9037 平尾武久「 内部請負制の展開と労務者管理の歴史的性格--産業資本確立期のアメリカ鉄鋼業を中心として」 『経済と経営』12巻3号1981
1892年ホームステッドストライキの結果、組合不在工場となった意義を説明する前提となる論文。
クラフトユニオン(合同 鉄鋼労働組合)による内部請負制から、資本に直接雇用される職長による内部請負制への転換の意味を説明している。
1860年代以降の中西部鉄鋼業はUnited Sons of Vulcun(73年前半まで)及び合同 鉄鋼労働組合(1976年以降)による内部請負制(親方請負的労働関係)による間接的労務管理体制として企業内労使関係を編成していた。
クラフトユニオンの職種別組合の間接労務管理とは、労働組合は組合員に義務づけた標準的な技能水準、標準的な労働力の支出量、標準日賃金率を規制する。労働力の質・銘柄は賃金率に体現される。作業の段取り、人の配置、技能の習得、作業量の決定は熟練労働者を中核とする職種内部の自律的機能である。
United Sons of Vulcunというクラフトユニオンの成員は厳格に熟練労働者という排他的組織で、万能熟練労働者が親方となり全行程の作業を統括する。さらに技能養成、昇進、賃金支払いまで労務管理機能を遂行し、73年恐慌まで製鉄業の支配的な生産形態として確立。合同鉄鋼労働組合は United Sons of Vulcunを継承したクラフトユニオンであるが、労働組合の規制力が及ぶ内部請負制のもとでは工場内装置、機械体系の大型化と生産技術の改良によってのみ労働能率向上をはかることは困難だった。管理者は技術的知識に優れていても、職務遂行の内容、作業方法を細部まで把握していなかった。従って人員配置や賃金決定の能力はなかった。
合同鉄鋼労働組合は熟練職種を成員とする排他性を堅持し、熟練職種の管轄権を明確にし、労働貴族層の集団内統括力を強化することに主体的機能を見いだしたが、しかし製鋼部門飛躍的発展で、先進的な大規模工場では直接雇用された圧延工によって担われた職長層が相対的高賃金と引き換えに作業集団の雇用・監督・賃金支払いを行うようになったことから、クラフトユニオンの内部請負親方の地位は弛緩し崩壊の過程をたどることとなる。
以上 引用・言い換え
私の意見-労働組合が取引を制限する刑事共謀団体と認識される以上、営業制限の法理・共謀罪の厳格適用で潰して良かったはず。にも関わらず労働組合による間接管理を許容したのは、生産技術の実態から直接管理が困難で、クラフトユニオンの親方請負労働関係を許容せざるをえなかったためである。しかし、労働組合が生産過程を支配するのは大型装置、機械を投入しても効率的でなかった。カーネギーは労働組合を追い出し、組合不在工場で現場末端組織としての職長による内部請負制への転換を模索した。それは正しいと考える。
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