団結否認権の確立Right to Work lawが必要だ 下書き1-(18)
19世紀中葉その2
中西洋は19世紀中葉以降の展開について、団結を許容し、立法化しようとする議会制定法と、それを抑え込もうとする議会制定法の角逐が19世紀を通じて反復されたとするが、それほど単純ではない。
1830年に経済学者ナッソー・シニオアは、メルボーン内閣に「コモンロー上の共謀罪と営業制限の禁止とを明白に列挙した法律を可決すべき事」を勧告した。共謀法理により団結を抑え込もうとする立法勧告も少なくなかったのである。この勧告は様々な事情から実現しなかったが21 299頁)
一方、労働組合に有利な法改正もなされた。1859年の労働者妨害法Molestaion of Workmen Actである。これは(イ)他人と合意して賃金または労働時間を合意したこと、(ロ)平和的リーズナブルな方法でかつthreats(脅迫)またはintimidation(威嚇)を用いる事なく、合意された賃金率または労働時間を獲得するために他人を説得して仕事を中断せしめること、のいずれかの理由のみによって1825年法にいう妨害とみなされてはならず、コンスピラシーを理由とするいかなる訴追も受けないと規定し(*10 196頁)、文面上、平和的説得によるピケッティングとストライキを容認する規定となっていた。。これはアール卿のように労働者が団結してその労務から去らしめる場合は、「他人の取引を侵害するコンスピラシー」として平和的説得であっても、使用者に対する害意をもってなされる限り犯罪とし、1825年法の妨害に当たるとする裁判官の解釈を排除する意図があったと考えられている。
ピケッティングについて規制の変遷については別途述べることとするが、マルクスは『資本論』で「古い諸法のいくつかのうるわしい残片は、1859年になっやっと消滅した」と書いているが、「うるわして」は皮肉であり、「残片」が「モレスティング」であった。浜林正夫は同法により結社の自由が勝ち取られたと述べているが(*17 71~72頁)しかし裁判所は甘くなかった。次に述べる、ホーンビイ対クローズ事件(1869年)では営業制限の法理によりストライキの目的を持つ組合規約を違法とし、組合の基金の法的保障を否定されたのである。
*10片岡曻『英国労働法理論史』有斐閣1952
*17浜林正夫『イギリス労働運動史』学習の友社2009年
*21石田眞「イギリス団結権史に関する一考察(上) : 労働組合の法認と「営業制限の法理」『早稲田法学会誌』26 1976[ネット公開論文]
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