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2007/09/09

副知事・水道局長への抗議文予備草稿 勤務時間中の集会室等の便宜供与について

 今回は、5年前に書いてパソコンの中に塩漬けになったものを、個人名を伏して掲載するものである。その後、ながら条例の改正で、勤務時間内の組合会議の一部が規制された経緯があり、提出するタイミングを逸したが、内容的には現在の状況でも解決されていない問題を含んでいるので掲載する。推敲されてないがパソコンの中の未完成草稿が結構ありそれらの多くは拙劣な内容だが、ブログで公開してしまった方がストレス解消になるので、今後ブログでアップしていきたい。

川西正彦

争議期間中の平成14年11月12日のことである(所長は争議期間中にもかかわらず研修により不在)。前日には勤務時間内都庁第二庁舎前決起集会3割動員が行われている(分会長のAは自分は座り込みがあるので早めにいくといっていたのを側聞した。3時より収納係員Bが動員により職場を離脱した。12日の朝着替え時間に側聞したところ、実際の集会は4時より1時間だったらしい)。この日の午後、私は、1時40分から×地区の外回りをし、2時40分頃営業所に帰ったとき、組合役員で収納係員Cは離席しており、組合活動とみられる(彼は5時前に戻るまで離席しており、その日の宿直待機に入り、組合分会長のAと何事か話していた-ビラ貼りのことか-13日の朝エレベーター前の空間の壁面に都労連要求項目のビラが多数はられたていた。-)。3時直前になって、DがBに支部委員会があると伝えにきたので、組合分会執行委員の一人であるBは3時より離席した。その際、収納係員のEに支部委員会のため4階に居ると断っていた。3時50分に、F営業所から電話で×地区で本日Bが給水停止を執行した顧客が未納金額を支払ったので早速開栓してほしいの連絡が入った。自分は人が良い方なので開栓に行こうかとも思った。通常担当者が開栓に行くのが原則だが、担当者が反対方向に外回りしているときや、休みの場合などは担当者でなくても開栓に行くのは当然である。しかし担当者が職場離脱している状況にあったので、係長にBの現場だが入金あり開栓してほしいとの電話があったという内容のみ伝えたところ、EがBは組合の会議に出ている事実を係長に知らせため、係長は4階の会議室から呼び出す判断をとり、会議室に電話しCが出たのでBに替わってほしいと言い、開栓が一件でたので行ってほしいとしたところ、Bが応じた。私は組合に遠慮し係長自身が開栓に行くのではと思ったが、そうでなかったのでほっとしたものである。問題は開栓云々ではない。そもそも勤務時間内組合活動による職場離脱は、企業秩序論からいっても、ノーワーク・ノーペイ原則からいっても許容されるべきでなく正当な組合活動とはいえない。監視活動と警告書の交付、解散命令が発出されてしかるべきである。従わない者で主導的な役割を果たしいる者は懲戒処分に付し、出席者は賃金カットとすべきであると考える。しかし東京都はそういう方針をとっていない。この事例は争議期間中であることから、なお一層のこと問題であり、この支部委員会の後ビラ貼り戦術が開始されたことから、ストライキ体制を強化していくための共同謀議がなされていてたとみてよいだろう。たんに職場離脱という職務規律違反だけの問題ではなく、争議行為を助長する虞が明白な事例である。会議室を利用するには庶務課に申請して鍵を受け取ることになっているから、管理者が掌握しているはずで、このような会議室利用に許可することは、事実上管理者が組合とつるんで争議行為を支援しているも同然で、そうしたことが組合の既得権として長年の慣行であったコストは甚大であり、管理者の著しい怠慢というべきである。許可を与えてないとしても、黙認しているわけであり、職場環境を適正良好に保持し規律のある公務の運営態勢を確保しうる責任のある管理者が職務を放棄しているも同然と断じてよいだろう。前支所長のG(その後本局部長)と話す機会があったが、Gは、かなり以前は就業命令を出してしたことがあるが、今は命令を発出することはなくなったと聴いているが、こういうことでよいのだろうか、許可を与えているのか事実関係と当局の見解を窺いたい。(なおGは勤務時間内事務所内の、大声でアジ演説することについても一切、解散命令・就業命令を出さないことに私が疑問を呈しても、聞きたい人が多いから認めるんだというスタンスであった。)
 この点について判例から検討すると、そもそも、企業施設構内における組合活動は国労札幌地本事件・最三小判昭54・10・30『労働判例』329号12頁国労札幌地本ビラ貼事件が判示した企業秩序論に従えば、公務員の労働組合又は組合員が管理権者の許諾を得ることなく組合活動のために利用すること許されず、管理権者が有する権利の濫用であるという特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある公務の運営態勢を確保しうるように当該庁舎を管理利用する庁舎管理権の権限を侵し、公務の秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されないのである。この趣旨から平常時においても、特段の事情がない限りいかなる無届無許可の企業施設内組合活動もは許されないというのが原則である。但し、最高裁は、無許可の始業時前、もしくは昼休み中の平穏な態様のビラ配布について、札幌国労地本判決を引用せず、正当な組合活動として認容する判決(明治乳業事件・最三小判昭58・11・1『労働判例』417号21頁)を下している。この態様における組合活動はいわゆる施設管理権の侵害の程度が小さいとみたのか、国労札幌地本判決に対するプロレーバー労働法学者の反発が強くバランス感覚が働いたとみられる。従って、私は反組合主義でありながら、最高裁が許容している範囲のビラ配りにつき非難することはしない。
 しかし最高裁は、勤務時間内外を問わず企業施設内の職場集会について、国労札幌地本判決を引いて、職場集会不許可とする使用者の判断を支持する重要判決が次々と出ており、国労札幌地本判決の企業秩序論になんら揺らぎはないのである。労働時間中に職場集会を開く必要性を重視してそれが許されるとすることができないと明確に述べた済生会中央病院事件・最二小判平元・12・11『労働判例』552号勤務時間外の会社食堂利用拒否が不当労働行為に当たらないとした10頁オリエンタルモーター事件・最二小判平7・9・8『労働判例』679号
 争議行為中の庁舎利用等の便宜供与につき、郵便局などの公共企業体においては、組合がストライキ体制をとったり、業務規制闘争を指令している状況においては、平常時には許可されていた態様の施設利用であったとしても許されないとするのが判例である。まず全逓城東郵便局事件・東京地判昭59・9・6『労働判例』442号、45頁は「前記集会が行われた行われた会議室は吉田局長の管理する庁舎の一部であり、郵便局の業務のために使用されるべきものであって、全逓の組合や、その組合員に当然には使用が許されてはいないものであると認められるところ、吉田局長が会議室の使用を許可しなかったのは、全逓が同年五月一〇日、ストライキを決行する体制を確立すること及び業務規制闘争に突入することの指令を城東支部に対して発したため、(中略)このような指令が発せられた場合において、吉田局長が城東支部に対し施設の利用を許諾することは違法行為を助長する結果となるおそれが大きいと判断したことについては相当な理由があるというべきであるから、同局長が会議室の使用を許可しなかったことにつき権利の濫用であると認められる特段の事情はないというべきである。(中略)従って会議室使用の許可を得ないで開催それた同年五月一一日及び一二日の各集会は正当な組合活動として許容されるものということはできない。よって(中略)同原告の行為は、庁舎管理権者の許可なく集会に参加し、管理権者の解散命令に従わず、かつ、その集会において積極的な役割を果たした点において、国家公務員法八二条一号及び三号に該当するということができる」としており、解散命令は全く正当である。
 関連し公労委における不当労働行為事件を詳しく調べる余裕がなかったが、基本的には組合集会、オルグ活動等が勤務時間中に行われたとか、組合集会が使用者の管理する施設・建物・敷地等を無断使用して行われたとか、それらの組合活動が業務の正常な運営を阻害するような方法で行われた場合、不当労働行為の成立は認めていないとされている。例えば古い事例だが、例えば昭和39年の年末手当支給等不当労働行為事件。郵便局は勤務時間内の便宜供与を認めておらず、上記の事例は勤務時間外の集会であった。勤務時間外であれ認めなくてよいことは、これまで引いた判例でも明かである。ところが水道局は平常時においても勤務時間内組合活動による職場離脱を容認し、ノーワーク・ノーペイ原則をとっていない。なんでもありという状況であるうえに、争議期間中もそれを容認しており、極めて悪質で著しい無秩序と断じてよいだろう、この点について見解があれば説明してほしい。

附録1(判例抜粋)

S63.12. 8 最高一小 昭和56(行ツ)37 北九州市交通局救済命令取消事件
(超過勤務拒否闘争を争議行為として懲戒処分を認容した判例)

      
 論旨は、地方公営企業職員につき争議行為を禁止した地方公営企業労働関係法(以下「地公労法」という。)一一条一項の規定は憲法二八条に違反しないとした原判決は、憲法二八条の解釈適用を誤つたものである、というのである。 
地公労法は、現業地方公務員たる地方公営企業職員の労働関係について定めたものであるが、同法一一条一項は、「職員及び組合は、地方公営企業に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。また、職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、又はあおつてはならない。」と規定し、これを受けて同法一二条は、地方公共団体は右規定に違反する行為をした職員を解雇することができる旨規定し、また、同法四条は、争議行為による損害賠償責任の免責について定めた労働組合法八条の規定の適用を除外している。しかし、地公労法一一条一項に違反して争議行為をした者に対する特別の罰則は設けられていない。同法におけるこのような争議行為禁止に関する規定の内容は、現業国家公務員たる国の経営する企業に勤務する職員(以下「国営企業職員」という。)及び公共企業体職員の労働関係について定めた公共企業体等労働関係法(昭和六一年法律第九三号による改正前のもの。以下「公労法」という。)におけるそれと同一である。
 ところで、国営企業職員及び公共企業体職員につき争議行為を禁止した公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであるが(昭和四四年(あ)第二五七一号同五二年五月四日大法廷判決・刑集三一巻三号一八二頁、名古屋中郵事件判決)、この名古屋中郵事件判決が右合憲の根拠として、国営企業職員の場合について挙げている事由は、(1) 公務員である右職員の勤務条件は、国民全体の意思を代表する国会において、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮を経たうえで、法律、予算の形で決定すべきものとされていて、労使間の自由な団体交渉に基づく合意によつて決定すべきものとはされていないこと、(2) 国営企業の事業は、利潤の追求を本来の目的とするものではなくて国の公共的な政策を遂行するものであり、かつ、その労使関係には市場の抑制力が欠如しているため、争議権は適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができないこと、(3) 国営企業職員は実質的に国民全体に対してその労務提供の義務を負うものであり、その争議行為による業務の停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあること、(4) 争議行為を禁止したことの代償措置として、法律による身分保障、公共企業体等労働委員会による仲裁の制度など相応の措置が設けられていること、の四点に要約することができる。
 そこで、名古屋中郵事件判決が右合憲の根拠として挙げた各事由が地方公営企業職員の場合にも妥当するか否かを検討する。
 地方公営企業職員も一般職の地方公務員に属する者であるが、一般職の地方公務員の勤務条件は、国家公務員の場合と同様、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮により、国民全体の意思を代表する国会が定める法律及び住民の意思を代表する地方議会が定める条例、予算の形で決定されるべきものとされているのであつて、そこには、私企業におけるような団体交渉による決定という方式は当然には妥当しないというべきである(最高裁昭和四四年(あ)第一二七五号同五一年五月二一日大法廷判決・刑集三〇巻五号一一七八頁(岩手県教組事件判決)参照)。そして、このような一般職の地方公務員の勤務条件決定の法理について、地方公営企業職員の場合にのみ別異に解すべき理由はない。現行法規上、地方公営企業職員の勤務条件の決定に関しては、当局と職員との団体交渉を経てその具体的内容の一部が定められることが予定されており(地公労法七条)、しかも、条例あるいは規則その他の規程に抵触する内容の労働協約等の協定にもある程度の法的な効力ないし意義をもたせている(同法八条、九条)などの点において、団体交渉が機能する余地を比較的広く認めているが、これは、憲法二八条の趣旨をできるだけ尊重し、また、地方公営企業の経営に企業的経営原理を取り入れようとする立法政策から出たものであつて、もとより法律及び条例、予算による制約を免れるものではなく、右に述べた一般職の地方公務員全般について妥当する勤務条件決定の法理自体を変容させるものではない。
 次に、地方公営企業の事業についても、その本来の目的は、利潤の追及ではなく公共の福祉の増進にあり(地方公営企業法(以下「地公企法」という。)三条)、かつ、その労使関係には市場の抑制力が働かないため、争議権が適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができないことは、国営企業の事業の場合と同様である。
 また、地方公営企業職員が実質的に住民全体に対しその労務提供の義務を負つており、右職員が争議行為に及んだ場合の業務の停廃が住民全体ひいては国民全体の共同利益に少なからぬ影響を及ぼすか、又はそのおそれがあることも、国営企業職員の場合と基本的には同様である。もつとも、地公労法の適用される地方公営企業は、法律上具体的に列挙されているものに限定されず(地公労法三条一項)、その種類、内容、規模等には、種々のものが含まれうるが、その事業は、あくまでもその本来の目的である公共の福祉を増進するものとして、公益的見地から住民ないし国民の生活にとつて必要性の高い業務を遂行するものであるから、その業務が停廃した場合の住民ないし国民の生活への影響には軽視し難いものがあるといわなければならない。
 更に、争議行為を禁止したことの代償措置についてみるに、地方公営企業職員は、一般職の地方公務員として、法律によつて身分の保障を受け、その給与については、生計費、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないとされている(地公企法三八条三項)。そして、職員と当局との間の紛争については、国営企業職員及び公共企業体職員についての公共企業体等労働委員会(現国営企業労働委員会)のような特別の紛争処理機関は設置されていないものの、労働委員会によるあつ旋、調停、仲裁の途を開いたうえ、一般の私企業の場合にはない強制調停(地公労法一四条三号ないし五号)、強制仲裁(同法一五条三号ないし五号)の制度を設けており、仲裁裁定については、当事者に服従義務を、地方公共団体の長に実施努力義務を負わせ(同法一六条一項本文)、予算上資金上不可能な支出を内容とする仲裁裁定及び条例に抵触する内容の仲裁裁定は、その最終的な取扱いにつき議会の意思を問うこととし(同法一六条一項ただし書、一〇条、一六条二項、八条)、規則その他の規程に抵触する内容の仲裁裁定がなされた場合は、規則その他の規程の必要な改廃のための措置をとることとしているのである(同法一六条二項、九条)。これらは、地方公営企業職員につき争議行為を禁止したことの代償措置として不十分なものとはいえない。
 以上によれば、名古屋中郵事件判決が公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことの根拠として国営企業職員の場合について挙げた各事由は、地方公営企業職員の場合にも基本的にはすべて妥当するというべきであるから、地公労法一一条一項の規定は、右判決の趣旨に徴して憲法二八条に違反しないことに帰着する。論旨は、ひつきよう、名古屋中郵事件判決の立場とは異なる独自の見解を前提として原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 同第二点について
 論旨は、上告参加人の労働基準法三六条所定の協定(以下「三六協定」という。)締結、更新の拒否による本件超勤拒否闘争が地公労法一一条一項の禁止する争議行為に当たるとした原判決は、法令の解釈適用を誤り、かつ、判例違反を犯すものである、というのである。
 原審の適法に確定した事実関係は、(1) 上告参加人は、被上告人の提示する本件財政再建計画の実施を阻止するため、昭和四二年六月一〇日ころ、組合員の投票によつてストライキを行うことを決定し、これを受けて、上告参加人の戦術委員会は、同月二一日から二三日まで超勤拒否闘争を、同月二七日から同年七月一日まで超勤拒否闘争及び安全点検闘争を、同年七月三日に超勤拒否闘争及び一斉休暇闘争を行うことを決定した、(2) 被上告人経営のバスの運行ダイヤは、労使の委員によつて構成されるダイヤ編成審議会の議を経て定められていたが、当時の公示ダイヤは、上告参加人の同意のもとに一日九勤務が時間外勤務ダイヤとして編成されており、被上告人の交通局においては、このダイヤを実施するために超過勤務が恒常化していて、超過勤務拒否があれば、平常のダイヤ運行に支障を来す状況にあつた、(3) 右運行ダイヤを実施するため、被上告人と上告参加人との間において従来から三六協定が締結、更新されてきたが、上告参加人は、本件財政再建計画についての労使の交渉が難航することが予想されるようになつた同年四月ころから、同協定を一日ないし数日の期間を定めて締結、更新しつつ事態の推移をみていたところ、同年六月一五日本件財政再建計画案が市議会に上程されるや、前記戦術委員会の決定どおり超勤拒否闘争を行うこととし、バスの正常な運行のための同協定の締結、更新方の当局の要望を拒否して、右決定に係る期間各部門において組合員に時間外勤務を拒否させた、というのである。
 これによれば、被上告人の交通局においては、従来から上告参加人同意のもとに三六協定の締結、更新を前提とした超過勤務が平常勤務として組み入れられてきたところ、上告参加人は、当該超過勤務自体に関する勤務条件については格別の要求を有していた事情は認められないのに、本件財政再建計画の実施阻止という要求を貫徹するための手段として、三六協定の締結、更新を拒否し、組合員に時間外勤務を拒否させて本件超勤拒否闘争を実施したということになるから、右超勤拒否闘争は、地公労法一一条一項の禁止する争議行為に当たるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。また、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

昭和54・10・30 最高三小判 昭和49(オ)1188 国労札幌地本戒告事件『労働判例』329号
(ビラ貼り事件につき使用者の企業秩序定立権を前提に受忍義務説を全面的に否定した指導的判例-概ね全文)

 (一) 日本国有鉄道労働組合(以下「国労」という。)は、昭和四四年三月ころ、同年度の賃金引上げの要求及び一六万五〇〇〇人の減員を内容とする合理化案反対の要求を目的とした同年四月一三日以降のいわゆる春闘に臨むにあたり、行動方針について全国各地方本部に指令を出したが、その際、右要求を組合員各自がみずから確認し合つてその意思を統一し、もつて組合の団結力の昂揚をはかり、あわせて上告人当局に右要求をアピールする等のために、ビラ貼付の行動を指令し、これを受けた国労札幌地方本部(以下「札幌地本」という。)の指令に基づいて、同札幌支部において執行委員会で具体化方策を決定し、同月一〇日ころ、さん下の各分会に対して右闘争の実施を指令した。同支部さん下の札幌駅分会においては、同月一〇日すぎころ分会委員会でビラ貼付には粘着テープを用いることとし、また、札幌運転区分会においては、同月初めころ執行委員会を開いて前記札幌地本の指令の実施について協議したところ、同分会において指令のあつたビラ貼り行動を実施することは困難な状況にあつたことから、その実施を同分会青年部に委託することに決定した。同分会青年部においては、そのころ右決定をうけ集会を開いて検討した結果、青年部の組合員が各自昼の休憩時に同運転区検修詰所(以下「検修詰所」という。)備付けの組合員が日常使用することを許されているロツカーにセロテープでビラを貼付することとし、白紙のビラ用紙に各自が要求事項を記入してビラを作成し、貼付行動に備えた。そして、札幌駅分会あるいは札幌運転区分会所属の組合員は、札幌駅においては小荷物などの事務室備付けのロツカー合計一九九個に約四〇〇枚のビラを貼り、札幌駅輸送本部においては操車連結詰所(以下「操連詰所」という。)備付けロツカー合計五五個に約一〇〇枚のビラを貼り、札幌運転区においては検修詰所備付けロツカー合計五六個に五六枚のビラを貼つた。
 (二) 被上告人らは、次のような行動をした。
 (1) 被上告人Aは、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌支部札幌駅分会の組織部長の地位にあつたものであるが、昭和四四年四月一〇日ころからB助役より組合掲示板以外の施設へのビラ貼付を禁止されていたのにもかかわらず、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ操連詰所において、他の職員が勤務中であるのに、自己が日常使用しているロツカーの扉の表面に、「一六万五千人の人べらし合理化をはね返そう」及び「七〇年安保にむけ春斗を力つよく斗いぬこう」と白地に青、赤色で各印刷された国労作成のビラ二枚を並べて貼付した。そして、ちようど同被上告人の右行動を現認した右B助役をはじめC助役、D、E各運転掛らが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。」と注意し、貼付された二枚のビラをはがすよう促したが、同被上告人はこれを無視して応じなかつたため、右D、Eの両名がやむなく一枚ずつビラをはがしたところ、同被上告人は、「何をするんだ。組合の財産に手をかけるな。」といつて両名の手からビラを取り戻し、Bらが目前で再三にわたつて制止したのにも構わず、再度前同様の方法でロツカーにビラを貼付したが、その際、Eの肩を押し、あるいはビラをはがそうとしたBの手を払いのける行為におよんだ。
 (2) 被上告人Fは、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌支部札幌駅分会執行委員の地位にあつたものであるが、被上告人Aと同様、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ前記操連詰所において同所備付けのロツカーの扉の表面に国労作成のビラを貼付しようとし、これを認めた前記のB、Cらから「ビラを貼つてはいけない。」と再三ビラ貼りを中止するよう指示されたのにこれを全く無視し、被上告人Fはじめ一〇名の国労組合員である上告人の職員が同職場において日常使用することを許されているロツカー合計一〇個の扉の表面に、札幌地本に委託されたと称し、被上告人Aが貼付したと同内容のビラあるいは「新賃金三万三千円要求をストでたたかいとろう」、「ストで大幅賃上げ獲得首切り合理化粉砕」などと印刷されたビラをロツカー一個に二枚ずつ(ただし、一個について一枚のみのものがある。)を並べて、合計一九枚を紙粘着テープで貼付した。
  更に、被上告人Fは、同月一六日の午前八時四〇分ころにも、前記場所において前同様の方法で備付けロツカーにビラを貼付し始め、これを発見したB、Cらが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。はがしなさい。」といつて再三にわたつて制止したのに、「貼つて何故悪いのだ。当然の権利だ。」と返答し、Bらが貼付されたビラをはがそうとすると、「組合のものにさわるな。」といいながらBらの手を払いのける行為におよび、結局、札幌地本に委託されたと称し、国労の組合員である三上潔操連掛ら三名の者が職務上使用を許されているロツカー三個の扉の表面に各二枚ずつ並べて合計六枚のビラを前同様の方法で貼付した。
 (3) 被上告人G、同Hは、いずれも上告人の職員で、札幌運転区検修掛の職務に従事し、Gは国労札幌支部青年部長、Hは同支部運転区分会青年部長の地位にあつたものであるが、同被上告人らは、前記青年部の決定に従い、同月一五日午後零時から一時までの間に、検修詰所において、「合理化反対」、「C交粉砕」、「検長会議は当局の会議だ直ちにやめろ」などと手書したビラを他の国労の組合員と共に同所備付けのロツカー五五個の扉の表面にセロテープで貼付し、これを現認したI検修助役が同被上告人らに対し「職場内にビラを貼ることは違法であり、許可されていない。直ぐはがすよう指示する。」旨注意したのに、「地本の指示だからはがされない。闘争が終わるまでこのままにしておいてくれ。はがしたら今度は糊で貼るぞ。」と返答して、右Iの指示に従わなかつた。
 更に、被上告人Gは、同日午後零時五五分ころ、右の貼付につづいて、前同所において前同様の方法により、自己が日常使用することを許されているロツカー扉の表面に、「安全、安全と言いながら気の許すひまをあたえない当局だ。この様な事では我々の安全は保障されない。もつと考えてほしい」と前記白紙のビラ用紙に手書したビラ二枚を並べて貼付した。
 (三) なお、検修詰所は、職員の詰所として使用され、南北一〇・四七メートル、東西九七メートルの長方形の部屋で、その北側壁に沿つて高さ一八〇センチメートル、幅八八センチメートル、上下二段四個一組のスチール製ロツカー六〇組(二四〇個)が南に向けて一列に設置され、被上告人G、同Hらが前記のビラを貼付したロツカーはそのうちの五六個であり、貼付されたビラは、縦の長さ約四〇センチメートル横の長さ約一三センチメートルの統一された大きさの長方形のもので、その下部に国鉄労組札幌地本と印刷され、その余の白紙となつている個所に前記認定のような文言を手書したものである。また、操連詰所は、同様職員の詰所として使用され、南北五・六メートル、東西二一メートルの長方形の部屋で、その中に前記検修詰所のロツカーと同規格のロツカーが南東隅に東に向けて二組(八個)、北に向けて二組(八個)、北側壁の中央よりやや東寄りに二組(八個)が設置され、被上告人A、同Fが前記のビラを貼付したロツカーは右のうちの一四個であり、これに貼付されたビラも右検修詰所に貼られたビラと同様の規格(ただし、前記のビラの右国鉄労組札幌地本と印刷された部分に国鉄労働組合と印刷されたものもあつた。)で、右ビラの白紙となつていた部分に、さきに被上告人A、同Fの具体的行動について述べたところで判示したとおりの文言が白地に赤色又は青色の文字で、あるいは色地に白抜きの文字で印刷されたものであつた。
 (四) また、上告人が内部における物品の調達、運用、管理について定めた物品管理規程及び物品事務基準規程によれば、被上告人らが本件においてビラを貼付した前記ロツカーは、会計整理上の区分では備品、用途上の区分では調度用品であり、物品出納員である札幌駅長あるいは札幌運転区長の責任において保管され、職員に使用を許しているものであり、上告人の物的施設の一部を構成するものである。そして、上告人は、その管理する施設に許可なく文字等を記載し又は掲示することを禁じ、組合に対しても掲示板の設置を認めるが右掲示板以外の場所に組合の文書を掲示することを禁じていた。もつとも、本件ビラの貼付がされた当時、国労が上告人から文書の掲示を許可されていた組合掲示板には、必要な多数の文書が掲示されていたため本件のようなビラを貼付する余地は全くなかつた。また、本件ビラが貼付された操連詰所及び検修詰所は、右ビラ貼付行為がされた当時においては、いずれも、旅客その他の一般公衆の出入りは全くなく、被上告人ら職員が休憩や就労前の準備をする等のために使用する場所であつて、同所を使用する大部分の職員は国労の組合員であり、ただ小人数の管理職等の職員が同所の一部で事務をとり、就労していた。
 (五) 上告人の総裁は、昭和四四年八月八日、被上告人らに対し、被上告人らの行為は上告人の就業規則六六条三号(「上司の命令に服従しないとき」)及び一七号(「その他著しく不都合な行いのあつたとき」)に規定する事由にあたるとして、日本国有鉄道法三一条の規定に基づいて被上告人らをいずれも戒告処分に付する旨の意思表示をした。
 二 原審は、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、これについて上告人の許可を得ていないけれども、正当な組合活動として許容されるべき行為であり、右ビラ貼付行為を禁止しあるいは制止した被上告人らの上司の命令は結局のところ不法又は不当というべきであるから、被上告人らが右命令に従わずビラ貼付その他の言動をしたことをもつて上告人の就業規則六六条三号又は一七号に該当する行為をしたものということはできず、本件各戒告処分はなんらの処分事由もないのにされたことに帰し無効である、と判断した。
 三 論旨は、要するに、被上告人らの行動を正当な組合活動と判断した原判決は、労働組合法七条又は憲法二八条の解釈を誤つたものであり、理由不備、審理不尽の違法をおかしたものである、というのである。
 第二 当裁判所の判断
 一 思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであつて、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。
 ところで、企業に雇用されている労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されている場合が少なくない。しかしながら、この許容が、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然であり、したがつて、当該労働者に対し右の範囲をこえ又は右と異なる態様においてそれを利用しうる権限を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由はなんら存しないから、労働組合又はその組合員であるからといつて、使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限をもつているということはできない。もつとも、当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織される労働組合(いわゆる企業内組合)の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定することができないところではあるが、労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは既に述べたところから明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである。右のように、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であつて定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないものというべきであるから、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで叙上のような企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであつて、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。
 二 そこで、以上の見地に立つて、本件について検討する。
  原審が確定した前記の事実によれば、本件ビラの貼付が行われたロツカーは上告人の所有し管理する物的施設の一部を構成するものであり、上告人の職員は、その利用を許されてはいるが、本件のようなビラを貼付することは許されておらず、また、被上告人らの所属する国労も、上告人の施設内にその掲示板を設置することは認められているが、それ以外の場所に組合の文書を掲示することは禁止されている、というのであるから、被上告人らが、たとえ組合活動として行う場合であつても、本件ビラを右ロツカーに貼付する権限を有するものでないことは、明らかである。そして更に、前記の事実によると、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、賃金引上げ等の要求を組合員各自がみずから確認し合つてその意思を統一し、もつて組合の団結力の昂揚をはかり、あわせて上告人当局に右要求をアピールする等のために、国労のいわゆる春闘の一環として行われた組合活動であり、上告人の許可を得ないでされたものであるところ、右ロツカーの設置された部屋の大きさ・構造、ビラの貼付されたロツカーの配置、貼付されたビラの大きさ・色彩・枚数等(これらについては、先に判示したとおりである。)に照らすと、貼付されたビラは当該部屋を使用する職員等の目に直ちに触れる状態にあり、かつ、これらのビラは貼付されている限り視覚を通じ常時右職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるのであつて、このような点を考慮するときは、上告人が所有・管理しその事業の用に供している物的施設の一部を構成している本件ロツカーに本件ビラの貼付を許さないこととしても、それは、鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの上告人の目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する、という上告人の企業秩序維持の観点からみてやむを得ないところであると考えられ、貼付を許さないことを目してその物的施設についての上告人の権利の濫用であるとすることはできない。本件ビラの貼付が被上告人らの所属する国労の団結力の昂揚等を図るのに必要であるとしてされたものであり、ビラの文言も上告人その他の第三者の名誉を毀損しその他不穏当にわたるものがあるとまではいえず、剥離後に痕跡が残らないように紙粘着テープを使用して貼付され、貼付されたロツカーの所在する部屋は旅客その他の一般の公衆が出入りしない場所であり、被上告人らの本件ビラ貼付により上告人の本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等の事情のあることは、先に判示したところからうかがい得ないわけではないが、これらの事情は、いまだもつて上記の判断を左右するものとは解されないところである。したがつて、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、上告人の企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず、これに対し被上告人らの上司が既述のようにその中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない。
 そして、日本国有鉄道法三一条一項一号は、職員が上告人の定める業務上の規程に違反した場合に懲戒処分をすることができる旨を定め、これを受けて、上告人の就業規則六六条は、懲戒事由として「上司の命令に服従しないとき」(三号)、「その他著しく不都合な行いのあつたとき」(一七号)と定めているところ、前記の事実によれば、被上告人らは上司から再三にわたりビラ貼りの中止等を命じられたにもかかわらずこれを公然と無視してビラ貼りに及んだものであつて、被上告人らの各行動は、それぞれ上告人の就業規則六六条三号及び一七号所定の懲戒事由に該当するものというべきである。
 三 そうすると、被上告人らの各行動は懲戒事由に該当しないとした原審の判断は、ひつきよう、法令の解釈、適用を誤つたものであり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
 四 そこで更に、原審が確定した事実に基づき被上告人らの請求の当否について判断する。 まず、被上告人らは、本件各処分は憲法二八条及び労働組合法七条一号に違反し民法九〇条にいう「公ノ秩序」に反するもので無効である、と主張するが、右は被上告人らの本件ビラ貼付行為が正当な組合活動であることを前提とする主張と解されるところ、右行為が正当な組合活動にあたらないことは前述したとおりであるから、被上告人らの右主張は、その前提を欠き、失当である。
 次に、前述のように、被上告人らの各行動は懲戒事由に該当するものであるところ、被上告人らは、本件各処分は懲戒権を濫用したものとして無効であると主張する。しかし、上告人の総裁が職員につき懲戒事由があると認める場合にいかなる処分を選択すべきかについては上告人の総裁の裁量に任されているものと解されるところ、一方において被上告人らの各行動が前記のとおりのものであり、他方において上告人の総裁の選択した被上告人らに対する各処分が懲戒処分として最も軽い戒告処分であることを考えると、右各処分をもつて社会通念に照らし合理性を欠き懲戒権の濫用にあたるものとまでいうことはできない。したがつて、被上告人らの右主張も、採用することができない。
 そうすると、上告人の総裁のした本件各戒告処分は無効であるとはいえず、被上告人らの各請求は、いずれも理由がないから、棄却を免れないものであり、これと同旨の第一審判決は相当であつて、被上告人らの控訴は、棄却されるべきものである。

昭和63・7・19最高三判昭和58(行コ)86 池上通信機救済命令取消事件『労働判例』527号-上告棄却-以下の高裁の判断を認める(一審もほぼ同じ) 
S59. 8.30 東京高裁 昭和58(行コ)86 池上通信機救済命令取消事件『労働判例』439号
(食堂を使っての無許可職場集会・警告書・中止命令が不当労働行為に当たらないといた-主要部分を抜粋)

三 本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであつて、労働組合又は組合員であるからといつて、使用者の許諾なしに当然に企業施設を利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のために企業施設を使用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、このことは、当該組合がいわゆる企業内組合であつて、労働組合又は組合員において企業施設を組合活動のために使用する必要性がいかに大であつても、いささかも変わるところがない。このように解すべきことは、労働組合法が使用者の労働組合に対する経費援助等を不当労働行為として禁止し、ただ最小限の広さの事務所の供与等を例外的に許容しているに過ぎない(同法第七条第三号)ところの法の趣旨に適合する当然のことである。労働組合又は組合員による企業施設の利用関係は、この点において、企業が労働安全衛生法第七〇条の規定に基づいて労働者の体育活動、レクリエーシヨンその他の活動のために企業施設の使用を認める場合とは、基本的に性格を異にするものといわなければならない。
 そして、使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職場規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設の使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないところである。
四 本件においても、以上に述べたところと別異に解すべき事情はなんら見当たらず、組合が組合員集会や組合大会の開催その他の組合活動のために会社の一般的又は個別的な許諾を得ないで当然に会社の従業員食堂を使用し得るものと解すべき理由はない。しかるに、組合は、その結成以来一貫して、組合活動のために会社施設を自由に使用できるのは組合の当然の権利であるとの基本的な前提に立ち、これを会社構内における組合活動の自由と称して会社にその承認を求め続け、会社の承諾を得ないままに会社の従業員食堂を組合員集会等のために多数回にわたつて使用し続け、この間、会社の許諾を得ることなく組合又は組合員が組合活動のために会社施設を使用するのは違法であり、先ず団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的な合意を締結するのが先決であるとして組合又は組合員による従業員食堂の無許諾使用を阻止しようとした会社と再三にわたつて衝突を繰り返すなどしてきたものである。また、先に認定したような経緯に鑑みると、組合においては、従業員食堂等の会社施設の組合活動のための使用につき、会社と真摯に協議を尽くして合意に達しようとする姿勢に欠けていたものといわざるを得ない。
 そして、組合が右のような不当な見解に固執して従業員食堂の使用につき会社と真摯に協議を尽くそうとせず、かえつて会社の許諾を得ないままに会社の阻止を実力で排除してこれを使用し続けるという挙にでるという態度を採り続けたものである以上、会社としても、団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的な合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別的にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかつたのも、やむを得ない措置というべきであつて、これを権利の濫用ということはできないし、会社が組合員の入構を阻止したり、組合員集会の中止命令を発するなどの措置を採つて、会社の許諾を得ないまま従業員食堂において開催されようとする組合員集会等を中止させようとし、あるいは組合が無許諾で従業員食堂を組合活動のために使用した場合に組合又はその責任者の責任を追及し処分の警告を発するなどしたのは、先にみたようないわゆる施設管理権の正当な行使として十分是認することができるところであつて、これら会社の採つた一連の行動が組合に対する不当労働行為に該当するものということはできない。

平成元・1・19最高一小判昭和53(行ウ)118 日本チバガイギー救済命令取消事件
『労働判例』533号-上告棄却-以下の原審の判断を認める

S60. 4.25 東京地裁 昭和53(行ウ)118 日本チバガイギー救済命令取消事件『労働判例』452号
(就業時間中の団交報告集会の食堂・野外集会開催不許可は不当労働行為に当たらないとした部分につき抜粋)

 原告は、参加人からの本件食堂の貸与の申入れあるいは屋外での集会の開催の申入れをいずれも拒否したのは原告の施設管理上の正当な理由によるものであつて何ら不当労働行為に該当しないとして被告の認定・判断を争うのでこの点について判断する。

(一) 昭和四九年四月当時宝塚市には原告の医薬生産部である工場部門とそれ以外の本部部門があつた。そして主たる建物は五三号館とこれに隣接する六三号館であり、六三号館の一階には本件食堂があつて、二階には本部関係の生産管理の事務部門、三階には医薬事業部、マーケツテイング部、四階には研修室、人事労政部がそれぞれ入つており、就業時間は工場部門では午前八時から午後五時まで、その他は午前九時から午後五時四五分までであつた。また当時、従来五三号館に入つていた部署が六三号館へ移転中であつたことから両館の会議室や応接室の使用が困難な状況にあり、他方本件食堂は昼食を出すだけであつたことから、その他の時間にはプライバシーを保つ必要のない商談や会議等に使用されていた。
(二) 参加人は同年四月九日原告との間で第一回の団体交渉を行つたが、その団体交渉の経過報告を組合員に行う必要があつたことから、右交渉の終了頃、原告に対し翌一〇日午後五時から報告集会を行うので本件食堂を貸与して欲しい旨申し入れた。原告は右申入れに対し翌一〇日に回答を行うと回答した。ところで参加人は、工場部門の工場支部については就業時間が終了する午後五時から、また本部部門の本部支部については就業時間終了後の午後五時四五分から報告集会を開催することに決定した。参加人が工場支部と本部支部とを分けて工場部門の組合員に対し先に報告を行うこととしたのは、公然化して間がなく午後五時四五分まで組合員の帰宅を引き留め待機させることに不安があつたこと、遠方から通勤している組合員が当時数十名おり、その者達のためにも早い時間に終了させたいと考えたためであつた。
 ところで右申出に対し原告は工場部門の終業時刻は午後五時であるが、本部部門の終業時刻は午後五時四五分であるから、それまでは本部への来客があり本件食堂を使用することもあり得、また集会においてマイク等が使用されて喧噪状態となつた場合には就業中の従業員の執務に影響を与えて業務上の支障が生ずるおそれもあると判断し、工場及び本部の終業後である午後六時からの使用を認める旨の回答をした。これに対し参加人は再度本件食堂の使用許可を求めるとともに、もし本件食堂の使用ができないのであれば、屋外での報告集会の開催を認めて欲しい旨原告に申し入れた。しかし原告はこれに対しても、屋外での集会も本部で就業中の従業員の執務に影響するとの理由から屋外集会の開催も許可しなかつた。
(三) 工場支部の組合員約七〇名は、同日午後五時から予定どおり本件食堂を使用して報告集会を開始した。ところで同日午後五時すぎ頃本部写真機械部のBが本件食堂で業者との商談をしようと本件食堂へ行つたところ、右のとおり参加人の集会のため使用できる状態にないため、労働組合関係を担当する教育労政室に抗議した。そこで原告ははじめて参加人が無許可で集会を開催したことを知り、右教育労政室のDが同日午後五時二〇分頃本件食堂へ行き、午後六時からの集会許可であるとして集会を中止するようCへ申し入れて同人と押問答となつたが、その間に午後六時となつたのでDはその場を引き上げ、その後集会は午後七時頃まで行われた。
 なお参加人が工場支部の報告集会を一〇日の午後五時から行う旨の通知は原告からの回答がなされる前になされ参加人が午後六時に開始時間を遅らせる旨の連絡は可能な状況であつた。
 また、従来原告は従業員が就業時間中に職場集会を開くことを許可したことも、また本件食堂の使用を許可したこともあつた。
 以上の事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
2 ところで参加人が許可を求めた本件食堂の使用にしろ屋外集会にせよいずれも原告の物的施設の利用を伴うものであつて、これら施設は本来企業主体たる原告の職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように物的施設を管理・利用しうる権限(以下「施設管理権」という。)に基づいてその利用を原告の許可にかからしめる等して管理運営されているものである。したがつて、参加人において右施設を利用する必要性が大きいからといつて原告の許可なく参加人が当然に右施設を利用しうるものではないというべきである。そうであれば、原告が参加人の本件食堂の使用の申出に対し許可しないことが権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、これを許可しないことをもつて不当な使用制限とはいえないものというべきである。
 そこで右に認定した事実を基礎に検討するに、本件食堂は会議、商談等に利用されてはいたが、秘密を要求されるものについては利用されていない臨時のものであつたこと、参加人が集会を開始して後Bの苦情から原告がはじめて参加人の集会開催を知るなど集会が喧噪にわたるものではなかつたこと、このことは集会の目的が第一回の団体交渉の報告であつて必ずしも喧噪にわたることが当然に予想される集会ではなかつたこと、更に従業員会には本件食堂の使用も許可したことがあること、また屋外の集会については必ずしも具体的な業務上の支障があつたともいえないことなどからすれば、本件食堂の使用や屋外集会を参加人の希望どおり許可したことによる現実の業務上の支障は必ずしも大きくなかつたものと推認されなくもないが、他方、工場部門とは別に本部の従業員の就業時間は午後五時四五分までであつてその間に集会が行われるとすれば就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想し得ないわけではなく、また当時本来の会議室等の使用が困難であつたことから、本部従業員の就業時間中は本件食堂を当座の会議室等として使用していたのであるから、原告において本部就業時間中の本件食堂の使用を許可しないと考えたことにも合理性があること、現に使用できなかつた従業員もでていること、しかも原告は全く許可しないというわけではなく午後六時からの使用は許可していること、そして参加人が集会の開催を午後五時に固執した理由は専ら組合員の帰宅時間の遅れを妨ぐといつた自らの結束力の弱さからくる事由であり、これに固執する合理性に乏しいこと、また、従業員会は親睦団体で、原告の組織に近いものであつて、参加人と同一に扱うこともできないことなどの事情もあり、これらの事情を比較考量すると、原告が参加人からの午後五時からの本件食堂の使用申出あるいは屋外集会を許可しなかつたことについて、原告の権利の濫用であると認められるような特段の事情があつたものとはいえず、右の事情に原告が一般的に参加人に対し好意的でなかつたことも併せ検討しても、これをもつて未だ右にいう特段の事情があるものと認めるに足りず、他に右の権利の濫用があるものと認めるに足りる証拠はなく、結局、原告の右許可しなかつた行為は不当ということはできず、参加人に対する支配介入行為とはいえないものというべきである。
 したがつて、右の点に関し、原告の支配介入による不当労働行為であるとした被告の判断には誤りがあり、違法であつて取消しを免れない。

平成元・12・11 最高二小判 昭和63(行ツ)157 済生会中央病院救済命令取消事件
『労働判例』552号

(慣行化していた時間内無許可職場集会への警告が一審、二審とも不当労働行為としたが、最高裁は原審覆し不当労働行為に当たらないとした部分について抜粋

(一) 昭和五〇年四月五日の警告
(1) 病院は、従来から、急患室勤務の看護婦不足を補うため、毎月二五日頃翌月の勤務表を作成し、これに基づく急患室勤務を外来看護婦に割り当てていた。この勤務表は、事前の申し出がない限り、外来看護婦の同意を得ることなく病院が一方的に作成し、外来看護婦はおおむねその勤務に服していた。(2) 昭和五〇年三月頃から病院の看護婦不足が甚だしくなったため、同月二七日になってようやく作成された四月分の勤務表には、従来なかった深夜勤(午後一一時から翌日午前八時まで)が導入され、また夜勤(午後四時から午後一一時まで)の回数も増加されていた。外来看護婦の通常の勤務は午前八時から午後四時までであるから、外来看護婦が深夜勤の後に通常の勤務をすると、午後一一時から翌日午後四時までの過重な勤務となった。(3) そこで、支部組合は、三月二八日午後三時三〇分頃から、右勤務表について協議するため外来看護婦ら二十余名を元空腹時血糖室に集めて職場集会を開いた。(4) 病院は、四月一日支部組合との間で労働協議会を開催し、外来看護婦の急患室勤務は事前に申し出れば勤務しないことができるものであることを確認したが、支部組合は、右勤務表に基づく急患室勤務を拒否した。(5) 次いで、支部組合は、病院が病棟看護婦に急患室勤務をさせる動きを示したこともあって、同月二日及び三日午後三時四〇分から右元空腹時血糖室でこれまでの経過を報告するとともにその後の対策を協議するため、外来看護婦らを集めて職場集会(以下「本件職場集会(一)」という。)を開いた。(6) そして、支部組合は、同月三日病院に対し三交替勤務に必要な急患室勤務の看護婦の増員を要求した。(7) 病院は、同月五日支部組合に対し本件職場集会(一)につき「このような集会を勤務時間中に行うことは、労働協約第九条並びに就業規則第二三条、第二四条に違反する不当な行為であります。……今後かかる行為を絶対に繰返さないようここに厳重に警告しておくとともに責任追求の権限を留保しておく。」という「警告並びに通告書」を交付した。(8) 支部組合が本件職場集会(一)をいずれも労働時間中である午後三時四〇分から開催したのは、外来看護婦は、午前中の診療が正午までに終わらないため、現実には通常の昼休み(正午から午後一時まで)をとることができず、休憩時間をとることができるのは午後の診療が一段落した三時過ぎであったこと及び外来看護婦のなかには終業後保育所に幼児を引き取りに行かなければならない者がいたことを考慮したためである。そして、本件職場集会(一)に参加した者は、いずれもその時間に差し迫った業務のない者であり、集会中業務に就く必要が生じた者は中座して業務に就いている。また、本件職場集会(一)の場所を元空腹時血糖室に選んだのも、ここが急患室の隣りであって、必要が生ずれば直ちにこれに対応することができるという配慮からであった。なお、支部組合が本件職場集会(一)を開くに当たって病院に届け出たり許可を得たことはないが、従来この時間帯に届出も許可もないまま職場集会を開催しても、病院から警告、注意等を受けたことはなかった。
(二) 昭和五〇年五月一〇日の警告
(1) 支部組合は、昭和五〇年三月三日病院に対し四月一日から基本給の二五パーセントに一律一万円を加えた賃上げ等を要求し、同月二〇日までにその回答を求めた。病院は同月二四日支部組合と団体交渉をしたが、その際、支部組合に対し、最初にして最後の回答と表現して、平均一万一二六八円(一〇・四一パーセント)の賃金を引き上げることを提示した。(2) 支部組合は同月三〇日の団体交渉においてこれを拒否したところ、病院は、五月六日の団体交渉において、支部組合が争議行為をしないことを条件として、二〇〇〇円の上積み及び看護婦の夜勤手当の増額を認める案を提示した。支部組合は、これを拒否するとともに、病院に対し同日午後六時から時間外勤務、宿日直拒否闘争に入ることを通知した。そこで、病院は、上積み回答を撤回し、同月七日全従業員に「労務情報」を配布し、「平和的解決の条件拒否さる。」という見出しのもとに右の経過を公表した。(3) 支部組合は同月八日病院と再度団体交渉をしたが、六日の案以上の案は出ず、交渉は進捗しなかった。しかして、支部組合は、翌九日に予定していたストライキを回避して交渉を続け、同月二八日、六日の賃上案を受け容れた。(4) この間、支部組合は、同月六日、七日及び九日の一二時三〇分から病院内のテニス・コートを使用して職場集会(以下「本件職場集会(二)」という。)を開いたが、六日は二九分、七日は一一分、九日は五分、午後一時からの労働時間に食い込んだ。そこで、病院は、同月一〇日、支部組合に対し、「……業務を放棄し、……多数の組合員を対象に……集会を行ったことは、労働協約第九条並びに就業規則第二三条、第二四条に違反する不当な行為である。この件については、四月五日……病院見解を明らかにしたように責任追求の権限を留保する。かかる行為を今後も繰返し行った場合は、病院として重大な決意をもって臨むことをここに正式に通告しておく。」という「警告並びに通告書」を交付した。(5) 本件職場集会(二)には、病棟看護婦のうち業務のある者、外来看護婦等で業務に支障のある者は出席せず、また集会中でも業務上必要のある者は自由に退出していた。そして、支部組合が本件職場集会(二)をすることについて病院に届け出たり許可を得たことはなかったが、従来労働時間に若干食い込む職場集会が昼休みに開かれたことはあっても、病院がこれについて警告、注意をしたことはなかった。
 二 右事実関係の下において、原審は、次のとおり判断し、上告人の請求を棄却した第一審判決は相当であるとして、控訴を棄却した。
1 労働者ないし労働組合は、使用者の許諾なくして職場集会のためその施設を利用することができるものではなく、また、労働時間中当然に職場集会をすることができるものでもない。したがって、使用者は、権利の濫用と認められる特段の事情のない限り、そのような集会の中止を求めることができる。
2 しかし、本件職場集会(一)、(二)は、いずれもその時期にこれを開催する必要性が認められること、本件職場集会(二)によって病院の業務に直ちに支障が生ずるものではないこと、本件職場集会(一)、(二)は事実上の休憩時間にされたか昼休みに終了しないため若干労働時間に食い込んだにすぎないこと、本件職場集会(一)、(二)の参加者は業務に支障のない者であり、参加した者も途中業務に支障が生ずれば自由に退出するなどしていたこと、病院は、従来このような態様でされた職場集会について何ら注意をしたことがないこと等に照らすと、本件の場合、権利の濫用と認められる特段の事情があるから、本件職場集会(一)、(二)を違法なものということはできない。
3 そうすると、本件警告をもって支部組合及び全済労に対する支配介入であるとした被上告人の認定判断に違法なところはない。

 三 しかしながら、原審の右判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。
  一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。したがって、労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない。また、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらない。そして、もとより、労働組合にとって利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用し得る権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うと解すべき理由はない(最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)。
 これを本件についてみるに、本件職場集会(一)、(二)は、労働時間中に、病院の管理する物的施設(元空腹時血糖室、テニス・コート)を利用して開かれたものである。しかして、従来、病院が本件のような職場集会について何ら注意をしたことがなかったとしても、それをもって直ちに病院が労働時間中に病院の管理する物的施設を利用して職場集会を開くことにつき黙示の許諾をしていたということはできないし、病院がそのような職場集会を開くことについて反省を求めることの妨げとなるものでもない。また、右の権利の濫用であると認められるような特段の事情があるかどうかの判断に際し、病院の管理する物的施設を利用して職場集会を開く必要性を強調することができないことはさきに説示したところから明らかである。同様に、労働時間中に職場集会を開く必要性を重視して、それが許されるとすることができないことも、前記説示に照らし当然である。なお、支部組合が本件職場集会(一)を開催したのが外来看護婦が通常の昼休みをとることができない傾向にあったためであるとしても、そのことが支部組合として午後三時四〇分から本件職場集会(一)を適法に開くことができる根拠となるものでもない。以上によれば、本件職場集会(一)、(二)の開催につき病院の明示又は黙示の許諾があるとも、また、その開催を許さないことが病院の権利の濫用であると認められるような特段の事情があるとも解されないのであって、結局、病院が本件職場集会(一)、(二)に対して本件警告書を交付したとしても、それは、ひっきょう支部組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎないから、病院(上告人)の行為が不当労働行為に該当する余地はないというべきである。したがって、東京都地方労働委員会の昭和五二年三月一日付初審命令(都労委昭和五〇年(不)第六一号事件初審命令)の主文第1項のうち昭和五〇年四月五日付「警告並びに通告書」及び同年五月一〇日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(一通)並びに主文第4項(1)のうち同年四月五日付「警告並びに通告書」及び同年五月一〇日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(一通)について、これを維持した被上告人の昭和五四年一二月五日付再審査申立棄却命令(中労委昭和五二年(不再)第二五号事件再審査命令)の該当部分の取消しを求める上告人の請求は理由があるから、これを認容すべきである。原判決及び第一審判決が本件職場集会(一)、(二)に対する警告が不当労働行為に該当するとしたのは、法七条三号の解釈適用を誤ったものであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであって、この点をいう論旨は理由がある。よって、右部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、上告人の請求を認容することとする。

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