カード 平和第一交通事件・福岡地裁判決平3・1・16その2
労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許諾しないことが、当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められる特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し、規律ある業務の運営体制を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限(施設管理権)を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許されるものということはできないと解すべきである。
そこで、本件について検討するに‥‥組合が掲揚した組合旗は、昭和六一年六月一〇日ころにはその数が二〇本に及び、原告事務所の美観を著しく損ない、通行人や乗客に奇異な印象を与えるものであることが認められ、また、掲揚されている旗は、原告の従業員又は通行人、乗客の目に直ちに触れる状況であり、ひとたび掲揚されると組合による撤去は期待できず、視覚を通して常時組合活動に関する訴えを行う効果がもたらされ、原告は‥‥タクシー業者であり、経営状態が‥‥赤字に終始していた会社で、経営改善が急務とされていたのであるから‥‥組合旗が右のような状態で掲揚されていたことは、営業上も軽視することができない問題であったというべきであり‥‥このような状況において原告が、原告事務所内の秩序を保持するため組合に対し組合旗等を掲揚することを禁止し、その旨の通告を行うことは、原告の施設管理権の範囲でやむをえない処置である‥‥‥組合に対し、幾度か組合の旗掲揚を注意または禁止する旨の注意または警告をしていたにもかかわらず、組合が依然として組合旗等の掲揚を中止しないために、やむをえず掲揚されていた組合旗等を自力で撤去し、無断で組合旗を掲揚していた組合員に対し、再発防止のための責任追及及び処分の警告を発したものであって‥‥これらの措置は、職場の秩序を維持し企業イメージの低下を防止するために必要な施設管理権の行使であって、組合が企業内組合として団結を示すために掲揚することが必要であることを十分考慮に入れても、それゆえに組合が原告の施設を使用できる当然の権利を有するものではなく、原告が組合の組合旗掲揚を受忍する義務もないというべきである。
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