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2009/07/31

カード 社団法人全国社会保険協会連合会(鳴和病院)事件 東京地裁平8・3・6(使用者による組合旗の撤去は不当労働行為にあたらない)

  『労働判例』693号
  
 証拠(証拠略)によると、本件組合旗は、縦数十センチメートル、横約一メートルで、掲揚場所も正面玄関のほぼ真上に当たる屋上であり、歩道からの鳴和病院構内に入る地点からも、また、道路を隔てた向かい側からも見通せる非常に目につきやすい位置に掲揚されたことを認めることができる。
 ところで、使用者は、施設管理権を有しているのであるから、施設の使用を制限することは、これが施設管理権の濫用と認められる特段の事情がない限り適法であって、施設の使用を制限するに必要な使用者の措置は原則として支配介入とはならないと解すべきである。
 前記争いのない事実に掲記したところによると、補助参加人は、鳴和病院との間で賃金引上げ等に係る団体交渉が行われていた昭和五七年四月一四日、四階建の鳴和病院本艦屋上に無断で組合旗一本を掲揚したため、翌一五日、鳴和病院が補助参加人に対し掲揚されている組合旗を撤去するよう文書をもって申し入れたが、補助参加人はこれに応ぜず、同月二七日、重ねて組合旗を撤去するよう申し入れるとともに撤去されない場合には鳴和病院において撤去する旨通告したうえで、翌二八日、これが撤去されていなかったため、これを撤去したというのである。このことに右認定事実を総合考慮すると、組合旗の掲揚されたのが来院者も目につきやすい場所であり、鳴和病院は、本件以前において自ら撤去に及んだことはなかったというものの、掲揚される都度補助参加人に対して撤去を申し入れており、掲揚することを容認する態度を示したことはなく、本件撤去に際しても三度にわたって撤去するように求め、三度目の申し入れには撤去されない場合には鳴和病院において撤去する旨警告しており、当時の労使の状況を見ても団体交渉が継続中であったというのであり、補助参加人において殊更組合旗を掲揚する必要性は乏しかったと認められるのに対し、鳴和病院においては組合旗を撤去させる必要性が大きかったと認めることができるのであって、施設使用を許可しないことが施設管理権の濫用と認められる特段の事情があると到底認めることができない。
 したがって、本件命令のうち、本件組合旗の撤去申入れ及び撤去をもって労働組合法七条三号に該当しないとした部分は相当であり、この点に関する補助参加人の主張は理由がない。

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