ネタ探し(2)
ロックナー判決起草者として極保守派裁判官として有名な「ペッカム判事」を検索していたら、ベッカムはカルテルを容認した下級審判決をひっくり返したと裁判官だということが書かれているのがヒットしました。21世紀COEプログラム「新しい法律学の創造を目指す横断シンポジウム―企業と市場と市民社会をキーワードに― 」2005年2月5日,早稲田大学国際会議場井深大記念ホールPDFhttp://www.21coe-win-cls.org/english/activity/pdf/4/02.pdf
川濱昇(京都大学教授-経済法)の発言です(45頁)。長文ですが、重要なことを言っているので引用します。
「初期のシャーマン法1条の解釈というのは実はカルテルを容認するものであり,それが下級審の判例でありました。その方向を一気に変えたのがぺッカム判事です。ペッカム判事というのは,ロックナー判決, 1905年に出た実体的デュープロセス条項により契約の自由を過度に保護したことで有名な判決の多数意見を書いたことで著名な判事です。……契約の自由のチャンピオンとペッカム判事は目されていました。ところが,そのペッカム判事が契約の自由の名の下にカルテルを容認していた下級審判決をひっくり返しました。そのときのロジックが興味深いものです。……後に,ポピュリスト的ないし共和主義的(通常は同一視されませんが) な理論構成を採りました。要するに,カルテルのような経済権力を容認することが,それに従属する個人しか容認しないようになってしまい,それがひいてはアメリカ国家の存立基盤を崩すこととなる。これは,いわば共和主義型の市民の存在を重視し,そのような市民の場を維持するためには独禁法が必要だとする立場なのです。……今でもアメリカ合衆国のみでは銀行と産業との分離原則が強固に守られておりまが,これは明らかにペッカムなんかの思想をいまに受け継ぐものです。」
と述べてます。
契約の自由のチャンピオンたるベッカム判事は、契約の自由ゆえ、カルテルの自由があるなどという馬鹿なことは言わないのです。その反対です。ベッカム判事は独占放任レッセフェール主義者ではなく、反独占型経済自由主義でしょう。
ホームズが、ロックナー判決のベッカム法廷意見をスペンサーの社会進化論に基づく憲法解釈みたいな批判をするもんで、適者生存論者みたいなイメージが流布されてますが、そうではないですよ。
私なら、そもそも価格協定はコンスピラシーだった。古い時代の判例、マンスフィールド卿をなどを引用しつつ、ペッカム判事に同調しますよ。
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