カード ミツミ電機事件 東京高裁 昭和63年・3・31判決その2
組合活動規制について比較衡量論なので労働組合寄りでありワースト判決である。しかし、労働組合寄りの判決でも、これよりも労働組合寄りの「受忍義務論」に立っているのが、東京都の管理職である。従って細かく分析する意味がある。
もっとも、本件のようないわゆる企業内組合は、企業の物的施設を組合活動の主要な場とせざるをえないことから、争議中においても、もし組合活動に物的施設を利用する必要があるのに(もっとも、単に利用の必要性が大きいということから、たやすく組合側に利用権限が生じたり、企業の側に利用受忍義務が生じたりするものでもない)、使用者の許諾がない限りこれを利用し得ないとするときは、組合活動を困難にし、ひいては労働者の団結権、争議権を実質的に制限することとなる恐れがあるから、争議中の組合の物的施設利用に対する懲戒権の行使の当否を判断するに当たっては、争議の経過、組合・使用者双方のこれに対する対応、物的施設の利必要性の程度、現実の利用の態様、それによって使用者の被る損失等を総合して、当該物的施設の無断利用がなお正当な労働組合活動として是認され得る余地がないか否かを具体的に判断することを要するというべきである。
本件において、会社が組合又は従業員に会社・施設の無許可使用を禁じあるいは使用の範囲、態様を予めす一般的に定めた就業規則又は労働協約が存する証拠はないが、組合の集会、構内のデモ、泊まり込み、掲示板所定の場所以外のビラ貼付、門、柵、屋上等の赤旗の設置等は明文の禁止規定がなくとも、条理上、会社の所有し管理する権限を侵害するものとして、異なる定めのない限り禁じられると解されるばかりでなく‥‥‥‥組合は昭和四五年中から、集会、デモ等を会社施設(庭を含む)内で行うときにその都度会社の使用許可を得ており、、四六年春闘においても争議行為が激化するまではそうしていたのであり、例えば調布工場食堂については五月六日から二二日まで昼休みを除く就業時間中組合が使用することが許可され、また本件争議中組合がが社屋に懸垂
幕を垂らすことについては特別に許可を与えられていたことが認められるので、一般的には、会社の建物、庭等を集会、デモ等の目的に使用することについては会社の許可を要し、前記懸垂幕以外の赤旗を設置するごとき行為も禁止に触れるものであることは、組合も知悉していたことが明らかである‥‥ストライキ中、組合事務所以外の会社施設内への立入り、社屋内での泊まり込み等についてはしばしば会社の文書による抗議もなされ、ビラ貼り、赤旗掲揚、泊まり込み等についてはその場で職制、守衛が制止するのを振り切ってなされたことが認められるので、これらの行為は、会社の意思に反してなされたことが明らかである。
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