠けていたことは率直に反省しますが、もう死にものぐるいにやらないとダメです。だからここから死にものぐるいで通常人の3倍ぐらいの生産性でやっていくしかない。ブログで宣言してしまったほうがよいと思います。今、宣言しましたから、本日から365日無休でやります。小さいものを量産していきたいと思います。

川西正彦
 
ストライキは本来犯罪で非常に恐ろしいものである
 
 私は、脅迫、威嚇、罵り、襲撃、監禁、殺し合いのようなことが白昼堂々行われるストライキを憎む者であり、ストライキが権利だなどいう思想は、大罪に値し、そういう悪を許容する「法制度」を持っているのは道徳的倫理的に腐敗した国家・社会だといわなければならないと思います。そんなものは人権であるはずがない。実は争議権の名のもとに殺人も容認するプロレーバーの学者や弁護士もいたことを吾妻光俊が講演で述べている箇所があるんです。吾妻光俊(中労委公益委員)の「〔講苑〕中郵事件の最高裁判決について」『中央労働時報』66巻12号(447号)から引用します。
「労組法一条二項が、暴力行使はこの限りにあらずなんて、わざわざいったのか‥‥事実、争議行為なら人を殺してもいい、けがをしてもいい、そういうことをいう学者もいたし、弁護士さんもいたんです。あれは、昭和二十二・三年ですから、労働法なんていうのを議論する皮切りのころです。ある弁護士さんがいったことには、人殺しでも傷害でも暴行でも強迫でも、労働組合が勝つための手段は全部一条二項だと。正当業務だと。こういうんですから、すごいことをいう人があるもんだと思って私は口をつぐみました。これは、あるところの主催でやった、研究会、判例批評のときです。‥‥ともかく、終戦後そういう考え方はあったです。‥‥争議というレッテルさえはれば、本来なら許されないはずのものが許されるという気分はあった」「今度の事件はわりと単純な職場放棄でした‥‥この判決に乗っかっていくストライキというものは、腕力は使わないようなストライキ、ピケでも平和的説得だとかいうものとこの判決は、だいたい同一線にあると思うんです。だからスクラムは組み放題、乗務員の奪い合いはやりたいほうだい、人の職場のなかにははいりほうだい、仕事もしないのにはいり込んでわんさかやっているような、そういう実態がこっちにあって、この判決を歓迎しているというのは、私は気心が知れないと思うんです。ほんとうをいえば、はずかしいんじゃないかと思います」
 プロレーバーは労働基本権の名のもとに、最大限の威圧、強迫で団体行動を強要することがができると解釈するのが常です。ストとなれば殺し合いもありえます。1984年のイギリスの炭労ストでは二人の死者が出ました。このとき炭労委員長のスカーギルは組合員の秘密投票もなくストを指令したため、採算がとれて閉山の可能性の少ないノッティンガムシャ-の炭坑労働者はストに反対した。スト派とスト反対派の抗争になりましたが、サッチャー政権はスト派の切り崩し工作をする一方、1980年雇用法では、被雇用者以外の者がピケに参加することを禁止していましたが、フライングピケットという遊撃ピケ隊に警官隊が投入され、各地でピケ隊と警官隊の衝突乱闘となり、多くの労働者が逮捕され、乱闘に巻きこまれた炭坑夫1人が死亡しました。もう一人の死者はスト反対派の炭坑夫を乗せてきたタクシーの運転手で、スト派の炭坑夫二人から追い越しざまにコンクリートブロックが投げつけられタクシーが潰れたためです。ストライキとなると憎しみあいになります命懸けなんですよ。この暴力事件で、世論は恐れをなし組合側の行動は支持されなくなり、敗北しました(アンドリュー・ローゼン著川北稔訳『現代イギリス社会史1950-2000』岩波書店2005、86頁)。組合側は警官隊によるピケ隊の逮捕を非難しましたが、世論は同調しなかった。
 しかし公務員にスト容認となればスト破りの襲撃や監禁はつきものであってスト派と反対派の暴力抗争は当然じゃないですか。東京都水道局はしょっちゅう闘争をやっているから殺気だってますよ。メキシコプロレスみたいな乱闘や揉み合いはは何回もやってます。管理職が争議推進なので組合と協力し私がギブアップする所まで苦しむのを見ていて楽しむ陰険さがあります。私は4~5人の下敷きになって一ヶ月以上寝返りができない怪我をして死ぬかと思うくらい苦しい思いをしたことがあります。組合と管理職が結託して威圧、強迫して業務を妨害し違法行為に巻きこんできますから、自力救済しかないわけです(管理職は勤務時間内の庁舎内、事務室内の争議行為をあおり、非組合員を攻撃する趣旨のアジ演説のある職場集会やオルグ活動を是認し、いっさい解散命令や就労命令を発出しないことなど争議行為の協力者であることが常である)。だから争議権容認なんてとんでもない。
 暴力は許されないといったって、人格的に屈辱を与える暴行と限定的に解釈されますから、争議権の名のもとに強圧的な脅迫と擦れ合い相当の暴力は容認でしょう。スト破りの襲撃や暴力も是認されることになるでしょう。公務員に争議権を付与すると、強迫、腕力をふるいほうだい、なんでもありといなってしまうのではないかという懸念が強くあるわけです。アメリカの労働組合であれば2~3年の労働協約改訂期にストを打ちますが、日本の公務員は年中行事的にしょっちゅう闘争やってますから、今までも、多くの人が処世術として組合の指令に唯々諾々と従ってますが、今まで以上に組合のジョブコントロール、締め付けが強くなり、労働組合に脅迫されて組合の奴隷とされる公務員になる可能性が強い。 
 
 社会的常識論を述べたいと思います。市民法のものさしでは争議権はわりきれないものがあるという常識的な見解を引用します。再び吾妻光俊(中労委公益委員)の「〔講苑〕中郵事件の最高裁判決について」『中央労働時報』66巻12号(447号)です。
「戦前にはご承知のように争議行為という社会現象を無理矢理といいますか、ものの考え方もそうだったわけでしょうけども、市民法のワクのなかにしょっぴいてきて、そして業務妨害だ、やれ債務不履行だ。これは別に裁判所がそういったというだけの意味ではなしに、明治以来、俗なことばを使えば、不逞の輩の行動だという考え方の奥底には、仕事をやめるということは、賃上げの要求があるか、人員整理反対の要求をかざしているにせよ、ともかく平常請け負っている仕事をやめるということは、なにか契約違反である。しかも仕事のじゃまになる。業務のじゃまになるという意味では業務妨害の要素を含んでいるんだと。こういう意識があったと思うんです。もっとも戦前の判例で別に業務妨害罪でやられたというケースが多いわけじゃないんですけど、‥‥一般の社会常識でなかったかと思うんです。戦後反動というんですか、そういう考え方は欧米的な労働運動に対する、あるいはストライキに対するものの考え方や、天下の大勢に合わないという意味で、これは末広さんあたりの音頭とりで一条二項とか八条という労組法のなかにはいってきている‥‥刑法学者でもない私が口幅ったいことはいえないなですれれども、いままで争議行為というものは、そもそも債務不履行であるべきものだとか、それから実は業務妨害というものになるはずのものだ。しかし、憲法二十八条は保障しているんだから、違法でないなだという考え方には、少々賛成しかねるというのが私の実感なんです。‥‥いってみれば市民法というのはご承知のように、市民法のなかにも団体法がありますけれども、市民法が労使関係というものを考える考え方はも契約原理なんです。‥‥だからストライキというのは一致団結して契約違反をやることであり、一致団結してやれば刑法上からいえば業務妨害のうちだ、こういうものさしで割り切るほかない」
 逆にいえば市民法的なものさしはあくまでも基本であって本質的にストライキは悪である。とにかく私はプロレーバーの労働法理論というのは全く信用していない。
 「従来いろいろな学説がありましたけれども、公務員法とか公労法とかの争議権の制限というのは、一方には憲法違反だという非常に強い主張がある。一方といいましたが、そちらのほうがおそらく大多数。どちらかというとそういう考え方が非常にきつかった。‥‥学説といいましてもこれが民法とか刑法とかいうことになりますと、多数説、少数説、通説、異端邪説というものが、いちおう通用するわけなんですが、こと労働法らーに関する限り私の実感から言いますと、多数の学者がある立場をとったから正しいんだという安心感というものが全然ない」
 それはそのとおりでしょう。社会常識では、他者に損害を与えること、他者の自由を拘束すること、他者の意思に反する行為を強要すること(就労妨害、スト破りの襲撃・監禁など)はよくないことなんです。しかし労働組合やプロレーバーはそれが権利だという。暴力団の暴力、強迫、威嚇は、みかじめ料の徴収は悪で(ただし暴力団が社会紛争の調停者としての役割をはたしており是認する考え方もありうる)、労働組合の暴力、強迫、威嚇、組合費の収奪は良いことだとはいえないのであります。

2007/04/08

書評 篠田徹「岐路に立つ労働運動-共和党の攻勢と労組の戦略論争」(1)

篠田徹「岐路に立つ労働運動-共和党の攻勢と労組の戦略論争」久保文明編『米国民主党-2008年政権奪回への課題』日本国際問題研究所2005年所収 

米国南部のノンユニオン社会戦略の意義(1)
 
 先月、用事があってたまたま新宿サザンテラス口に出たので、クリスピークリームドーナツを見に行きましたが1時間半の行列だったので買うのを諦めました。とはいえ私の関心はドーナツでなくカロライナにあります。クリスピークリームはノースカロライナ州のウィンストンセーラムを本拠とする企業なので一度は食べてみたいと思ったわけです。携帯用グリルのブルーリノがテキサスの会社に買収されたのは残念ですがカロライナの企業は人々に愛される物をつくってますよ。人々に愛される物をつくる、それは公共善としての価値があるので賞賛したい訳です。
 私は英語ができないし、海外は伊豆大島しか行ったことはないですよ。飛行機ですら乗ったことがない。だから外国のことは知りません。しかし地域研究は好きです。外国で一番好感度が高いのが米国南部諸州ですよ。サザンホスピタリティがあります。人々に親切です。社会倫理的に保守的な風土があって悪徳に染まらない健全さがある。ノースカロライナは二~三年前まで宝くじの発行を認めなかった州だったんです。しかし第一には労働権法(Right to Work law)の州だということです。現在労働権法を憲法や州法で定めているのは南部を中心に23州とグァム島です。http://www.nrtw.org/rtws.htm
 労働権法とは雇用条件として労働者に組合加入と組合費の支払いを義務づける組合保障協定を定めた労働協約の交渉を禁止するもの。事実上組合を排除しやすい雇用環境を提供するもので反労働組合政策の一つと言えます。
 私は労働権州の全てに好意的ですが、特にノースカロライナに好意的なのは、下表に示す(篠田徹論文223頁以下)ように、組織率の低さで全米トップ象徴的な州だからです。朝早くから夜遅くまで勤勉に働くエートスのある州だとの評判によるものであります。労働組合は戦後、ディキシーオペレーションとよばれる南部への組織化攻勢をやりましたが、ことごとく失敗したとされています。カロライナのバーリントンインダストリーが標的になったことがありますが、はねつけました。南部は組織化が難しいという社会通念があります。それは従業員が雇用主に親しい感情を有しているためだといわれています。
 又、州公務員は州法によりいかなる非公式なかたちでも団体交渉が禁止されている勤務条件法定主義の厳格な州で、州従業員協会という職員団体がありますが、賃上げなどの交渉は、州議会議員への陳情というかたちになりますので、労働組合とはみなされていないこともあり組織率は低いのだと思います。
 もっともカロライナでもストはありますし、大きな組織化が成功した事例もあります。赤い30年代1937年にはカロライナの繊維労働者が左翼の煽動により大規模なストライキを打ったこともあったわけです。しかし、ノースカロライナがミルタウン(工場町)の州、繊維、室内装飾、家具、什器などの製造業州でありながら、労組の組織化攻勢をはねつけ、組織率の低さを誇った意義は非常に大きかったと思います。さらにリサーチトライアングルパークにみられる先見の明のある政策は各州のハイテク企業誘致政策のモデルとなったばかりでなく、バンカメやワコビアの本社所在地として金融でもシャーロットがニューヨ-クに次ぐ業績を上げていることは、労働権州=プロビジネスの州との評判を高めています。
 私の持論は、反団結権の確立、労働組合の駆逐が理想社会であり、そのために憲法28条の廃止も含めた、ニュ-ディール体制継受の抜本的に見直しすべきというものですから、それが社会的正義であり、経済的繁栄のためにも望ましいということですから。持論の補強のためにカロライナを含む組織率の低い労働権州が経済的に発展して貰いたい訳で、感情的に肩入れした記述になるのはそのためです。

労働組合組織率の低い州(2003年)
と2004年大統領選挙結果
ノースカロライナ  3.1%-ブッシュ
サウスカロライナ  4.2%-ブッシュ
アーカンソー   4.8%-ブッシュ
ミシシッピ    4.9%-ブッシュ
テネシー     5.2%-ブッシュ
テキサス     5.2%-ブッシュ
アリゾナ     5.2%-ブッシュ
ユタ       5.2%-ブッシュ
サウスダコタ   5.4%-ブッシュ
フロリダ     6.1%-ブッシュ
ルイジアナ    6.5%-ブッシュ
ジョージア    6.7%-ブッシュ
オクラホマ    6.8%-ブッシュ

 
  労働組合組織率の高い州(2003年)
  と2004年大統領選挙結果
ニューヨーク   24.6%-ケリー
ハワイ      23.9%-ケリー
ミシガン         21.9%-ケリー
ワシントン    19.8%-ケリー
ニュージャージー 19.5%-ケリー
イリノイ     17.9%-ケリー
ロードアイランド 17.0%-ケリー
ミネソタ     17.0%-ケリー
オハイオ      16.7%-ブッシュ
カリフォルニア  16.8%-ケリー
オレゴン     15.7%-ケリー
コネチカット   15.4%-ケリー
ペンシルヴァニア 15.1%-ケリー
 
その他重要州及び接戦州の組織率と選挙結果
マサチューセッツ 14.2%-ケリー
ニューハンプシャー 9.2%-ケリー
メリーランド   14.3%-ケリー
ヴァージニア    9.8%-ブッシュ
インディアナ   11.8%-ブッシュ
ウィスコンシン   9.6%-ケリー
アイオワ     11.5%-ブッシュ
ミズーリ     13.2%-ブッシュ
ニューメキシコ   7.7%-ブッシュ

太字は労働権州 

 アメリカでは排他的交渉代表制がとられ、適正な交渉単位において3割以上の署名を得て組合代表選挙により過半数の労働者の支持を得た労働組合のみが団体交渉権を取得できるシステムですが、1947年タフト・ハートレー法は被用者に団体行動に関与をしない権利を定め、労働組合に被用者に団結権を強制したり、雇用者に被用者を差別せしめることなどを不当労働行為として追加し、労働組合に権力を付与した悪法中の悪法1935年ワグナー法の行き過ぎを改め労働組合の権力の濫用を抑制するとともに、使用者側の対抗言論を保障し労使関係において法律的には中立主義としたのみならず、ユニオンショップについて数々の規制を設け、ユニオンショップ協定のもとでも、組合に対する誹謗中傷、組合秘密の漏洩、スト破りを理由に解雇を要求できなくし、不当に高額な組合加入費を要求することもできなくし、ショップ制は事実上組合費徴収の手段となった。これは多くの企業でユニオンショップが慣行となっていて労組に甘い日本とはかなり状況が異なる点である。
 つまりタフト・ハートレー法は、協約適用労働者に組合加入、団体行動の支持いかんにかかわらず、組合費の徴収は認めているのであるが、労働権法(Right to Work law)が制定されている州では、そのうえに被用者に組合に加入しない権利と、組合費を徴収されない権利を保障しているので、たんに組合費徴収の手段となっているユニオンショップ制、或いは組合の不加入を認めるが、ただ乗り防止のため組合費を支払わせる、エージェンシーショップも容認されない。従って労働組合の組織化を容易にはできない州になっているわけである。労働権を支持する人々は共和党系の圧力団体として全国労働権委員会The National Right to Work Committee http://www.nrtwc.org/home.php3に結集していて、全米で220万人の会員を有し精力的な反労組活動を行っている。。
 アメリカで組合不在企業が多いのは、第一にタフト・ハートレー法で労組の権力濫用を抑止した効果である。タフト・ハートレー法を推進したのはNAM(全国製造業者協会)、共和党、南部民主党であるがとりわけ対抗言論が認められたことの意義が大きい。使用者側にも組合が組織されないほうが労働者にとってメリットになると訴える対抗言論は使用者側の権利とされている。反労働組合企業では組織化の動きを察知すると、あっという間に過去の労働組合の起こした暴力事件などの新聞記事などが掲示されたりして従業員にストの怖さを説示したりしている。。
 使用者側の対抗言論の成果で、組合代表選挙で使用者側が勝利するケースは多く、これは重要な武器になった。
 さらに、日常から組合が組織化されないために従業員の不満や提案を上層部に直接訴えることのできるオープンドアーポリシーを採用したり、従業員に対して人当たりがよく公正に処遇することなどの優れた企業文化を形成するなどの企業努力により、組合不在企業として経営することが可能なのである。それに加えて、南部諸州では労働者に組合に加入しない権利、かりに組合が組織化されても組合費を徴収されない権利を労働権として保障していので、いっそう組合の組織化の歯止めになっているわけである。。
 
 ここにとりあげる篠田徹の論文「岐路に立つ労働運動」ですが、著者はプロレーバーである。イデオロギー的には敵対者ではあるが、南部の労働組合なき企業戦略について論じている。我が国ではアメリカ合衆国の地域特性研究、米国南部の労働権州についての研究は一般読者の目に触れる書物が少なく、貴重な文献のように思える。
 著者は素人にもにわかりやすい、州の地域特性の分類を示している。「ノン・ユニオン・ステート」「ユニオン・ステート」これは労働組合を社会的にポジティブに認知するか否かの違いであるが、労働権州が前者に相当する。「レッドステート」「ブルーステート」「スイングステート」これは大統領選挙で共和党優位か民主党優位かの色分けである。http://www.cnn.com/ELECTION/2004/pages/results/electoral.college/

「サン・ベルト」「スノー・ベルト」は前者が産業立地再編の中心地を指し、カリフォルニアから南部諸州の広い地域を指す。
 この三区分は、重なり合うことも多いが、完全に一致するものでもない。地域特性を過度に強調することも問題があるだろう。
 著者によると、南部は南北戦争以来、何度も組織化が試みられ、比較的短期の現象にせよ、一定の成果をあげてきた。例えば、南部でもテネシーとアラバマが1970年に20%の組織率を有しており、南部諸州が一桁台の組織率で揃うのは過去10年ほどのことと言っている。
 著者によると60年代のジョンソン政権において労働組合が影響力を有していたが、70年代以降影響力が低下していった。80年代以降スノー・ベルトもサン・ベルトも組織率は低下しているが、サン・ベルトの組織率の低下がゆるまないのは、たんに地域特性というだけでは説明できず、それは地域開発と一体となった戦略であって新規に立地する企業が労組なき企業戦略を所与のものとしている結果だとしている。 そうした戦略を担っている、共和党系圧力団体のひとつとして著者は全米独立企業連盟(NFIB National Federation of Independent Business)というスモールビジネスのロビー団体を上げている、全米で60万の会員を有し、最低賃金・超過勤務手当・安全衛生・福利厚生などの規制と闘うだけでなく、企業誘致や地域開発にも積極的な活動をしているという。現在、民主党優位の議会で最低賃金が引き上げられたが、当然こちらは反対の立場だろう。
 つまり米国では草の根でビジネスの政府規制に反対し、労働組合も嫌う自由主義を尊ぶ雰囲気があり、それが労組なき企業戦略に結実していると理解した。
 我が国では社会労働政策というとコーポラティズムの大陸欧州の政策を参考にすることが多いが、それは大きな間違いである。アメリカのスモールビジネスの草の根の健全さにも学ぶべき点は多いのではないかというのが率直な感想である。
 大統領選挙の絡みでいうと、前回の選挙では、選挙人の数の20人以上の大州、オハイオ、ペンシルヴァニア、フロリダの3州が天王山とされたのである。事前報道で3州のうち2州を獲った方が勝ちと伝えられたが、フロリダ-ブッシュ、ペンシルヴァニア-ケリーは予想どおりで、突き詰めて言うとオハイオ1州の結果が全てだったのである。
 著者によるとオハイオ、インディアナ、ペンシルヴァニア、ウィスコンシンといったかつてのユニオン・ステートは急速に組織率が低下した、それは五大湖沿岸の鉱工業地帯、クリーヴランド、トレド、ビッツバーグ、ミルウォーキーとその周辺が産業空洞化で政治的影響力を失い、組合が存在しない、農村や郊外型の産業・住宅地域のポリティカルボイスが大きくなっていると分析している。
 しかし、細かく分析すると組合の組織率の低さ=ブッシュ優位ということではない。ブッシュはペンシルヴァニアを選挙活動の重点州として相当な梃子入れをしたはずだが、結局勝てなかったということは、ペンシルヴァニアはリベラルな州と認識して良いのではないか。ウィスコンシンについても同じことがいえるのであって、オハイオの農村部が保守的なためかこの重要な州を獲ったことでブッシュは辛うじて勝てたのである。

川西正彦
 

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