感想 原田英生『アメリカの大型店問題』
有斐閣2008年12月刊行の本を買いました。 私はウォルマート絶対支持です「ウォルマート絶対支持論(1)http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2007/02/post_26c6.html」
。ウォルマートの企業文化 は卓越しておりすばらしいと思います。労働組合や左翼の反ウォルマートキャンペーンに反対です。
ざっとみたところ、この著者は基本的にウォルマートの経営に批判的な立場であり、労働組合の反ウォルマートキャンペーンに近い見解のようである。従って不愉快な著作ではあるが、いわゆるウォルマート問題の論点を網羅的に解説し、ウォルマートの企業文化の特質を解明している点で資料的価値はあるので買った。この本はバランスを欠いているので、ウォルマートに好意的な論者、鈴木敏仁『誰も書かなかったウォルマートの流通革命』:(株) 商業界発行2003年も併読することを勧めます。
著者はウォルマートの生産性の上昇と賃金の上昇が大きく隔たっているビジネスモデルとして批判しますが、私は逆にそれゆえ優れたモデルだと考えます。レーバーコストをかけないで生産性を向上するというのは経営者の鑑でしょう。
著者はウォルマートの企業文化の特質として、サム・ウォルトンが事業を興した土地、本社所在地(ペンドンビル)であるオザーク台地(山地)の風土を挙げています。つまりミズーリ南西、アーカンソー北西、オクラホマ東部の地域ですが、合衆国のほぼド真ん中です。この地方は、1930年代のニューディールや50年代後半60年代の公民権運動とその結果の改革とも無縁な土地だった。本物の田舎なのです。アーカンソー州の農村地帯は所得も生活費も全米の平均以下である。(191頁以下)。私が思うにオザーク地方に起源するからこれだけの企業になったということだ。つまり著者が言うように、「ウォルマートの経営管理の気風も金銭的報酬体系も20世紀の規制、例えばワグナー法(全国労働関係法)はもちろん、賃金関連法、失業保険、時間外手当や人種・性別・年齢・障害等に関する人権法等に対してアレルギー反応を示すような世界観でつくられている。(194頁)」
私もこれらの規制にアレルギー反応を起こすウォルマートと同じ価値観である。著者は労働関連法と反対の立場セにあるウォルマートを無骨と見なすが、私はウォルマートの世界観が素朴で純粋なので好きなのである。
著者はウォルマートの企業文化の中核に反労働組合がある。団体行動を蔑み、「働く権利」を重視する深南部州を起源としているためと言うが、それはその通りでしょう。
ブルーステートメガロポリスのリベラルな地域から見ると、ウォルマートは「ハイテクを駆使した奇っ怪な田舎者」ということになるわけだ。
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