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2009/08/16

カード 組合活動-施設管理権関係判例

ケース
国労札幌地本事件・最三小判昭54・10・30(ビラ貼り×)-指導判例
三菱重工業事件・東京地判昭58・8・24(無許可職場集会・ビラ貼り×)
全逓新宿郵便局事件・最三小判昭58・12・20(無届職場集会×)
明治乳業事件・最三小判昭58・11・1(昼休み時間中の無許可ビラ配布○)
全逓長崎中央郵便局事件・長崎地判昭59・2・29(無許可職場集会×)
和進会事件・京都地判昭59・7・5(ビラ貼り×)
全逓城東郵便局事件・東京地判昭59・9・6(無届職場集会×)
全運輸近畿支部事件・最高二小判昭60・11・8(出勤簿整理時間にくい込む職場集会×)
北九州交通局労働組合事件・最一小判昭63・12・8(超過勤務拒否闘争×)
全逓城東郵便局事件・東京地判昭59・9・6(無届職場集会×)
済生会中央病院事件・最二小判平元・12・11(職場集会×)
オリエンタルモーター事件・最二小判平7・9・8(職場集会×)
倉田学園事件・最三小判平6・12・20(始業時前の無許可ビラ配布○)

1 国労札幌地本事件・最三小判昭54・10・30『労働判例』329号12頁
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/F7BDE13CC92CFC2A49256A850031202A.pdf
(ビラ貼りを理由とする懲戒処分を適法とした指導的判例)
事件の概要(抜粋)
被上告人Aは、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌支部札幌駅分会の組織部長の地位にあつたものであるが、昭和四四年四月一〇日ころからB助役より組合掲示板以外の施設へのビラ貼付を禁止されていたのにもかかわらず、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ操連詰所において、他の職員が勤務中であるのに、自己が日常使用しているロツカーの扉の表面に、「一六万五千人の人べらし合理化をはね返そう」及び「七〇年安保にむけ春斗を力つよく斗いぬこう」と白地に青、赤色で各印刷された国労作成のビラ二枚を並べて貼付した。そして、ちようど同被上告人の右行動を現認した右B助役をはじめC助役、D、E各運転掛らが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。」と注意し、貼付された二枚のビラをはがすよう促したが、同被上告人はこれを無視して応じなかつたため、右D、Eの両名がやむなく一枚ずつビラをはがしたところ、同被上告人は、「何をするんだ。組合の財産に手をかけるな。」といつて両名の手からビラを取り戻し、Bらが目前で再三にわたつて制止したのにも構わず、再度前同様の方法でロツカーにビラを貼付したが、その際、Eの肩を押し、あるいはビラをはがそうとしたBの手を払いのける行為におよんだ。被上告人Fは、上告人の職員で、札幌駅構内作業掛の職務に従事し、国労札幌支部札幌駅分会執行委員の地位にあつたものであるが、被上告人Aと同様、札幌駅分会の決定に従い、同月一四日午前八時四〇分ころ前記操連詰所において同所備付けのロツカーの扉の表面に国労作成のビラを貼付しようとし、これを認めた前記のB、Cらから「ビラを貼つてはいけない。」と再三ビラ貼りを中止するよう指示されたのにこれを全く無視し、被上告人Fはじめ一〇名の国労組合員である上告人の職員が同職場において日常使用することを許されているロツカー合計一〇個の扉の表面に、札幌地本に委託されたと称し、被上告人Aが貼付したと同内容のビラあるいは「新賃金三万三千円要求をストでたたかいとろう」、「ストで大幅賃上げ獲得首切り合理化粉砕」などと印刷されたビラをロツカー一個に二枚ずつ(ただし、一個について一枚のみのものがある。)を並べて、合計一九枚を紙粘着テープで貼付した。
  更に、被上告人Fは、同月一六日の午前八時四〇分ころにも、前記場所において前同様の方法で備付けロツカーにビラを貼付し始め、これを発見したB、Cらが同被上告人に対し「ビラを貼つてはいけない。はがしなさい。」といつて再三にわたつて制止したのに、「貼つて何故悪いのだ。当然の権利だ。」と返答し、Bらが貼付されたビラをはがそうとすると、「組合のものにさわるな。」といいながらBらの手を払いのける行為におよび、結局、札幌地本に委託されたと称し、国労の組合員である三上潔操連掛ら三名の者が職務上使用を許されているロツカー三個の扉の表面に各二枚ずつ並べて合計六枚のビラを前同様の方法で貼付した。(後略)

判断(一部略)-思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであつて、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもつて定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である
 ところで、企業に雇用されている労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されている場合が少なくない。しかしながら、この許容が、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然であり、したがつて、当該労働者に対し右の範囲をこえ又は右と異なる態様においてそれを利用しうる権限を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由はなんら存しないから、労働組合又はその組合員であるからといつて、使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限をもつているということはできない。もつとも、当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織される労働組合(いわゆる企業内組合)の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定することができないところではあるが、労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは既に述べたところから明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである。右のように、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設であつて定立された企業秩序のもとに事業の運営の用に供されているものを使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されないものというべきであるから、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで叙上のような企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであつて、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。
 二 そこで、以上の見地に立つて、本件について検討する。
  原審が確定した前記の事実によれば、本件ビラの貼付が行われたロツカーは上告人の所有し管理する物的施設の一部を構成するものであり、上告人の職員は、その利用を許されてはいるが、本件のようなビラを貼付することは許されておらず、また、被上告人らの所属する国労も、上告人の施設内にその掲示板を設置することは認められているが、それ以外の場所に組合の文書を掲示することは禁止されている、というのであるから、被上告人らが、たとえ組合活動として行う場合であつても、本件ビラを右ロツカーに貼付する権限を有するものでないことは、明らかである。そして更に、前記の事実によると、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、賃金引上げ等の要求を組合員各自がみずから確認し合つてその意思を統一し、もつて組合の団結力の昂揚をはかり、あわせて上告人当局に右要求をアピールする等のために、国労のいわゆる春闘の一環として行われた組合活動であり、上告人の許可を得ないでされたものであるところ、右ロツカーの設置された部屋の大きさ・構造、ビラの貼付されたロツカーの配置、貼付されたビラの大きさ・色彩・枚数等に照らすと、貼付されたビラは当該部屋を使用する職員等の目に直ちに触れる状態にあり、かつ、これらのビラは貼付されている限り視覚を通じ常時右職員等に対しいわゆる春闘に際しての組合活動に関する訴えかけを行う効果を及ぼすものとみられるのであつて、このような点を考慮するときは、上告人が所有・管理しその事業の用に供している物的施設の一部を構成している本件ロツカーに本件ビラの貼付を許さないこととしても、それは、鉄道事業等の事業を経営し能率的な運営によりこれを発展させ、もつて公共の福祉を増進するとの上告人の目的にかなうように、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する、という上告人の企業秩序維持の観点からみてやむを得ないところであると考えられ、貼付を許さないことを目してその物的施設についての上告人の権利の濫用であるとすることはできない。本件ビラの貼付が被上告人らの所属する国労の団結力の昂揚等を図るのに必要であるとしてされたものであり、ビラの文言も上告人その他の第三者の名誉を毀損しその他不穏当にわたるものがあるとまではいえず、剥離後に痕跡が残らないように紙粘着テープを使用して貼付され、貼付されたロツカーの所在する部屋は旅客その他の一般の公衆が出入りしない場所であり、被上告人らの本件ビラ貼付により上告人の本来の業務自体が直接かつ具象的に阻害されるものでなかつた等の事情のあることは、先に判示したところからうかがい得ないわけではないが、これらの事情は、いまだもつて上記の判断を左右するものとは解されないところである。したがつて、被上告人らの本件ビラ貼付行為は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、上告人の企業秩序を乱すものとして、正当な組合活動であるとすることはできず、これに対し被上告人らの上司が既述のようにその中止等を命じたことを不法不当なものとすることはできない。
 そして、日本国有鉄道法三一条一項一号は、職員が上告人の定める業務上の規程に違反した場合に懲戒処分をすることができる旨を定め、これを受けて、上告人の就業規則六六条は、懲戒事由として「上司の命令に服従しないとき」(三号)、「その他著しく不都合な行いのあつたとき」(一七号)と定めているところ、前記の事実によれば、被上告人らは上司から再三にわたりビラ貼りの中止等を命じられたにもかかわらずこれを公然と無視してビラ貼りに及んだものであつて、被上告人らの各行動は、それぞれ上告人の就業規則六六条三号及び一七号所定の懲戒事由に該当するものというべきである。
 そうすると、被上告人らの各行動は懲戒事由に該当しないとした原審の判断は、ひつきよう、法令の解釈、適用を誤つたものであり、右の違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。(後略)
 

2 三菱重工業事件・東京地判昭58・8・24『労働判例』410号46頁
(無許可集会、ビラ貼り等が正当な組合活動と認められないと判示した例)

事実(抜粋)-集会禁止場所での集会、構内ビラ配布等の強行とこれに伴う暴力行為
 当時の労働協約には、
「第二七条 組合員が次の各号の一に該当する場合はけん責に処する。……
5 事業所の許可なく事業所内又は施設(社宅及び寮の私室を除く)で集会、演説、放送、各種印刷物の掲示・貼付・配布、署名運動、募金その他これに類する行為をしたとき………」
と定められていた。被告会社においては職場秩序維持の必要から、生産の場である事業所内、施設内においては、政治・宗教活動はもちろんのこと、職場の安寧を損うおそれのある前記行為は原則としてこれを禁ずることとしており、現に過去においてこの種の行為を被告会社が事業所内、施設内で行うことを許可したことは一度もない。
 構内における組合活動もこの原則の例外ではなかつたが、組合活動については組合活動の実質的な保障と職場秩序との調和する合理的範囲において、労使間の慣行として一部例外的な取扱いが行われており、これをめぐつて広機(広島精機製作所)において次のような事件が発生した。
(ア) 無許可集会・演説・放送の強行とこれに伴う暴力行為
 被告会社と原告との労働協約では、その第一〇条に「組合は、会社の了解を得て、会社の諸施設その他を利用することができる。……」と、会社施設利用に際しては会社の了解を要する旨を規定し、また各事業所においては、危険防止、職場秩序維持の必要から労使間で集会禁止場所等が慣行として定められ、各分会もこれを遵守してきた。
 広機は、極めて精密な工作機械を製作する事業所で、その作業の性格上作業者は作業中に高度の集中力を要求されるため、昼休みには完全に休養できる場所を確保する必要性が特に強かつた。そこで、広機においては、構内食堂及びその周辺の広場、芝生、植込みを休養の場所に当て、これらの場所における集会・演説・放送その他けんそうにわたるおそれのある行為を禁止することにより、社員に十分な休養を与えるよう配慮してきた。特に被告会社長崎造船所において複数組合が併存するようになつて以来、両組合間で拡声器の音量をあげての放送合戦、集会場所の奪い合いといつたトラブルが発生しており、そうした先例に鑑みても、やはり複数組合の併存する広機においては、食堂及びその周辺における組合集会等を禁ずる強い必要性があつた。
 しかるところ、広機分会は、昭和四四年四月二五日、広機の了解を得ることなく、昼休みに食堂内で春闘総決起集会を開催し、勤労課員の解散命令を無視してこれを強行した。
 広機は、直ちに広機分会幹部に抗議したが、広機分会は、開催場所については分会の自由だとの態度をとつたため、広機は更に同年五月七日付け書面をもつて広機分会に厳重抗議し、反省を求めた。
 同年六月に、広機分会から広機に対して、六月二八日昼休みに食堂前広場で総決起集会を開催したいとの書面による申入れがあつた。広機は同月二七日付け書面をもつて、食堂前広場での集会は許可できないが、組合事務所周辺の空地でなら差し支えない旨回答するとともに、その理由についても十分説明したが、広機分会はこれを無視して六月二八日の集会を食堂前広場で強行した。
 これに対し、広機は、前回同様直ちに広機分会幹部に抗議するとともに、広機分会に対しても同年七月一六日付け書面をもつて厳重に抗議し、広機分会の反省を促した。
 しかるに、広機分会には一向に反省の色はなく、かえつて広機の事前了解を求めることもなく集会を強行するようになり、同年一一月からは集会後にデモ行進を行うようになつた。更に翌昭和四五年四月ころからは大きな立看板を設置し、拡声器を使つて休息中の社員に演説を行うようになつた。同年六月三〇日には、集会の中止を求めに行つた勤労課員に対し広機分会の幹部である者がのどを突き、あるいは突き倒す等の暴行を加え、負傷させるという事件も発生した。
 このような無許可集会は、昭和四四年には五件であつたものが、翌昭和四五年には一九件、昭和四六年五月末までには合計三一件を数えるに至つた。
(イ) 不当なビラ掲示・貼付の強行とこれに伴う暴力行為
 会社構内において、むやみにビラを掲示・貼付することは、美観を損ねることはもちろんのこと、生産能率面、災害防止面からも生産現場においては極めて不具合である。作業場の周辺に「オヤツ」というようなものがあり、それに気をとられたために作業ミスをおかしたり、けがをしたという事例は枚挙にいとまがない。生産会社においては、ハウスキーピングという担当者を特に決めて職場の整理整頓から環境整備まで非常に気を使つており、例えば工場見学者がある場合においては、時間・場所等を十分検討し、作業服に着がえてもらい案内員を置くなどできるだけ作業者の邪魔にならないよう配慮を行つている。
 右の事情からすれば組合は、ビラの掲示・貼付をどこにしてもよいということはできない。被告会社では、原告との労働協約の第九条で「会社は、組合が報道、告知及び教育宣伝のため、会社内所定の場所に掲示することを認める。」と定め、具体的には事業所・分会の協議により、作業場周辺でない例えば通路等に掲示板を設け、それ以外の場所へのビラの掲示・貼付は一切禁止してきた。
 当時、広機分会に対しては、組合分裂によつて二組合が併存するに至つたという経緯もあつて未だ掲示板を貸与しておらず、労使間で設置場所等について協議中であつたが、広機分会は、一方的に掲示物を現に使用中の他組合の掲示板や会社の掲示板に強行掲示し、広機の抗議を無視してこうした行為を繰り返していた。
 また、昭和四五年四月二三日、広機分会は一二時五五分から一五時五五分まで重点指名ストライキを行つたが、この際、正規の作業服を着用していないスト対象者が、広機の退去命令にもかかわらず、他の一般社員が作業している職場内をほうこうし、スト対象者の機械に「スト決行中」と大書した半紙大のビラを貼付した。勤労課員がこれを撤去しようとしたところ、そのスト対象者は大声でわめき、押す、突くなどの腕力をもつて妨害し、約三〇分間にわたり周辺で作業をしている多数の社員の正常な業務の運営を妨げた。
 更に、同月二八日一二時〇五分から翌二九日八時〇五分までの全員ストライキに際しては、広機分会組合員が、会社の禁止命令を無視して「スト決行中」なるビラを広機分会組合員使用の機械、器具、机上等に貼付し、これを制止しようとした勤労課員に対して広機分会執行委員長をはじめとする分会組合員数名が大声でわめきながら組み付き、実力をもつて妨害した。ある勤労課員は三名の分会員によつて組み付かれ、首を絞められ、鉄製部品の上に押し倒されて負傷した。また、はち巻、腕章をつけた多数の広機分会組合員が工場内をほうこうしたため、一時間以上にわたつて職場の秩序が乱された。
 こうした広機分会による掲示板、機械、器具等への不当なビラ貼付事件は、昭和四四年四月から昭和四六年五月末日までの間に四四件発生するに至り、これに伴つて暴力行為も頻発した。
(ウ) 構内における不当なビラ配布の強行とこれに伴う暴力行為
 会社の構内におけるビラ配布は、職場の秩序を乱し、また、ときによつては職場における従業員の集中力を散漫にさせ、更にビラの内容によつては職場内に対立感情を持ち込ませる等の弊害が少なくないため、被告会社においては、構内におけるビラ配布それ自体を禁止することとしており、労働組合にもこの原則を適用している。しかし、組合が自らの組合員に対して組合機関紙及び連絡文書を構内において休憩時間中に配布することはなんら禁止していないし、また組合が不特定多数の者にビラを配布しようと思えば入場時又は退場時に門前で配布することもできるのであるから、構内におけるビラ配布を禁止しても組合活動上大きな支障をきたすことはない。
 こうした状況の中で、広機分会も従来は構内でビラ配布をすることはなかつたが、昭和四四年一〇月二一日に突如、休憩時間中に食堂前でビラ配布を開始した。そこで、広機は直ちに口頭で抗議したが、その後も数回にわたつて同様の行動を繰り返したので、広機は同年一一月一〇日付けの書面をもつて厳重抗議した。
 その後もたびたび同様の事件があり、昭和四五年四月一六日に理由を付した抗議文を広機分会幹部に手交し、話し合つた際には「会社の見解は理解できた。分会としても検討する。」との回答を得たが、その後も構内におけるビラ配布は繰り返され、その回数は昭和四六年五月末日までに二四回に及んだ。
判決(抜粋)-無許可集会、ビラの掲示・貼付、ビラの配付等について検討するに、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが使用者の権利の濫用と認められるような特段の事情がある場合を除いて正当な組合活動として許容されるものということはできないと解されるところ、当時の原告と被告会社との労働協約は、一〇条において、組合は、会社の了解を得て、会社の諸施設その他を利用することができる旨定め、二七(二八)条において、組合員が事業所の許可なく事業所内又は施設(社宅及び寮の私室を除く)で集会、演説、放送、各種印刷物の掲示・貼付・配付、署名活動、募金その他これに類する行為をしたときはけん責に処する旨定めていると認められること(中略)事実関係に照らすと被告会社が原告に施設の利用を許さないことが権利の濫用にあたるとまで認めることはできず、右の無許可集会等は労働協約に違反し、許されないものであるということができる。

3 全逓新宿郵便局事件・最三小判昭五八・一二・二〇『労働判例』421号20頁
(郵便局長の言動、職場集会の妨害・監視等の行為が不当労働行為にあたらないとされた例-不当労働行為救済命令取消請求上告ー棄却)

事件の概略-全逓新宿支部では、昭和四〇年春闘頃から批判派が「新生会」を形成し、これらは同年六月一日全逓を脱退し、郵政労働組合新宿支部を結成した。一方三九年七月着任した、加藤新宿郵便局長は職場規律の確立等を目ざしていたが、そうした中で、(1)四〇年五月一三日の貯金募集打ち合わせの席上、加藤局長は、全逓の行動につき「新生会の会員の家庭を訪問して、新生会から抜け出さなければ宿舎に入れないようにするとか、脅迫めいたことが行われているらしいが、お互い行き過ぎのないように」と話し、また同局長は「新生会は善良な人がやったことで間違いではない。あなたたちも善良な人たちだから、今やっている組合(全逓を指す)の行動はよく分かるだろう。極力組合の方に行かないように」等の発言があった。(2)大卒新規卒業者鈴木らは、五月一六日(日)品川区旗の台の加藤局長宅に招待され、清水郵便課課長代理と赴いたが、「今日は局長と思わないで飲んでくれ、広島から届いた特級酒もある」と気分をほぐしてもてなし歓談のうち、局長は、「郵政事業は三代かけなければ一つの仕事を達成できないのに、全逓の闘争主義者はこれを破壊する」と述べ、右課長代理は郵政労の加入届用紙を出し、加入勧誘行動を求めたので、右鈴木が趣旨を問い質すと、局長は「これは郵政省の正規の組合だ」と述べた。また、帰りの車中で課長代理は「郵政労のバックがわかっただろう」と話した。(3)加藤局長は、四〇年四月二〇日臨時補充員らへの話の中で、「暗くなるほどビラがはられている。職場の中もゴタゴタしている」と述べた。(4)新宿支部は、五月一〇日の昼休み、集配課休憩室で、六月七日午後五時過ぎ、同月一一日昼休み、年賀区分室で、職場集会を開いたが、右は無許可であったため、管理職らがマイクで解散を求め、あるいは集会の様子をメモする等した。(5)庶務課長は、新宿支部の掲示板の掲示物が無許可であり、同支部が撤去要求に応じないとしてこれを撤去したが、公労委は不当労働行為にあたるが、全逓・郵政省間で掲示板利用について合意が成立し、問題は解決されたので、救済命令を発する必要はないとした。
一審は公労委命令を取消、二審は右各行為は不当労働行為にあたらないとした。
判決(抜粋)-思うに、使用者の言論は、労働者の団結権との関係で一定の制約を免れないが、原則的には使用者にも言論の自由は保障されており、労使双方が自由な言論を展開することは、正常な労使関係の形成発展に資するものということができる。ただ(中略)労使間の対立がみられるような時期に、使用者又は利益代表者が労働者等と個別的に接触し、労使関係上の具体的問題を発言することは、一般的にいって公正さを欠くものとの非難を免れず、場合によっては是正のための救済措置を必要とする事態も十分考えられるところである。新宿郵便局長の所論の発言も、上告人組合に対立する労働組合の結成が準備されている時期において、同局長の自宅又は執務室で特定の職員に対してなされたものでその妥当性が疑われることは否定できない。しかしながら、その内容及び原審認定の事実関係に照らせば、右発言をもっていまだ上告人組合の結成運営に対する支配介入に当たるとまでいうことはできないとした原審の判断は、これを是認することができ、原判決に所論の違法はない。
 労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につ使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権利を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動に当たらず、使用者においてその中止、原状回復等、必要な指示、命令を発することができるということは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ(中略)昭和四〇年五月一〇日新宿郵便局集配課休憩室において、同年六月七日及び一一日同局四回年賀区分室において、それぞれ無許可で開かれた上告人組合新宿支部の職場集会に対し、同局次長らの行った解散命令等が、不当労働行為を構成しないとした原審の判断は正当として是認することができる。(以下略)

4 明治乳業事件・最三小判昭58・11・1『労働判例』417号21頁
(昼休み時間中の政治ビラの無許可配布を理由とする戒告処分を無効)

事実(抜粋)-被上告人は、上告人の福岡工場に勤務する従業員であるが、昭和四九年六月二四日昼の休憩時間に、休憩室を兼ねている同工場食堂において、同日十四日の昼の休憩時間に、同月一四日に公示された参議院議員選挙の候補者の応援演説のため不破哲三日本共産党書記局長が来援するという内容の同党中央委員会発行同月二三日付赤旗号外約二〇枚を同工場
従業員に配布し、次いで同年七月六日の昼の休憩時間に、同食堂において、同党への投票の呼び掛けを内容とする同党参議院議員選挙法定ビラ約四六枚を同工場従業員に配布した。右の赤旗号外及び日本共産党参議院議員選挙法定ビラの配布は食事中の従業員数人に一枚ずつ平穏に手渡し、他は食卓上に静かに置くという方法で行われたものであって、従業員が本件ビラほ受け取るかどうかは全く各人の自由に任されていた。また、右の配布に要した時間も数分であった。
判断(抜粋)-被上告人の本件ビラの配布は、許可を得ないで工場内で行われたものであるからね形式的にいえば前記就業規則一四条及び労働協約五七条に違反する規程であるが、右各規程は工場内の秩序の維持を目的としたものは明かであるから、形式的に右規程に違反する場合でも、ビラの配布が工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情があると認められるときは、右各規定の違反になるとはいえない(最高裁昭和四七年(オ)第七七七号同五二年一二月一三日第三小判決・民集三一巻七号九七九頁参照)。そして、前記のようなビラの配布の態様、経緯及び目的並びに内容に徴して工場内の秩序を乱すことのない特別の事情が認められる場合に当たり、右各規程に違反するものではないと解するのが相当である。
 なお横井大三判事は反対意見を記す。

5 全逓長崎中央郵便局事件・長崎地判昭59・2・29『労働判例』441号カード
(無届職場集会の解散命令は不当でないとされた例)

事件概要(抜粋)-四十四年四月、被告人Y1(全逓長崎中央支部長)は全逓支部が掲示板に掲示したスト宣言文を当局が撤去したことに抗議すべく、局長室に組合員二十数名とともに押し入り、A次長および他の管理職数名が解散、退去を求めたのに対し怒り、N貯金課長をつかまえて廊下側の窓まで押していき、他二名の組合員と共同して同課長を抱き上げ、上半身を廊下側に逆さになるまで傾斜させ、もって数人共同して暴行を加え(中略)法内超勤につき、当局は★三六協定ないし組合の同意なくしてこれを命じうるものとし、全逓はこれを不可とする立場をとっていたところ、四五年一一月二一日、全逓支部とのあいだに三六協定締結の交渉が行われている時間帯に、第二集配課副課長が支部員に法内超勤を命じたことから、紛議が生じ、支部組合員による抗議がなされたが、その際被告人Y1は、解散命令を発したC労務連絡官に対し、喉元を手指で突く暴行を加え(中略)全逓支部は四五年一二月一日より年末闘争に突入し、同支部保険分会は、同日午後五時頃から、男子休憩室において、当局の許可を得ることなく、分会集会を開いた、五時二十五分頃、Y庶務課長が、無許可集会であることを理由に、解散を命じ、分会員がこれをとり囲んで抗議していたところ、被告人Y1があらわれ、同被告人は同課長に対し、腕組みした左肘で顎を一回突き上げる暴行を加え、さらに五時三十五分頃、A労働課長が加わり、再三にわたって解散命令を発したところ、被告人Y1は、腕組した姿勢で同補佐を押して数メートル後退させ、右肘で同人の股間を一回蹴る暴行を加え(後略)。
判決要旨-被告人らの「本件有形力の行使は可罰的違法性に欠けるものはなく(以下略)」「労働組合又はその組合員が使用者との合意ないし許諾がないまま企業の物的施設を利用して組合活動を行うときは、これらの者に対して利用を許さないことが、当該物的施設につき使用者の権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合‥‥を除いては施設管理権に抵触するものであ」るから、「本件全逓支部の地下食堂及び地下男子休憩室の無届利用行為も、長崎中央郵便局長の庁舎管理権限を侵すものとして正当なものとすることはできず、これに対しM課長らが即刻解散等を命じたことは不法不当なものということはできない」、

和進会事件・京都地判昭59・7・5『労働判例』439号1176号
(共同絶交行為、無許可ビラ貼付等を理由とした組合委員長らに対する普通解雇が有効とされた事例)


事件概要-(共同絶交行為-「村八分」類似の嫌がらせ-については略し、ビラ貼り事件を主として抜粋)。
被告の和進会とは、京大病院の医学研究の奨励、病院運営に対する寄与、患者の慰藉、職員・学生に対する便宜の供与等を行い医学振興と社会文化への貢献等を目的として大正一二年に設立された財団法人で、京大病院内における食堂・売店・喫茶・薬局・寝具・給食の六事業を行っていた。従業員約百名、労組はユニオンショップ協定により、総務部の係長二名を除いて、全職制員が組合員である。昭和五二年に組合は争議時においも特別調理食の供給義務について運搬を除いて支障をきたさないという保安協定を破棄し、ストに突入する構えをみせたため、被告は増員要求を呑んだ。昭和五三年京大病院当局は意見を出し、組合のストライキ時の特別調理職の安定化を求め、将来給食の直営化をうたうなど、被告和進会に対し強力な圧力をかけ、全国的な傾向として不採算部門の整理、民間会社への再下請化という経営合理化に組合が支障となったため、和進会は労務対策として五四年八月に柴田理事が担当理事として就任することととなった。同年十月二二日柴田理事は、組合に対し「労使慣行廃絶通告」(内容略)を送付した。また、柴田理事は、同年九月二五日の係長会議をはじめとして、同十月に入ってから盛んに係長会議、職制会議を開催した。(中略)さらに同月二一日から同月二五日にかけて全従業員を対象した就業規則研修会を開催したが、その内容は被告の最大の問題が労働契約、業務命令、職場秩序、職制の権限等の労務管理上の基本問題であって、労働時間、配転、有給休暇の取り方、法内残業、服務規律等、就業規則上の基本事項を説明したもので、この中で柴田理事は「職場離脱は重罪だ。自分は軍人だったが、その持ち場を離れて銃殺される人を見た」「協約が成立して別途協定ということになって、それが未締結なのだからその協約ができるまでには一分たりとも時間内組合活動はできない。」「四〇〇人(従業員の家族を含めむの幸せのためには、一人、二人のことにはかまっていられない。腐ったリンゴは取り除かなければならない」(中略)などと発言した。組合は(中略)同月二六日に労使慣行廃絶通告に対し釈明を求める書面を送り、売店の柿の値札付けの件で、柴田理事長が原告中川をしっ責したこと。特別調理用の手鍋の柄が折れたとして吉田係長(組合員)らをしっ責した件に抗議するビラを配布し、さらに同日全職場集会を開催し、その席上、来賓の川中弁護士が、柴田理事の研修会の内容を批判し、今後の労使紛争に備え、柴田理事の言動をメモすること(メモ闘争)を示唆した。このようにして、十一月早々から全職場に「和進会に労務屋はいらない」「暗黒の職場になった」などと書いたビラを貼付、配布し、組合員に右のような内容のワッペンを着用させ、メモ闘争を実施させた。同月八日の集会の決起集会では、運輸一般の宮川分会員から柴田理事がかつて全自連(現運輸一般)の山幸運輸分会をつぶしたことのある労務屋だとの報告があった。九日、臨時大会を開催し、年末一時金闘争及び職場の民主化と権利を防衛する闘いの遂行等に関するストライキ投票を実施してストライキ権を確立する一方、ビラ、ワッペン、立看板などにより柴田理事排斥のための事実上の争議状態を継続し、これに対し、被告側からは、ビラの配布、貼付、ワッペン着用等の中止を求める警告書が次々に出される状態となった(後略)。
ビラ貼付についての判断-「労務屋に和進会は任せられない」などと記載したビラを、被告が貸与していた専用掲示板以外の食堂、売店、喫茶室等り入り口に無許可で貼付した点についてみるに、労働組合又は組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の使用し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが、当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであって前記のように右ビラは被告に対する事実上の争議状態下で貼付されたものであることを考慮しても、正当な組合活動に当たらないといわざるをえない。(又、他に右特段の事情を認めるに足る証拠はない)。そうすると、これらのビラ貼りを組合員に指令し、また被告の再三にわたる撤去命令にも応じなかった組合の組合長原告西村の服務規律(四条一項、六条一四号)に違反し、懲戒事由を定めた就業規則六五条四号(職場内の秩序、風紀を紊す行為があった場合」)、一六号(その他各前号に準ずる不都合の行為があった場合」)に各該当するものといわなければならない。
労使慣行廃絶問題についての判断-原告らは、被告と組合間には従来から許可なしに時間内組合活動を許容する労使慣行が存したところ、昭和五四年春闘時に、右労使慣行の労働協約化を図るために労使間で協議した結果、同年九月二六日、春闘妥結協定化中にの別途協議条項が成立しが、労使間には別途協定が成立するまでの間は、従前の労使慣行に従うとの了解があったのに、被告は同年一〇月二二日、一方的に時間内組合活動に関する右労使慣行は廃絶された旨通告(労使関係廃絶通告)してきたというのである。
しかしながら、右労使慣行の点については、たとえ従来から時間内活動が反覆継続されてきたとしても(ちなみに組合の行っててた時間内組合活動が前記のとおりそれが、西村の職務怠慢の一因となっていたこと、平井の組合活動と称しての就業時間内の離席について組合員の内部からも批判がでていたことによっても窺える。)本来賃金を失うことなく就業時間内に組合活動をすることは労働組合法七条三号との関係もあって許されないところであるから、そのことだけで直ちに確立した労使慣行となるものではなく、他に労使間を法的に拘束するような労使慣行が成立していたとは認めるに足り証拠もない。(なお、労使慣行廃絶通告中の「労使慣行」という言葉も、証人柴田国男の証言でも窺いえるように、確立した労使慣行という意味に使われているのではないと思われる。)そうすると、仮に被告が職場規律の確立等の見地から許可を得ない時間内組合活動を全面的に廃止する旨通告したとしても、そのことをとらえて不当な組合攻撃ということはできない(後略)。

6 東京城東郵便局事件・東京地判昭59・9・6『労働判例』442号、45頁
(不許可集会の強行、欠勤、管理職等への暴行等を理由とする懲戒免職が有効とされた例)

城東局における労使関係(抜粋)-昭和四一年当時、城東局では郵便物の大幅な遅配が続き、一日三千から四千通の滞留が常態であった。吉田局長は同年七月に着任後、職場規律の乱れに対し、同年八月、城東支部三役に対し、勤務時間の厳守、不就労についてはノーワーク・ノーペイの原則で対処する、局内の麻雀は厳禁する旨通告し、右是正策を実行に移すために管理職に職員の勤務状態を点検させる等の体制を採るようになった。また、同局長は、本来当局の責任で行うべき業務運営に対し組合が不当に介入しているとして、組合の介入を排除する対策を採ることとした。まず従来城東局においては、正規の団体交渉の他に各職場において管理者とその職場の組合員の代表者との間で職場交渉といわれるものが慣行的に確立しており(中略)正規の団体交渉の決定事項の具体的運用の協議の場として機能していたが、同局長は職場交渉を認めないとし、各課長が個別に組合と話し合うのを禁止した。更に、同局長は、正規の団体交渉においても、交渉事項はいわゆる三六協定と二四協定の締結に関するものに限られるとして、それ以外の議題を制限し、交渉人員の数にも制限を加えた。(中略)同局長の前記のような措置に対して内部から不満の声が出るようになり、同年九月頃から「既得権奪還」のスローガンを掲げて吉田局長追放運動を展開、同年の年末年始の繁忙期における超勤命令拒否、物だめ闘争を経過した後、翌四二年に入ると、同支部は、春季闘争、集中処理局設置に伴う合理化反対闘争等において、同局長追放運動とからませて、業務規制闘争を行うようになった。
原告久下実の行為(抜粋)-城東支部執行委員会は昭和四二年五月二日、全逓中央本部からの指導により、当時全逓が取り組んでいた合理化反対闘争等にむけての団結を強めるため、各課単位で集会を開催することを決定し、これに基づき、郵便課、保険課等で順次集会が開催され、同月九日、集配課分会清水執行委員名義で吉田局長に対し、いずれも組合業務を目的として城東局会議室を同月十一日及び十二日の両日使用したい旨の庁舎使用許可願いを提出した。同局長は、これに対し、全逓が同月十○日の指令第三二号により、同月一七日に二時間、二四日に半日の各ストライキを決行する体制を確立すること、及び同十六日以降業務規制闘争に突入することとの闘争指令を発したため、東京郵政局の指示に従い、右指令は公共事業体等労働関係法一七条一項に違反するとして、前記許可願につきいずれも許可しないこととし、同局庶務会計課主事を通じて、清水執行委員及び原告久下に対してその旨及び理由を通知した。
このような経緯で会議室の使用が許可されなかったにもかかわらず、同日午後四時七分頃から五時十六分頃まで、同会議室において、集配課員約四〇名による職場集会が開催され、原告久下もこれに参加したが、この中で、同原告は、開会後間もなく無許可集会として解散命令を発した貝藤課長に対して抗議し、更に午後四時三六分頃、集合した集配課員に対し、「中に入ってやろう」と言って、同課長の再三にわた解散命令を無視して集会を続行した。
判断(抜粋)-国の庁舎の管理権者は、公物たる庁舎の存立を維持し公務の円滑な遂行を図るため、その庁舎につき合理的・合目的的な秩序を定立し、公務員その他の者に対してこれに服するこを求めうべく、その一環として、その物的施設に許諾された目的以外には利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示・命令することができ、公務員でこれに違反する者がある場合には、その任命権者は、その者に対して懲戒処分を行うことができるものと解するのが相当であり、また公務員の労働組合又は組合員が(中略)管理権者の許諾を得ることなく組合活動のために利用すること許されないというべきである(中略)管理権者が有する権利の濫用であるという特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある公務の運営態勢を確保しうるように当該庁舎を管理利用する庁舎管理権の権限を侵し、公務の秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四八頁)。
以上の見地に立って本件について検討する。(中略)前記集会が行われた行われた会議室は吉田局長の管理する庁舎の一部であり、郵便局の業務のために使用されるべきものであって、全逓の組合や、その組合員に当然には使用が許されてはいないものであると認められるところ、吉田局長が会議室の使用を許可しなかったのは、全逓が同年五月一〇日、ストライキを決行する体制を確立すること及び業務規制闘争に突入することの指令を城東支部に対して発したため、(中略)このような指令が発せられた場合において、吉田局長が城東支部に対し施設の利用を許諾することは違法行為を助長する結果となるおそれが大きいと判断したことについては相当な理由があるというべきであるから、同局長が会議室の使用を許可しなかったことにつき権利の濫用であると認められる特段の事情はないというべきである。(中略)従って会議室使用の許可を得ないで開催それた同年五月一一日及び一二日の各集会は正当な組合活動として許容されるものということはできない。よって(中略)同原告の行為は、庁舎管理権者の許可なく集会に参加し、管理権者の解散命令に従わず、かつ、その集会において積極的な役割を果たした点において、国家公務員法八二条一号及び三号に該当するということができる。

7 全運輸近畿支部(出勤簿整理時間にくい込む職場大会)事件・最高二小判昭60・11・8『最高裁判所民事判例集』39巻7号1375頁

判決(抜粋)-本件職場大会の開催が国公法九八条二項前段の規定にいう争議行為に該当するとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
 職員の勤務時間及びその割振は、法律及びその委任に基づく人事院規則等によつて定めることとされ、右法規に基づかないでこれを変更することは認められていないものというべきである。
 ところで、原審の認定するところによると、兵庫県陸運事務所においては、勤務時間の開始時刻である午前八時三〇分からおおむね午前九時ころまでの間出勤簿整理時間と称する取扱いがされているが、これは、出勤簿管理の必要上、官署の長が勤務時間管理員に対して発した職務命令によつて定められているものであり、右時間内に出勤簿の整理を完了することを命ずると共に、右時間内に出勤して出勤簿に押印した職員については勤務時間の開始時刻までに出勤したものとして取り扱うこととされていたというのである。
 上告人らは、右の出勤簿整理時間の設定によつて職員に対し右時間について職務に従事する義務が免除されたものである旨を主張するのであるが、もし右出勤簿整理時間の設定がその時間中の職務に従事する義務を免除するものであるとすれば、それは勤務時間を短縮し、その割振を変更するものにほかならないところ、法規に基づかないで勤務時間を短縮し、その割振を変更することが許されないものであることは前記のとおりであるから、出勤簿整理時間の設定が、勤務時間を短縮し、出勤簿整理時間中の職務に従事する義務を免除したものと解することはできないものというべきである。
 また、上告人らは、右出勤簿整理時間の設定及びその実施により、職員に対し右時間中の職務に従事する義務を免除するという内容の慣行が成立している旨を主張するのであるが、右のような内容は職員の勤務時間及びその割振を定めた前記規定に抵触することが明らかであるから、前記のような取扱いが相当期間継続して行われて来たものであるとしても、出勤簿整理時間中の職務に従事する義務を免除するという内容の慣行が成立する余地はないものといわなければならない。
 本件職場大会における上告人らの行為が国公法九八条二項後段に規定する「そそのかし」又は「あおり」に該当するとした原審の判断は正当であつて、原判決に所論の違法はなく、所論引用の各判例に抵触するところもない。
 上告人Aが年次休暇の承認を受けたことにより本件職場大会当日の職務に従事する義務を免除されていたとしても、そのことによつて同上告人につき国公法九八条二項後段の規定する「そそのかし」又は「あおり」の責任を問い得なくなるわけのものではない‥‥。
 
 本件ストライキの事実は概ね次のとおりである(第一審より抜粋、若干構成を変えて引用-民集39巻7号より)。
 全運輸は運輸省の港湾建設局と港湾・航海関係の附属機関を除き、管理職員を除く職員の大多数をもって組織され、本件ストライキ当時の組合員の総数は約7570名である。全運輸は、昭和四四年八月三一日から九月二日の定期大会で、人事院勧告の内容、実施時期をめぐる諸般の情勢から、秋の賃金確定期に向けて実力行使をもって闘う必要があるとして、国公共闘・公務員共闘連絡会議(以下国公共闘)の配置する統一行動に積極的に参加して闘う方針をとった。全運輸は運輸省当局に対し九月十九日に統一賃金要求事項を内容とする「要求書」を提出し、政府が右要求を入れないときは、二○○万公務員労働者とともに十一月一三日早朝から勤務時間に二九分くい込む実力行使を行う旨の闘争宣言を発した。なお全運輸が当局に対し、勤務時間にくい込む旨通告したうえ、勤務時間内に職場大会を催して争議行為を実施したのは、今回が初めてであった。
  近畿支部及び傘下各分会は、本件ストライキの闘争体制を固めるため、一○月二○日から二五日にかけてストライキに関する参加決意表明のための一票投票を行い、組合員の75・2%が賛成意思を表したとされる。同月七日から三一日にかけて近畿支部及び各分会から被告局長外それぞれの陸運事務所長に統一賃金要求などの要求書を提出する一方、組合員に対し十一・一三の実力行使への参加決意署名(内容は「私は左記の国公統一賃金要求をかちとるため一一・一三統一行動日に全運輸指令に基づいて『早朝から勤務時間にくい込む職場大会』に参加します」と記載)を分会毎に一斉に実施した。
 一○月二三日総理府総務長官は、国公共闘議長に対し警告を発するとともにともに談話を発表して公務員の自覚と反省を促し、違法な行動のないよう自重をもとめた。
 一一月八日から一〇日にかけて被告局長、総務部長及び各陸運事務所長は、近畿支部長及び各分会長に対し、文書による警告を発し、違法な職場集会を行うことのないよう自重を求めた(内容は「伝えるところによれば、貴組合においては来たる11月13日勤務時間内職場大会を計画している模様であるが、いうまでもなく国家公務員は、かかる争議行為は法令によって禁止されているところであります。当局は貴組合がもし伝えられているような違法行為を行った場合には、関係法令に基づいて適切な措置をとらざるを得ないので、貴組合の自重を強く要望します。」と記載)。又、同月八日から一一日にかけて各職員に対し、六日付運輸政務次官名による警告書(「職員のみなさんへ」と題する)を交付し、違法な職場大会に参加することとのないよう自重を求めるとともに警告した。
 一一月一一日政府は「俸給表などは人事院勧告の内容のままとし、実施時期については6月とするが夏期一時金のはね返り抜き」と閣議決定した。国公共闘は政府の不当な態度に抗議するなどの声明を発し、一一・一三統一行動を既定方針どおり実施することを決定した。一二日近畿支部執行部は、常任中央闘争委員会から「ボーナス抜六月実施の閣議決定に断固反対し、一一・一三は早朝くい込み職大の実力行使を実施せよ。ただしくい込み時間については追って電話にて指令する」との電報による指令を受け、同夜半、本局分会はくい込み一五分、その他の分会はくい込み二○分とすね電話指令を受け、傘下分会に伝達した。
(処分理由たる原告らの所為)
 原告祐成宏治
原告祐成は、本件ストライキ当時全運輸近畿支部和歌山分会分会長の地位にあったところ、右分会が昭和四四年一一月一三日和歌山県陸運事務所宿直室前の中庭において、給与に関する人事院勧告の完全実施の要求貫徹を目的として行った勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中、午前八時三○分から同四五分までの一五分にわたり職務を放棄し、その際分会長として「あいさつ」を行い主たる役割を果たした。(なお、赤居和歌山陸運事務長は、午前八時四○分頃、分会長である原告祐成を呼び、右大会が勤務時間にくい込んでおり、許可の場所で行われているので、解散するよう命令している。組合の主張でき原告の「あいさつ」は一~二分であったとされる。)
 原告川上豊
 原告川上は、本件ストライキ当時全運輸近畿支部奈良分会分会長の分会長の地位にあったところ、右分会が右同日奈良県陸運事務所宿直室において、右要求貫徹を目的として行った勤務時間にくい込む職場大会に就業命令を無視して参加し、このため当日の勤務時間中午前八時三○分から同五○分までの約二○分間にわたり職務を放棄し、その際分会長として「所長交渉の経過報告」を行い主たる役割を果たした。(なお、裁判所の認定は原告は激励のメッセージと電報を朗読したのみとする。牟礼輸送課長は、午前八時四○分頃、原告川上をはじめとする大会参加者に対し、勤務時間内における無許可集会であるから解散するよう口頭で命じた。組合側の主張では、牟礼輸送課長が入ってきて、ほんの一、二秒の間、「川上君この集会は違法だからやめてください」と述べてにこっと笑って出て行った事実であるとし、牟礼課長の右行為は、前日の分会との交渉において、所長が上局から三、四回位警告せよといわれているものを一回にとどめるという、分会との話し合いのとおり行われたものであり、なんら強い積極的なものではなく、形式的に格好をつけただけだとしている。)
 原告北谷信也
 原告北橋は、本件ストライキ当時全運輸近畿支部兵庫分会分会長の地位にあったところ、右分会が右同日兵庫県陸運事務所庁舎玄関前横において、右要求貫徹を目的として行った勤務時間にくい込む職場大会に参加し、このため、当日の勤務時間中午前八時三○分から同四二分までの一二分間にわたり職務を放棄し、その際分会長として「あいさつ及び職場大会の意義」について演説を行い主たる役割を果たした。(尾仲総務課長は、あいさつをおこなっていた分会長に近づき八時二十五分頃「この大会は無許可であるからすぐ解散せよ」と命令、同三十六分にも「時間内にくい込む集会は違法だからすぐ解散しなさい」と命令、さらに四○分頃自らがプラカードを持って、分会員内を歩きまわった)以下数名の原告については略す。

[参考]第一審大阪地判昭54・8・30判決(抜粋)民集39巻7号1408頁
 本件職場大会は、「賃上げは五月から実施すること」などのの統一賃金要求を貫徹するために、勤務時間において、公務員として負担する職務専念義務に違反し、労働供給巳義務の提供を拒否したものということができ、右のような態様における職務専念義務の違反行為、労働供給巳義務の提供拒否行為(同盟罷業)は、それ自ことは体必然的に業務の正常な運営を阻害する行為ということができるから、現に業務の正常な運営を阻害したかどうかを問うまでもなく、国公法九八条二項所定の争議行為に該当するべきというべきであり、単なる団体活動・組合活動であるという原告らの主張は何ら根拠がないといわなければならない。
  原告らは、国公法九八条二項所定の争議行為は、長時間かつ大規模な職場放棄を行ったため、右業務に大混乱を生ずる場合である旨主張するのであるが、公務員の行う争議行為である限り、同法条項に規定する争議行為に該当し、その規模、状況等によって区別すべき理由はないことは明らかである(最高裁昭和四八年四月二五日判決参照)よって、原告らの右主張は理由がない。又、原告らは、本件職場大会の目的が正当であり、本件職場大会が整然と行われたものであり、以前にも本件職場大会と同様の大会で、勤務時間内くい込み時間が右大会より長い職場集会集会回が行われていたことをもって、本件職場集会が国公法九八条二項所定の争議行為に該当しない旨、主張するかのごとくであるが、右事情は本件職場大会参加者に対する処分を科するかの情状として考慮されこそすれ、右争議行為該当性の判断については右事情の存否によって左右されるものではないこと前記説示により明らかである。
 次に、原告らの行為が国公法九八条二項所定の」「あおり」「そそのかし」行為に該当するかどうかについて考察する。国公法九八条二項所定の「あおり」「そそのかし」とは、国公法九八条に定める違法行為を実行させる目的をもって、他人に対し、その行為をなさしめるよう仕向ける行為を総称し、必ずしもこれによって現実に相手方が影響を受けること及び業務の正常な運営を阻害する行為が行われることを要しないものと解すべきである。
 そこで右のような考え方にたって原告らの行為が「あおり」「そそのかし」行為に該当するか判断するに、前記認定、説示のごとく、本件職場集会職場大会は、給与に関する人事院勧告の完全実施などの要求貫徹を目的として行われた国公法九八条二項に違反する違法な大会であるところ、同大会参加者はいずれも右大会の目的右目的貫徹のために勤務時間(出勤簿整理時間)にくい込んで右大会を行うものである旨の意思を確認したうえで右大会に参加しているのであり、又、原告らは近畿支部及び分会において同支部の指導者或いはこれに準ずる地位を有し、右地位にあるものとして右各行為をなしていること、さらには、原告らの各右行為が右大会遂行のうえで積極的な意義を有するものといえることからすると、本件職場大会において、原告祐成が分会長として挨拶した行為、原告川上が分会長としてメッセージと祝電をを朗読した行為、原告北谷があいさつと職場大会の意義について演説した行為、原告中橋が副分会長として所長交渉の経過について演説し、決議文の朗読をした行為、原告供田が分会長として団結がんばろう三唱の音頭をとった行為、原告上原が分会長としてあいさつした行為、原告二瓶が支部長としてあいさつをし、人事院勧告に対する閣議決定の不当性を説明した行為は、いずれも国公法九八条二項後段所定の争議行為の「あおり」「そそのかし」行為に該当するものということができる。
  なお、原告中橋、同供田、同二瓶を除くその余の原告らの本件職場大会におけるあいさつ等の行為は、午前八時三〇分以前に行われたのであるから、右行為には違法性はない主張するかのごとくであるので、附言するに、前記説示のように本件職場大会は違法なものであるから、原告らの右行為が本件職場大会における一行為として行われたものである限り、それが行われた時期如何によって違法性の有無が左右されるものではない。
原告らは、本件職場大会における原告らの行為は、労働組合の団体行動であるから、右行為について個人責任或いは幹部責任を問うことができないと主張する。
しかしながら、集団的労働関係の場である争議行為においても個別的労働関係が解消するものではないから、当該違法争議行為である組合員の行為を個人的行為の側面ととらえたうえで、そのことを理由に組合員に対し、個別的労働関係上の責任である懲戒責任を追及できるというべきである。
  原告らは本件職場大会における原告らの行為はいずれも組合中央からの、方針、指令に従い、組合員としての当然の義務を果たしたにすぎないから、原告らを特に選択して懲戒処分に付する合理的なりゆうがないとも主張するが、既に説示したごとく本件職場大会は国公法に違反する違法な争議行為であるから、仮に組合の指令があったとしても、それは国公法に優先すねべきものではないこと当然というべきであり、右指令に従ったことをもって違法な争議行為に参加したなどの原告らの行為を何ら正当化するものではないし、前記のような役割を果たした原告らが他の組合員と区別して本件各処分わ受けるものであっても、何ら不合理なものということはできない。
  原告らは、本件職場集会の目的が正当であり、態様も業務阻害がなかったから、右大会の違法性が軽微であり、懲戒処分の対象となし得ないものであると主張する。当裁判所も国家公務員が人事院勧告の完全実施を求め要求活動をすることは理解できない訳ではない。
  しかしながら、仮に、原告らの主張のごとく本件職場大会の目的が正当であると評価を受け得るものであっても、その実現のために国公法の禁止する争議行為に訴えて要求を貫徹せしめようとすることは許されるものではなく、又、現に業務阻害を生じることがなかったとしても、広く国民に窓口を開いた陸運局、陸運事務所の有する公共性と保安要員として一人を残した以外は全員が職場から離脱したものであること。さらに本件職場大会に先立ち、又、大会中においても当局が再三にわたり、警告、就業命令及び解散命令を発しているにもかかわらず、これらを無視してあえて強行・続行されたことは、本件職場大会の違法性が決して軽微なものではないといえるのである。

8 北九州市交通局労働組合(超過勤務拒否闘争)事件・最一小判昭63・12・8『最高裁判所民事判例集』42巻10号

 (ほぼ全文の引用)
        主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告参加代理人石井将、同谷川宮太郎、同市川俊司の上告理由第一点について
 論旨は、地方公営企業職員につき争議行為を禁止した地方公営企業労働関係法(以下「地公労法」という。)一一条一項の規定は憲法二八条に違反しないとした原判決は、憲法二八条の解釈適用を誤つたものである、というのである。
 地公労法は、現業地方公務員たる地方公営企業職員の労働関係について定めたものであるが、同法一一条一項は、「職員及び組合は、地方公営企業に対して同盟罷業、怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。また、職員並びに組合の組合員及び役員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、又はあおつてはならない。」と規定し、これを受けて同法一二条は、地方公共団体は右規定に違反する行為をした職員を解雇することができる旨規定し、また、同法四条は、争議行為による損害賠償責任の免責について定めた労働組合法八条の規定の適用を除外している。しかし、地公労法一一条一項に違反して争議行為をした者に対する特別の罰則は設けられていない。同法におけるこのような争議行為禁止に関する規定の内容は、現業国家公務員たる国の経営する企業に勤務する職員(以下「国営企業職員」という。)及び公共企業体職員の労働関係について定めた公共企業体等労働関係法(昭和六一年法律第九三号による改正前のもの。以下「公労法」という。)におけるそれと同一である。
 ところで、国営企業職員及び公共企業体職員につき争議行為を禁止した公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところであるが(昭和四四年(あ)第二五七一号同五二年五月四日大法廷判決・刑集三一巻三号一八二頁、名古屋中郵事件判決)、この名古屋中郵事件判決が右合憲の根拠として、国営企業職員の場合について挙げている事由は、(1) 公務員である右職員の勤務条件は、国民全体の意思を代表する国会において、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮を経たうえで、法律、予算の形で決定すべきものとされていて、労使間の自由な団体交渉に基づく合意によつて決定すべきものとはされていないこと、(2) 国営企業の事業は、利潤の追求を本来の目的とするものではなくて国の公共的な政策を遂行するものであり、かつ、その労使関係には市場の抑制力が欠如しているため、争議権は適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができないこと、(3) 国営企業職員は実質的に国民全体に対してその労務提供の義務を負うものであり、その争議行為による業務の停廃は国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがあること、(4) 争議行為を禁止したことの代償措置として、法律による身分保障、公共企業体等労働委員会による仲裁の制度など相応の措置が設けられていること、の四点に要約することができる。
 そこで、名古屋中郵事件判決が右合憲の根拠として挙げた各事由が地方公営企業職員の場合にも妥当するか否かを検討する。
 地方公営企業職員も一般職の地方公務員に属する者であるが、一般職の地方公務員の勤務条件は、国家公務員の場合と同様、政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮により、国民全体の意思を代表する国会が定める法律及び住民の意思を代表する地方議会が定める条例、予算の形で決定されるべきものとされているのであつて、そこには、私企業におけるような団体交渉による決定という方式は当然には妥当しないというべきである(最高裁昭和四四年(あ)第一二七五号同五一年五月二一日大法廷判決・刑集三〇巻五号一一七八頁(岩手県教組事件判決)参照)。そして、このような一般職の地方公務員の勤務条件決定の法理について、地方公営企業職員の場合にのみ別異に解すべき理由はない。現行法規上、地方公営企業職員の勤務条件の決定に関しては、当局と職員との団体交渉を経てその具体的内容の一部が定められることが予定されており(地公労法七条)、しかも、条例あるいは規則その他の規程に抵触する内容の労働協約等の協定にもある程度の法的な効力ないし意義をもたせている(同法八条、九条)などの点において、団体交渉が機能する余地を比較的広く認めているが、これは、憲法二八条の趣旨をできるだけ尊重し、また、地方公営企業の経営に企業的経営原理を取り入れようとする立法政策から出たものであつて、もとより法律及び条例、予算による制約を免れるものではなく、右に述べた一般職の地方公務員全般について妥当する勤務条件決定の法理自体を変容させるものではない。
 次に、地方公営企業の事業についても、その本来の目的は、利潤の追及ではなく公共の福祉の増進にあり(地方公営企業法(以下「地公企法」という。)三条)、かつ、その労使関係には市場の抑制力が働かないため、争議権が適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができないことは、国営企業の事業の場合と同様である。
 また、地方公営企業職員が実質的に住民全体に対しその労務提供の義務を負つており、右職員が争議行為に及んだ場合の業務の停廃が住民全体ひいては国民全体の共同利益に少なからぬ影響を及ぼすか、又はそのおそれがあることも、国営企業職員の場合と基本的には同様である。もつとも、地公労法の適用される地方公営企業は、法律上具体的に列挙されているものに限定されず(地公労法三条一項)、その種類、内容、規模等には、種々のものが含まれうるが、その事業は、あくまでもその本来の目的である公共の福祉を増進するものとして、公益的見地から住民ないし国民の生活にとつて必要性の高い業務を遂行するものであるから、その業務が停廃した場合の住民ないし国民の生活への影響には軽視し難いものがあるといわなければならない。
 更に、争議行為を禁止したことの代償措置についてみるに、地方公営企業職員は、一般職の地方公務員として、法律によつて身分の保障を受け、その給与については、生計費、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定めなければならないとされている(地公企法三八条三項)。そして、職員と当局との間の紛争については、国営企業職員及び公共企業体職員についての公共企業体等労働委員会(現国営企業労働委員会)のような特別の紛争処理機関は設置されていないものの、労働委員会によるあつ旋、調停、仲裁の途を開いたうえ、一般の私企業の場合にはない強制調停(地公労法一四条三号ないし五号)、強制仲裁(同法一五条三号ないし五号)の制度を設けており、仲裁裁定については、当事者に服従義務を、地方公共団体の長に実施努力義務を負わせ(同法一六条一項本文)、予算上資金上不可能な支出を内容とする仲裁裁定及び条例に抵触する内容の仲裁裁定は、その最終的な取扱いにつき議会の意思を問うこととし(同法一六条一項ただし書、一〇条、一六条二項、八条)、規則その他の規程に抵触する内容の仲裁裁定がなされた場合は、規則その他の規程の必要な改廃のための措置をとることとしているのである(同法一六条二項、九条)。これらは、地方公営企業職員につき争議行為を禁止したことの代償措置として不十分なものとはいえない。
 以上によれば、名古屋中郵事件判決が公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことの根拠として国営企業職員の場合について挙げた各事由は、地方公営企業職員の場合にも基本的にはすべて妥当するというべきであるから、地公労法一一条一項の規定は、右判決の趣旨に徴して憲法二八条に違反しないことに帰着する。論旨は、ひつきよう、名古屋中郵事件判決の立場とは異なる独自の見解を前提として原判決を論難するものであつて、採用することができない。
 同第二点について
 論旨は、上告参加人の労働基準法三六条所定の協定(以下「三六協定」という。)締結、更新の拒否による本件超勤拒否闘争が地公労法一一条一項の禁止する争議行為に当たるとした原判決は、法令の解釈適用を誤り、かつ、判例違反を犯すものである、というのである。
 原審の適法に確定した事実関係は、(1) 上告参加人は、被上告人の提示する本件財政再建計画の実施を阻止するため、昭和四二年六月一〇日ころ、組合員の投票によつてストライキを行うことを決定し、これを受けて、上告参加人の戦術委員会は、同月二一日から二三日まで超勤拒否闘争を、同月二七日から同年七月一日まで超勤拒否闘争及び安全点検闘争を、同年七月三日に超勤拒否闘争及び一斉休暇闘争を行うことを決定した、(2) 被上告人経営のバスの運行ダイヤは、労使の委員によつて構成されるダイヤ編成審議会の議を経て定められていたが、当時の公示ダイヤは、上告参加人の同意のもとに一日九勤務が時間外勤務ダイヤとして編成されており、被上告人の交通局においては、このダイヤを実施するために超過勤務が恒常化していて、超過勤務拒否があれば、平常のダイヤ運行に支障を来す状況にあつた、(3) 右運行ダイヤを実施するため、被上告人と上告参加人との間において従来から三六協定が締結、更新されてきたが、上告参加人は、本件財政再建計画についての労使の交渉が難航することが予想されるようになつた同年四月ころから、同協定を一日ないし数日の期間を定めて締結、更新しつつ事態の推移をみていたところ、同年六月一五日本件財政再建計画案が市議会に上程されるや、前記戦術委員会の決定どおり超勤拒否闘争を行うこととし、バスの正常な運行のための同協定の締結、更新方の当局の要望を拒否して、右決定に係る期間各部門において組合員に時間外勤務を拒否させた、というのである。
 これによれば、被上告人の交通局においては、従来から上告参加人同意のもとに三六協定の締結、更新を前提とした超過勤務が平常勤務として組み入れられてきたところ、上告参加人は、当該超過勤務自体に関する勤務条件については格別の要求を有していた事情は認められないのに、本件財政再建計画の実施阻止という要求を貫徹するための手段として、三六協定の締結、更新を拒否し、組合員に時間外勤務を拒否させて本件超勤拒否闘争を実施したということになるから、右超勤拒否闘争は、地公労法一一条一項の禁止する争議行為に当たるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。また、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

          

9 済生会中央病院事件・最二小判平元・12・11『労働判例』552号10頁
(職場集会への警告・通知書の交付が不当労働行為にはあたらないとされた例)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/8A900ABA5FBBE19149256A8500311ED5.pdf
(一) 昭和五〇年四月五日の警告
(1) 病院は、従来から、急患室勤務の看護婦不足を補うため、毎月二五日頃翌月の勤務表を作成し、これに基づく急患室勤務を外来看護婦に割り当てていた。この勤務表は、事前の申し出がない限り、外来看護婦の同意を得ることなく病院が一方的に作成し、外来看護婦はおおむねその勤務に服していた。(2) 昭和五〇年三月頃から病院の看護婦不足が甚だしくなったため、同月二七日になってようやく作成された四月分の勤務表には、従来なかった深夜勤(午後一一時から翌日午前八時まで)が導入され、また夜勤(午後四時から午後一一時まで)の回数も増加されていた。外来看護婦の通常の勤務は午前八時から午後四時までであるから、外来看護婦が深夜勤の後に通常の勤務をすると、午後一一時から翌日午後四時までの過重な勤務となった。(3) そこで、支部組合は、三月二八日午後三時三〇分頃から、右勤務表について協議するため外来看護婦ら二十余名を元空腹時血糖室に集めて職場集会を開いた。(4) 病院は、四月一日支部組合との間で労働協議会を開催し、外来看護婦の急患室勤務は事前に申し出れば勤務しないことができるものであることを確認したが、支部組合は、右勤務表に基づく急患室勤務を拒否した。(5) 次いで、支部組合は、病院が病棟看護婦に急患室勤務をさせる動きを示したこともあって、同月二日及び三日午後三時四〇分から右元空腹時血糖室でこれまでの経過を報告するとともにその後の対策を協議するため、外来看護婦らを集めて職場集会(以下「本件職場集会(一)」という。)を開いた。(6) そして、支部組合は、同月三日病院に対し三交替勤務に必要な急患室勤務の看護婦の増員を要求した。(7) 病院は、同月五日支部組合に対し本件職場集会(一)につき「このような集会を勤務時間中に行うことは、労働協約第九条並びに就業規則第二三条、第二四条に違反する不当な行為であります。……今後かかる行為を絶対に繰返さないようここに厳重に警告しておくとともに責任追求の権限を留保しておく。」という「警告並びに通告書」を交付した。(8) 支部組合が本件職場集会(一)をいずれも労働時間中である午後三時四〇分から開催したのは、外来看護婦は、午前中の診療が正午までに終わらないため、現実には通常の昼休み(正午から午後一時まで)をとることができず、休憩時間をとることができるのは午後の診療が一段落した三時過ぎであったこと及び外来看護婦のなかには終業後保育所に幼児を引き取りに行かなければならない者がいたことを考慮したためである。そして、本件職場集会(一)に参加した者は、いずれもその時間に差し迫った業務のない者であり、集会中業務に就く必要が生じた者は中座して業務に就いている。また、本件職場集会(一)の場所を元空腹時血糖室に選んだのも、ここが急患室の隣りであって、必要が生ずれば直ちにこれに対応することができるという配慮からであった。なお、支部組合が本件職場集会(一)を開くに当たって病院に届け出たり許可を得たことはないが、従来この時間帯に届出も許可もないまま職場集会を開催しても、病院から警告、注意等を受けたことはなかった。
(二) 昭和五〇年五月一〇日の警告
(1) 支部組合は、昭和五〇年三月三日病院に対し四月一日から基本給の二五パーセントに一律一万円を加えた賃上げ等を要求し、同月二〇日までにその回答を求めた。病院は同月二四日支部組合と団体交渉をしたが、その際、支部組合に対し、最初にして最後の回答と表現して、平均一万一二六八円(一〇・四一パーセント)の賃金を引き上げることを提示した。(2) 支部組合は同月三〇日の団体交渉においてこれを拒否したところ、病院は、五月六日の団体交渉において、支部組合が争議行為をしないことを条件として、二〇〇〇円の上積み及び看護婦の夜勤手当の増額を認める案を提示した。支部組合は、これを拒否するとともに、病院に対し同日午後六時から時間外勤務、宿日直拒否闘争に入ることを通知した。そこで、病院は、上積み回答を撤回し、同月七日全従業員に「労務情報」を配布し、「平和的解決の条件拒否さる。」という見出しのもとに右の経過を公表した。(3) 支部組合は同月八日病院と再度団体交渉をしたが、六日の案以上の案は出ず、交渉は進捗しなかった。しかして、支部組合は、翌九日に予定していたストライキを回避して交渉を続け、同月二八日、六日の賃上案を受け容れた。(4) この間、支部組合は、同月六日、七日及び九日の一二時三〇分から病院内のテニス・コートを使用して職場集会(以下「本件職場集会(二)」という。)を開いたが、六日は二九分、七日は一一分、九日は五分、午後一時からの労働時間に食い込んだ。そこで、病院は、同月一〇日、支部組合に対し、「……業務を放棄し、……多数の組合員を対象に……集会を行ったことは、労働協約第九条並びに就業規則第二三条、第二四条に違反する不当な行為である。この件については、四月五日……病院見解を明らかにしたように責任追求の権限を留保する。かかる行為を今後も繰返し行った場合は、病院として重大な決意をもって臨むことをここに正式に通告しておく。」という「警告並びに通告書」を交付した。(5) 本件職場集会(二)には、病棟看護婦のうち業務のある者、外来看護婦等で業務に支障のある者は出席せず、また集会中でも業務上必要のある者は自由に退出していた。そして、支部組合が本件職場集会(二)をすることについて病院に届け出たり許可を得たことはなかったが、従来労働時間に若干食い込む職場集会が昼休みに開かれたことはあっても、病院がこれについて警告、注意をしたことはなかった。
二 右事実関係の下において、原審は、次のとおり判断し、上告人の請求を棄却した第一審判決は相当であるとして、控訴を棄却した。
 1 労働者ないし労働組合は、使用者の許諾なくして職場集会のためその施設を利用することができるものではなく、また、労働時間中当然に職場集会をすることができるものでもない。したがって、使用者は、権利の濫用と認められる特段の事情のない限り、そのような集会の中止を求めることができる。
 2 しかし、本件職場集会(一)、(二)は、いずれもその時期にこれを開催する必要性が認められること、本件職場集会(二)によって病院の業務に直ちに支障が生ずるものではないこと、本件職場集会(一)、(二)は事実上の休憩時間にされたか昼休みに終了しないため若干労働時間に食い込んだにすぎないこと、本件職場集会(一)、(二)の参加者は業務に支障のない者であり、参加した者も途中業務に支障が生ずれば自由に退出するなどしていたこと、病院は、従来このような態様でされた職場集会について何ら注意をしたことがないこと等に照らすと、本件の場合、権利の濫用と認められる特段の事情があるから、本件職場集会(一)、(二)を違法なものということはできない。
 3 そうすると、本件警告をもって支部組合及び全済労に対する支配介入であるとした被上告人の認定判断に違法なところはない。
 三 しかしながら、原審の右判断は、是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 一般に、労働者は、労働契約の本旨に従って、その労務を提供するためにその労働時間を用い、その労務にのみ従事しなければならない。したがって、労働組合又はその組合員が労働時間中にした組合活動は、原則として、正当なものということはできない。また、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらない。そして、もとより、労働組合にとって利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用し得る権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うと解すべき理由はない(最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)。
 これを本件についてみるに、本件職場集会(一)、(二)は、労働時間中に、病院の管理する物的施設(元空腹時血糖室、テニス・コート)を利用して開かれたものである。しかして、従来、病院が本件のような職場集会について何ら注意をしたことがなかったとしても、それをもって直ちに病院が労働時間中に病院の管理する物的施設を利用して職場集会を開くことにつき黙示の許諾をしていたということはできないし、病院がそのような職場集会を開くことについて反省を求めることの妨げとなるものでもない。また、右の権利の濫用であると認められるような特段の事情があるかどうかの判断に際し、病院の管理する物的施設を利用して職場集会を開く必要性を強調することができないことはさきに説示したところから明らかである。同様に、労働時間中に職場集会を開く必要性を重視して、それが許されるとすることができないことも、前記説示に照らし当然である。なお、支部組合が本件職場集会(一)を開催したのが外来看護婦が通常の昼休みをとることができない傾向にあったためであるとしても、そのことが支部組合として午後三時四〇分から本件職場集会(一)を適法に開くことができる根拠となるものでもない。以上によれば、本件職場集会(一)、(二)の開催につき病院の明示又は黙示の許諾があるとも、また、その開催を許さないことが病院の権利の濫用であると認められるような特段の事情があるとも解されないのであって、結局、病院が本件職場集会(一)、(二)に対して本件警告書を交付したとしても、それは、ひっきょう支部組合又はその組合員の労働契約上の義務に反し、企業秩序を乱す行為の是正を求めるものにすぎないから、病院(上告人)の行為が不当労働行為に該当する余地はないというべきである。したがって、東京都地方労働委員会の昭和五二年三月一日付初審命令(都労委昭和五〇年(不)第六一号事件初審命令)の主文第1項のうち昭和五〇年四月五日付「警告並びに通告書」及び同年五月一〇日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(一通)並びに主文第4項(1)のうち同年四月五日付「警告並びに通告書」及び同年五月一〇日付「警告並びに通告書」のうち集会にかかるもの(一通)について、これを維持した被上告人の昭和五四年一二月五日付再審査申立棄却命令(中労委昭和五二年(不再)第二五号事件再審査命令)の該当部分の取消しを求める上告人の請求は理由があるから、これを認容すべきである。原判決及び第一審判決が本件職場集会(一)、(二)に対する警告が不当労働行為に該当するとしたのは、法七条三号の解釈適用を誤ったものであり、右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであって、この点をいう論旨は理由がある。よって、右部分につき、原判決を破棄し、第一審判決を取り消し、上告人の請求を認容することとする。

10 オリエンタルモーター事件・最二小判平7・9・8『労働判例』679号
(会社食堂の使用拒否が不当労働行為にあたらないとされた例)

労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると特段の事情のある場合を除いては、当該企業施設を管理運用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動には当たらない(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)。もとより、使用者が労働組合による企業施設利用を拒否する行為を通じて労働組合の弱体化を図ろうとする場合に不当労働行為が成立し得ることはいうまでもないが、右に説示したとおり、使用者が組合集会等のための企業施設を利用を労働組合又はその組合員に許諾するかどうかは、原則として使用者の自由な判断に委ねられており、使用者がその使用を受忍しなければならない義務を負うものではないから、右の権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、使用者が利用を許諾しないからといって、直ちに団結権を侵害し、不当労働行為を構成するということはできない。(中略)これを本件について考えてみると、組合結成通知を受けてからK守衛事件まで約九箇月にわたり、上告人は、許可願いの提出があれば業務に支障のない限り食堂の使用の許可をしていたというのであるが、そのことから直ちに上告人が組合に対し食堂の使用につき包括的に許諾をえていたということはできず、その取り扱いを変更することが許されなくなるものでもない。(中略)また、上告人は組合に対し使用を拒む正当な理由がない限り食堂を利用させることとし、外部者の入場は制限すべきではないなどとする組合側からの提案も、上告人の施設管理権を過少に評価し、あたかも組合に食堂の利用権限があることを前提とするかのような提案であって、組合による無許可使用の繰り返しの事実を併せ考えるならば、上告人の施設管理権を無視した要求と上告人 が受けとめたことは無理からぬところである。(中略)本件で問題となっている施設が食堂であって、組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が一般的には大きいといえないこと。組合事務所を認められていないことから食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること。上告人が労働委員会の勧告を拒否したことの事情を考慮してもなお、条件が折り合わないまま、上告人が組合又はその組合員に食堂の使用を許諾しない状況が続いていることをもって、上告人の権利の濫用であると認められるべき特段の事情があるとはいえず、上告人の食堂使用拒否が不当労働行為に当たるということはできない。

 ビラ配りにつき組合活動として是認した判例

倉田学園事件・最三小判平6・12・20『労働判例』669号13頁


判断(抜粋)本件ビラ配布は、許可を得ないで被上告人の(学校)内で行われたものであるから形式的には就業規則(略)の禁止事項に該当する。しかしながら、右規定は非上告人の学校内の職場規律の維持及び生徒に対する教育的配慮を目的としたものと解されるから、ビラの配布が形式的にはこれに違反するように見える場合でも、ビラの内容、ビラの配布の態様に照らして、その配布が学校内の職場規律を乱すおそれがなく、また、生徒に対する教育的配慮に欠けることとなるおそれのない特別の事情が認められるときは、実質的には右規程の違反になるとはいえず、したがって、これを理由として就業規則所定の懲戒処分をすることは許されないというべきである(最高裁昭和四七年(オ)第七七七号同五二年一二月一三日第三小法廷判決・民集三一巻七号九七四頁参照)。
 右の見地に立って本件ビラ配布について検討すると、本件ビラはいずれも職場ニュースと題する上告参加人の機関紙であるところ、本件各ビラの内容は、香川県下の私立高校における労使間の賃金交渉の妥結額(五月八日配布のもの)、被上告人との間で予定されていた団体交渉の議題(同月九日配布のもの)、右団体交渉の結果(同月一六日配布のもの)など、上告参加人との労働組合としての日ごろの活動状況の報告及びこれに関連する事項であって、違法・不当な行為をあおり又はそそのかすなどの内容を含むものではない。また本件ビラ配布は、丸亀校の職員室内で行われたものであるが、いずれも就業時間前に、ビラを二つ折にして(特に五月八日及び一六日配布の片面印刷のものは、印刷面を内側にして)教員の机の上に置くという方法でなされたものであって、本件ビラ配布によって業務に支障を来したことを窺わせる事情はない。また、生徒に対する教育的配慮という観点からすれば(中略)始業時刻より十五分以上も前の、通常生徒が職員室に入室する頻度の少ない時間帯に行われたものであって、前記の教育的に欠けることのおそれのない特別の事情が認められるものということができ、本件懲戒処分は、懲戒事由を定める就業規則上の根拠を欠く違法な懲戒処分というべきである

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