カード アメリカの鉄鋼業2
平尾武久「内部請負制の衰退と直接的労務管理体制への転換--1890年代のアメリカ鉄鋼業を中心として 」『経済と経営』札幌大12巻4号1982
1892年7月のホームステッド鉄鋼所の労働争議、カーネギー製鋼会社の再編成を媒介として、‥‥近代的な労務管理の機構を形成させ中西部鉄鋼資本による反労働組合主義的労務政策の展開をもたらし‥‥合同鉄鋼労働組合のビジネスユニオニズムは崩壊し、巨大鉄鋼諸工場から完全に締め出され、いわゆる「労働組合不在の時代」Non-unionEraを迎えざるをえなかった。
助手制度から企業内技能養成制度への転換
労働組合時代の職種間排他性を保障する入職規制の役割を担う助手制度では独力で内部請負親方の支配のもとで見よう見まねの経験を積むことによる熟練技能の養成であったが、鉄鋼資本主導の企業内技能養成が行われるようになり、先進的大規模鉄鋼所が年に滞留する多くの若年労働者の供給によりれ低廉な熟練労働力を大量に確保する客観的基盤を形成し、職長を中心とする内部請負制は動揺・衰退し、間接労務管理は転換をせまることになった。直接的労務管理体制への転換である。つのり、近代的賃労働者としての職長層の形成と「直用制」の基での熟練労働者を軸とする職場作業集団の編成への組み替えだった。
熟練労働力の価値の低下により賃金を切り下げる労務管理が可能となった。
アメリカ鉄鋼業において1890年代以降、労働組合を締めだしていた時代があった。
Non-unionEraと言うのである。
以上、引用言い換え
私の見解を加えると
いわゆる「資本専制的労務管理」の時代で、賃率の切り下げ[1892-1907年では圧延工で28.72%、第一剪断工は41.20%の切り下げ]と労働時間の延長[8時間労働から12時間労働休日なし]が指摘されているが、決して悪い時代として描くべきではない。ボーナスシステムによる利潤分配制度により、内部請負親方による恣意的な決定を排除したし、フリックの賃金決定方式は、個々の労働者に提示する機構をつくり、個別契約主義的な企業内賃金構造を追求したのは先進的というが現代的である。むしろ労働組合時代の内部請負親方が1日100ドルの収入を得ていることが異常なのである。
1892年~1920年ぐらいまで鉄鋼は1日12時間労働休みなしになった(出所はこの論文ではない)。賃金を切り下げたうえに労働時間を増加させたのである。週84時間労働だが、それくらいはどうということはないのである。現代は労働者を過剰に保護しすぎる。
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