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2007/06/10

『パブリックスの「奇跡」』について(1)

 太田美和子『パブリックスの「奇跡」-顧客満足度№1企業の「当たり前」の経営術』PHP研究所2006年を読みました。パブリックスとはフロリダ州レイクランドを本拠とする、リージョナル食品スーパーマーケットチェーンで、フロリダを中心に合衆国南東部のジョージア、サウスカロライナ、アラバマ、テネシーで876店舗を展開する。組合不在企業で非上場企業でもある。パプリックスの創業は1930年と古く、1968年にはフロリダでウィンディキシー、フードフェアに続く三位のシェアだったが、右肩上がりで成長し続け、90年代より州外に進出した。2006年にはフロリダ南部で一位56%のシェアを誇る。
  僅か5州で展開するリージョナルチェーンなので食品スーパーでは全米で6位ではあるが、13年連続顧客満足度全米№1、地元では「清潔・親切・清算が速い」ことから圧倒的に支持されている優良企業だ。

全米食品小売(生鮮・グロ-サリー取扱)売上げランキング
1位 ウォルマート・ストアーズ 988億ドル
2位 クローガー       584億ドル
3位 アルバートソンズ    363億ドル
4位 セイフウェイ      327億ドル
5位 アホールドUSA       289億ドル               
6位 パブリックス・スーパー・マーケッツ185億ドル
7位 デルハイツ・アメリカ  165億ドル
8位 H.Eバット・グローサリー104億ドル
9位 スーパーバリュ     86億ドル
10位 ウィンディキシー   71億ドル
(太田 前掲書207頁-『プログレッシブ・グローサー』誌による)
 上記の表は古く、2006年に9位のスーパーバリュが3位のアルバートソンズを買収しています。  http://www.worldtimes.co.jp/news/bus/kiji/2006-01-24T072717Z_01_NOOTR_RTRJONC_0_JAPAN-200659-1.html .. 
 ところで2003年10月11日から5ヶ月近く南カリフォルニアの大手スーパーマーケット・チェーン3社で国際食品商業労組(UFCW)に所属する組合従業員〔アルバートソンズ、セイフウエイ(ボンズ、パビリオンズを経営)、クローガー(ラルフズを経営)〕のストライキがありました。852店舗、59000人の労働者による141日間のストライキは、アメリカスーパーマーケット業界史上、最も長期に及ぶものとなった、このストライキ自体、反ウォルマートの宣伝も兼ねていた訳である。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_4/america_01.htm 
 しかしアメリカの小売業の組織率は4%台で低い。アメリカを代表するリテーラーといえば一昔前ならシアーズ・ローバック、今はウォルマートであるが、非組合企業である。非食品小売や外食産業はアンチ労働組合なので組織化されることはまずない〔アメリカでは排他的交渉代表制がとられ、適正な交渉単位において3割以上の署名を得て組合代表選挙により過半数の労働者の支持を得た労働組合のみが団体交渉権を取得できるシステム〕。
 ただ100年以上の歴史のあるグローサリーストアから発展した食品雑貨スーバーには組合がある。しかし食品小売でも組織化されているのは22%である。パブリックスのような非組合食品小売も結構多いのである。労組や左翼の反ウォルマート運動はウォルマートが非食品ディスカウントストアから食品スーパーを兼ねるスーパセンター業態に発展し食品スーパーと競合関係に入ったことがきっかけであることは既に陳べたとおりである。
 パプリックスは食品で非組合なので、攻撃対象になったこともあった。ジョージア州ではクローガーに次ぐ二位のシェアであるが、新店舗オープンの度に食品商業労組(UFCW)に購買ボイコット運動をやられたけれども、パプリックスの従業員が幸せそうだったのでUFCWのデモはいつの間にか退散したのだという。
 パプリックスは企業文化がしっかりしているし、従業員が愛社精神に溢れ福利厚生も充実しているので、特に組合対策をやらなくても心配のない企業と見て良いだろう。
 著者はオープンドアーポリシーで自由闊達に意見の言える社風、従業員にフレンドリーな企業文化に言及しているが非組合セクターなら当たり前のことである。技能・能力より人柄、つまりハードワークに耐え、チームワークを重視し会社への忠誠を期待できる人を採用するやり方や管理職は全て内部昇進ということにも言及されているが、それ自体日本的雇用慣行に良く似ているともいえる。親子・兄弟・夫婦で家族ぐるみ従業員のケースが多いというが、良き時代のコダックのような家族主義的雰囲気にも似ているとも思った。『ファミリーナイト』や『カーニバル』のような社内行事はサウスウエスト航空の社風にも若干似ているとも思った。以上のことは格別特徴的といえる事柄ではない。
 パブリックスに特徴的なこと。高業績の秘訣は従業員はコミットメントや士気が高さにあるとされている。ハードワーカーでもある。クリンリネスの良さはパブリックスの特徴だが、棚の拭き掃除ひとつにしても精魂込め気合が入っている。ハードワークを楽しめる社風である。パブリックスではレジで袋詰めした袋を車まで従業員が運ぶサービスを何十年もやっている。荷物を運んでもチップは一切受け取らない方針だが客は無理矢理チップを握らせることが多いという。客が店に満足している証拠だ。もっとも非公開企業だから企業哲学が浸透しているという面もあるだろう。競合店よりより良い店、お客に買い物を楽しんでもらうという企業哲学が従業員に浸透している。競合のウィンディキシーでもそれをやっているのでこのサービスをやめるわけにはいかないだろう。
 著者によると以外なことではあるが、アメリカのス-パーは袋詰係がいるのが普通だという。日本ではレーバーコストを理由に大手スーパーはセルフサービスが当たり前たが、少なくとも袋詰めをやってくれる点は、アメリカのほうがサービスが良いのでは。フロリダではその上に車にまで運んでくれるのだ。
 ではパブリックスが、従業員のコミットメントを引き出すその急所は何か。それは120頁以下にある「緩やかな組織づくり」にあると思う。企業文化の基盤を固めた三代目社長ブラントン(1973年社長就任)は『パブリックスは、今まで、各人の特定の職務を示す書類を持ったことはありません』と述べている。要するに職務記述書がないということのようだ。つまりポストモダニズムマネジメントを先取りしていた企業であるということである。

続く

川西正彦

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