アメリカ社会左傾化の危機Card-Check Agreements
Employee Free Choice Actについては全米独立企業連盟(NFIB National Federation of Independent Business)も当然強く反対してます。http://www.nfib.com/page/cardCheck.html
アメリカ合衆国では1880~1930年に4300件のレイバー・インジャンクションが発せられました。とりわけ1920年代にはストライキの25%に差止命令が発せられ、秩序の維持と労働組合の抑圧に大きな効果がありました。第一世界大戦への戦時協力としてストを禁止する見返りとしてウィルソン政権が団体交渉を促進する政策を取りましたが、20年代は反労働組合の全米製造業者協会によるオープンショップ運動もあり組合の組織率は低下していきました。当時は団体交渉権なるものは保障されてない。組合を交渉相手とするか否かは経営者の判断でした。デトロイトもオープンショップの健全な都市であり組合の組織化を抑止してました。
アメリカで産業別組合が台頭したのは30年代以降です。UAWが結成したのが1935年であり、GM・クライスラーが組合を承認せざるをえなくなり団体交渉を行ったのが1937年でした。
20年代のように低い組織率で推移していればアメリカは健全な社会でした。ところがフランクファーターのような左翼急進主義者が反インジャクション法を仕掛けて、組織労働者の味方をしました。赤い30年代と言いますが、1932年ノリス・ラガーディア法。これは反インジャクション法、平穏で暴力的でない労働組合活動を保護し、黄犬契約の裁判上強制力をもちえないこととし、特に労働紛争への連邦裁判所の差止命令を制限することにより、全米製造業者協会のオープンショップ主義とレイバーインジャンクションの多用により20年代に著しく衰退した労働組合を生き返らせ財産権を否定する超悪法でした。
1935年のワグナー法。これは民間企業の団結と団体交渉を推進、組織労働者保護のため雇用主による不当労働行為の禁止を規定した超悪法です。
きわめて悪質で誤った労働政策がなされましたが、、産業別組合を台頭させたもう一つの要因が、大恐慌による失業者の増大です。1932年6500社の調査ではフル稼働体制を維持しているのは僅か26%に満たず、週5日以上操業している企業は28%、工場労働者全体の56%が通常の59%の時間しか働けないパートタイム労働者だった。USスティールは1929年に22万5千人の労働者を雇用していたが1933年4月には完全就業者がゼロになり、パートタイム労働者だけになった。失業者と罷業者の団結でマスピケッティングに動員されても、以前はレイバーインジャンクションという手段がありましたが、ノリス・ラガーディア法により差止命令に歯止めがかけられたこと。労働者がストライキやピケッティングによる圧力行動をかけることが容易になり、ワグナー法で団体交渉の奨励が産業平和のための国策とされたためです。これは自由を否定する反アメリカ的な政策だと私は思います。
1942年に設置された全国戦時労働委員会は、戦争協力のため労働組合にストライキを放棄させる一方、労働協約締結期間中の組合離脱を禁止し、それを保障するためのチェックオフを導入した。組合の組織維持と拡大は容易になり、労働組合員は1941年の1020万人から、1945年の1432万人に増加し、アメリカの産業別組合は、ニューディール立法で存立基盤を与えられ、戦時中の労働組合保護政策により強力化しその地位を確立させたのである。
このように1935年ワグナー法は団体交渉を推進し労働組合に権力を与えました。しかし1947年のタフトハートレー法 は強くなりすぎた労働組合の権力を削ぐための ワグナー法の修正であリ、全米製造業者協会、共和党、南部民主党、組合不在企業により推進され、トルーマン大統領の拒否権発動を覆して成立した。排他的交渉代表制度という枠組み自体はワグナー法を継続するが、ワグナー法の「団結する権利、労働団体を結成・加入・支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉を行う権利、および、団体交渉またはその他の相互扶助ないし相互保護のために、その他の団体行動を行う権利」に対し、「それらの行動のいずれかを、またはいずれも行わない権利を有する」(7条) と定め消極的団結権、団体行動を行わない権利を労働者に付与して、労働組合主義奨励ではなく、中立立法としたのである。
私は、ワグナー法を廃止するのが最善だったと思いますが、1947年タフトハートレ-法によって、一応アメリカ社会は自由社会として比較的健全なあり方に戻ったと言って良いと思います。
実際よく知られている、アメリカの代表的な企業の多くは組合不在企業です。IBM、マイクロソフト、ウォルマート、インテル、プロクター&ギャンブル、コダック、ヒューレットパッカード、シスコシステムズ、デル。
組合不在企業には良い企業文化があります。オープンドアーポリシー、シングルステータス、人当たりの良くて風通しの良い企業文化。こうした企業が組合不在であるのも、タフトハートレー法のおかげです。
労働組合は、より組織化しやすい法律に改正しようとしてます。Employee Free Choice Actによってタフト・ハートレー法の中立立法から、あの忌まわしいニューディール時代のような団体交渉奨励型の政策推進に転化することになりかねません。
もしウォルマートが組織化されれば時給ワーカーの賃金は3ドル賃上げするでしょう。しかしウォルマートの優れたエンパワーメント型の文化は失われ、三流企業に転落するでしょう。レーバーコストの増大で競争力を失うでしょう。
アメリカ合衆国はついに民主主義を否定し葬り去ります。サッチャー首相は、労働組合民主化のために、スト権投票等の郵便秘密投票と第三者の監査を義務づけました。集会で挙手による多数決では扇動されるからです。多数決は秘密投票がもっとも公正なあり方であることは言うまでもないです。署名と無記名秘密選挙では違うんです。職場で赤い羽根の募金があれば、払いたくなくてもついつい募金したりします。署名も同じことで、威圧や圧力がきくのです。
ところがほとんど左翼と思われる次期大統領オバマは組合設立の可否を問う無記名秘密投票の否定に賛同してます。カードチッェクだけで組合が交渉代表となれる制度に変えようと言うわけです。
労働組合によって組合設立に署名しない従業員は、威圧され、ハラスメントされ、つきまとわれるでしょう。組合にとっては選挙で戦うより組織化が楽になります。ターゲットは署名しない従業員です。一人一人て落とせば良いわけです。威圧して、脅してすかして。根負けして署名する従業員が出るでしょう。この法案が成立すると組合に無防備な中小企業は相当荒らされると言われてます。
より深刻な問題はこの法案では使用者側に組合に加わるべきでないかを労働者に説明する機会がなく、強制仲裁が労働組合に有利とされており、労働組合側に加担した立法であることです。
Employee Free Choice Actは従業員自由選択法というのは偽りです。従業員を組合の圧力に晒して、自由な選択の機会を奪います。ビジネスにとっても従業員にとっても悪い法案です。しばらく共和党優位の時代が続いていたので油断していました。組合を寄せ付けなかった優良企業も安閑としてはいられません。巨悪労働組合は攻撃を開始します。古典的自由主義・リバータリアンはこの法案が通過すると窮地に陥ります。猛烈な反撃が必要です。
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