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2007/12/16

読書感想 中川八洋『保守主義の哲学』

  自由は「法の支配」の下で最も確実に保障される。
  中川八洋教授の『保守主義の哲学』PHP 2004年ではコーク卿型「法の支配」の系譜、マグナカルタからブラクトン等-コーク卿-ヘイル-ブラックスト-ンの18世紀末まで続いた伝統、これはアメリカに引き継がれ19世紀末まで堅持されたが、20世紀初頭からの社会主義と人定法主義(legal positivism)の跋扈、デモクラシーの発展による「社会正義」という魔物のような新しい概念により衰退したと述べられてます。(346頁)
  ハイエク型「法の支配」の思想はヒューム/アダム・スミス/アダム・ファーガソンらのスコットランド哲学者の法思想を源流としており、コーク卿型のコモン・ロー法曹家直系の系譜とは違うということです。
いずれにせよ、私は中川教授の保守主義哲学に基本的に同意します。中川氏が引用している中世ゲルマン法思想や、中世史の R.W.サザーンの著書も読んだことがあるし、元々中世的な思考が好きだし、中川教授の皇位継承学三部作で女帝反対で論陣を張ったことでも尊敬してますし、当然のことです。ただ自分の立場は中川氏よりずうっ-と寛容主義です。中川氏のように援助交際を非難するような堅苦しいことは口が腐っても言いたくない。被害者なき犯罪(大麻、賭博など)の非犯罪化にも好意的ですから。
  「法の支配」というのは昭和30年代の学習指導要領でも高校社会科にも項目にあったんですよ。ところが「法の支配」を理解する法曹家や法学者が日本にはほとんどいないとされています。支配者が自らの支配意思を法律の形で制定して、法律で総括するという 「法治主義」と混同、同一視している人も結構多い。 中川氏は「法の支配」の法とは、人間の意志から超越した古来の神聖な真理のことを意味し、法はつくるものではなく、祖先の叡智のなかに発見するものであるから、つくる(制定する)ものである法律は「法の支配」の法とはなりえない(前掲書78頁)。と説明されてますが、これは奥が深いので別途検討したいと思いますが、J.オースティンに代表される法命令説のような意味の法とは全然違います。法命令説の法とは「主権者、あるいは主権者に服従する従属者によって発せられた威嚇を背景とする一般的命令」http://homepage3.nifty.com/martialart/inoue5.htm(井上彰「H.L.A.ハート『法の概念』をめぐって」)とするものです。
要するに法秩序維持、法の遵守といっても、「法の支配」を前提したものか、支配者のコマンドに過ぎない「法命令説」的法令遵守かで意味が全然異なってくる。

 我が国の憲法学界、法曹界の風土のように「法の支配」なき「法治主義」は馬鹿げた「社会正義」を振りかざすことにより全体主義になだれ込む危険性を常に持っているということである。
 自由を侵害する立法(法律)万能-それは実質的に権力者(国会)の命令-思想に汚染されているのが現代社会だと言うことです。日本の国会議員は「主権者である国民」に選出されたという虚構を根拠に、思いつきのまま、やりたい放題に法律(命令)を制定していると中川氏は言います。つまり圧力団体の利害調整や政党の取引、官僚の思いつきのために自由はどんどん侵害されていくということです。

 中川氏の著作は正邪善悪をはっきりさせるからわかりやすいです。「法の支配」を破壊した思想、煽動家をこき下ろします。イギリスではホッブス-ベンサム-オースティンは悪、ドイツでは「法の支配」を理解したサヴィニーを評価するが、カール・シュミットや人定法主義のハンス・ケルゼンは悪、フランスでは、テュルゴー、ヴォルテール、ルソー、ベッカリーアは悪とはっきり言うので気持ちいいですね。
  米国にケイトー研究所http://www.cato.org/researchareas.phpというリバータリアンのシンクタンクがありますが、『カトーの書簡』第60番の「国会議員の立法を自制する心得」に由来することが、この本を読んで初めて知りました。(360頁)

グーグルのページランクというのがあるのを最近知ったんですが、現在このブログは10段階の2の評価になってます。あっちこっち見たんですが、2でも質のよいサイトはありますが、アクセス数が少ないもんで、多くしないと3にはならないようですね。職場では私は人を肋骨骨折させた狂暴な人間として否定的評価しかされません。たとえ2でも客観評価をもらえるのはうれしい。インターネットの世界のほうが公正でしょう。

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