カード リバタリアニズムと法規制 1
山田八千子『自由の契約法理論』弘文堂2008
リバタリアニズムと交渉力格差135頁
経済的自由を、政治的な自由・精神的自由と同様に尊重するリバタリアニズムの立場では、交渉力の格差を根拠として、法的な規制を認めることは極めて慎重な立場が取られている。
一例として古典的自由主義者・リバタリアンとして著名なシカゴ大学R.エプステイン教授の『公用収容の理論』が引用されている。
「契約の権利を否定するために、交渉能力の不平等を用いるとき、際限なく立法府の介入をみとめることとなるだろう。というのは、‥‥個人の持っている財産の間に相対的な格差があるということは、ほぼすべての事例についてにいえるからである。 財産に不平等なために、契約におけるにみせかけて選択の自由がなくなるといわれるが、この主張は労働契約を例外のケースであるように見せかけて、契約自由の原則を廃するものである。交渉能力の平等性を基準として、契約を正統なものとそうでないものを分類することはできない。‥‥そもそも私有財産制度であれば、交渉に先立って、当事者間に存在している財産あるいは能力の格差を唯一の理由として、その交渉を無効とすることはできない。さらに、当事者の元々の財産がどのようなものであろうと、双方の財産価値は取引交渉の権利によって増大するのであるから取引を無効にする理由はまったくない。‥‥」
私は、R.エプステイン教授のこの見解を完全に支持する。労働組合が団体交渉権の理由として交渉能力の不平等がいわれますが、この理屈によって階級立法を正当化した制度というものは本質的に労働力取引の自由・契約自由・個人の財産権を侵害するものであって、労働協約や労働者保護法によって個別契約の自由を侵害されている法制度というのは、自由主義的な体制とはいえないと考えます。
実際問題、労働組合がなくて従業員代表制度だけの会社、組合不在企業もあるわけでです。
アメリカでは民間企業の組織率が1950年の35%から現在7.5%に低下してます。かつて非組企業の代表的な企業としはコダック、シアーズ、IBM、プロクター&ギャンブルといわれましたが、現代を代表するウォルマートやマイクロソフトをはじめとして多くの優良企業が組合不在ですし、金融・銀行などホワイトカラー、非食品リテーラーや外食産業はほとんど組織化されていないとされている。もちろん従業員福祉重視型の経営のコダックは大きなリストラがあったし、同じくシアーズも名前は残ってますがKマートに買収されたわけです。しかしウェルフェアキャピタリズムモデルは組合不在企業の評判を高めたのでその意義を高く評価します。没落しているの組合セクターである。典型的にはGMですが、トヨタはGMとの折半出資の合弁工場「NUMMI(ヌーミー)」(米カリフォルニア州)を清算することとしましたが、賢明な判断です。工場の設備がなんだという前にUAWが組織化されている工場はやっぱりダメだということです。もっとも労働組合側は組織率低迷を打開する戦略として従業員自由選択法案Employee Free Choice Actが審議入りし労働組合の支援で当選したオバマも支持してますが、6月の『海外労働情報』 2009年6月 「従業員自由選択法案、審議が本格化 」http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2009_6/america_01.htmによると「上院の民主党議員の中にも反対あるいは慎重な姿勢の議員が8名おり、可決に必要な60票には達していない。必要票を集めるためには法案を修正し妥協案を模索する必要があるのが実情である。」としており情勢は不透明であるが、しかしながらこの問題を別として大きな流れは団体主義的労働関係からから個別主義的労使関係へ重心が移っているとみてよい。
おおまかにいって米英豪ニュージーランドの70年代から今世紀初期までの趨勢は労働者と経営者(団体)との団体交渉を基盤とする団体主義的労使関係から個別労働者と経営者との企業内関係を重視する個別主義労使関係に重心が移されています。
イギリスにおいては1980年雇用法により、70年代の法的手続きによる組合承認が無効となり、これを受けて経営者側は組合否認政策をとったため、労働組合はこれに有効な対抗手段がとれず、組合の衰退におおきな影響をもたらした。田口典男「ブレア労働政策における組合承認の法的手続きの位置づけ『Artes liberales』 第70号, (2002)http://ir.iwate-u.ac.jp/dspace/handle/10140/2719(ダウンロード自由)、従って保守党政権が続いていれば2010年頃には労働組合は駆逐されるところだったが、1999年労働党政権の雇用関係法により、法的組合承認制度が新設され、組合は延命することになった。とはいえ、趨勢に変化はないとみてよい。
オーストラリアでは自由党がした「オーストラリア職場協定(Australian Workplace Agreement:AWA)」があります。
これも労働協約を排除した使用者と個人が交渉する個別雇用契約制度を推進しました。
ニュージーランドでは国民党政権1991年雇用契約法(Employment Contracts Act)にいたっては労働法から、「労働組合」も「団体交渉」も消し去り、労働関係を個別雇用契約によって処理しようとした。究極の労働市場の規制緩和である。もっとも労働党への政権交代により2000年雇用関係法により「団体交渉」も「労働組合」も復活したが、しかし2008年再び国民党政権に戻っている。個別主義がトレンドであることは間違いない。
自民党政治の失敗は、失われた10年とか15年といわれる経済低迷にもかかわらず、オーストラリアやニュージーランドでもやっているような労働改革、規制緩和、構造改革を行わなかったことである。派遣労働なんていうのはたいした規制緩和ではなく、占領下にニューディール主義者によってつくらせれた労働法体系の廃止、刷新こそ臨まれるものである。林=プレスコット説により経済が低迷して所得も増えない要因というのは、労働時間が少ないこと時短政策と、生産性の高い産業構造に転換していないことにあることははっきりしているわけですから、自由主義政策に未来への展望があると説明すれば国民は支持する可能性はある。敵の支持基盤を叩く攻撃的な政策をやらずに、中福祉・中負担とか言って中途半端で中道左派的な政策をやってきたことにある。もちろん憲法28条という悪法があるからレジームの解体はそう簡単なことではないかもしれないが、公労使三者構成による政策決定の見直し、タフト・ハートレー法型の中立立法とするとか労働基準法のオーバーホール等できるところから進めていくことが望まれる。
三毛猫ちゃんです。
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民主、公明、社民、共産は大昔から連立を組んで日本解体を目論んでいます。
日本国民が気付かないように少しずつ地方の隅から革命を起こそうとしています。
当然橋本知事もその仲間です。
米軍追放後、外国人参政権による沖縄侵略がその第一歩です。
舛添要一氏、久間章生氏、石井一氏、新党日本の田中康夫氏も危険な
売国奴(外国人参政権支持者)なので気をつけましょう。
舛添要一氏は、自民党のイメージダウン活動を昔から行っています
(安部氏の批判など)。
テレビでも、橋本知事と舛添氏が小沢氏を絶賛していましたが、
遂に本性を現しましたね、反日の手から日本をみんなで守りましょう。
反日企業は日本国民の不買運動のターゲットになりますので、
反日との縁を切ってください!
投稿: 自民党は内外から壊されました | 2010/01/01 14:01