公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2010/08/23

団結否認権の確立Right to Work lawが必要だ 下書き1-(39)

  1983年組合民主主義に関するグリーンペーパー

1983年1月保守党政府は立法提案書である組合民主主義に関する緑書(グリーンペーパー)において、次のような組合民主主義を促すため政府による組合内部運営規制立法化の方針を示した。
 「労働組合がより民主的になり、もっと組合員の意思に責任をもつようになる必要性が、多くの国民から指摘されている。多くの組合で下部一般組合員の役割は余りにも小さく、また組合の政策は組合員の利益を反映していない。‥‥1980年雇用法に基づき労働組合は、郵便投票の費用を公的な基金から支払うよう要求する権利を認められた。しかし、TUCに加入している組合はこれらの基金を利用せず、組合員の権利を拡大する機会を投げ捨ててしまった。政府はクローズドショップ制の普及の結果として、組合員になることを強制されている労働者の利益を擁護する義務を負っているが、さらに、組合員があらゆる場面で自己の見解を表明できる公正な機会が確保されるべきである。自己の組合の選挙が必ず秘密投票で行われ、全ての組合員が投票機会が与えられるとともに合理的な投票機会が与えられ、全ての投票が公正に集計され、組合の執行機関のメンバーが全ての組合員を適切に代表する形で選出されていると自身をもっていえる組合員は殆どいない。多くの労働組合の選挙において、実際に投票する資格のある組合員の割合は極めて低い。‥‥‥組合執行部が自己に都合のよい選挙手続を考え、これに基づき自分自身を再選するために最も都合のよい方法を選択できる‥‥‥不公平で不満足な選挙方法を除去する唯一の方法は規約を民主的に改正することであるが、執行委員会が民主的に選出されていない場合には、このような改革はできない。外部からの干渉が民主的手続きを確保する唯一の方法になるかも知れない」【*63】
 つまり、労働組合に民主主義をすすめる自己改革能力などなく、内部運営の政府による干渉の必要性を説いている。プロレイバーは保守党政府が組合民主主義を説くのは組合弱体化を狙いとしていると説明されることが多い。しかし強制的に組合員となるクシ協定をこの段階では違法化していない以上、政府には個々の組合員の利益を擁護するために内部運営に干渉する理由はあるし、クシ協定が違法化されても、政府が労働組合に不法行為免責という特権を与える体制に変わりない以上、個々の組合員の利益を擁護する立法があってなんら不可解なことはないと考える。
 イギリスの労働組合内部運営規制の特に組合選挙への干渉のモデルとなったのはオーストラリアの労働法制と考える。この点でオーストラリアは先進的であり19949年に既に組合規約の不承認またはその履行指令を求めて訴訟を提起する組合員に資金援助を与え、組合選挙の審査、組合選挙の管理を公平な第三者たる登録官に委ねることを可能にしており、1973年には労働党政権で組合選挙の公費負担がなされ、1976年自由党フレーザー政権により組合民主主義の強化のために組合選挙の郵便投票の強制がなされている【*53】。イギリスの1984年法は組合選挙の郵便投票を強制していないので、この段階ではまだオーストラリアの水準に達するものではない。

 

 1984年労働組合法(その1)

要旨

 サッチャー政権の労働組合・労使関係の漸進的改革立法の第3弾、労働組合の内部運営に関する規制立法で主に次の3点の改革を行った。組合選挙についてはすでに1980年雇用法において労働組合のスト投票、組合規約所定の選挙等の秘密投票に公費支出する制度を導入しているいるので第2ステップである。

①主たる執行委員会の役員選挙(直接秘密投票)を少なくとも5年に1回義務づけ

②労働組合の法的免責の要件として、ストライキ事前投票を4週間前までに参加予定のすべての組合員による秘密投票(郵便投票または職場投票等)によって行われ、多数の賛成を得ることとした。

③政治資金支出の秘密投票の義務づけとチェックオフの制限の導入【*52 94頁】

今回は①と②を取り上げ、③は次回とする。

第1章 組合役員選挙の直接秘密投票を少なくとも5年に1回義務づける
 
●選挙されなければならない役員は、組合の主たる執行委員会で議決権を有する者であり、その在職期間は5年を超えてはならない。
[イギリスでは役員選出に選挙がない場合や終身在職のケースも少なくなかった。少なくとも5年で改選を義務づけた]
●選挙権は原則として全ての組合員に平等に保障されなければならない。
●組合が負う義務は投票の秘密は最大限保障され、干渉または制限を受けずに投票することを保障しなければならない。郵便投票を行う便宜を与えなければならないとするが、絶対条件ではなく職場またはそれ以上に便利な場所で投票も容認する。
●郵便投票を職場投票より優先させるために、労働組合に組合員の名前と正確な住所の登録簿の保管を義務づける。
●選挙要件が満たされない場合の救済手続-組合員は法違反の宣言を求めて認証官または高等法院(スコットランドでは高等裁判所)に申立を行い、選挙やり直しの強制命令を求めることができる。
●政党に所属することを被選挙権資格とすることは認められないが、ある政党に所属することを理由に被選挙権資格を認めないことは許される。従って共産主義者や保守主義者を排除する規約は容認。【*64 *51】

第2章 争議行為前投票で支持のない争議行為は不法行為免責を排除する

●組合が免責を失わないためには、争議行為に投票を行い、投票者の多数の支持を得て。「関係する行為」の最初の授権または承認および授権の場合「関係する行為」を投票後四週間いないに行わなければならない。
●投票方法は郵便投票をその他の方法より優越しない。
●投票用紙の設問は「投票者に、その雇用契約違反を含むストライキに参加し、または場合により参加を継続する用意があるか否かについて『イエス』または『ノー』と回答することを要求する設問(形式は問わない)」あるいは「投票者に、ストライキには至らないが、その雇用契約違反を含む争議行為に参加し、あるいは場合により参加を継続する用意があるか否かについて」『イエス』または『ノー』と回答を要求する設問(形式は問わない)」でなければならない。
●投票は、合理的に実行可能なかぎり秘密で行われ、公正かつ正確に集計されなければならないこと、および投票者は労働組合関係者による干渉または制限を受けることなく投票することが認められなければならない。【*51 *64】
●第2章に違反した争議行為の場合、免責を排除されるのは労働組合か否かを問わない。ローカルの役員やショップスチュワード等、他人の雇用契約違反またしその履行の干渉を誘致した個人も免責は排除される。
●争議行為の授権または承認は、投票後四週間以内に行わなければにならない。
●争議行為事前投票が無効な場合、損害を被った使用者その他の者は、組合その他の個人に対して不法行為を理由に訴えることができる。

 なお、第2章は労働組合の「公認」の争議行為のみに適用され、「非公認」の行為は影響を受けない、つまり組合の執行部が承認しない山猫ストは適用除外である。奇異に感じられるが、鈴木隆【*64】によると、本法の目的は非公認争議行為の組織者を孤立させることにある。また、第二章は公共部門の争議の発生防止が期待されていて、公共部門は大部分公認ストライキであるからと説明されている。
]しかし<<ストライキ事前投票で組合員の多数の賛成を得ていないが組合執行部が承認する争議行為の不法行為免責を排除したことで特に重要な意味があったのは、炭坑ストであると考える。
 全国炭坑労組では1982年の賃上げ闘争のスト事前投票で53%、1983年では40%しか賛成を得られなかった【*52 193頁】、優良炭坑はストに反対であり、反対派も大きかったわけである。
 サッチャーで賞賛すべき最大の業績ともいえるのは1984-85年ストで全国炭坑労組に正面から戦って勝ったことであると私は思う。労組に譲歩しなければ政治は行えないという「戦後コンセンサス」の破壊【*61】をやってのけたことである。1984-85年ストでは、委員長アーサー・スカーギルの指令で全国規模のストライキが行われたが、これは執行部にスト権確立の自信がなかったためである。ヨークシャー、南ウェールズなどでスト権を確立したが、優良炭坑のノッティンガム、ランカシャーなどはスト権を否決し、事務労働者もストに反対だった。ノッティンガム炭坑で大量のスト破りを出し、各地のピケットラインでさまざまな暴力事件が起きたが、フライングピケットは1980年雇用法で禁止されていたため警察力が投入され、警官隊とピケ隊の衝突で逮捕者は7657人に達したのである。職場復帰の労働者を乗せたタクシーに陸橋からコンクリートブロックが落とされ、タクシー運転手が死亡し殺人により2人の組合員が逮捕される事件も起きた【*52 第7章】。石炭公社や政府側は積極的にスト参加者を訴追することを控えたとはいえ、1980年雇用法で禁止したフライング・ピケットが行われたことと、組合員多数の支持のないストだったためにストそのものの合法性が疑われたことが、スト敗北の重要な要因となった。

 
*51林和彦「イギリス保守党政権下の労働市場の規制緩和(一)」」『日本法学』72巻3号 2006
*52田口典夫『イギリス労使関係のパラダイム転換と労働政策』ミネルヴァ書房2007年
*53長渕満男『オーストラリア労働法の基軸と展開』信山社1996
*61梅川・阪野・力久編著『イギリス現代政治史』小堀眞裕 第7章「戦後コンセンサスの破壊 サッチャー政権 一九七九~九○年-」ミネルヴァ書房2010年173頁
*63小島弘信「サッチャー政府の攻勢続くイギリス労使関係-組合民主主義に関するグリーン・ペーパーを中心として-」『日本労働協会雑誌』25巻6号1983.6
*64鈴木隆「イギリス1984年労働組合法と組合民主主義-1- 」『島大法学』31

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