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2008/01/14

英国近世における反独占、営業の自由の確立の意義(7) 

(要旨)17世紀から18世紀のコモン・ローの反独占の法理、営業制限の法理とシャーマン法は直結するものではないが、その精神は受け継いでいるといって差し支えないだろう。シャーマン法は労働組合に適用されるに至りその真価をいかんなく発揮した。私が反トラスト法に好意的な理由-それは労働争議抑圧に絶大な効果があったという歴史的意義からである。反トラスト法が労働争議に適用されることはなんら不可解なことはない。本来、営業の自由と団結禁止は不可分一体のものだったから。

 1890年シャーマン法の立法過程とコモン・ローの関係がわかりにくいが、谷原修身によると、シャーマン上院議員はトラスト問題の解決のため取引制限や独占に関するコモン・ローの法理を継承することを提案した。連邦議員のメンバーは好意的だったが、合衆国憲法通商条項が連邦議会にトラスト問題を規制する権限を授与しているのか、関税法との関連などで意見の対立があり、結局シャーマン法は、多くの妥協案が取り入れられ、コモン・ローのアプローチを採用しながら、違反者に罰金、禁固刑などの刑事罰を科したこと、違反行為を停止する差止命令を求めうること。損害を蒙った者に私的訴訟を許し、三倍額の賠償を認めた点で、コモン・ローの範囲を超えたと説明されている(註1)。[なお、差止命令(インジャンクション)は衡平法にもとづく、元々イギリスにおいて財産権が不法に侵害され、回復不能な損害が生じるおそれがある場合に、侵害の継続を禁止することから出発したが、合衆国で適用範囲が拡大された。1890年代からのレイバー・インジャンクションが発令されるようになリ、労働争議の抑止に大きな効果があった。]
 しかし谷原氏はスチュアート朝の反独占抗争は独占特許の国王大権が、議会による統制権に姿を変えただけと言っている(註2)。ジェームズⅠ世の治世の1624年独占大条例は、第九条で都市や町村に与えられた特権、すべての団体、会社、組合、商品取引の維持、拡大、調整を目的として設立された商人の団体は
適用除外とされていて、独占を消滅させるものではなかった。ダーシー判決で無効となったトランプの独占権も数年後にカード製造業者に与えられているという。コモン・ロー上、独占を保護することは続いた。コモン・ローでは資本主義の発展に伴って発生した独占化現象に防波堤にはならないとの結論のようである。
 岡田与好によると、1624年の独占条例は、同業組合に付与した特権を適用除外としたため骨抜きにされ、むしろ独占特権が単独の個人から、同業組合に拡大していった。再編ギルドとしてのカンパニーが収縮して、少数組合員による多数同業者による専制支配が強化されたという。事実、チャールズ1世の手によって、小親方層の公認同業組合への組織化がなされ、小営業主の団結が助長され、独占特許が濫発された。これが内乱直前の状況であった。内乱期には、ギルド的独占は廃止されず、むしろ助長されたので、ギルド団体の産業統制を拒否するレッセフェールの浸透は1660年以後のことと述べている(註3)。
 
 いずれにせよ、17世紀の反独占とは性格が違うのでシャーマン法とは直結しない。が、反独占、営業制限の法理あってのシャーマン法であるとはいえる。
 
独占禁止法を営業の自由の制限とみなす見解は通俗的自由主義の偏った見方である

 ところで我が国の独占禁止法は、農地改革、労働組合の公認とともに1947年に戦後「経済民主化」の三大政策と一つとして創出されたが、岡田与好は1979年の著作で(註4)、独占禁止法が自由競争体制を維持発展させる目的であるのに、自由主義を標榜する財界や自民党がつねに消極的で、社会主義を標榜する革新諸政党・団体が主観的意図はともかく独禁法に積極的であるという捻れを指摘している。
 我が国では明治政府の主導のもと生み出された政商支配の資本主義が発達し、政商型独占資本の急速な発展と同業組合的統制の強化・拡大がなされた。このような風土においては、独禁法は経済力の低下をもたらす、統制立法のように受けとめられたのである。
 自由主義なるが故に独禁法に反対だという主張さえみられるが、ここに自由主義に対するいわゆる一つの誤解がある。岡田氏は、独禁法を営業の自由の制限立法として経済統制法の一形態とみなす、わが法律学界に有力な見解を痛烈に批判され、これは「独占放任型自由主義」の立場であるにすぎない。それは通俗的自由主義というもので、古典的自由主義の国家不干渉主義の一面的強調であるという。我が国では経済的自由主義といえばそのように理解されているが、英国の反独占抗争のような歴史をもたないことから偏った理解になりがちだと言うことだろう。
 もっとも、独占放任も経済的自由主義の一類型としてみることができるだろう。しかし古典的自由主義は英国の近世史をみても明らかなように、反独占の精神が基本にある。「独占放任型自由主義」は個人あるいは個別企業の自由の保障の無関心を特徴にしており、極論すると国家と個人の中間団体がいかに個人に対して抑圧的であるとしても、私的結合である限り自由であるという思想では、独占保護的全体主義になだれ込む危険性を有するという重大な問題点がある。
 その例証として岡田氏は19世紀末以来のドイツでは、わが法律学界と同じく「営業の自由」をもっぱら「国家からの自由」として解釈することによって、「営業の自由」の名において「カルテルの自由」=「独占の自由」が法的に承認・強制され、その結果個人〈および個別企業〉の自由-本来の営業の自由-の犠牲のうえに、独占資本の組織的=強権的な私的統制〈カルテル網〉が「自由な」発展を遂げ、ナチズムの前提になった。としている。具体的には1869年の北ドイツ営業令は「カルテルの自由」を保障するものと解され、1897年2月4日ライヒ最高裁判所において、カルテルの諸義務は法的拘束力をもつことが認められ、カルテルは権利とされ、企業の団結が確立され、ドイツの異常に組織的な統制力をもたらし〔それは労働組合の組織強制についてもいえるかもしれないが〕、「営業の自由」を「国家からの自由」とすることによって換骨奪胎して、「個人の自由」を失うこととなったとされている(註3)。だから法理念は重要なんですよ。それが国を破滅に導くことがある。
 逆に反トラスト法は独占放任型自由主義に反するが、反自由主義的経済統制ではない。むしろ「営業の自由」の原理に基づきうるものであり、「反独占型自由主義」と類型化できるものである。
 つまり「営業の自由」という理念に忠実であるとするならば私の考えでは、それが国家の統制であれ、企業の結合による統制であれ、労働組合による統制であれ、取引=営業制限を内容とする、統制、団結、協定、共謀にはつねに敏感に意識するものでなければならないと考えます。
 翻って考えてみるならば、営業の自由と団結禁止を不可分一体とするマンスフィールド卿の原理原則が営業の自由の理念としては明快なのである。同業者の団結も労働の団結も営業の自由にとって有害であり犯罪だという思想である。この類型の自由主義は独占放任主義と対立することになるだろう。
 原理原則論として、営業の自由は本来、独占と結合(団結)から免れる自由。取引を他者(政府・企業・組合)によって制限されることのない自由として把握されなければならない。

シャーマン法が労働組合に適用されたのは道理だ

 そうした意味で私は、シャーマン法が、起草者のシャーマン上院議員は意図していなかったが、労働組合にも適用され、鉄道ストや二次的ボイコットのような労働争議の抑止力となった点を高く評価したいのである。労働組合の本質が、本来は不法な取引=営業の制限と競争の抑止にある以上、コモン・ローのアプローチを採用したシャーマン法に適用されたのは道理で不可解な事では全くないと解釈するものである。
 
 シャーマン法第1条は「州際、外国との間の取引あるいは通商を制限する全ての契約、トラストその他の形態の団結、共謀を不法とする」ものだが、「契約」「団結」「共謀」という文言が労働組合を包含するのかという問題について、労働組合を本法の適用外におくという修正条項も検討された。ところが法案提出の最終段階で修正条項が脱落したといわれている。それは労働組合も脅威と認識されていたことを示す。
 シャーマン法が労働組合に適用された最初の事件は1893年3月25日のニューオーリンズの荷馬車馭者組合の同盟罷業と他の組合の同情罷業が、州際ないし国際間の取引商品の輸送を完全に遮断したという理由で検察側のインジャンクションを許した事例であるが(註5)、1895年のデブス判決IN RE DEBS, 158 U.S. 564 (1895) http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=158&invol=564 

は前年のプルマン・ストライキの差止命令を最高裁が゜支持したことで重要な事件です。シャーマン法の適用も消極的ながら支持されている。
 これはプルマン・ストライキ、あるいはシカゴ・ストライキとして知られる、各地で暴力と混乱が生じた著名な事件である。シカゴのプルマン寝台車会社は寝台車や展望車を製造し、シカゴに集まるすべての鉄道会社と契約して、会社の車両を旅客列車に連結して料金を徴収し営業を行っていた。1894年5月、20%賃下げの提案をめぐって労働争議となり、労使交渉は進捗せずストライキが続いていたが、6月26日からデブスを組合長とする産業別組合のアメリカ鉄道従業員組合が、プルマン車の連結した列車の取り扱いを拒否する、一種のボイコットを行った。このためプルマン車と契約関係にあるすべての鉄道会社が紛争に巻き込まれ、当時はまだ自動車輸送が発達していなかったので、州際取引商品の輸送が止まり、郵便も止まった。6月30日にシカゴ駐在の連邦司法検事は首都の検事総長に次のように報告した。「29日夜ストライキ参加者によって郵便車が止められ、機関車が切り離されて動かなくなった。情勢は次第に切迫し、あらゆる列車がとまるおそれがある。執行吏に、列車に乗り込んで郵便を守り、妨害者を逮捕し、執行代行者を雇い入れる権限を与えることが望ましい」。検事総長はこの提案を認め、時のクリーブランド大統領はインジャンクションを裁判所に申請した。その根拠は第一に憲法及び普通法の下において郵便および州際取引は連邦政府の専管に属するものであり、その保護には連邦裁判所が差止命令によって干渉する権能を有する。第二に1890年7月2日に成立したシャーマン法が州際間の営業または取引を制限する共謀は違法であると宣言され、連邦巡回裁判所にこの種の共謀を防止し差止める権限が付与されていることであった。
 全般的差止命令は7月3日に送達された。
 内容は大略して被告デブス、ハワード…ならびにかれらと団結し共謀するすべてのものに下記の行為を禁止するものあった。
 州際の旅客並びに貨物の運送人としての業務、郵便車、州際取引に従事する列車、機関車、車輌、鉄道会社の財産につき業務を妨げ、阻止しまたは停止する行為。鉄道の構内に上記の目的で立ち入る行為、信号機に対する同様の行為、鉄道会社の従業員の何人に対してでも、従業員としての義務の履行を拒みまたは怠る
よう、威嚇、脅迫、説得、力または暴力を用いて強要しまたは勧誘し、あるいはそれを企てる行為、従業員になろうとする者を同様の手段で妨げる行為、州際輸送を妨害するための共謀、団結の一環をなすすべての行為、上掲のいずれかの行為を行うよう命令、指令。幇助、助成する行為。
 しかし7月3日の状況は、ロック・アイランドの連絡駅で、2千から3千人の暴徒の群れが占拠していて、郵便車を転覆させ、すべての車輌の通過を妨害した。解散命令には応じず、嘲笑と怒声になった。さらに暴徒は数台の手荷物車を横倒しにしたため、軍隊の出動が要請された。夜9時には陸軍司令官の出動命令を出され、軍隊が到着したが、鉄道施設の破壊や焼打ちが行われ、連邦裁判所の差止命令に公然たる挑戦がなされた。しかし6日に逮捕が進行し、8日に大統領より市民は暴徒に近づかないよう告示が出された。10日にはデブスら組合幹部が逮捕され、20日には軍隊が去りストライキは終息した。
 本件のインジャンクションは妥当なものと考える。本件はシカゴという重要都市のみならず南太平洋鉄道系統がほとんど完全に止まってしまった、大きなストライキだった。鉄道の運行を妨げる行為は州際取引の自由を保護するシャーマン法に違反するとされたことでも鉄道に限らず、大ストライキに適用される可能性が明らかになったのである(註6)。 続く

(註1)谷原修身『現代独占禁止法要論』六訂版 中央経済社 2003 45~46頁
(註2)前掲書 28頁
(註3)岡田与好編『近代革命の研究』上巻 東京大学出版会1973 岡田与好「Ⅴ市民革命と『経済民主化』」
(註4)岡田与好『自由経済の思想』東京大学出版会1979 39頁以下
(註5)田端博邦「アメリカにおける「営業の自由」と団結権 」東京大学社会科学研究所研究報告 第18集
『資本主義法の形成と展開  2』東京大学出版会1972年
(註6)有泉亨「物語労働法12第11話レイバー・インジャンクション」『法学セミナー』1971年8月号

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