カード片山隆「韓国における女性と儒教」その1
杉山晃一・櫻井哲男『韓国社会の文化人類学』弘文堂1990所収
イギリスやドイツは13~14世紀に夫婦同姓が一般的慣習となったと考えられているが、日本の明治民法は西欧的な夫婦同姓と同じである。日本の夫婦同姓(苗)は支那・朝鮮における宗法の同姓不娶とは全く異なる文化圏で、むしろ西欧社会に近いことを意味する。
韓国は夫婦別姓社会ですが、韓国の伝統社会とりわけ両班社会においては、儒教的ノルムが貫徹するので、女性にとって厳しい社会である。青-引用・要約 赤ー私の意見
1 「男女有別」の秩序原理
「男女有別」の秩序原理は、「長幼の序」「孝道」
と並んで特に重視されてきた。「男女有別」の秩序原理は「内外」という概念の中で明確。『礼記』の内外篇に由来する。
両班層の家屋構造は、男性の生活領域である舎廊棟と、女性の生活領域である内棟があり、互いの出入りは制限されている。女性は戸外への外出を制限され、内室に籠もって世情から隔離されるのが理想とされた。
2 「三従之義」
両班女性の生活の生活は「婦道」という生活規範によって、またその一生は「在家従父、□(女ヘンに思)家従夫、亡夫従子」という「三従之義」の原理によって規定されていた。
3 「族譜」に女性本人の名は記されない
族譜には、男性成員の配偶者の姓や本貫は記されるが、女性本人の名は記されず、夫の姓名・本貫と子の名が記されるにすぎない。これは婚家においても女性が男性と同等とみなされないことを示している。
しかし、位牌では対等なのではないか。
4 父系祖先の祭祀「時祭」には絶対女性は参加させない
祖先祭祀としては「忌日祀」四代祖まで
正月・秋夕をばじめとする名節や行われる「茶礼」
何世代かを経過した祖先たちを日を決めて墓所で祀る「時祭」があるが、祭祀は儒式に従って行われ「単に死者の霊を生者が祀るというものではなく、親-子関係に基づく尊卑の序列を前提とするものであり、子が親に尽くすべき孝の延長」とみなされている。時祭は女性は絶対に参加しないものとされ、忌祭祀や茶礼においても女性の役割は祭物や祭礼の準備と歓客にすぎず、祖先祭祀は儀礼に参加するは男性の役割が強調される。
我が国は儒式の祖先祭祀は普及しなかった。これは高麗が元の支配により同性不娶等の宗法を受容し、儒者による廃仏運動が行われたような歴史がないからであるし、徳川幕府の寺請制度、宗教政策により仏教による祖先供養が一般的である。
室町時代の公家の家政において追善仏事の運営は家妻の役割とされていた。庶民の家においても主婦が追善仏事の運営に関わる慣習は同じように思える。この点、近世朝鮮-韓国の儒式の祖先祭祀はあくまでも男性が主役で、女性は付随的役割にすぎない。
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