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2008/10/05

ロックナー判決マンセー論(15)

 ロックナー判決はもはやアンチカノンではない
 
 シリーズ前回との脈絡はなく単発的な記事です。
 グーグルで「Lochner v. New York とは」で検索すると1位で京都大学の木南敦教授の平成20年度第1回学術創成セミナーの記事http://kaken.law.kyoto-u.ac.jp/gakuso/j/activity/20record_workshop.htmlが出てくるんですが、ロックナー判決は近年再評価されつつあり、もはやアンチカノンではないと書かれてます。アンチカノンとは、重要な判決であるが、憲法修正や判例変更で規範性が否定された悪名高い判決のことですが、ドレッド・スコット判決、プレッシー対ファーガソン判決などと並んで、司法部の過ちとして扱われ、憲法学者の主流はそういう見解でした。
 つまり従来はロックナー判決で反対意見(特定の経済理論、スペンサーの社会進化論を公定するようなものと批判した)を記したホームズ判事が圧倒的に支持され、適者生存の社会進化論に基づくレッセフェール社会を形成する(私は適者生存で良いと思ってる)ものだと批判されてたが、それはフランクファーターなどの左翼急進主義者、革新主義者が言ってきたことであって、そのような中傷は古くさい見解になりつつあるということだ。
 University of San Diego School of Law のBernard H. Siegan教授(故人)が1980年にロックナー判決は憲法の正当な解釈で復活すべきだと主張した経済的自由主義者として知られており、同教授の業績が大きいと思いますが、その影響によりロックナー判決擁護者・好意的な学者は増えている。ジョージメイソン大学の デビッドEバーンスタイン教授のVolokh Conspiracy blog記事http://volokh.com/posts/1144178362.shtml#searchsiteでも明らかなことで、同教授もロックナー判決はアンチカノンでなくなりつつある。ホームズ判事の評判は急落していると書いてます。
 
 若干インターネットをみただけだが、ロックナー判決再評価の傾向はリバータリアンだけではないようだ。つまり、ロックナー判決は自らのビジネス、雇用契約の自己統治を、政府、第三者からの干渉から守った判決なのであるが、それがあったから、子どもの教育に関する自己統治を守ったマイヤー判決や、ピアース判決があり、夫婦生活の自己統治を守ったグリズウォルド判決があったとみるならば、ガンサー教授が言うように実体的デュープロセス判決ということでパン焼き労働者の雇用契約の自由を守ったロックナー判決も、避妊具を販売し使用する自由を守ったグリズウォルド判決も同類と認識してよいのだ。ロックナー判決は立法府の横暴からビジネス、雇用契約の自由、自己統治を守った趣旨としてとらえることも可能なのである。
 1938年ストーン判事のキャロリーンドクトリン(註)の解釈から生じた、市民的自由と経済的自由のダブルスタンダード、憲法革命、ニューディール体制後の枠組みを自明の前提とする必要はない。
 
 ところで、いわゆるロックナー時代について木南敦は「その時代の構想では、ポリスパワーによる権限が及ばない領域を裁判所が画定し、そのような領域ではコモンローは立法によって修正されず、裁判所がコモンローの内容を確定して、コモンローによって自由が保障される」ものとしているが、この見解がよくわからない。実体的デュープロセスでなくて、コモンローは立法によって修正されないという法の支配を体現したのが、ロックナー時代の裁判官ということですか。いずれにせよデュープロセスであれ、何であれ、そのような司法積極主義を私は否定しない。(私がロー対ウエード判決を認めるのはブラックマン法廷意見が堕胎はコモンローでは犯罪ではないと述べ、古代ギリシャ・ペルシャから歴史を論じ、中世キリスト教でも柔軟な解釈で風穴は開けられていたとした趣旨が堅実と思えたからである。)
 
 そうすると従来、非経済的実体的デュープロセス判決として、ロックナー判決と区別して扱われてきたが、コモンローで長い間認められていた特権を個人は享受すると宣明した1923年のMeyer v. Nebraska, 262 U.S. 390

http://straylight.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0262_0390_ZO.htmlの意義が重くなる。
 私はロックナー時代の黄犬契約の自由や、最低賃金法の否定も決して軽視せず高く評価しているが、マイヤー判決もロックナー時代を体現した同じ系列の判決である。それは一貫してロックナー維持の保守派であり、ニューディール立法に違憲判断をとったマクレイノルズ判事(ウィルソン任命でありながら大統領の期待に反し「頑固な保守派」のリーダーとなり「最も反動的な裁判官」とされた尊敬すべき裁判官)が判決文起草者であり、傍論で契約の自由に言及したことで明らかなことである。
 事案は1919年にネブラスカ州が公私立いずれの学校でも8年生までは近代外国語教育を許さないという州法を制定したが、福音主義ルター派教会の教派学校の教師でドイツ語で聖書物語を教えていた、ロバート・マイヤーが州法に違反しドイツ語を教えたため起訴され、同州法の違法性を訴えた事件である。マイヤーは口頭弁論で、子どもたちが教会の礼拝に出席するためにはドイツ語教育が必要があり、それを禁止するのは信教の自由をも奪うものであることを訴えた。この州法は第一次大戦参戦によるナショナリズム高揚が背景にあり、敵国だったドイツ系移民の多い中西部では感情的な迫害がみられた。不当にもドイツ語コミュニティが不穏とみなされたことである。
 マクレイノルズ判事による法廷意見は、ドイツ語教育自体の有害性はなく、同質な人民の育成を目的とする本件州法は州の権限を逸脱する。同州法は憲法修正第14条デュー・プロセス条項に反し、外国語教師の職業、生徒が知識を獲得しようとする機会、および自己の子どもの教育をコントロールする親の監護教育権を実質的に侵害すると判示したのである。職業を不当に奪われない権利、親の監護教育権の重要な先例として人権判例で多く引用される。しかしさらに重要なのは傍論で契約の自由とコモンローに言及したところである。
 すなわち修正第14条の自由とは「疑いなく、身体的拘束からの自由のみならず、契約の自由、生計を営むための職業に従事し、有益な知識の習得し、結婚し家庭を築き、子供の育てること、自らの良心の従った神への礼拝、自由人による秩序正しい幸福追求の権利にとって不可欠なものとしてコモンローが長い間認めたきたこれらの特権を享受する個人の権利」を含むことを明らかにした。
Without doubt, it denotes not merely freedom from bodily restraint, but also the right of the individual to contract, to engage in any of the common occupations of life, to acquire useful knowledge, to marry, establish a home and bring up children, to worship God according to the dictates of his own conscience, and generally to enjoy those privileges long recognized at common law as essential to the orderly pursuit of happiness by free men.
 この傍論はロックナー判決が引用する先例アルゲイヤー対ルイジアナ判決ALLGEYER v. STATE OF LOUISIANA, 165 U.S. 578 (1897)   http://caselaw.lp.findlaw.com/scripts/getcase.pl?court=us&vol=165&invol=578においてベッカム判事が「修正第14条にいう自由とはただ‥‥単なる身体の物理的拘束から自由であることを意味するだけでなく、市民が彼のすべての能力の享受において自由である権利をも含むのである。すなわち、彼の才能をすべての合法的方法によって自由に使用すること、彼の欲する所に居住し、勤労すること、合法的である限りどんな職業によってでも彼の生計を立てうること、およびどんな生活でもできまたどんな職業にでも従事することができ、そのために適当、必要かつ不可欠なすべての契約をなすこと、を含むのである」と述べていることに、付け加えて、結婚し家庭を築くこと、子供の育成や、神の礼拝といった、いわば信教の自由や、結婚の自由、家族と同居する権利といったプライバシー権の先駆となる意義を有するが、幸福追求に不可欠なコモンローで認められてきた特権を個人が享受するために司法部は砦となることを宣明した。つまりロックナー判決が「幸福追求の権利」を引き出したのである。
 ホームズ判事は実体的デュープロセスを是認しない立場なので反対意見を記し、立法部の判断を尊重してドイツ系移民迫害立法を是認した。
 
 1925年のPierce v. Society of Sisters, 268 U.S. 510 http://straylight.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0268_0510_ZO.htmlは8歳から16歳までの子どもに公立学校の通学のみしか認めず、私立学校への通学を禁止した義務教育法を定めたオレゴン州法が問題となったもので、マクレイノルズ法廷意見は、同州法は、「自己の監督下にある子どもたちの養育と教育を管理する親および後見人の自由を不当に侵害する」、および「子どもは州の単なる被造物ではない。子どもを養育し、その運命を決定する者は、子ども自身が将来担うべき義務を認識させ、その準備をさせる高度の義務を伴う権利を有している」と述べた。
 ここに至って、憲法修正14条の自由は、契約の自由、不当に職業を禁止されない権利のみならず、私立学校で子供を教育させる親の監護教育権も自由に包含された。
 

 ロックナー判決で違憲とされたニューヨーク州法の規則は1日10時間、週60時間以上の労働を規制するものですが、1日10時間、週あたり60時間はやはり短いように思う。当時ベーカリーの工場は共同住宅の地下にあった。不衛生な作業環境といわれていますが、州法による作業環境の改善は認めているわけです。伝えられるところによれば、ニューヨークのベーカリー労働者は、一日12時間週休なしで働いていたとか、週100時間働くことこともまれではなかったといわれます。1920年頃まで鉄鋼労働者が一日12時間週休なしだったし、南部の繊維労働者は1日13~14時間労働だったとされてますから、決して長時間ではありません。住み込みで働いていたのですから、60時間とすると1日平均8~9時間にすぎなくなります。週休なしで働くほうが、毎日一定のペースで変わらず、健康的なのですよ。問屋制家内工業の時代は、労働と生活が未分離で労働時間で働く観念が希薄だったと同じように、零細企業のベーカリーで住み込みで働いていたのですから、時間規制そのものがナンセンスと言うほかない。
 第三者が干渉すべきことではないです。パン屋は、鉱山労働者のような消耗の激しい肉体労働とは違います。一般的職業です。1日8~9時間じゃものたりないし、勤勉とはいえないでしょう。慣行どおり毎日12時間働きたい労働者の雇用契約の自由を侵害するものである。
 ベッカム判事の法定意見では言及していませんが、コモンローは、営業の奨励と誠実な勤勉さの奨励をパブリックポリシーとしている以上、このような規制立法はパブリックポリシーに反するのです。個人の労働力処分、労働力取引の制限自体が、コモンローの営業制限の法理に反する余計なお節介です。立法府が社会改良のために労働時間を規制したいのかもしれませんが、このような設計主義的社会改革はろくなものはなく、個人の自由と、個人行動の正義を否定するものである。
 
 近代外国語を教えてはいけない。公立学校への強制と同じように、このような雇用契約の制限も立法府の横暴である。ビジネスで成功したした人は仕事中毒といえる人が多い。労働時間の制限は、より良き人生と誠実な勤勉さという倫理を否定し、、幸福追求に不可欠な自由を侵害するものである。
 
 引用参考文献
Answer.com「 Lochner v. New York」http://www.answers.com/topic/lochner-v-new-york 
 
宮下紘「プライヴァシーという憲法上の権利の論理」『一橋法学』4巻3号 2005-3http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/8665
山口亮子「親の権利についてアメリカにおける家族のプライバシー議論からの一考察」http://law-web.cc.sophia.ac.jp/LawReview/contents/4803_04/4803_04yamaguchi.htm

(註)1938年のカロリーヌ判決(混入ミルクの州際通商を禁止する法律違反で起訴された会社が当該法律のデュープロセス違反を争った事件で、ストーン判事は、経済規制立法に対する強度の合憲性の推定を前提とする合理性基準を打ち出した。)

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