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2009/05/06

林=プレスコット説に思う(2)ドイツに倣う政策はろくなものがない

   1990年代の日本経済低迷「失われた10年」の要因とは−−「時短」により,週当たりの雇用者平均労働時間が,バブル期前後で44時間から40時間に低下したこと,もう一つは,生産の効率性を図るTFP(total factor productivity)の成長率が,90年代の中ごろから低下したことである−−という 林文夫教授とプレスコット教授による有力な説がありますが、労働基準法の改訂が時短の原因であると同時に経済低迷の要因であることは明白であるにもかわらず、性懲りもなく、政府が少子化対策・ワークライフバランス等に口実を変えた時短推進政策がとられているのは全くばかげたことである。
 OECD (2007) によれば, 雇用者の年間平均総労働時間は, ドイツが1436 時間ともっとも少なく、わが国は1784 時間であり, 米国1804 時間より少ない PDF http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/06/pdf/049-061.pdf
 
 そもそも時短の契機というのは、1984年ドイツ金属産業労組(IGメタル)とゲザムトメタルの労働時間協約交渉において戦後最大規模のストライキが打たれ、6月24日に特別仲裁委員会の合意提案を双方が受け容れ協約上の週労働時間を38.5時間としたことであった。
 1987年と90年にも労働時間短縮と雇用保障をパックにした雇用保障協定が締結され、1995年10月から労働組合の目標だった週35時間制を実現した(註1)。
 労使関係のドイツモデルは使用者団体の高い組織率と産別労組による集権的な構造の団体交渉・協約自治システムと強い労働協約の拘束力を特徴としている。労働協約法により企業協定より産別労組との労働協約が優位する。労働組合にハイアラーキー構造があって金属労組(IGメタル)が主導する。同労組の組織率の高さから強力なパターンセッティングがなされる(註2)。政府は労使交渉に干渉しないが、労使が申請した場合、連邦労働社会省が一般的拘束力宣言を発することにより、労働協約を該産業の未組織労働者にも拡張適用させて労働条件を規制している。連邦労働社会省によると、07年7月1日現在、ドイツ全体で有効な労働協約6万7300のうち、一般的拘束力宣言を受けている協約が448ある。PDF http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2009/documents/050_06.pdf
 
 産業レベルの労使団体による団体協約自治というシステム、それは20世紀の最初の三十年間、ヨーロッパ社会が社会主義と労働組合運動の高揚に対応して企業横断的な雇主協会を結成し、この協会が、財産権と経営権を組合が支持するという約束と引き換えに、組合を容認し産業レベルの団体交渉に応ずるようになったという経緯によるものであるが、このシステムを私はもっとも嫌悪する。産業平和の確立のためだというがドイツのような労働協約の強い拘束力の体制は労働の自由と自由企業体制に反するものであるから。
 
 むろん、80年代の時短はドイツが持続的に経済成長し好調だったことを背景としている。他のOECD諸国がインフレと失業に悩んでいたがドイツと日本が良好なパフォーマンスを演じていた。なぜ、80年代までドイツは好調だったのか、近藤正基が引いているハッセル説がわかりやすい(註2)。それは低生産性産業が拡大しなかったことである。ドイツの賃金構造が集権的労使交渉制度により平等的であり、賃金の低い低生産性部門の雇用創出を抑えた。又、早期退職制度や寛大な失業保険により、低生産性部門のコストが外部化が行われたとする。日本は、企業内組合が欧米の産業別組合と違ってFA(ファクトリーオートメーション)ME(マイクロエレクトロニクス)の導入に協力的で技術革新が進んだので80年代は好調だった。
 しかし、それは相対的な優位に過ぎなかったわけである。90年代以降ドイツ経済は低迷し、経済成長率の低下、失業率の増大、財政赤字の増大で「ヨーロッパの病人」と呼ばれるようになった。日本も90年代低迷し、アングロサクソン型資本主義が明白に優位となり、ステークホルダー(利害関係者)重視型のドイツ、日本は良くない制度ということになった。ドイツモデルについていえば広域労働協約(Flaechentarifvertrag、産業別・地域別に一律に適用される団体協約)といった硬直した労働条件規制が自由な企業の進展に弊害になっているとみるべきだろう。
 金属産業労組(IGメタル)は2003年の旧東独地域の週35時間制要求のストライキで50年ぶりの敗北となりhttp://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2003_09/germanyP01.html、ドイツでは時短は見直しの方向になった。2004年にはジーメンス、ダイムラークライスラーの一部事業所で週40時間制が導入された。IGメタル本部は強く反発したが、ジーメンス社は労働時間延長がなければハンガリー、中国へ工場を移転せざるをえないとしたため、労組も妥協ざるをえなかった。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_8/germany_01.htm
 
 このように、ドイツではIGメタルなどの強力な産別労組主導で協約自治システムにより時短がすすめられた。我が国はドイツのような団体協約自治システムはないのに、政府主導で、労使交渉ではなく労働基準法の改正により週休2日制の定着が図られ、1992年は「労働時間の短縮の促進による臨時措置法」が設定され、「労働時間短縮推進計画」において2005年までに年間総労働時間1800時間の定着・達成が政府目標とされるなどして時短が進められた。もともと労働組合が組織されておらず時短を望んでない中小企業まで促進された。企業内組合や組合不在の中小企業、あるいは低生産性企業では実現できない時短政策を政府が産別労組の役割に代わって推進する、非常に筋の悪い政策であったと思う。結果的にも日本経済を低迷させたことで、犯罪的な政策といえるだろう。

 なるほど、ドイツにおいて時短は推進したが、ドイツに倣う必要など全くなかったのである。

(註1)和田肇「ドイツにおける労働時間協約政策の変化--金属産業労働時間弾力化協約を素材として」『名古屋大学法政論集』  (通号 167) [1997.01] 

(註2)近藤正基「 現代ドイツにおける労使関係の変容(1)統一以降の協約自治システムの展開に関する政治経済学的考察」『法学論叢』
   163(4) [2008.7] 

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