ロックナー判決マンセー論(4)
ロックナー判決は中間審査基準だといわれる-1
ロックナー判決は憲法の正当な解釈であり復活すべきだとするBernard H. Sieganを検索して知ったんですが、同教授は2006年春、サンディエゴで死去しました。81歳でした。財産権特に経済的自由擁護に熱心でした。一部の保守派は彼は極端だと言いました。主著は"Economic Liberties and the Constitution" (University of Chicago, 1980); "The Supreme Court's Constitution: An Inquiry Into Judicial Review and Its Impact on Society" (Transaction Books, 1987); and "Property Rights: From Magna Carta to the Fourteenth Amendment" (Transaction, 2001).とニューヨークタイムズ「Bernard Siegan, 81, Legal Scholar and Reagan Nominee, Dies」という記事は伝えてますが、ロックナー判決マンセーをやったわけですから大物だと思います。
別のサイトで知ったんですが、同教授はロックナー判決は今日の中間審査基準だと言ってますね。
そうするとロックナー判決が復活したら司法部優越の超司法国家になってしまい、社会労働政策や経済政策で議会の立法権が大きく制限されてしまうような漠然としたイメージは正しくないかもしれませんね。
厳格司法審査とは、やむにやまれぬ高度の政府利益がなければ自由、権利の侵害を許さないということで、違憲が推定されますが、そうでもないということです。反対に緩やかな司法審査というのは立法目的と合理的関連性があればよくて議会判断尊重により合憲が推定されるものということかな。本を引用してないので正確に書けませんが。
中間審査基準とはその中間のことですが、私がすぐ浮かぶ典型的な判例は男性差別事件で1976年のCRAIG v. BOREN, 429 U.S. 190 (1976)
http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=429&invol=190。
そもそも私は性差別を修正14条の平等保護条項に反し憲法違反と初めて認めた1971年のリード判決はウーマンリブに迎合したワースト判決と思ってますから、性差別事件に中間審査基準を適用するのは反対です。これはオクラホマ州法ですが、こんな法律にいちいち目くじらをたてて叩き潰すのは馬鹿げていると思うくらいですが、事案は大略こういうことです。20年くらい前に本を読んだときの記憶だけですが。
オクラホマ州法ではアルコール3.2%以上のビールを購入できる年齢が男子が21歳、女子は18歳と定めていました。これが平等保護条項に反するかどうかが争われました。最高裁は「不愉快な差別」であるとして違憲判断を下しました。
州の主張は、性差があるのは交通安全のためだと主張しました。これは取ったつけたもののようにも思えますが、統計データがありました。18-21歳の若い年齢で男性は人口の2%が飲酒運転で捕まってました。女子は0.18%でした。女子の20倍の男子が飲酒運転で捕まります。
そもそも21歳と18歳というのは成人年齢の差違であったと考えられますが、成人年齢の性差別の違憲判断が出たためか、成人年齢はならすことになっても、酒類購入年齢は元のママ残っていたようです。
法廷意見は左派(人権派の大御所と言ってもよい)のブレナン判事でした。ブレナンは、以前性差別事件で厳格司法審査を主張してました。当時の最高裁で性差別事件で大抵の場合違憲判断をとるのは、ブレナン、ホワイト、マーシャルの3人だけでした。男子のみの徴兵登録が違憲だと主張したのもこの3人です。しかし厳格司法審査基準の適用というのは多数派を形成できないので、この主張を引っ込めて、中間層の裁判官を取り込むために中間審査基準を採用しました。ブレナンは多数派形成の駆け引きの巧い裁判官でした。偉大なチームメーカーと呼ばれる本領が発揮された判決だと思います。
中間審査基準では、交通安全という政府利益と実質的な関連が立証されなければ違憲というような審査基準です。緩やかな合理性テストなら合憲でしょう。実際男子の方が飲酒でよく捕まってますから。
しかしブレナン判事は2%は希薄な相関性であって、交通安全とビール購入年齢の性差別は実質的関連がないと判定しました。私も純粋に資料解釈ならそう思います。人口の50分の1が飲酒運転で捕まったとしてもそれは大したことではないと思います。
そう言う意味では、中間審査基準はそれなりに厳格でしょう。ただ中間審査基準は裁判官の主観によって左右されるという批判もあります。ブレナン判事は同一年齢で女はビールが買えるのに男は買えないのは「不愉快な差別」としましたが、私はそう思いません。英米における伝統的な成人年齢の性差を認めるからです。ビールが飲みたければ女に買い物させればよいだけです。
続く
« ロックナー判決マンセー論(3) | トップページ | ロックナー判決マンセー論(5) »
「ロックナー判決論」カテゴリの記事
- 財産権保護とアメリカ的制憲主義その1(2011.05.24)
- バーンスタイン教授がロックナー判決復興のために活躍してます(2011.05.12)
- Lochner’s Bakeryの写真があった(2011.05.11)
- 感想 仲正昌樹『集中講義!アメリカ現代思想-リベラリズムの冒険』(2008.10.13)
- ロックナー判決マンセー論(16)(2008.10.12)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ロックナー判決マンセー論(4):
» 元AKB48メンバー宇佐美友紀が脱いだ!いきなりAV進出疑惑映像も流出!画像・動画 [元AKB48メンバー宇佐美友紀が脱いだ!いきなりAV進出疑惑映像も流出!画像・動画]
元AKB48メンバー宇佐美友紀が脱いだ!いきなりAV進出疑惑映像も流出!画像・動画 [続きを読む]
» 無料ゲーム・ラグナロク []
記念にポチッ!無料ゲーム・ラグナロク。 [続きを読む]
コメント