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2010/02/28

団結否認権の確立Right to Work lawが必要だ 下書き1-(24)

1.19世紀末期の労働運動

 1873年ドイツ・アメリカに端を発した史上最大の世界恐慌はイギリスにも達した。これは1873年から1895年までの80年代の最初と終わりの短期間を除いて長期に及び「大不況」時代と呼ばれる。その要因は後進資本主義国のドイツとアメリカで産業資本が確立してイギリスとの競争に加わったこと。資本吸収の極めて大きい新大陸の鉄道建設が一応終了して鉄鋼輸出の減少と価格の低落をもたらしたこと。鋼の使用が普及して鉄鋼品の耐用年数が増大したことなどとされている。一般商品の平均価格は、1873年から1896年にかけて45%下落した。当時の賃金は商品価格と連動するスライディングスケールを採用していたために、労働者の生活への影響は大きく、「大不況」期に夥しい数の不熟練未組織労働者と失業者が蓄積した。【*34】
 労働運動の新しい動きとして定番として取りあげられるのが、1888年7月のロンドン・イーストエンドのマッチ女工ストと1889年8-9月のロンドン・ドック労働者(日本では沖仲仕と呼ばれる)の自然発生ストライキで、海員、火夫、艀の船頭も含めて2万人を巻き込んだ。いずれも労働者の勝利となリ、沖仲仕などは正式に「ドック・波止場・川岸及び一般労働組合」とという産業別組合を組織した。こうした新組合は従来のクラフトユニオンに代わって産業別労働組合の道を開くこととなった【*34】。
 晩年のエンゲルスはイーストエンドを新しい労働運動の発祥地として賞賛を惜しまなかったというが、沖仲仕は会社に直接雇用されていたわけではなく「ギャング」と呼ばれる組制度の親方に中間搾取されていた。ロンドンのドックストは、オーストラリアという思いがけないところからカンパがあり市長の調停で勝利することができた。【*17 170頁】
 とはいえ、経営側も反撃する。1890年に船主連盟が結成され、船員や沖仲仕は組合潰しに乗り出し、1893年には全国自由労働協会というスト破りの組織がつくられ、「自由労働者証」というチケットを発行、これはどこの組合にも入ってないという証明で優先的に雇うとことにより、新組合に打撃を与えた。【*17 172頁】
 スト破り団体によって多くのストライキ派敗北又は妥協を余儀なくされた。1892年のダラム坑夫スト、1893年のランカシャー綿業スト、ハルのドックストはすべて労働側の敗北又は妥協で終わり、1898年のスコットランド西部坑夫ストは労働者勝利だったが、同年の南ウェールズ坑夫ストは半年の闘争の後敗北した。【*34】

2 契約違反誘致の不法行為及びシヴィル・コンスピラシー民事共謀法理の進展について(前)

 1875年共謀罪・財産保護法は団結とストライキに関する刑事免責を確立したものだが、コモンローは1875年以降、民事共謀(civil conspiracy)としての不法行為の共謀(conspiracy to injure)というものを案出した。1901年タフヴェィル判決で労働組合に巨額の損害賠償を命ずる判決を下したことにより、この問題がクローズアップされるに至る。【*7】
 ところで民事共謀の原理が成立する以前の不法行為法上の原則については秋田成就【*33】が次のように説明している。「不法行為法の原則に従えば営業に対する侵害は『契約関係に対する干渉』(債務妨害侵害又は業務妨害)を構成するものだった。そこで組合の団体行動特に労働争議に伴って生じる契約又は締結行為の破棄、資本及び労働者の営業、雇傭処分に対する干渉は不法行為として損害賠償又は差止命令による私法上の訴訟の対象とされた。また争議による個人の行為についてみれば契約の終了による罷業行為は
それ自体何等の不法をも含まず、解約手続を含まない契約破棄のみが、その雇主に損害賠償訴権を発生せしめるのみであったず他方でそれは当該雇用契約について第三者たる(雇用)契約破棄勧誘という不法行為責任保勧誘を生じせしめる危険性があった」

 契約違反誘引について林和彦が2つの先例を挙げている。【*34】

○Lumley v.Gye(1853)[ラムリ対ガイ]

 原告劇場管理人とのオペラ歌手との専属出演契約に違反させて被告劇場所有者が出演させたという事件で「違法にそして悪意で‥‥使用者の労務から使用人を離れさせることしによって使用者・使用人間に存する関係を妨害する者は‥‥それによって使用者が侵害を受けるなら法律上責任を負う」そして「かかる訴訟を維持する権利は普通法によるもの」として第三者による雇用関係の侵害は身分関係といった前期主従法理ではなく近代的なコモンロー上の不法行為として構成された。

○Bowen v.Hall(1881)

 原告煉瓦製造業者と煉瓦職人とので、材料及び道具供給と製品の引き渡しの排他的労務契約に違反させ、自分達のもとで働くよう誘引した被告煉瓦製造業者に対する差止命令を求めた訴訟で、控訴裁判所は一審を支持して被告への差止命令を許容した。ただし職人には許容されていない。判旨は悪意で使用者との排他的労務契約の破棄をみ誘引する第三者に対しては厳密にマスター・サーバント関係がなくても訴訟は成立するとしたものである。

 1890年代以降の労働争議に関する不法行為訴訟【*34】

○Temperton v.Russel and Other[テンパートン対ラッセル]

 これは二次的ボイコット事件である。雇用(労務契約)だけではなく営業人間の商業契約違反の誘引行為も無さらに名将来の契約締結阻止の誘引行為も不法行為とした。ロペス判事は次のように述べた・「特定の個人と取引をしないよう又は彼と契約を締結しないよう他人を誘引するための二人以上の者の結合は彼を侵害する意図をもって行われ、そこから彼に損害が生ずるなら訴えのできる違法行為である」

○Read v.The Friendly Society of Operative Stonemasons

 徒弟訓練中の原告石工が、彼の所属していた石工組合と役員を被告として原告と石屋との間の徒弟契約違反の誘引を理由に差止命令と損害賠償訴訟を提起したものである。一審で被告らは組合の最良の利益のため善意で行動したのであり、不適切に動機ではないとして組合側が勝訴したが、二審は「原告の権利の侵害に対する被告らの十分なJustificationは、被告ら自身に同等あるいは優越した権利がなければならず‥‥悪意なく行動したことまたは善意で行動したこともしくは自分たち自身の最良の利益のために行動したこと」はJustificationとしては不十分として再審を命じた。
 動機の悪意を違法性の根拠としていた裁判所は反転して動機の善意はJustificationとして不十分とする判決で労働組合には打撃になった。
 
Wales Miners, Federation v.Glamorgan Coal Co(1905)[南ウェールズ坑夫組合連合体対グラモーガン石炭]

 1901年当時炭価の低下に直面した坑夫組合連合体の執行委員会はスライディング・スケールに伴う賃金切下げを懸念して、賃金確保を目的に傘下10万の組合員にストライキ予告を与えず、雇用契約に違反して、前後四日によわたってストライキを命じた。炭鉱所有者は組合と組合役員を被告として雇用契約違反誘引の不法行為を理由として損害賠償訴訟を提起した。一審は正当に人々を忠告して指令したのであって、合法的なJustificationとexcuseありとして被告組合側勝訴だったが、二審は一審を覆して、炭鉱使用者側勝訴となった。
 貴族院は先のRead v.The Friendly Society of Operative Stonemasons判決を確認して、被告らの動機がいかに善意でありかつまた義務的役割に基づく行為であっても契約(雇用契約)違反の誘引行為のJustificationにはならないとして、全員一致で被告の主張を退け、被上告人会社側に勝訴を与えた。
 ジェームス判事は次のように述べた。「被告らが労働者のよりよき経済的地位を得るために義務的役割を演じたとしても法律はそれによってJustificationが確立されないと私は考える。彼らの意図は直接契約の違反をさせることであった。彼らの動機は、行動へと動かした者たちのための善意であるという主張は、不法な行為によって損害を受けた者にたいする何らかの抗弁を形成しない」
 本判決について林和彦は労働組合を合法化した1871年労働組合法、労働争議を法認して刑事免責とした1875年共謀罪財産保護法の下ではこの論理はあてまらないとして批判するが、私は全く逆である。労働組合に好意的に制定法にもかかわらず、労働争議を特別視して保護するようなことはせず、第三者が契約当事者の債権を侵害すれば不法行為であるという市民法の形式論理から逸脱しなかった事を高く評価する。裁判所の反労働組合的姿勢は、次回取りあげる1901年のクイン対リーザム事件における民事共謀の不法行為によってより補強されることとなった。

 次に民事共謀法理であるが、重要判決であるタフヴェイル判決を取りあげる前に民事共謀三部作という統一性のない貴族院判決に言及するのが、定番となっている。

民事共謀三部作(前)

○Mogul Steamship Co.v.Mcgregor Gow(1893)[モーグル汽船対マクグレゴー・ゴウ会社]

 第一の判決1893年のMogul Steamship Co.v.Mcgregor Gowはレッセフェールの原理を体現したとも評価されるが私は悪い判決だと思う。
 営業者の団結による侵害について共謀の民事責任を明示的に否定したものである。事案は被告たる船舶所有者が団体を作り、各メンバーは船舶数・船荷の分配・運賃の規制に服することに同意し、かつメンバーの代理店は競争相手と取引することを禁止され、違約した場合は解約する合意された【*6 240頁】。この団体は英支間の茶貿易を独占することにあり、【*34】具体的には会員の船舶だけを利用する貿易商人に対し5%の運賃払戻金が認められることになっていた。【*35】この団体から排除された競争会社の損害賠償及び差止命令の請求について貴族院は被告の行為は自己の営業利益の推進という正当目的を有し、而して正当事由なくして原告事業を侵害する不法の意思を有していないから営業制限のコンスピラシーを構成しないと判示した。【*33】いわゆる権利侵害なき損害であるという判決であった。【*6】
 秋田成就【*33】は「これが労働組合に適用されれば、団体加盟者に一の規約の下に統合して集合的に取引条件を定め、その圧力をもって労働力の需給を調整するという労働組合の行為は、自らの利益の推進として前者と同様の立場におかれるはずである」とする。

○Allen v.FLood(1898)[アレン対フラッド]

 非組合員解雇事件である第二の判決も問題のある判決である。原告の非組合員フラッドほか数名は船舶の木造部修理工として何時でも解雇し得る条件で働いていたが、被告アレンはボイラー工組合の代表者として組合員でもなしうる労働に原告らが雇用されている事に反対し、使用者にその解雇を要求して要求がいれなければ組合員を使用者のもとから引き上げるか労働を中止する旨警告した。使用者はこれをもってフラッドらを解雇したが、彼らはアレンに対し、「悪意をもって不正に、かつ原告を侵害する意思をもって」契約解除及び新規契約締結を妨害したとして訴えを提起した。【*6 241頁】
 貴族院は、「被告は悪意を以て雇主を勧誘して原告を解雇せしめた」という陪審の見解を支持した控訴審を覆し、「適法の行為は悪意という動機によって不法に転換するものではない」という原則の下に被告を支持し【*33】、フラッドらの解雇・再雇用拒否は合法とした。
 この事件はアレン個人によってなされたものとして共謀の立証ができなかった。【*6】また、ウィキペディアによると「重要な事実は、すべての労働者が日毎に雇われただけであるということです。 したがって、契約が新たに一日分の仕事で始まった」ので、労働組合幹部は契約違反誘致をしていないという事のようである。但し、ワトソン卿が「不法なコンスピラシーにより他人を誘惑して契約を締結せしめずして原告に品外を及ぼす場合は不法行為である」と述べた。【*6】

「適法の行為は悪意という動機によって不法に転換しない」という本判決の意義について秋田成就は【*33】次のように述べ団結権・争議権の前進であると解説している。
 「1875年法による刑事共謀の終焉以後、罷業行為はそれが契約締結破棄のようなそれ自体不法の行為を含まない場合にも被告を害するという『動機』の不法性の故に不法行為として被害者の労働組合役員に対する損害賠償の起訴にさらされていたのであり、従ってこのような意味の『悪意』が法の構成要件から追放されることはAllen という被告の行為が明に組合を代表してなされたものである以上、彼の『適法の行為』の動機の故に不法とならず従って彼の名において行われた団結の行為も不法とならない原則が確定した」
 ピースフルピケッティングを違法とするアール卿の「他人の取引を侵害するコンスピラシー」(conspiracy to injure of another)」理論については17回でふれたとおりである。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/right-to-work-8.htmlアール卿によれば、他人の権利を害するか否かは、その外形的行為ではなく、行為者が害意をもってなすか否か、相手方の取引行為や労働力処分を妨害するのためにのみ行動しているかによって決せられる。この判決はこの伝統的と思える論理を否定するものであり労働組合に有利なものとみることができる。

 しかし、同じような非組合員排除事件である第三の判決1901年クイン対リーザム判決によって、前ニ判決の適用を拒否し、組合役員数名に損害賠償を命じた。これは重要判決なので次回取りあげる。

*6片岡曻『英国労働法理論史』有斐閣1952
*7中西洋『《賃金》《職業=労働組合》《国家》の理論》』ミネルヴァ書房(京都)1998年 143頁
*17 浜林正夫『イギリス労働運動史』学習の友社2009年
*33秋田成就「イギリス労働組合法史に於けるコンスピラシー」『労働法』通号6 1955
*34林和彦「英国労働争議法の生成(上)」『早稲田大学大学院法研論集』6号1970

*35田島裕「コンスピラシー法理の研究-(三・完『 法学雑誌 』 29(1) 1982年 

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