カード野田愛子「法制審議会民法部会身分小委員会における婚姻・離婚法改正の審議について(上)」その1
(日本婦人法律家協会会員への講演に加筆)『戸籍時報』419号 1993-1
野田愛子氏は法制審議会の委員でもありますが当時の肩書きは法務省中央更正保護審査会委員で、家庭裁判所での実務経験の豊富な方で、貴重な意見だと思います。しかし法制審議会答申は野田氏の意見を無視しています。
法定婚姻適齢について(青-引用)
「‥18歳にしますと、女子の場合は18歳未満で一応の関係ができて、妊娠するという問題がある。ここに何か手当が要るというと、むしろ16歳に揃えてはどうか、という考え方もあります。しかし16歳に揃えますと〔英国や合衆国の多数の週-引用者註〕、婚姻による成年(民法753条)の問題があります。16歳で成年となっては法律行為等においても問題ではなかろうか。それぞれにメリット、デメリットがございます。
そこで仮に18歳に揃えた場合には、16歳で結婚しようとするときには婚姻年齢を下げて婚姻を許すような法律的な手立てが、どうしても必要になります。各国の法制〔スウェーデン・イタリアなど-引用者-註〕をみますと婚姻適齢を男女同年(18歳以上)にした法制の下では、必ず要件補充の規定を設けて、裁判所が許可を与えるとか、行政機関が許可を与えるとか、そのような条文を設けている国もございます。
そうなりますと、婚姻の問題に国家の機関が介入するということも問題ではなかろうかという議論もでてまいります。〔引用者註-我が国は婚姻の正否に教会裁判所が干与したと欧米諸国のような歴史的経緯がなく、国家機関の許可制度はなじみにくいと思う〕家庭裁判所の立場からは、婚姻を認めるとか、認めないとか、いったい何を基準に判断するのか、いうこともひとつの疑問として提起されましょう。統計的に、16、17歳で婚姻する者は、〔年間〕約3000件あるそうです。私の家庭裁判所判事当時の経験に照らすと、16、7歳の虞犯の女子がよい相手と巡り会って、結婚させると落ち着く、という例も数多く経験しています。あながち、男女平等論では片付づかない問題のように思われます。」
法制審議会答申、民主党の政策も女子法定婚姻年齢を16歳から18歳として機械的男女平等とする者ですが、家庭裁判所の実務経験から野田愛子氏は現行法制維持が望ましいとされているようです。
結婚が社会秩序の基盤であると同時に、個人の幸福追求権の核心的な価値を有することから、安易に16・17歳女子の法定婚姻資格を剥奪することは望ましくない。虞犯少女というのは恵まれない社会階層であることが多いでしょう。法制度をいじくる場合、たんに日弁連女性委員会だの女子差別撤廃条約だのインテリ女性のメンツということだけで法改正をすべきではありません。むしろそうした社会階層の人々の目線からみるべきです。
日弁連のインテリ女は虞犯少女に同情することもないす冷たい人々なのでしょう。だから、婚姻資格を取上げてしまえと云うことができる。
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