英国近世における反独占、営業の自由の確立の意義(2)
今回も前置きです
ウォルマートの企業文化とポストモダニズムマネジメント(続)
「ポストモダニズム・マネジメント」の出典は石原靖曠の『最強のホームセンター ホームデポ』商業界1998の193頁です。これはこういうことです。70年代までのチェーンストア組織論は権限を本部に集中し、管理統制型でした。店舗の仕事は工場の生産ラインのように細分化・標準化され、マニュアル化され割り当てられただけ仕事をする、働く人間に求められたのは均一性でした。しかしウォルマートは違いました。ウォルマートは人間のもつ知恵や創造性、個性を尊重し、楽しさややりがいといった感情に基づくモチベーションを推進力とした「ポストモダニズム・マネジメント」を行い、お客に対して今までにない献身的な人的サービスをつくりだした。このことはアメリカ企業社会のモラールアップに与えた影響は小さくなく、そういう意味でもウォルマートは偉大な企業です。
ウォルマートと同様にヒューマンウェアの活力で飛躍的な成長を遂げた企業としてホームデポがあります。深い品揃えと価格の安さだけでなく、好きなものを買って取り付けサービスを利用できます。素人に捕修の材料調達、道具の技能や知識を教える人的サービスもやります。場合によっては店員がお客の家で修繕してしまうサービスをしてもやりすぎととがめられることはない自由な社風があるということです。
乗客を楽しませることで知られているサウスウエスト航空(組合があるが社風は非組合的)の社風も「ポストモダニズム・マネジメント」でしょう。
高橋俊介(『ヒューマン・リソース・マネジメント』ダイヤモンド社2004)によるとスターバックスは80%ノンマニュアルなのだという。接客マニュアルがない。制服もなく、上衣は白か黒の襟付きというガイドラインがあるだけ。マグカップか紙コップかは店長の裁量だという。その意味はわかりにくいが、マニュアルで統制して縛るよりも従業員にスターバックスを好きになってもらって、スターバックスブランドへのコミットメントを引き出そうという戦略のようだ。
続く
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