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2007/07/22

英国近世における反独占、営業の自由の確立の意義(5)

承前

非組合型労使関係台頭の意義

1920年代の遺産(3)

 合衆国において第一次世界大戦参戦は「アメリカ史上まれにみる労働組合の勢力拡大期」とされる。その理由は1918年全国戦時労働理事会(NWLB)の設置である。NWLBはリベラル派が推進した産業民主主義路線で、ストを禁止したものの団体交渉と賃金・作業の標準化を厳しく貫き1150件に及ぶ仲裁を行った結果、AFLの組合員数は戦中に100万人も増加したのである。戦時協力が口実になって雇用主が嫌悪する団体交渉が促進されたのである。
 しかし戦後になると雇用主の多くは、組合活動を敵視する戦前の態度に戻った。戦中の賃金上昇は戦後の急激なインフレで意味を失った。政府は平時経済への転換や復員兵の労働市場復帰の対策は行わなかった。
 そうした状況で1919年に400万人以上の労働者がストライキに入ったとされるが、鉄鋼ストが最大である。労働組合は鉄鋼資本側の反組合的攻勢に対し、団体交渉権の承認、8時間労働制度、週休1日制度(当時は一日12時間週7日労働)、24時間交代制の廃止、8時間以上の超過労働、日曜休日労働の2倍賃金、組合費の給与天引などを要求し、9月22日からストに入り、29日には鉄鋼労働者の9割36万5600人がストに参加したが、軍隊の動員、全国産業会議での決裂、合同組合の度重なる離反で勢いが弱まり、1920年1月8日になお10万人の労働者が職場を離脱していたにもかかわらず、組合はなんの譲歩も引き出せずに、ストは終結した(註1)。この鉄鋼ストの完全敗北で労働組合の衰退は決定的になった。20年代を通じて組織率は低下していくのである。
 もし大恐慌がなくて、30年代のノリス・ラガーディア法、ワグナー法、公正労働基準法の三悪法さえ制定されなければ、このまま労働組合は衰退してアメリカは正しく現代のイスラエルといえるような、もっと偉大な国になる可能性はあった。非常に遺憾です
 
 1920年代の労働組合の衰退の要因について、法制史と経営史と両側面からみておきたいと思います。
 第一にアメリカでは20世紀初期から戦闘的な反労働組合の組織的な運動があったことである。オープンショップ運動とよばれるものである。
 オープンショップ運動はクローズドショップを個々の労働者の権利と自由を否定する非アメリカ的なものとして徹底的に排除する雇用主の政策であるが、オープンショップは革新主義政治のセオドア・ルーズベルト政権の商務労働省においても支持されていた。
 ルーズベルトの「スクエアディール」施策としてストライキへの積極介入がある。1902年ペンシルヴァニアの無煙炭坑労働者のストライキの介入がよく知られているが、労使双方をホワイトハウスに呼んで、調停委員会を任命し、ストライキを収拾したが、調停委員会は概ね資本側の意向に即して人選され1903年に裁定を下している。そこで10%賃上げと9時間労働の設定で労働者の要求に応えたが、組合活動については、反組織労働の線を明確にした。すなわち裁定は組合員であるか否かによる差別や非組合員に対する組合の干渉を禁じただけでなく、「非組合員の権利は組合員のそれと同様に神聖である。多数派が組合を結成することにより、それに加入しない者に関しても権限を得るという主張は支持できない。」と明記された。オープンショップ運動はこの時期から本格化していく。 
 オープンショップ運動を全国的な運動に結集する要の役割を果たしたのが全国製造業者協会(NAM-National Association of Manufacturers)http://www.nam.org/s_nam/index.aspである。NAMは1895年に輸出増進を主眼として設立された団体だが、労使関係の危機意識が高まるなかで1903年に反労働組合戦線結成の大会を開き124の経営者団体が参加した。ここでアメリカ市民産業連盟(CIAA)が設立され、NAMの組織を基盤にオープンショップ運動を展開、NAMはレイバーインジャンクション(労働争議における裁判所の差止命令)の要請、組合指導者の告発、損害賠償の訴追を積極的に行った。1907年にNAM主導で全国産業防衛協議会(NCID-後の全国産業協議会NIC)が設立された(註2)。

  第一次大戦後、1919年秋の鉄鋼ストの完全敗北は、経営者に労働者の戦闘性と労働組合主義の伝播を阻止しようとする決意を強めさせた。19年末までに全国鋳造業協会、全国製造業者協会、全国金属産業協会などが戦前のオープンショップ論を再び鼓吹し始め、20年秋までにオープンショップ諸協会の全国ネットがつくられ、ニューヨーク州の50団体、イリノイ州の46団体、ミシガン州の23団体が加わった。1920年の大統領選挙では「正常への復帰」をスローガンとする共和党ハーディングが勝利し、保守的なムードが国中に漂ったが、1920年夏にアカ恐怖ヒステリーがピークに達し、組織労働者が共産主義にかぶれているという抜きがたい公衆の疑惑は、オープンショップ運動に有利に働き、人々には革新主義への敵意が広がったのである(註3)。労働者の戦闘性は急激に減退した。ストライキ件数は1920年の3411件から、22年には1112件に落ち、組合員が100万人以上減少したのである(註4)。
 アメリカの20年代の法制ではレイバーインジャンクション、労働組合への反トラスト法の適用、黄犬契約も可能で、もちろん団体交渉権は保障してません。オープンショップ運動で労働組合の組織化を容易にしておかなければ、組合を抑圧する手段はいろいろあったのである。
 

 なおクローズドシッョプ協定は今日では合衆国では1947年タフトハートレー法、イギリスでは制定法でもコモンローでも否定され、過去のものとなっている。(関連して言うとイギリスではユニオンショップも否定されている。また合衆国では1947年タフト・ハートレー法で被用者に団体行動に関与をしない権利を定めており、ユニオンショップ協定は容認しているが、数々の規制を設け、組合に対する誹謗中傷、組合秘密の漏洩、スト破りを理由に解雇を要求できなくし、不当に高額な組合加入費を要求することもできなくし、ショップ制は事実上組合費徴収の手段となった。労働組合が従業員を支配しやすいユニオンショップ協定は実質的に否定されている。又、タフト・ハートレー法は労働権法(Right to Work law-雇用条件として労働組合員たることを要求されない被用者の権利-結果として全ての組合保障条項が否定される)を制定している南部を中心とする22州とグァムではhttp://www.nrtw.org/rtws.htm、連邦法の適用下にある州際産業の工場、事業場についても、それが州の地理的領域内にある限りユニオンショップ制を禁止する州のの権限を承認している。但し、1951年改正鉄道労働法が州のいかなる法律の条項にかかわらずユニオンショップ協定を認めた。これは組合側の巻き返しでもあるが、鉄道業が州際産業としての性格が強く、地理的条件でショップ制が異なる混乱を避けるためのものと思われる)
 アメリカの風土でクローズドショップによる労働市場、労働過程の組合の支配が嫌悪されるのは当然のことです。イギリスでは労働者の移動性が高く、労働過程の職人的技能に依存した時代に労働組合が成長し、組合は徒弟制とクローズドショップによる労働市場の支配、人員配置その他様々な仕事規則をもってする労働過程の支配によって力を構築した。これがイギリスの産業の弱点になった。産業革命最先進国であったにもかかわらず、大量生産技術、体系的人事管理をともなう第二次産業革命に適応できず、欧米の競争国のような急速な大規模企業、大量生産企業の創出を困難とした(註5)。 
 そういう意味でもオープンショップ運動はアメリカ社会の健全性の証である。
 
続く
 
(註1)黒川博『U.S.スティール経営史』ミネルヴァ書房(京都)1993
(註2)長沼秀典・新川健三郎『アメリカ現代史』岩波書店1991 297~300頁

(註3)S.M.ジャコービィ『雇用官僚制』増補改訂版2005年 217頁

(註4)前掲書220頁

(註5)前掲書9頁

その他引用、参考『世界歴史体系 アメリカ史2』山川出版社1998

辻本慶治『アメリカにおける労使の実態』酒井書店1969 Ⅴ「アメリカにおけるライク・トウ・ワーク立法について」207頁以下

平尾・伊藤・関口・森川編著『アメリカ大企業と労働者-1920年代労務管理史研究』北海道大学出版会
1998年

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