公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2010年11月の19件の記事

2010/11/29

「治承寿永の内乱」でいいんでないの

 再来年の大河ドラマが『平清盛』で壇ノ浦までやるらしい。『龍馬伝』は関心がないので見なかったが(蒼井優の芸者の回だけ熱心に見ただけ)。再来年まで生きていればこれは見ると思う。
 ところで保立道久東大史料編纂所教授がブログをやっているので、のぞいてみたが、「治承寿永の内乱」という用語を使うのはやめて「1180年代内乱」を使用しようとか書いている。http://hotatelog.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-6bab.html
 一般には「源平合戦」で通用している。年号をとって「治承寿永の内乱」と歴史家がつくった言葉のようだ。年号を覚えさせるのは余計なことで、歴史教育を暗記ものにしている悪弊をやめようという趣旨のようである。
 なるほど治承は「じしょう」が正しいが、「ちしょう」と間違えやすく恥をかくことになりかねない。
 私は「源平合戦」とか書くのがいかにも素人っぽいので、わざと歴史家の論文で使われる「治承寿永の内乱」と書きたがるたち。そもそも承和の変、承平天慶の乱、安和の変、保元の乱、平治の乱、承久の乱、宝治合戦と元号で政変や内乱をよぶことになっているので、これだけ西暦でよぶのは気がひける。

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(2)

 第1回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-d339.html
 
連邦公務員はスト参加で解雇される(2)

 A マッカーサー書簡-政令201号による政策転換とは、アメリカ本国では公務員に団体交渉権も争議権も付与してないのに、それを行った急進的な占領政策を、アメリカ的な政策に戻したもの

日本の戦前の官吏、待遇官吏、吏員はドイツ公法の考え方と同じ、公法上の勤務関係、特別権力関係にあると考えられ、官吏服務規律第一条は天皇陛下及び天皇陛下の政府に対し忠順勤勉を主とし、法令命令に従いその職務に奉仕する旨規定し、私法上の契約雇用関係ではなく、官吏の俸給は労働の対価ではなく、「天皇の官吏」として社会的体面を保つにふさわしい身分給として、高等官は年俸、判任官は月俸、俸給表は天皇大権により勅令により、枢密院の諮詢事項として扱われ、官吏の待遇にかかわる勅令は法制局が、予算は大蔵省が所管した。天皇大権事項だから団体交渉などありえないし、争議行為などは無条件に否定される。〔*1〕
 しかし終戦直後の官公労働はきわめて異常な無秩序、混乱に陥った。〔*2〕その要因は総司令部経済科学局労働課の指導により、新憲法施行前に逸早く昭和21年3月1日から労働組合法が、21年10月13日から労働組合調整法が施行され、官吏は労働組合法が一部の例外を除いて適用され、政府職員の組合は労働組合を結成し、非現業以外の職員には争議権が認められ、当局との間に労働協約が適用されることとなったことによる。これは合衆国本国の法制・判例法とも全く合致しない急進的で異常な政策で経済科学局労働課長キレンはAFL系労働組合副委員長であり、労働組合主義者である。このような人物によって労働政策が指導されたことが、終戦直後の混乱・無秩序をもたらしたいうべきである。
 昭和23年7月22日マッカーサー元帥の芦田首相宛書簡の発出〔*3〕により、31日政府は政令201号により政府職員の団体交渉権、争議権の否認、既存の団体協約の無効化を定め、GHQとの協議により、11月に国家公務員法が改正された。マッカッサー書簡には1937年のいわゆるルーズベルト書簡〔*4〕が引用された。全国労使関係法の適用は民間企業であって、これは大統領が公務員に団体交渉の手段は採用されないことを明言したものである。
 経済科学局労働課長キレンは団体交渉を否認する占領政策の転換についていけないとして、辞意を表明し帰国するが、実質的には追放されたわけである。 民主党のマニフェストは労働基本権の回復であるが、私は逆に政令201号は当然のことであると考える。
 アメリカ本国でも公務員の団体交渉や争議は認められてないのに(組合は議会への陳情することが行われていた)、本国よりも急進的な政策を軌道修正したマッカーサー元帥の政治判断は全く正しかったと評価するものである。
 
B 連邦公務員は今日においても争議権を全面的に否認

 連邦公務員において争議権が全面的に否認されていることは今日でも同じことである。ストの参加や主張は欠格事項に該当し解雇されると法律で規定されている。
 アメリカの民間企業一般において労働組合活動が制定法によって実質的に保護される体制となったのは赤い30年代、1932年のノリス・ラガーディア法(非暴力的な争議行為につき、裁判所による労働争議差止命令発給権限を否定し、契約自由により裁判所が法的効力を認めていた黄犬契約を否認した急進的立法)以降である。
 1935年ワグナー法(全国労使関係法)7条で被用者の団結する権利、労働団体にに加入・組織・支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉をする権利、団体交渉またはその他の相互扶助・保護のために団体行動をする権利を保障を規定し、8条に列挙される不当労働行為の規制を担当する機関として全国労働局を設けた。しかし公務員は適用除外である。
 1947年タフト・ハートレー法では「合衆国または合衆国により完全に所有される公法人(Government)を含む政府諸機関に雇用される個人が、ストライキに参加することは違法である。合衆国またはその機関に雇用されている個人であって,ストライキを行った個人は,直ちに解雇され、公務員としての身分を剥奪され,しかも以後三年の間,合衆国またはその機関により再雇用される資格を失うものである」(305条)とされている。
 さらに1955年に制定れた「法律第330号」は、同様の趣旨を詳細に規定し、さきのタフト・ハートレー法第305条を廃止したのである。法律第330号によれば(1条)、①いかなる争議行為であってもこれに参加し,または合衆国政府またはこれらの機関に対する争議権を主張する者および,②その事実を知りながら,合衆国政府またはそれらの機関に対する争議権を主張する政府職員の組織の構成員となっている者に対しては,合衆国政府またはその機関におけるすべての職につき、またはそれらの職を保持することはできないとし、その違反者に対しては、1000ドル以下の罰金もしくは-年以上の懲役またはそれらを併科することとされている。〔*5〕
 

〔*1〕西村美香『日本の公務員給与政策』東京大学出版会

〔*2〕ブレイン・フーバー民政局公務員課長は当時の官界の無規律・無秩序について次のように云っいる。
「‥‥某々省においては、数千という職員が、その勤務時間の全部を職員組合の仕事に費やしそれに熱中していました‥‥彼等は勤務時間中に数千人に及ぶ組合員の会合を開催していたので、そのあいだは役所の事務は全く停止されていました。彼等は建物の中で数個の最もよい室を占領してこれを職員組合の用に充てていました‥‥彼等は、勤務時間中に役所の費用をつかって、役所の仕事を犠牲にしながら、デモ行進やストライキをやりました。彼等は、その役所の業務管理の機能を奪ってしまったため、監督の地位にある上級官吏が自分の命令が確実に行われると自信を以て仕事を指揮している人はほとんどいない有様でした‥‥」岡部史郎『公務員制度の研究』有信堂1955 200頁

〔*3〕昭和23年7月22日内閣総理大臣宛マッカーサー元帥の書簡(抄出)
  ( 松林・寺田編 労働基本権関係資料『法律時報』48巻8号)
 ……勤労を公務に捧げるものと私的企業に従事するものとの間には顕著な区別が存在する。前者は国民の主権に基礎をもつ政府によって使用される手段そのものであって、その雇用される事実によって与えられた公共の信託に対し、無条件の忠誠の義務を負う。‥‥公務員の上にはこの国民全体に奉仕する義務が負わされている。‥‥……労働者の権利の唱道者として第一人者であったかつての故米国大統領フランクリン・ローズベルト」の言葉によれば「国民はその利益と福祉の為に政府活動のうちに秩序と脈絡とが維持せられることを要求する。公務員の上にはこの国民全体に奉仕する義務が負わされている。これは最高の義務である。彼等自身の職務が政府の機能に関係するものである以上、公務員の争議行為は彼等自身に於て要求が満足せらるるまでは政府の運営を妨害する意図があることを明示するものにほかならない。自ら支持を誓った政府を麻痺せしめんと企図するこのような行為は想像し得ないものであると同時に許しえないものである。」
 余はこの見解に全面的に賛成である。雇傭若しくは任命により日本の政府機関若しくはその従属団体に地位を有する者は、何人といえども争議行為若しくは政府運営の能率を疎外する遅延戦術その他の紛争手段に訴えてはならない。何人といえどもかかる地位を有しながら日本の公衆に対しかかる行動に訴えて、公共の信託を裏切るものは雇傭せられているが為に有するすべての権利と特権を抛棄するものである。
 「ローズベルト」大統領は更に言っている、「すべての政府職員は普通に知られている所謂団体交渉の手段は公務員の場合は採用できないものであることを理解せねばならぬ。団体交渉は国家公務員制度に適用せられるに当たっては明確なそして変更しえない制限を受ける。政府の性質並に目的それ自体がその行政運営に当る官吏をして政府職員の団体との間の協議若しくは交渉に於て使用主を代表し又は拘束することを不可能ならしめている。使用主は全国民である。国民は国会に於けるその代表者により制定せられる法律によりその意志を表明する。従って行政運営の任に当る官吏も雇傭せられているものも、均しく人事に関し方針、手続並に規則を定める法律によって支配せられ、指導せられ又少なからざる場合に於て制約を受けている」と
 然しながらこの理念は公務員たるものが、自ら若しくは選ばれた代表を通じ雇傭条件の改善を求めんが為に自由にその意見見解若しくは不満を表明する個人的若しくは団体的の妨げられることなき権利を有しない意味ではないことを明確に了解しなければにらない。この権利は民主主義社会に固有の権利であり奪うべからざるものである。而して余はこの権利は現に提案されている国家公務員法の修正案の中に十分規定せられていると信ずる。

〔*4〕ルーズベルト大統領は1937年に連邦公務員全国連合のルーサー・スチュワードに宛た有名な書簡で「すべての政府職員は普通に知られている所謂団体交渉の手段は公務員の場合は採用できないものであることを理解せねばならぬ。団体交渉は国家公務員制度に適用せられるに当たっては明確なそして変更しえない制限を受ける。政府の性質並に目的それ自体がその行政運営に当る官吏をして政府職員の団体との間の協議若しくは交渉に於て使用主を代表し又は拘束することを不可能ならしめている。使用主は全国民である。国民は国会に於けるその代表者により制定せられる法律によりその意志を表明する。従って行政運営の任に当る官吏も雇傭せられているものも、均しく人事に関し方針、手続並に規則を定める法律によって支配せられ、指導せられ又少なからざる場合に於て制約を受けている」と述べ、職員団体の論理的地位を認めつつも公務員の団体交渉の可能性についてははっきりとした限界(definite limits)があることを明確にしている。団体交渉権の否定であるから当然争議権を否定しているのである。

〔*5〕浜口金一郎「公務・公共部内における労働基本権の考察――主要各国の法制――」『比較法制研究』(國士舘大學比較法制研究所)第5号1981
http://libw01.kokushikan.ac.jp/RING/SKStart.html?recordID=1001731&status=01&type=2&reqPageType=SN

本郷和人にはがっかりした

 日本中世政治史研究者で、権門体制論、龍粛の西園寺家中心史観、網野史学、皇国史観などを斬りまくっている本郷和人が、また新書判の本を出した。『天皇はなぜ万世一系なのか』文春新書である。
 196頁以下で保守論客の女系天皇反対論批判をやっていて、「結果としての男系天皇にすぎない」と言う。その理由の一つとして高群逸枝説の古代における招婿婚の盛行を取り上げて、「天皇の相承は男系で、という強烈な意識があったのは想定しがたく」などと書いている。こういう言い方は暗に女系論者を応援しているかのごとくである。藤原氏が外戚として権力を握ったのは招婿婚ゆえであるというのも理解しがたい見解である。たとえば清和天皇は母藤原明子の里第である染殿もしくは、良房邸で育てられていたかもしれないがも東宮雅院という大内裏の内の敷地を居所としていた可能性もある。その場合も母と同居していたのだろうが、いずれにせよ外戚の庇護のもと育てられるという問題と皇位継承のルールとは直接関係ない。
 東大史料編纂所准教授だから影響力はある。それが小林よしのりと似たような理屈を書いていて不愉快だし、ばかげている。
 前にも書いたことだが、天皇の親族であるところの皇親の制における構成員資格(親王号、王号を称する範疇といってもよい)は平安時代以降親王宣下の制度により皇親の制度が変質した後においても父系単系出自(自然血統)であることは一貫しており、男系を意識しないなどということは論理的にありえない。平安時代になると藤原基経の妻に人康親王女とか、藤原師輔に康子内親王や雅子内親王が降嫁した事例があるので、男系を意識しないと論理的に皇親と王氏(皇別氏族)とその他の氏との区別ができないからである。
 再三言うが、違法であるが村上天皇の勅許により、康子内親王(醍醐皇女、母は皇后藤原穏子)が藤原師輔に降嫁し、産褥のため薨ぜられたが、遺児が太政大臣藤原公季(閑院流藤原氏の祖)である。一品、准三后康子内親王は后腹で村上の同母姉であったこと、皇后藤原安子が師輔長女であることから公季はミウチ同然として宮中で育てられ皇子に等しい扱いをされたが、いかに天皇の甥という近親であれ、父方が藤氏なので皇親ではないし、皇位継承資格はない。もちろん当時においては多くの皇親を支える財政状況になかったので、男系の二世王あるいは賜姓源氏より藤原氏のほうが有益だったかもしれない、実際公季は右大臣から太政大臣まで昇進したが、皇親が男系であることは自明である。

 また、中世政治史・古文書学が専門で家族史が専門外であるとはいえ本郷和人が高群逸枝説ないし高群の影響を受けた女性史学を無批判に受容しているかのごとき記述は軽率に思える。妻問婚、婿取婚から嫁取婚へという図式は通説ともいわれるが、反対説や厳しい批判も少なくないからである。
 例えば鷲見等曜、歴史人類学の江守五夫の嫁取婚古代起源説、近年では栗原弘が、高群逸枝は『招婿婚の研究』で史料を改竄していると厳しく批判し、実際には高群が主張するほど平安時代に婿取婚が一般的ではなかったことを示している。
 私はより広い視野で歴史人類学の立場から高群系女性史学批判をやっている江守五夫の嫁入婚古代起源説を基本的に支持する。(なお私は1980年頃都立大学の事務局に勤務したことがあって、民青が自治会を支配していた大学で、学生が校門の近くで江守の『愛の復権』という道徳の教科書みたいな著作を宣伝したのを知っている。同氏は共産党に近い立場だったのだろう。同氏は『母権と父権』で「婚姻を真に夫婦相互の人格的愛情の上に築きあげ……対等な地位と権利を実際に享受せしめるためには……私有財産制を止揚する以外に」http://www.asyura2.com/0411/bd38/msg/915.htmlと論じているから共産主義者のように思える。しかし、私はその人の政治的イデオロギーがどうあろうと純粋に学問的業績は業績として評価する考え方である。)
 都立大といえば図書館で中山太郎の『日本婚姻史』を読んだ記憶があるので、基本的に土俗研究や人類学は好きなほうである。日本民族文化の生成に関する問題を体系化したのが戦後都立大の教授だった岡正雄である。岡は日本の基層文化は次の五つの文化複合であるとした。。
1 母系的・秘密結社的・芋栽培=狩猟民文化 (アジア沿岸南方地域より渡来)
2 母系的・陸稲栽培=狩猟民文化(縄文末期 南方より渡来)
3 父系的・「ハラ」氏族的・畑作=狩猟民文化(弥生時代初期、満州・朝鮮より渡来 ツングース系の種族)
4 男性的・年齢階梯制的・水稲栽培=漁労民文化゛(弥生中期紀元前4・5世紀、揚子江河口より南の沿岸地域、呉と越の滅亡に伴う民族移動の余波として渡来)
5 父権的・「ウジ」氏族的・支配者文化(3・4世紀頃、満州南部アルタイ系騎馬遊牧民が朝鮮半島を南下して、南部にとどまり、3・4世紀頃、列島渡来)
 この業績は戦前のものである。この説から進展した騎馬民族制征服説は今日ではあまり評価されていないのもで疑問点もあるが、単一民族といっても、わが国の基層文化は複合的、重層的なものであり、単一の文化に還元すべきではないという点では正しい説である。婚姻に関しても、江守が言うように古くから南方系の一時的訪問婚と北方系の嫁入婚の融合と併存した文化と理解すべきである。(江守五夫『家族の歴史民俗学』弘文社 1990 25頁)
 江守はこのうちの1と2の「母系的」親族組織は現代の学問水準では「双系的」と改めるべきであり、1と2は本来同じものだったかもしれず、4との関連が問題と述べている(前掲書序説 )。
 もっと単純化すれば、戦前の民俗学者中山太郎の言うように、わが国の基層文化は南方系と北方系から成り立っている。
 南方系基層文化(江南より南部、東南アジア方面に由来)としては、年齢階梯制、若者宿、一時的訪妻婚、歌垣である。中国南部から東南アジア方面から耕作文化とともに伝播したと考えられている。現代においても中国雲南省の少数民族に歌垣などわが国の基層文化と類似した土俗を見いだすことができる。(つまり妻問い婚とかヨバヒ、歌垣に見られる若者と娘の集団見合というのは南方系基層文化であり、現代においても集団見合型の合コンがこの文化の進展と私は思う、歌の掛け合いが王様ゲームに変わっただけ)。
 一方、北方系基層文化(東北アジアから内陸アジアに由来)は嫁入婚を基本(ただし婿養子型招婿婚もあり父系的親族体系と入婿は共存する文化である、共存しないと考えるのは中国の宗法制度を基準とする固定観念である)としているが、江守五夫の東北アジア民族の嫁入婚と日本の嫁入婚習俗との類似点を明らかにしている(前掲書)。
 レヴィレート婚(亡夫の弟が寡婦となった嫂を娶る-わが国の戦争未亡人の多くの再婚がそうである)寡婦相続婚、姉妹型一夫多妻婚や婚姻儀礼にまつわる呪術的習俗である。特に日本海沿岸地帯に見られる「年季婿」(妻家での一定期間の労役を条件とする婚姻)と東北アジアに見られる「労役婚」との類似性を指摘している(前掲書)。
 これは放送大学の講演で聴いたことだが、東日本にみられる見かけ上の初生子相続、「姉家督(民俗用語)」も長男が成長するまでの「労役婚」のバリエーションとしてとらえむしろ姉夫婦が分家独立することから、「姉家督(民俗用語)」は母系的親族関係を意味せず、むしろ父系的親族関係に由来するみなしたことなど優れた着眼点に思える。
 また江守五夫は柳田国男が「結納」について、贈物が些細で初婿入りの酒肴にすぎないとしているのを批判し、これは酒食の提供ではなく花嫁代償的な財貨の提供としての性格を看取できるとしている。
 現代では一般に100万、70万、50万といわれる「結納」相場とされるが、どうだろうか。私は結論を出せないが、もし花嫁代償なら嫁入婚の慣習だと言わなければならない。「結納」に類似した慣習が蒙古族や南ブリヤート族にもみられる。『日本霊異記』中巻33話にに鏡作造の美貌の娘の求婚のために美しく染めた絹布車三台分を送る男が現れたという話がある。江守は絹布車三台分は虚構であるとしても、このエピソードは相当の婚資を贈る慣習(嫁入婚)が前提となっていると解説する。
 さらに重要なことは江守は古代における嫁入婚の例証を「天皇家」に見いだしていることである。(前掲書22頁以下)
『日本書紀』巻三神武天皇即位前己未年九月二四日条   
 「媛蹈鞴五十鈴媛命を納れて、正妃としたまふ」
『日本書紀』安康天皇元年二月条
 「爰に大草香皇子の妻中蒂姫を取りて、宮中に納れたまふ」
納れて(めしいれて)、宮中に納れたまふとは、呼び入れることで妻問いではない。
ただし、すでに述べたように、《一時的妻訪婚》文化と《嫁入婚》文化の特殊な融合と併存が実態であったという。
 「嫁迎えではなく、求婚としての「よばひ」を一、二回行ったあと、ただちに妻を夫家に移させたり(神武天皇と伊須気余理比売の婚姻伝承)‥‥‥《一時的妻訪婚》の習俗にもとづいて婚約のしるしとして“つまどいのもの”を相手の女に与える場合(雄略天皇と若日下部王との婚姻)‥‥「納采」(あとうること)と称する花嫁代償の授受が行われたりした(履中天皇が皇太子時代に黒媛を妃にしようとして贈る)」
  「天皇家に関しては《嫁入婚》が婚姻の基本形態をなしていた」「平安時代中期でも。『宇津保物語』に描かれているかぎりでは、天皇家の婚姻形態は《嫁入婚》であった」としている。
 さらに江守は考古学者の白石太一郎説を引き『古事記』・『日本書記』・『新撰姓氏録』』などに記載された「古代豪族の厖大な同祖・同族系譜」の形成が古墳時代-とくに五世紀後半から六世紀前半-にまで遡るとしていることを根拠として、五世紀後半から六世紀前半に既に父系出自集団が成立していたことは社会考古学上動かしえぬ事実と断言し、父系出自集団たるウジを国家の社会機構に組み入れた制度こそが氏姓制度であるとする(前掲書30頁)。
 もちろんウジの性格については議論のある問題だが、厳しく批判されている高群系女性史学を過大に評価して、わが国はもともと双系ないし無系社会で、シナの制度の移入により父系親族制度に再編されたなどと単純な見方は誤りである。わが国では古くから父系的、ないし準父系、双系的な親族関係の複合的ないし併存した基層文化があったとみるのが真実に近いものと考える

2010/11/28

公務員に争議権付与カウンターレポート下書き-アメリカ合衆国・オーストラリアとの比較法制(1)

 そもそも私は、2008年自民党政権の「国家公務員制度改革基本法」12条における「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益および費用を含む全体像を提示し、その理解のもとに開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とした団体協約締結権付与も反対であるが、このたびの争議権を付与する民主党政権の方針はより深刻であり、なおさら強く反対である。11月26日国家公務員へのスト権付与に関する有識者懇談会の初会合を内閣府で開かれた。http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2010112702000037.html報道によると有識者懇談会の慎重派は石原信雄氏を含む少数とされており、労働基本権回復は民主党のマニフェストに明記されていることもあり、来年の通常国会でスト権付与法改正提出が想定できる。もっともねじれ状態での通常国会は紛糾が予想されるが、政治的取引で民主党提案を軸に可決する危険性も高い。これは国制の根幹にかかわる重大問題であり、争議権付与に反対の立場でカウンターレポートを短期間に書き、ブログだけでなく国会議員に送付したいと考えてます。論点は多岐にわたる。総じて言うなら労働基本権付与問題はILO勧告に引きずられすぎであり、19世紀末期から20世紀60年代頃までのトレンドに過ぎなかった、コレクティビズムに固執しすぎである。論点は多岐に及ぶ。各題材で下書きを積み上げて一本に要約するやりかたとします。

 諸外国との比較法制という観点で、公務員にスト権付与は突出して急進的な政策といえる。まずアメリカ合衆国と関連してオーストラリアの比較である。
 
連邦公務員はスト参加で解雇される(1)

(要旨)アメリカ合衆国では連邦公務員は同盟罷業を一律に否認している。ストトライキに参加したり主張するたけでも欠格事項であり解雇される。1981年の航空管制官ストではスト参加の組合員1万2千人が解雇され、判例上も解雇が確立している。団体交渉制度は組合の支持で当選したカーター政権の1978年連邦職員労使関係法で制度化されたが、団体交渉の範囲が限定されているうえに、給与は法定主義が維持されている(ただし1970年連邦給与均衡法では連邦被用者給与諮問委員会で組合代表者5名の意見・勧告が考慮されることとなっている*1)。会計検査院(GAO)、連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)、国家安全保障局(NSA)、連邦労使関係庁(FLRA)、連邦公務紛争処理委員会(FSIP)、テネシー渓谷開発公社(TVA)は団体交渉権の適用除外である。
 また大統領には国家安全保障上必要であれば、その部署の団体交渉権を剥奪する権限がある。ブッシュ大統領は2002年に司法省の1000人の団体交渉権を剥奪したほか、新設の国家安全保障省(22の国内組織を統合・約20万人)では実質的に団体交渉を廃止した。また新設の運輸保安庁の空港荷物検査員5万6千人、 National Imagery and Mapping Agency (NIMA) 2000人の団体交渉権を撤廃した。
http://www.psi-jc.jp/focus/2004_02/12_bushkeeps.htmさらに国防総省の新人事制度では、職務遂行能力と処遇の結びつきを強化し、職員の雇用、昇進、懲罰をより容易にし、加えて賃金水準の決定を団体交渉の対象から外し、労働組合の力を抑えるものである。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2006_4/america_01.htm#01
 連邦政府職員に横断的に適用される一般俸給表は、50年以上前に設計された年功序列の給与制度で、もっと柔軟で採用、昇進や解雇も容易な制度にオーバーホールが必要な時期に思える。トレンドは団体交渉権を抑える方向である。特にブッシュ政権が活発に動いて組合の弱体化政策をとったといえる。ただしそれは国家安全保障を名目とする組織に限定されているが、国防総省などの新制度を他の省庁も実施できるようにできれば大きな改革となるだろう。
 なお、「民間サービスマネジメント」(連邦政府行政予算管理局のA-76通達による官民競争入札)による行革施策も行われている。
http://www5.cao.go.jp/koukyo/hourei/nyumon/pdf/nyumon4.pdfがこれも民間に業務を移して雇用は増やす政策で組合が反対している政策である。
 アメリカの経験からみて行革のためにわざわざ争議権を付与し、労働組合の威力を増すようなわが国のやり方は本末転倒であるといわなければならない。

*1菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策-アメリカにおける可能性と限界(一)」『法学協会雑誌』98巻1号 1981

2010/11/25

看護婦は美人でないほうが良い

 非常に遅くなったが、公務員の労働基本権付与に関する有識者懇談会があすから始まるということで、一気に反撃を開始することとしたい。これまでのブログはお遊びこれからが真剣勝負で頑張る。
 茂木健一郎の『ピンチに勝てる脳』集英社2010年を読んだ。やらないよりはやる。悩まないで打って出る。振り返ったり反省しない、脳は疲れない。我慢することが脳のストレスなどと書かれていた。
 叩くべき時に敵を叩いてないからストレスが深刻になるだけ。この点は北の将軍様に見習いたい。我慢せずに大砲を撃つということです。
 ところで、昨日は狭心症のためカテーテル検査で一泊入院した。これは2度目ですが、6年前より技術的に進歩したのか、前回よりも不快さは少なかった。ただ止血で15分間股の付け根を男に押さえられたのが不快だった。
 ポルノ男優がやるような前貼りを看護婦にはがされたが、勃起したらどうしようと思った。足から入れたので一晩止血のためベットに寝たままにされた。溲瓶でおしっこをとるのでいつでも呼んでくださいとのことだったが、なぜか我慢した。看護師様と偉そうな職名になったので、呼び出すのを我慢していたというのは冗談で本当の理由は、美人看護婦に溲瓶をさされると勃起するのではという不安があったためである。造影剤を出すので水分はたくさんとれといわれたので、結局おしっこがたまって、いざ出すとなると溲瓶からこぼれそうになるほど大量になった。こんなことなら我慢せずにちょびちょび出していたほうがよかったと後悔した。看護婦は美人でないほうがストレスがなくて良いように思える。
 本日は心エコー(心臓超音波検査)というのをやった。4~5回以上はやっているが、部屋を暗くたり、ローションみたいのをぬったりするやり方はファッションヘルスを連想するのである。最初の時が一番興奮したというのは体を密着させたからである。コスプレでなく本物の看護婦だから余計興奮する。ところが2回目から間にクッションを置くようになった。これなら勃起せずにすむなと思った。もっとこっちに寄って下さいといわれたので、下半身を寄せたら、お尻のほうでなく胸ですと言われた。
 検査の結果は仕切り直し、12月にその方面の権威の先生が来るので、ステントを入れて、詰まっている冠動脈を治療するとのことだった。午後は職場に行き8時半まで仕事をして帰る。

2010/11/21

入手資料整理45

9373『現代労働法講座第5巻』総合労働研究所 国武輝久「ピケッティング」
9374「国際労働運動の暦 1981年米航空管制官スト」『国際労働運動』(中核派機関誌)408号 
9734『文献研究 労働法学』総合労働研究所1978 奥山明良「ユニオン・ショップ協定の法理」香川孝三「ピケッティング」
1-2カーン・フロイント著松岡三郎訳『イギリス労働法の基礎理論』日本評論新社1957
1-3長沼秀世・新川健三郎『アメリカ現代史』岩波書店1991
1-4木南敦『通商条項と合衆国憲法』東京大学出版会1992
1-5千々岩力『アメリカ不当労働行為審査制度の研究』日本評論社199木-
1-6伊藤健二・関口定一『ニューディール労働政策と従業員代表制』ミネルヴァ書房2009
1-7黒川博 『U.S.スティール経営史』ミネルヴァ書房1993

関連http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-d764-1.html

2010/11/20

柳田法相辞めないほうがいい

 たんに、院外の内輪の会合で国会答弁のテクニックを説明しただけ。辞めると、菅の盟友といわれる小川敏夫副大臣が昇格と報道されてるが、ウィキペディアの情報では「2009年11月26日、衆議院第1議員会館で、在日本大韓民国青年会や在日本大韓民国民団が主催する「永住外国人の地方参政権法案の早期立法化を求める11・26緊急院内集会」に参加し、在日外国人の参政権法案を成立させる決意表明をした」とある。今の大臣の方がましかもしれない。

入手資料整理44

従来、ネット公開論文は1万番台でしたが全て紙出力してファイルするため9000番台の続きとします。(リンクが貼ってあるのはネットでダウンロードできます)

9344森川章「デュポン社ベル工場への労組の組織化攻勢 : ニューディール・第2次大戦期のデュポン社労使関係の分析(平尾武久教授追悼号) 」『産研論集』21(1999)http://ci.nii.ac.jp/naid/110004028226
9345(書評)内田一秀平尾武久・伊藤健市・関口定一・森川章編著, 『アメリカ大企業と労働者-1920年代労務管理史研究』, 北海道大学図書刊行会, 1998年刊(平尾武久教授追悼号) 『産研論集』21(1999) http://ci.nii.ac.jp/naid/110004028238
9346内田一秀「IBTの1905年シカゴ・ストライキ 」『経済と経営』24-1(1993)http://ci.nii.ac.jp/naid/110004035059
9347道幸哲也「誠実団交義務法理の形成 -ワグナー法制定までの経緯」『北大法学論集』 第31巻 第3・4合併号 下巻
http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/handle/2115/16344
9348荒木誠之「アメリカ団結立法の形成と運営(二・完) : ワグナー法を中心として」『法政研究』  44(4) [1978.03]  http://hdl.handle.net/2324/1749
9349荒木誠之「アメリカ団結立法の形成と運営(一) : ワグナー法を中心として」『法政研究』   44(3) [1978.02] http://hdl.handle.net/2324/1741
9350石田正治「安全保障のパラドックス : アメリカの冷戦政策と国内治安立法」『法政研究 』 57(2) 1991 http://hdl.handle.net/2324/1919
9351砂山克彦「アメリカにおける労働協約の効力 : 労働協約中の仲裁条項のもとにおける労働者の協約上の権利『Artes liberales』17号, (1976), 」 http://hdl.handle.net/10140/2179 
9352古賀昭典(訳)アーロン, ベンジアミン[著]「タフト・ハートレー法改正をめぐって」『九州工業大学研究報告. 人文・社会科学』8号1960
   http://hdl.handle.net/10228/3306
9353道幸 哲也「アメリカ における「不当労働行為制度」の形成(一)」『北大法学論集』 24(2)1973 http://hdl.handle.net/2115/16150
9354道幸 哲也「アメリカ における「不当労働行為制度」の形成(二・完)」『北大法学論集』 24(3)1974 http://hdl.handle.net/2115/16157
9355橋場俊展「「従業員参加」論とチーム法」『労務理論学会誌』 (11) 2002http://ci.nii.ac.jp/naid/110001272772
9356砂山克彦「アメリカ,カナダにおける労働協約の効力 : 協約終了後の労働条件」『Artes liberales』 第28号 (1981), http://hdl.handle.net/10140/2267 
9357橋場俊展「「高業績パラダイム」の批判的検討 : Godard & Delaney
の所論を中心に『三重大学法経論叢』26(2) (2009)http://hdl.handle.net/10076/10691
9358塚本重頼「アメリカの不当労働行為制度-4-労働組合の不当労働行為(1)」『季刊労働法』 (通号 153) [1989.10]
9359塚本重頼「アメリカの不当労働行為制度-5労働組合の不当労働行為(2)」『季刊労働法』(通号 154) [1990.02]
ページ    p118~123
9360塚本 重頼「アメリカの不当労働行為制度-6-NLRBにおける不当労働行為の救済手続」『季刊労働法』 (通号 155) [1990.05]
9361塚本 重頼「アメリカの不当労働行為制度-7-NLRBの自由裁量権」『季刊労働法』 (通号 156) [1990.08]
9363塚本 重頼「アメリカの不当労働行為制度-8-救済命令の態様-1-」『季刊労働法』(通号 157) [1990.11]
9364石橋洋「アメリカにおける労働協約上の組合活動権放棄条項の効力--被用者の組合勧誘権および文書配布権の組合による放棄に関連して-1-(外国法研究) 」『季刊労働法』  (通号 151) [1989.04]9365石橋洋「アメリカにおける労働協約上の組合活動権放棄条項の効力--被用者の組合勧誘権および文書配布権の組合による放棄に関連して-2完-(外国法研究) 」『季刊労働法』  (通号 152) [1989.07]
9365石橋洋「勤務時間中の組合バッヂ着用と職務専念義務違反の成否 : JR東海(新幹線支部)事件・東京高裁判決(平九・一〇・三〇労判七二八号四九頁)の研究」『労働法律旬報』1437号1998-8-10http://hdl.handle.net/2298/14077
9366石橋洋「米国における労働法研究の動向 : 競業避止義務論と組合活動論を中心に」『日本労働研究雑誌』409 1994・3http://hdl.handle.net/2298/14049
9367石橋洋「コリンズの雇用契約論 : 雇用契約の意図的不完全性とデフォルトルールを中心として」『労働法律旬報』1672 2008-5-25http://hdl.handle.net/2298/14088
9368石田眞「批判法学」からみた労使関係と法-1--2完-「ワグナー法」論争をめぐって『季刊労働法』(通号 152) [1989.07](通号 154) [1990.02]
9369清水敏「人事院勧告の凍結に反対するストと懲戒処分」季刊労働法』(通号 154) [1990.02]
9370坂本重雄「公務員の労働基本権の法構造--米国公務員労働政策の展開過程の検討を中心として」『東京都立大学法学会雑誌」3(1・2) [1963.03]
9371佐藤敬二「アメリカにおける公務員の争議権保障-1980年代の展開-」『季刊労働法』153号1989

2010/11/18

入手資料整理43

  今日は、ラジオアイソトープ、心筋シンチングラム検査のために休んだ。8時半から1時半までかかった。

9338吉川英一郎「米国連邦裁判例から学ぶセクハラ・リスク・マネジメント」第1回-違法となるハラスメントの程度 苛酷・蔓延のレベル-『月刊 国際法務戦略』12巻9号

9339吉川英一郎「セクハラ・リスク・マネジメントを確立するために」『『月刊 国際法務戦略』12巻5/6号

9340千種達夫「ピケッティングの正当性の限界」団藤重光,平場安治,鴨良弼共編 『刑事法学の基本問題 : 木村博士還暦祝賀. 上 』有斐閣1958年

9341籾井常喜「アメリカ不当労働行為制度を支える法理」『東京都立大学法学会雑誌』3巻1/2号 1963

9342塚本 重頼「アメリカの不当労働行為制度-2-アメリカ法における不当労働行為禁止の包括的規定」『季刊労働法』151号1989

9343塚本 重頼「アメリカの不当労働行為制度-3-アメリカ法における不当労働行為禁止の類型」『季刊労働法』152号 1989

2010/11/17

労使関係の団体主義から人的資源管理等の個別主義へのパラダイム変換の提案-アメリカにおける団体主義労使関係の衰退と非組合企業の隆盛(2)

 (註記)

2002年の民間企業の組織率は9.0%たが、部門別では、輸送・公益事業(電気、ガス、水道など)が23.5%と最も高く、続いて、建設業18.4%、製造業14.6%となっている。低い産業は金融・保険・不動産業で2.1%であり、最も低いのが農業で1.6%である。職業別に見ると、警備職(警察官、消防士など)が38.0%と最も高く、次に交通・運搬職の23.3%、技能職の21.5%が続いている。反対に、最も組織率が低い職業は、販売職で3.5%である。PDFhttp://www.jil.go.jp/kunibetu/kiso/2003pdf/us.pdf
 
 北米主要組合の組合員数(2004年)

チームスター(Teamstars) 140万人
全米州都市労組 (AFSCME)  140万人
国際サービス労組 (SEIU)  170万人
国際食品・商業労組 (UFCW) 140万人
全米自動車労組 (UAW)  71万人 (米国のみ)
国際電気工友愛労組 (IBEW) 75万人
全米教員連盟 (AFT)  130万人
全米通信労組 (CWA)  70万人
国際機械工労組 (IAM)  73万人
国際建設労組 (LIUNA)  80万人
http://www.jil.go.jp/foreign/basic_information/2005/america.htm
 
 1999年以後『海外労働情報』で記事になったストライキは次のとおりである。

 1999年10月チームスターズ労組によるユニオン・パシフィック社の換券会社でのでスト
http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2000_01/americaP03.htm
 2000年2月ボーイング社航空宇宙専門技術者労働組合(SPEEA)1万7千人の40日間のストhttp://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2000_05/americaP01.htm
 2000年5月~10月映画俳優組合(SAG)と米国テレビ・ラジオ芸術家連盟(AFTRA)に属する13万5000人の俳優による広告業協会(ANA および AAAA)に対するストhttp://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2001_01/americaP03.htm
 2000年8月 地域電話会社ベライゾン・コミュニケーションズ社の全米通信労働組合(CWA)組合員9万人による18日間のスト
http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2000_11/americaP01.htm
 2002年ロッキ-ド・マーティン社ジョージア州マリアッタ工場における国際機械工労組(IAM)に加盟している約2700人の機械工のストhttp://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2002_06/americaP03.html
 2002年太平洋海事協会(PMA)が国際港湾倉庫組合(ILWU)1万500人に対する2002年9月29日から10日間太平洋の29港で港湾封鎖(ロックアウト)http://www.jil.go.jp/jil/kaigaitopic/2002_12/americaP01.html
 2003年南カリフォルニアの公共交通機関MTA(Metropolitan Transportation Authority)の10~11月の35日間のストhttp://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_1/america_01.htm

 2003~2004年南カリフォルニアスーパーマーケット3社、クローガー(ラルフズを経営)、セーフウエイ(ボンズ、パビリオンズを経営)、アルバートソンズに対する国際食品商業労組(UFCW)のストと会社側のロックアウト、スト参加は最大時で7万人、店舗数は900店に及び(2003年10月11日から2004年2月29日の長期に及んだ。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2004_4/america_01.htm

 2005年12月20日よりニューヨーク市の地下鉄・バス 3日間のスト。ニュヨーク州では公務員ストは違法であり 州最高裁は20日午後、2度にわたる裁判所の禁止命令を無視したスト実行は、法廷侮辱罪に当たるとして、組合に対し1日あたり100万ドル(約1億1700万円)の罰金支払いを命じた。 労使双方は22日、ニューヨーク州調停委員のあっせん案を受け入れ、スト解除後に年金などの主要問題について交渉を再開することで合意した。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2006_1/america_01.htm

 2008年GMやクライスラーに自動車部品を供給するアメリカン・アクセル・アンド・マニュファクチュアリング・ホールディング社の2月26日から87日間のスト。GMのミシガン州ランシング近郊のデルタ・タウンシップ工場とカンザス州フェアファックス工場の4月17日から5月15日まで28日間のストhttp://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2008_8/america_01.htm
 2008ボーイング社の機械工関連部門を組織する国際機械工・航空宇宙産業労働者組合(IAM)の9月6日から57日間のストhttp://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2008_12/america_01.htm

 以上のように、電話会社、スーパーマーケット、航空産業、自動車などで大きなストがあった。しかし民間企業は組織率が7%まで低下している以上、アメリカの主流は組合不在企業となったというべきである。

 

2010/11/16

本日は自己申告の面談

 目標成果シートには何も言及ない、全てスルー、ほかでもそうであるが基本的に異動希望をきくだけのものに形骸化している。目標管理制度は全く機能してない。こちらは二の矢、三の矢を放つ予定と言ったが、不愉快であることを表明していた。事故扱い処理というのが組織的対応なのかをきいたが、個別的対応で組織的ではないとしていた。今日きいたところで初めて知ったのは、昨年スト予定時に、組合が所長に対し私を入室させないと言ったそうだ。ピケを通過させない指示により組合に同調しストに協力しているのは明らか。一方で所長は来客用入り口をピケを張らせないとしたが、通用口を事実上許可したかたちになっている。本庁についてもきいたが警備員がいるーので厳しいピケは張れないと言っていたが。詳細は不明である。セクハラアンケートの自由意見は要約したものを報告書に載せるだろうと言っていた。ただ事務局に命令してはいないと言った。10日は私に対して、でっち上げだなど言っていたが、記録もあるのでこの次は具体的に発言を示す予定。

労使関係の団体主義から人的資源管理等の個別主義へのパラダイム変換の提案-アメリカにおける団体主義労使関係の衰退と非組合企業の隆盛(1)

アメリカの労働組合組織率低下の要因について(1)

 
 アメリカの労働組合の組織率は民間企業で2006年に7.4%、協約適用労働者で8.1%であるhttp://www.austin-chamber.org/DoBusiness/GreaterAustinProfile/Japanese/workforcej.html(公共部門も含めた全体では組織率12.0%、協約適用労働者13.1%にすぎない[註1]))。竹田有によるとアメリカは既に「労働組合がほとんど存在しない経済体制」[註2]とも言われる、。竹田有の表現は新鮮だが、まだ侮れないと思う。巻き返しの可能性は残っているから。
 労働組合の巻き返しの一手が組合の労働組合の結成を容易にするるカードチェック法案 Employee Free Choice Act であった。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2009_6/america_01.htmこれは、1947年タフト・ハートレー法以来の大きな改革で、国家は中立主義だったのを団体交渉促進に舵をきる時代錯誤な法案である。オバマは労働組合の支援で当選しており法案を支持した。2009年上院で審議入りしたが、もちろん全米商工会議所をはじめ実業界は猛反発し、結局上院の賛成者が60名に達していない。また審議が深まらなかった要因として、オバマ政権を実質的に仕切っていたエマニュエル主席補佐官が医療保険制度改革を優先する政治判断をとり、そちらにエネルギーが集中されたこともある。またエドワード・ケネディ上院議員死去に伴う上院補選で共和党のブラウンが当選したことも重なった。2010年9月オバマは上院通過は困難と発言している。http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2010_10/america_02.htm。また中間選挙で共和党が46議席を獲得したので、さしあたりアメリカ社会左傾化の危機は回避している状況にある。
 しかし、際どかったといえる。民主政体の恐さを感じる。今の国会議員は1937年の座り込みストがいかに悪質だったのか。アメリカで組織率が最も高かったのは、第二次大戦中の40%といわれているが、戦時協力のためストを自粛していた組合が、終戦後1年に大幅な賃上げを求め490万がストに参加する史上最大のスト攻勢となった[註3]、その時の国民の怒りを忘れたのだろうか。あまりにも強くなりすぎた労働組合の権力を削ぐことを目的としたのが1947タフト・ハートレー法だが、共和党と南部民主党でトルーマンの拒否権行使を覆す再可決で法案を通過させたのである。再び組合に強い権力を付与するこの法案の愚をわかってない議員が多すぎる。結果的にはフィリバスターを無効とするためには60名(5分の3)の議員の賛成票を要するという上院のルールで辛うじて回避しているきたといえるだろう。

 アメリカの全国労働関係法は排他的交渉単位制度を採用しており、労働組合を組織する場合は、交渉単位の労働者の30%以上の賛成署名を集めるとともに、全国労使関係委員会選挙において労働組合は過半数の支持を得なければならない。交渉代表に選出された多数組合は、その組合を支持しない被用者も含めて、単位内の全被用者のために団体交渉を行う権限を有する。組合と使用者間で締結された労働協約は、単位内の全被用者に適用される。代表となる制度であるが、全国労使関係法が会社組合を実質否定しているため、アメリカでは集団的従業員代表制というものは公式的には存在しない。従って組合代表選挙が行われない反労働組合企業(例えばウォルマート等)、組合代表選挙が行われても、組合が敗北した企業(例えば北米日産)、また組合代表権否認選挙で組合を追い出した企業では組合は存在せず、個別契約、個別交渉の労使関係なのである。なお、日本の労働基準法の36協定のような制度は存在しない。わが国のように組合のない企業でも過半数代表との協定を要するいう制度はない。(アメリカの連邦法には労働時間、有給休暇、休日について定めた規定はない。1938年公正労働基準法(FLSA)は週40時間を超えて働かせた場合には、超過労働時間について通常賃金の50%増の賃金の支払いを使用者に義務づけているだけである。)

 組合代表選挙で組合が勝っても、必ずしも団体協約が成立するものではないから正確ではないが、大ざっぱにいって、従業員の過半数が組合を選挙で支持すれば、団体主義の労働関係になり、そうでない場合は個別主義の労使関係のままで、組合は排除できる制度である。この制度はサッチャー・メジャー政権時代のイギリス、アメリカではニューディール立法以前であるが、組合を団体交渉の席に着かせるか否かの組合承認は経営者の任意の判断としているあり方と比較すると一見して、組合に有利に思えるかもしれないが、必ずしもそうともいえないところを理解する必要がある。(つづく)

註1)2002年の公共部門の組織率は37.4%である。公共部門の内訳を見ると、連邦31.6%、州30.5%、地方自治体43.1%と、地方自治体労働者の組織率が最も高い。民間部門では、輸送・公益事業(電気、ガス、水道など)が23.5%と最も高く、続いて、建設業18.4%、製造業14.6%となっている。低い産業は金融・保険・不動産業で2.1%である。PDFhttp://www.jil.go.jp/kunibetu/kiso/2003pdf/us.pdf
註2)竹田有『アメリカ労働民衆の世界-労働史と都市史の交差するところ』
ミネルヴァ書房2010年
註3)有賀・大下・志邨・平野編『世界歴史大系 アメリカ2』油井大三郎「パクスアメリカ-ナの時代」329頁ストライキは自動車・鉄鋼・食品加工・電機に波及し特に炭鉱と鉄道で強力に展開された。

2010/11/15

昨年イチローが売りに出した邸宅の感想

 ワシントン州イサクアーにある白亜の邸宅の写真をみたが湖を見下ろせるところがよい。http://celebrity.aol.jp/photogallery/ichirosuzuki_home/シアトルにこだわる理由は何かはわからない。

2010/11/14

入手資料整理42

1-1 竹田有『アメリカ労働民衆の世界-労働史と都市史の交差するところ』
ミネルヴァ書房2010年
 今年9月の新刊書。竹田有の論文のコピーはいくつか持っているしブログでも引用し知ってはいたが、著者の単著はこれが初めてのようだ
 
 後書きで著者が自画自賛している。「わが国ではほとんど研究蓄積のない労働民衆についての先駆的な実証研究」「ウィスコンシン学派へのアンチテーゼ」「19世紀後半から現在までの労働史と都市史の史的潮流の輪郭をともかく提示」したとのことである。
 アメリカの経営史では数多くの業績を知っている。組合不在企業の経営史を書いたジャコ-ビィの翻訳や平尾武久や伊藤健市の労務管理経営史などの一連の著作・論文は大抵持っている。それもおもしろかったが、経営史が専門でなくアメリカ史(アメリカ地域)研究者である竹田有の視角のほうが広いように思えた。
 労働民衆史ではハワード・ジンの翻訳もあるが、とにかく左翼的で辟易する。また、労働法制史では水町勇一郎の著作も出ているが、連合総研に関わっている人なので気に入らない。この点、竹田有はどうか。アメリカの組合の衰退の要因を探りながらも、労働組合に好意的な表現もみられ、例えば240頁にある非組合企業IBM、マクドネル・ダグラス、マックスウェルのリーン生産方式より、組合のある企業ゼロックス、サターン、コーニングガラス、AT&Tのチーム生産方式が優れているなどとしているところなど疑問である。サターンのブランドは廃止したではないか。が、しかし、基本的にはアメリカ史の研究者なので比較的客観的に論じているとは思う。私が特に関心があるのは第4章「反組合主義とビジネス・ユニオニズムの成立」と第6章「ニューディ-ル労使関係の終焉」である。

 
 第6章では組合組織率低下の要因を明らかにしている。産業構造の変化というよりも、最大の要因が反組合主義の伝統から「経営者の反対と抵抗」と分析している。また組合勢力の「地域的偏在」も挙げている。
 「経営者の反対と抵抗」を可能にした法制度的要因は1947年タフト・ハートレー法と特に全国労使関係委員会(著者は全国労働関係局と訳すNLRB)の保守化にあることを示しているが重要な事柄なので、稿を改めて検討したい。
 
 著者は1947年タフト・ハートレー法の性格について「一方では団体交渉権を擁護したワグナー法の原則をそのまま取り入れたものの、他方では労働組合による通商の妨害と組合の不当労働行為を指摘し、雇用主の反組合的な言論の自由を保障することで組合の力を弱めようとした。さらに‥従業員個人の『組合に加入ししない』権利(労働権)を擁護し、団体交渉の原則と相反する自由な個別交渉の権利を尊重する原則を打ち出した‥‥」と説明しているがわかりやすい要約と思う。(217頁)

 ニューディール立法である1935年ワグナー法は団体交渉による産業平和のため団体交渉を促進したのである。しかし、その期間は短かった。わが国の不幸は戦争に負けてアメリカでも最も左傾化した時代の影響を受けたことである。わが国は団体交渉を促進させる法体系であり、労働政策は政労使三者構成原則の審議会で策定されるため、労働組合の既得権を無視した政策は実効されない構造になっているわけだが、アメリカでは日本国憲法が施行されたその年に重要な政策転換があり、団体交渉の無推進者としての連邦政府の役割から著者のいう「タフト・ハートレー法における、個別交渉と団体交渉との間の従業員の自由な選択の『中立的保証人』という連邦政府の概念」に変化した。著者はアメリカにおいて「団結権と団体交渉権は確固たる国法でなかった」と述べているが事実とのとおりであり新鮮な表現に思えた。
 脱線するが、私が尊敬する政治家を1人挙げるとすれば、ミスター共和党ロバート・タフト上院議員である。共同提案のもう一人の議員フレッド・ハートレー下院議員の法案は全国労使関係局の廃止、反トラスト法への労働組合への適用を含む、1920年代以前もしくは1914年のクレイトン法以前に戻す反労働組合立法であった。(長沼秀世・新川健三郎『アメリカ現代史』岩波書店1991 471頁)それが本当は一番よかったとは思う。しかしタフト上院議員はワグナー法の原則を維持しつつ、労働組合の力を削ぐ中立立法でよいという考え方であったから、中道の政策ともいってもよいが、それはトルーマン大統領の拒否権行使を覆し再可決するための現実的妥協でもあったが、ともかく、アメリカ社会のコレクティビズムの流れをストップさせたこと、アメリカが健全な軌道に乗るために必要な立法であることからその業績を評価するものである。

2010/11/13

オースティンの民間における組合組織率0.9%

 リチャード・フロリダ(井口訳)『クリエイティブ資本論』ダイヤモンド社2008年という本がありますが、2004年クリエイティビティ・インデックス・ランキングの第一位の都市がテキサス州のオースティンです。州都で、テキサス大学やデルの本社があります。
 オースティンの商工会議所のホームページを見ましたが、労働組合組織l率3.0%、うち民間企業0.9%とあります。
http://www.austin-chamber.org/DoBusiness/GreaterAustinProfile/Japanese/workforcej.htmlテキサス州公務員は警察・消防に団体交渉を認め、一般公務員は公式の制度としては認められてない。2%は連邦公務員を含めた公務員と考えられます。
 団体協約の適用労働者は全体で3.9%、民間企業で1.5%にすぎませんから、ほとんど組合はないといってさしつかえないでしょう。
 ハイテクや新興企業が主体なのでこういう数値になるともいえますが、だからこそ、全米で最もクリエイティブな都市として評価されるのです。
 「Site Selection 誌ではテキサス州を2006年の「トップ・ビジネス環境」に指名し、その理由として、ビジネス促進対策、ビジネス参入の容易さ、ビジネス・コスト全般の低さ」としています。

虚偽情報とステッカーなどについて

 12日、通用口に「スト中止・36協定締結中」の貼り紙があったが、36協定は5時の段階で締結されており、虚偽情報を組合は流しており問題である。中に入ると11枚のステッカーが貼ってあり、゛「給与水準一時金の引き下げ反対、島嶼都外公署の手当云々都労連」「‥‥労使協議で自主解決解決を云々都労連」といったものが自席の近くの什器、書棚にもセロテープで貼ってあった。管理職は写真をとって枚数を報告することを形式てきにやることになっているが、私の近くのものは写真をとらず、気をとられて仕事に集中できないから早く写真を撮れという管理職は怒って、時間前なのにビラに気を取られず仕事をやれとの暴言であるのは、私自身がせはがした。
 8時50分から14分間中央委員の報告があった。以前は報告はやらせてなかったのにまた復活したのである。

 なお、今回の都労連の闘争で全水道東水労11月2日以降の第二本庁舎前(NSビルとの間にある屋根付きの空間)で行われた勤務時間内、職場離脱集会を記しておく。
11月2日 16時から第二本庁舎前で秋期年末闘争勝利第三波総決起集会(3割動員)、同日16時30分秋季年末闘争勝利東京地公労総決起集会(3割動員)11月5日、15時15分秋期年末闘争勝利第四波総決起集会(2割動員)17時現業賃金改善要求実現現業総決起集会
11月11日、15時より秋期年末闘争勝利第五波総決起集会(3割動員)(都労連は15時30分から中央モールで第五波総決起集会)
 

 第二本庁舎前は、かなりの広さがあるがあくまでも構内である。その証拠として立て札が立っており、一、物品の販売、勧誘、座り込み、泊り込み、ビラ貼り、示威行為その他これに準ずる行為一、庁舎及び敷地の美観を害し、周囲の人々に迷惑を及ぼす行為一、その他東京都庁内管理規則に定める行為とありますから。 いわゆる公開空地にあたるものかは知らないが、一般論として公開空地はイベントで使われることはあるが、あくまでも当局が主催ないし許可したものにかぎられるのが普通だろう。。私は本庁に勤めた経験がないのではっきりはいえないが、イベントで使われることはまずない。長雨や台風でホームレスが集まるときは排除している。10月23日都議会議事堂前の都民ステージで「北朝鮮による拉致被害者救出のための集い」という集会(主催:東京都・東京都議会議員連盟・特定失踪者問題調査会)で使われ、その他のイベントでも使っていると思うが当局主催か許可したものだけだろう。
 一般市民の集会も無差別に認めるパプリック・フォーラムなら話しは別だか、車輌(宣伝カー)、拡声器、横断幕、幟、赤旗等の持ち込み、はちまき、ゼッケンなどを着用している組合集会、しかも勤務時間内の職場離脱という違反行為を促す形で集会を容認している東京都水道局及び東京都庁内管理責任者を正す必要がある。
 当局は2割動員を許可集会、3割動員を無許可とし、無許可集会のみを庁内管理規則違反としているが非情に甘い。
 東京都の庁内管理規則http://www.lawdata.org/local/tokyoreiki/g1011742001.htmlは庁舎・構内における腕章・はちまき・ゼッケン・旗・幟・プラカード・拡声器の着用又は持ち込み、集会・演説を明文で禁止しておらず、庁舎構内の無許可集会について監視・警告・解散命令などを行っていない。ただ中止の申し入れという柔らかい表現で行うだけである。
 事実上の示威行為容認なのです。国や他の自治体では構内での示威行為や演説・集会は明文でより禁止しているところが多く、組合集会に好意的な甘い体質である。東京都の体質はよそよりかなり悪質なのである。 
 組合活動については読売新聞が農水省の全農林の問題を取り上げたり、マスメディアでは特に大阪市が批判されていたのを知ってますが、東京都が問題とされてないことに疑問がある。
 例えば永年勤続者の金券に替えられる旅行クーポン券の問題が有りましたが、少なくとも東京都では平成14年までは、25年勤続で10万円のクーポン券を支給していて、確か2~3年以内ですか旅行に使わないと旅行会社で永久に使える旅行クーポン券に替えられることができ、それを金券ショップで現金に替えられることになっていた。国税当局が大阪市、神戸市などを源泉所得税調査をしたことにより問題になってから、10万円を5万円にして、今は2万円になってますが、換金できなくしているらしい。たまたま大阪が最初に指摘されただけであって、少なくともこの件について言えば大阪市が特別に悪かったということではないと思います。
 換金できなくなって不平たらたらで、私が朝から夜遅くまで仕事に負われているのに、近くで勤務時間中にインターネットで換金できる手段を二人で探したりしてる訳ですよ。その会話がひどい。旅行券でJRの切符を買って、キャンセルすると現金になるか。俺もそれを考えたができないことがわかった。換金できない。換金できないといって不平たらたら。根性が腐ってると思います。

2010/11/11

東京都水道局長あて、作為命令要求

 11月10日9時半ごろ東京都水道局長ほか幹部職員などに送ったメールと、そのリアクションについて書きます。

 東京都水道局のストでは管理職は自由に出入りさせ、管理職で窓口対応をやらせることになっている。また監理団体の職員も同じ庁舎で働いていて、そちらはストをやらないので出入りする。ピケットはスト脱落者を出させないためだけであり、管理職がやる代替業務を妨害することはやってない。組合員と非組合員の団結強制という締め付けにもっとも力点が置かれている。時限ストなので一口でいえば昔の出勤簿、今のカードリーダーをとおさせないことに力点が置かれている。たいへん内向きなので陰険なのである。
 上司の営業所長は、昨日、あなたは社会人として常識がないとか組織人としての自覚にかけていると暴言を吐かれた。どこが常識に反するのかという質問しても答えない。幹部に直接メールすることは許せないと非常に官僚主義的な答えである。苦情処理機関はあるが基本的に労使協議事項は回答されないことになっているから意味がないのにもかかわらずである。 勤務時間中に送信したので職務専念義務違反だとも言われた。
 本日は愉快犯と暴言を吐かれた。私が悪者扱いである。
 明日、都労連のストライキが1時間予定されているので、分会書記長に執務室には入れませんとピケの通告があった。
 私の職場は通用門が大変狭く、しかも門扉がついているのでその中に人が埋まると、擦れ合いになるのは確実なので、作為命令要求についてどうなのかきいたが、読む必要もないし、読んでいない。その理由はメールによる苦情はだめだと。
 構内でのピケ等の禁止命令はやはり出さないということかときいたら、示達を庁内放送でやっているからそれで十分だとの答えであるが、これは命令ではない(「上司の承認なく職務を放棄、また職場を離れるなどの行為については、業務の正常な運営に支障を生じさせるばかりでなく、都民の信頼を大きく裏切ることになります。職員のみなさんには、全体の奉仕者として、公共の利益のために全力を挙げて職務を遂行すること、また、公務員としての本分を十分にわきまえ、都民の批判を見招くことがないよう、良識のある判断に立って行動をとられることを望みます。」)、一応違法行為たからたんに形式的なアリバイづくりをしているだけのものにすぎない。構内の示威行為や集会、ピケをやめろとは言ってない。つまり管理職は何もしないのである。構内から出せないのかときいたら構内から出すことがかえって問題になるとの答え。 ところが、そのあと来客用入り口はピケをさせない、通用門の内側だけでやると答えていたことからすると、組合とのあいだで通用門のピケを認め、来客入り口はやらないとの協議ができている心証を得た。
 ピケの状況はみないのかといったら、8時半まえにみるだけだと答え、窓口にはりつかなければならないので、もみあいを仲裁するようなことはできないということだった。
 禁止命令を出してない以上、また所長がピケを通過するなとスト側に荷担している以上、もみあいになる可能性が高い。殴り合いになってもこれは労働者対労働者の抗争だから、殴り合いの相手から訴えられることはあっても、局は部外者だから懲罰はできないですねと言ったら、構内なら局が干与する。けんか両成敗になるなどといい、管理職に非はない。構内だったら懲罰すると脅した 構内の行為を禁止命令もせず、やりたいままにやらせて、ピケを通過させないというのはストに屈服しなさいといっているのも同然だから、ある意味では管理職が挑発しているわけで、示達をやっているからこちらには責任はないとの超無責任発言である。
 賃金確定だから組合にがんばってもらいたいともスト支援の言動もあった。
 今回も「事故扱いにする」と明言し、カードリーダーは絶対にとおさせない姿勢である。明らかに管理職がスト側にたっているのである。
 そんなにストが嫌いなら休めばいいじゃないかとも言った。暴言である。本日も3割動員集会があったが、こういう日は人員が少ない日は休んではいけないこと教育されてきたし、実は10月にCT検査を受けたら、狭心症で一番重要な冠動脈が一本詰まっているとのことで、11月下旬にカテーテル検査入院と多分、風船治療をやることになる。大きな手術ではないのでたいしたことはないが、入院は早いほうがせいいとせかされていたが、10月は重要に仕事があったのと、ノー超勤ウィークがあったので仕事がたまったので休めず、11月の半ばまでは争議行為とスト、自己申告などがあるので休めないため、わざわざ、忠誠心からストまでは絶対休めないと思って、下旬に入院にすることにしたのにそういうのは暴言なのである。人がいなくてむ一番困っているときこそ協力してやる。いざ鎌倉とはせさんじるのは当然であって、その意味すら理解できない人なのである。
 今回もピケを通過するなと言った。ピケラインを越えるなというのは組合の指令そのものであって、管理職は禁句であるという認識はさらさらないという感じだった。またピケを破るとあなたにとって他の職員の関係で悪いことになりますよと圧力さえかけてきたのである。またストは基本的に賃金カットですむ問題という軽い認識も述べていた。

 水道局長あてのメールをコピーすると以下のとおりである。なお、固有名詞の一部と微妙な問題、業務運営上部外者が知られることが好ましくない事柄については省略します。

東京都水道局長へ

  川西正彦

突然のメールですが深刻かつ切実な事柄なのでお許しください。意見はたくさあるが、さしあたり、11月12日に都労連のストライキが予定されているので、スト実施時当日の出勤にしぼり、下記の作為命令を要求する。

 昨年私に対してなされた○○営業所長(○○)へのストライキ参加誘導、事実上ピケラインを越えさせない命令、管理職による就労申し出者の登庁締め出し(ロックアウト)の方針は違法行為であり、私の就労する権利の不当侵害であり、なによりも局長の示達に反するのでやめさせ、ストライキ実行者による構内の示威行為、集会、器物持ち込み、通行妨害を排除し、就労申し出者にはカード-リーダーを通して通常勤務することができるよう最善の措置をとるべきとす作為命令発出の要求。(及び作為命令に関する仕事の不作為、従わない場合の総務部長(庁舎管理統括者)、職員部長(労務管理統括者)、○○営業所長の解雇を含む懲罰要求)

次の作為命令を局長が総務部長、職員部長、○○営業所長に出すよう要求する

1 従来、管理職が非組合員や新入社員に対し、ストライキ実施時に庁舎内の立ち入りを禁止し、戸外で待機させたり、ピケを横断して入庁をさせない命令を出すなどのあしき慣行があるが、これを是正するために、局の方針として非組合員にはピケラインや組合の指令を尊重する義務はなく、組合にも統制権はなく、威嚇や誘導によってスト参加を強要させないことを基本方針として示すこと。(組合員にも同じ方針であるべきだがさしあたり上記を要求する)

2 局の方針として就労申し出者に対し、ストライキ参加に誘導するピケライン尊重等の命令をさせないこと。事故扱いを前提としての登庁締め出しを命令してはいけないとの命令は、職員の就労する権利と団体行動に参加しない権利を侵害するものとして認めないこと。

3 局の庁内管理、施設管理の基本方針として企業秩序を定立し職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保することを示し、ストライキ当日、構内でのピケ、集会、示威行為、拡声器・横断幕・幟・旗の持ち込み、ゼッケン、はちまきの着用等については秩序維持と混乱を防ぐために適宜、解散命令、禁止命令を発出し、従わない者を処罰する方針を示すこと。

4 就労申し出者の8時30分以前の締め出しはしないこと。通常どおり、就業時間前にカードリーダ-通すことを指示し、ピケを理由とする事故扱いは事実上のピケラインを越えないスト支援になるので認めないこと。つまりピケラインを通過しない職員は賃金カットの方針とすること。

5 組合が実力行使の構えである場合でも、ピケ通過を認めない命令により、もみ合いを回避するようなことはしないこと。(中略)就労の権利が正当であり就労妨害が不当なのであるからその逆の対応は許さないこと。

6 (省略)。

7 庁内管理規則で「正常な通行を妨げること」の解釈をピケッティングとの関係で示すこと。具体的にどのようなケースが通行妨害か。

8 過去の例でせっかく、組合の悪罵を脅迫をふりきって就労しているのに、組合との取り決めで仕事をさせないように命令したり、組合を刺激するので窓口業務を行うなと指示されたことがあり○○営業所長も当然だと言っているが、このような事実上の就労停止命令はさせないこと。

以下作為命令が必要な理由を説明する

 過去に東京都水道局でストライキに遭遇したことが6~7回はあるが、私はストに反対であり組合の統制に入らない非組合員であるのですべて、パトロール隊によって集団で取り囲まれ悪罵を浴びせられたり、脅し威嚇、や「スト破り」等の暴言を受けているがピケラインを越えて就労している。
 ところが管理職がストに参加するために、スト破りの職員に出勤停止を命じたり、ピケライン尊重の義務を命令するようなことを行っているが、職権の濫用である。ストに反対する非組合員に敵対的・虐待的な職場環境を作り出し、職員にストレスを与えるものであり、看過できない。職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保する庁舎管理者の義務も放棄しており管理職にふさわしくない。

○○営業所では次の2点で特に不安がある。

 第一に所長がピケラインを越えないよう指示をしたことである。
昨年、ストに参加せず就労することを所長に申し出たところ、労働組合と協議したうえ指示する。ピケを張るので入れない。事故扱いを前提として出勤禁止を指示する等、就労申し出者を庁内から締め出すことを明確に示し、カードリーダーをとおさせないことを事実上命令した。具体的にはピケを通過して庁内に入ることはいけないとし、構内に入る前に、携帯等に連絡して、所長の指示(事故扱いを前提としてピケラインを通過しない)に従うよう命令した。こういうやり方は初めてである。ストライキ時の研修所出勤時通達文書で組織的対応で事故扱いにするやり方は知ってはいたが、事故扱いにするのは、事実上通行妨害を容認し組合に有利なものでストを間接的に認めるので承伏できない。組合の意向に従わないことを理由とする事実上の出勤停止処分でそのような権限は上司にはなく、私の就労する権利の著しい侵害である。なによりも職務を放棄、また職場を離れるなどの行為については、業務の正常な運営に支障を生じさせるばかりでなく、都民の信頼を大きく裏切ることになります云々という局長示達に反する指示であるから局長の指示に従わない不服従行為でもある。
 また所長は庁内管理規則の「正常な通行を妨げること」の禁止の解釈について尋ねたところ公定解釈はない。個人的にはピケは含まない、職員の通行妨害ではなく、来客を対象とするものとするなど、明らかにストライキ支援の姿勢である。というより、所長が就労の権利のある正規の職員の正常な通行を妨げる言動を行っていることじたい管理規則違反ではないか。またストライキ時には上司より、組合の構内での集会、示威行為、ピケの締め出し、旗や横断幕等の持ち込み等の取締について指示は何もないからなにもしない。組合のなすままだとの見解を明らかにした。(以下略)
 第二に不安な点は(省略)

 翻ってわが国のピケッティングをめぐる状況は、労働省がピケ通達(〈労働関係における不法な実力の行使の防止について〉1954年11月6日)を出して、平和的説得の範囲を越えるピケは違法であると警告していたが、プロレーバー労働法学者が猛反発して英米の平和的説得論は労働者側を敗北させる理論として、実力阻止を認める、説得のため実力阻止を認める、説得の限界を超えたスクラムなどの防衛を認める、階級的団結として強制力を認める等々の非情に悪質な学説が流布された結果、非常に労働組合に有利な解釈が説かれることが多い。 戦後労働法学批判が十分なされていないことに問題がある。強い懸念がある。
 (中略)ひたすら、私をロックアウトしようとしていることが本末転倒だといわなければならない。締め出されるべきはピケ隊や組合の集会、示威行為であり、秩序維持とは全く逆の対応といわなければならない。
 いずれにせよ、民主党政権が労働基本権付与の方針でも、現在は、国公法第98条、地公法第37条、公労法第17条、地公労法11条が争議行為を全面的に禁止している以上、ピケ行為が平穏かつ節度を守って行われても、その争議行為は違法性を有すると一般的には解釈されている。仮に、集団的労家提供停止としてのスト権が認められたとしても、他人の就労の権利を侵害する行為、就労妨害ピケット権は別個の問題と考えるべきである。
 労働組合と同様に管理職がスト破りを認めない、非組合員や就労申し出者もスト参加に誘導している東京都水道局は悪質だといわなければならず、私を出勤停止にする正当な理由はなく、重大な権利侵害であるから、そのような命令を出す管理職は悪質なので解雇が妥当である。

 また作為命令要求に関して次の理由も追加する。

 まず地方公務員法52条2項において、職員に組合に加入しない自由を保障しており、団体に加入していない非組合員である私は、労働組合のストライキ指令の統制機能に従う理由はない。 にもかかわらず○○営業所長は職員は全員でストに参加しなければならないとしているが、全く不当である。
 市民法上の団体には認められない強度の組織強制手段であるユニオンショップ制のように行動しなければならない根拠は全くない。またわが国ではユ・シ協定というが認められているから消極的団結自由は否定されているという見解もあるが不当なものである。プロレイバー学者でさえ、団結権が市民的自由に優越することに否定的何見解がある(林和彦「ショップ条項」現労6 1981 )

 欧米先進国では消極的団結自由やスト(団体行動)に参加しない権利を明文化している。(わが国では外国のように労働協約改定期の長期ストをやることが少ないため、これまであまり議論されていないも事柄だが、来年通常国会での労働基本権付与法案提出が政治日程となっている以上、長期ストを想定とした対策という観点からも立法化が望ましいとあると考え、この後、私が議員に提案する予定である)。
 合衆国では1947年タフト・ハートレー法が民間企業の団体交渉権を認めた1935年ワグナー法の「団結する権利、労働団体を結成・加入・支援する権利、自ら選んだ代表者を通じて団体交渉を行う権利、および、団体交渉またはその他の相互扶助ないし相互保護のために、その他の団体行動を行う権利」に対し、「それらの行動のいずれかを、またはいずれも行わない権利を有する」(7条) と定め消極的団結権、団体行動を行わない権利を労働者に付与し、強要すれば不当労働行為となる。
 英国では、1988年雇用法において1984年労組法および88年雇用法のの規定している厳しい投票実施要件を適正にクリヤーして多数の賛成を取得し、ストに入ろうとするとき、そのストに参加することを拒否する組合員がいても、彼らを統制違反として制裁の対象としてはいけないとした。この立法の思想は、それに参加するか、しないかの決定権は労働組合によりも組合員にあると考えるべきである。つまり労働組合の団結する権利よりも個人の自由な決定権が優越的価値をもつものだというもので、団結とは個人の権利の総和であるとの考え方による。(渡辺章「イギリスの労働法制とその変遷(講苑)」『中央労働時報』804号 1990 )

 ピケッティングはコモンロー上不法行為を構成するが一定の範囲で免責される。大量動員ピケッティング、その職場でない者の参加等を禁止しており、行為準則において出入口6人以下とし「平和的に情報を得または伝播し人を説得することは、合法的ピケッティングの唯一の目的である。例えば、暴力的、脅迫的、妨害的行為を伴うピケッティングは違法である。ピケッティング参加者はできるだけ説得的に自己の行為について説明しなければならない。他の者を説明を聞くようににおしとどめ、強制し、自分達が求めている通り行動するよう要求してはなない。人がどうしてもピケットラインを越えようとする場合には、それを認めなければならない。」(小島弘信「海外労働事情 イギリス 雇用法の成立とその周辺-二つの行為準則と労働界の反応を中心として」『日本労働協会雑誌』22巻11号 1980.11)と規定し、非組合員であれ、組合員であれピケラインを越える自由を明文化している。違法ピケットは差止請求と損害賠償請求ができ、大量動員ピケや「脅し」(intimidation)や契約違反誘因(Inducement)の存在が有る場合に警察介入、差止命令の対象となることは1984年の炭鉱スト以来確立している。
 フランスにおいても消極的団結自由は認められてるし、ドイツはナチスの組織強制の反省から、消極的団結自由は当然のものとされている。
 わが国でも、労使関係の先進化のために消極的団結自由の権利を明文化したタフト・ハートレー法型立法が望まれる。

2010/11/08

反コレクティビズムの勝利-イギリス1984-85年炭鉱スト、1986年ワッピング争議における労働組合敗北の歴史的意義について(10)完

  前回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-0dc7.html

 ワッピング争議におけるストライキの態様は後述する二次的争議行為を除くと、主としてワッピングの新社屋の入構阻止のためのピケッティングと、連日行われた50~200人のデモ、水曜と土曜にワッピング周辺で行われた行進や大集会である。水曜・土曜はスト支援者も含めて700~7000人が参加し、同様の行進と集会が、旧社屋のあるグレイズイン通りとブーブリー通りでも行われた。またピケッティングは新聞のトラックによる配送業務を行っていたTNT運送会社の新聞集配所でも行われた。
 しかし、サン及びタイムズ新聞社が用意周到なスト対策の準備を行っていたこともあり、新聞を休刊に追い込むことはできなかった。警察の介入も早く1月24日のスト開始以前にはすでに関連地域一帯の道路封鎖が許可され、23日にはタイムズ社周囲は車が移動させられ、警官がとり囲んでいた。マスピケッティングやデモの逮捕者はのべ1370名に及んだ。1986年末までに警察の費用は530万ポンドがスト取締に使われ、15万労働日というロンドン警察の3分の2の警察力を投入したのである。炭鉱ストでは警官は通常の制服だったが、完全武装の機動隊やガス弾を発射する騎馬隊が投入された。組合員18万の1984-85年の炭鉱ストが21万3千労働日の警察力投入であったから、組合員6千人の一企業のためになされた警察力の投入としては大きい。厳格なクローズドショップで、労働市場と作業工程を支配していてた印刷工組合を粉砕するサッチャー政権の意気込みのほどがうかがえられる。
 また新聞社がサッチャー政権の労働法改正で免責から除かれた違法争議行為については 素速く提訴し、差止請求を行い、損害賠償をも求めたのもそのストライキの特徴である。
 裁判所も迅速に対応し、差止命令-差止命令拒否-法廷侮辱罪による罰金刑、資産差し押さえというという一連の司法介入により労働組合の戦術は身動きがとれなくなった。
 最終的に半熟練印刷工組合は、大量動員ピケの差止命令に従い、ピケ6人以下に限定する指令を出したが、解雇された組合員はピケをやめようとせず、コントロールを失った。それにもかかわらず、配送のトラックドライバーはピケを振り切ったし、代替労働者はピケ隊の暴言や小競り合いを振り切って就労したので、新聞を休刊に追い込むことなどできず、労働組合は差止命令拒否により成立する法廷侮辱罪による罰金刑の累積と、違法行為をやめない解雇された組合員のコントロール不能で窮地に陥った。ストは1年近く続いたが、損害賠償請求を取り下げるという妥協を引き出しただけで収拾されることとなった。炭鉱ストに続いて労働組合の完全敗北である。【*1】
 このストはコレクティブレッセフェールの終焉を意味する。労働争議に法的に干渉しない、国家は干渉しないという体制ではなくなったのである。マードックは不法行為に対し可能な提訴はたいてい行ったし、争議を収拾するために警察介入、司法介入は当然だという新しい時代の経営者の立場を明確にした。
 ワッピング争議組合敗北の最大の意義は、代替労働者が暴言や小競り合いを振り切り就労し、配送のトラックドライバーがピケを振り切り輸送し新聞の生産と販売を維持したことにある。炭鉱ストは組合の中の反ストライキ派によるスト破りだったが、ワッピング争議でではサウサンプトンで募集した新入社員(非組合員)だったし、配送のドライバーも新規契約の運送会社で組合とのしがらみが少なかったとはいえ、自己の就労する権利を行使したことに、国民からの「スト破り」との非難などなかったのである。労働組合主義や階級的団結という立場からすれば、彼らは裏切り者で卑怯者との悪罵が浴びせられるところだが、そういう価値観はこの争議で否定されたといってよい。むしろ全英平均の二倍の給与を取り、タクシー通勤、ホテル住まいの印刷工組合員こそ国民の反感を買っていたのであった。解雇されても同情しないのである。
 
 組合のとった二次的争議行為と違法ピケッティング戦術は殆ど差止請求が認められた。それはいずれもサッチャー政権での労働立法により可能となったものと考える。
 
1980年雇用法ではピースフルな合法的ピケッティングの権利(1974年法15条)は労働者自身または組合員の就労の場所またはその近くで行われる場合に限定されるものとした。組合員の就労場所以外の事業所や他社で出向いて行われるピケは違法となる。また行為準則(code of  practice)でピケ人数を六人以下に限定している。
また争議当事者たる使用者と取引関係にある使用者に向けられる二次的争議行為に対する不法行為の免責を排除した。(二次的ボイコットともいう)
またウィルソン政権の1974年法では労働争議を「使用者と労働者」もしくは「労働者と労働者」との間の紛争と定義され、「労々争議」、縄張り争議、組合員資格に関する争議も含まれていたが、サッチャー政権の1982年法では「労働者と労働者」の文言を削除し「使用者と労働者」を修正し「労働者とその使用者」とした。これにより「労々争議」は免責から外され、「企業内争議」に限定して免責の範囲とした。
 
   
○卸売業で働く組合員へ新聞販売ボイコット指令

半熟練印刷工組合は、印刷工だけでなく出版関連の多くの職種を含んでいた。これは二次的争議行為であるため、差止命令が出され、命令に従わなかった法廷侮辱罪で2万5千ポンドの罰金が課された。
 
○タイムズ別刷の印刷ボイコット指令

タイムズ紙には教育新聞版があって、ノーサンプトンマーキュリーで印刷されていたが、二次的争議が当たるため差止命令が出された。従わなかった熟練印刷工組合には法廷侮辱罪により2万5千ポンドの罰金刑が課された。

○トラック配送会社事業所のピケッティング

サン及びタイムズ新聞社は、新聞のトラックによる配送業務をTNT運送会社と契約していたが、同社の全国各地の事業所でデモやピケッティングは二次的争議行為であり違法ピケであるので差止命令が出された。財産差し押さえで身動きがとれなくなった半熟練労働組合は、差止命令に従うこととなり、TNT社の事業所でピケッティングをしないこと。いかなる方法であれ、TNT社の被用者、事業所、妨害を行わない指令を組合員に出した。

○通信労働者組合のビンゴカード配達ボイコット

 郵便労働者がワッピング争議支援のため、ザ・サン紙のビンゴカードの配達をボイコットしたが、二次的争議行為であるため差止命令が出された。

○運輸一般労組のピケラインを越えない指令
 

運輸一般労組は、TNT社に雇用されている組合員に対し、ワッピングとグラスゴーでピケラインを越えないように指令したが、これも二次的争議行為であるため差止命令が出された。実際にはほとんどのトラックドライバーは組合の指令に従わず仕事を行った。
   

○熟練印刷工組合と半熟練組合によるワッピングでのピケッティング

労働組合はワッピングの新社屋で印刷された新聞を配送するトラックをはじめ新社屋に出入りする者の入構を大量動員ピケッテイングで封じ込めようとした。これについては新聞社だけでなく配送会社、関連会社より違法ピケッテッングによる不法妨害などの差止を求めて提訴し認められた。また損害賠償請求も併せて行われた。
  召喚令状はTNT社の被用者(トラックドライバー)及びその他の労働者で原告と雇用契約を結んでいる者に対する「雇用契約を破棄せよ」との「脅し」の中止を求め、原告の事業所に物品を供給するのを妨げるために、被告の組合員を「扇動」したり、「脅し」たり「励まし」たり「援助」したり、経済的支援を行うことを一切禁じ、ピケッティングを行う場合にはピケット自身の職場で6人以下の要員で行うことを命じた。
  高等法院の7月31日の差止を認める判決は、「ワッピングにおけるピケッティングと毎日行われるデモはハイウェイの不法妨害であり、被告は公的ニューサンスの責任を問われるべきである。またワッピングでの週2回の行進と大衆集会はコントロールを失った時は不法妨害に当たり、労働者のバス輸送や追加警備の費用のために損害を被った原告は、この責任を被告に問うことができる。また原告の従業員の中にはピケッティングやデモにより深刻な脅迫を受けて離職したものであり、これらの行為は脅迫の不法行為を含んでいる」と判示、「ワッピングでピケッティングに参加しているものは、平和的に情報を得よう、あるいは交換しようとするためにのりみそこにいるのではなく、また、労働の提供をしないようにと説得するためにのみそこにいるともみとめられない。ワッピングでは暴力を伴うピケッティングがおこなわれている」という原告の主張が認められ、ピケッティングに伴う「脅し」(intimidation)や契約違反誘因(Inducement)の存在が認定された。
 裁判官は大量動員ピケッティングに差止め命令を出した。「デモを含みピケットは6人以下とする。ワッピングへの道路上でのピケッティング及びデモの組織の禁止、グレイズイン通りとブーブリー通りの旧社屋前でのピケットも六人以下に限る」としたが、行進と集会については平和的である限りピケッティングとみなさないとした。【*1】
 
 
○大量動員ピケッティング差止命令はどう評価されるべきか

 イギリスにおけるピケッティング規制の範囲であるが、小宮文人はメージャー政権の1992年法(1980以降の雇用法を進展させたもので)のピケッティングについて次のような説明をしている。
 そもそもピケッティングは、コモンロー上、不法行為を構成する。その理由はピケッティングを成功させるためには契約破棄の誘致又は違法手段による営業妨害が必要だからであると述べ、また不法妨害(ニューサンス)、脅迫、不法侵害(トレスパス)に該当する場合がある。
 1992年法220条は次の場合に、ピケッティングを不法行為責任から免責する。つまり、そもそも不法行為だが、次の範囲で制定法で免責という意味での適法性である。1986年の段階でも基本的には同じことである。
 免責される範囲は、「労働争議(219条で規定する範囲に限定)の企図または推進のため、その者の職場またはその付近、その者が失業しており、かつその最後雇用が争議行為に関連して終了せしめられ、または、その終了が争議行為の原因の1つとなった場合には、その元の職場またはその付近、その者がある一定の場所で労働しないか、または、その者が通常労働している場所がピケッティングの参加が不可能な場合には、その者がそこを起点として労働している、あるいは、その者の労働を管理しているなんらかの使用者の不動産において、または、その者が労働組合の幹部である場合は、その者が付き添いかつ代表している組合員の職場または元の職場その付近で、平和に情報を得または伝えあるいは平和的に他人に労働するようまたは労働しないよう説得するだけの目的で参集すること。」【*2】
 より具体的には行為準則で示され、一般に1つの出入り口に6人以上のピケットを置くべきではないとしている。行為準則はそれ自体法的拘束力はないとされる。
 しかし訴訟上考慮されるのであり、炭鉱ストの Thomasv.N.U.M(S.Wales Area)[1985]ICR886(Ch.D1)で行為準則で定められている人数より多いピケットを組織することを差止めた。(ワッピング争議もそれと同じである。)
 違法ピケッティングからの使用者の救済として、使用者は違法なピケッティングが、その不動産の外側で行われたと確信する場合、その行為が1992年法219条および220条の範囲外の場合には、高等法院に差止を求めるか、選択的または一緒に、損害賠償訴訟を行うことができ、さらに、公道を妨害し、人身または財産の危険を生じせしめるときには、警察に訴えることができる。ピケッティングは場合によっては刑事責任を生じさせる。(241条) 
 
 1980年の行為準則が翻訳されているので一部を引用すると次の通りである。
 「平和的に情報を得または伝播し人を説得することは、合法的ピケッティングの唯一の目的である。例えば、暴力的、脅迫的、妨害的行為を伴うピケッティングは違法である。ピケッティング参加者はできるだけ説得的に自己の行為について説明しなければならない。他の者を説明を聞くようににおしとどめ、強制し、自分達が求めている通り行動するよう要求してはなない。人がどうしてもピケットラインを越えようとする場合には、それを認めなければならない。
 何者かに脅威を与えもしくは威嚇し、または何者かが職場に入ることを妨げるピケッティングは刑事罰の対象になる。規則に従わないピケッティングによって、その利益が損なわれる使用者または労働者は、民事上の法的救済を受けることができる。彼はこの行為に責任を有する者を相手どって損害賠償を求めることができるし、裁判所に違法はピケッティングの差止命令を求めることもできる。」【*3】
 またワッピング争議の2年後、サッチャー政権の労働改革の総仕上げとなったた1988年雇用法は、労働組合の団体的権利に対して、組合員個人の権利(自由)を擁護するかたちで裁判所、労働審判所あるいは労働組合関係に関して一定の公的事務を行う認証官等が労働組合の内部事項に国家が介入を行いうる途を大幅に開放しただけでなく、労働組合員により不当に懲戒されない権利が規定された。これは批判者が「スト破りの権利章典scab,s charter」と呼んだものだが労働改革の一つの到達点を示すものである。
 1988年雇用法はストライキを実施しようとする組合が1984年労組法および88年雇用法のの規定している厳しい投票実施要件を適正にクリヤーして多数の賛成を取得し、ストライキに入ろうとするとき、そのストライキに参加することを拒否する組合員がいても、彼らを統制違反として制裁の対象としてはいけないとした。この立法の思想は、そもそもストライキは組合員にとっては収入が減少し、成りゆき次第では職業を失いかねない危険なものである。したがって、それに参加するか、しないかの決定権は労働組合によりも組合員にあると考えるべきである。つまり労働組合の団結する権利よりも個人の自由な決定権が優越的価値をもつものだというものだ。
 イギリスの労働組合は、統制違反の著しい組合員に対してしばしば反則金(1000ポンドぐらい)を課したり組合員の地位に伴う一定の権利や利益の享受を一時的に剥奪し、著しい統制違反に対しては除名処分も行う。もちろん、スト指令が制定法上、労組規約上、あるいはコモンロー上違法とされる場合にはそのストライキに参加したことを理由に制裁できないことは1971年労使関係法以来確率されていた法理であるが、1988年雇用法はストライキがあらゆる点で適法であっても、それへの参加、不参加は個人の自由な決定に委ねられるべきだとしたことである。
 しかもそれだけにはとどまらなかった。①ストライキ指令のみだけでなく、②ストライキの支援、支持行動の指示に従わないこと、③ストライキに反対の表明をしたこと、④ストライキに対する不支持を表明すること、⑤労組役員が労組規約にら違反していると主張し続けること、⑥労働協約に違反したストライキであると主張すること、⑦執行部が法定の投票要件に従ってないと主張することなど19種類の行為を揚げて制裁理由としてはいけないこととした。つまり、指令に反しストライキを途中でやめてスト脱落者を励まし支援しても制裁の対象とならないというものである。【*4】
 なお、1988年雇用法は事前に投票が必要なストライキを「労務の集団的停止」と定義し、任意の職務、時間外労働の禁止もストライキ投票に付さなければならないとしているが、ピケット権というものは「ストライキ」の定義から外れるものとみてよい。制定法がストライキに参加しない権利を擁護しているのであり、この脈絡においても、ピケッティングの態様にはおのづと限界があるとみなしてよい。
 
 以上の保守党政権の制定法による規制は、ブレア政権でも変更されなかった。国民も労働組合の統制より個人の権利自由を支持しているので、政権交代でも替えられなかったとみることができる。
 
 こうしたイギリスのピケッティング対応をどう評価すべきかだが、私は満足できない。その理由は行為準則が「平和的に情報を得または伝播し人を説得することは、合法的ピケッティングの唯一の目的である。」としているが、これは、ダイシーやポロック卿などが悪法と非難し、民事免責と争議権を確立したとされる1906年労働争議法の第二条「単に情報を平和的に獲得ないし伝達する目的でなされるか、あるいは、ある人に労働するか労働を棄てるかを平和的に説得する目的でなされるのであれば、合法的である」【*5 225頁】としているのと同じであることである。
 労働組合の刑事免責を確立したとされる1875年共謀罪・財産保護法第7条ではその者が居住し、労働し、事業を行いもしくは偶然居合せた家屋その他の場所またはそれへの通路を監視または包囲することを禁止したが、但し書きで。
単に情報を授受する目的で他人の居住し、労働し、事業を行いもしくは偶然居合わせた家屋その他の場所またはそれらの通路に待機する(ateend)」ことは「監視・包囲」とみなさない【*6 227頁以下】として、一応ピ-スフルピケッティングを容認したかみえる規定を置いたが、実は平和的説得によるピケッティングを規制しうるものだったのである。
 容認したのは単に情報の授受であるから、ストライキをやっていることを伝達できるが、労務提供をやめるよう説得はできないのである。
 1876年のR.V.Bauld判決は、1875年共謀罪・財産保護法が情報の授受以外に何事も規定しておらず、平和的に他人を説得してストライキに加入せしめるためのピケッティングは犯罪と判示した。【*6 229頁】
 1896年のリヨンズ対ウィルキンス訴訟Lyons V.Wilkins Caseは仕事をしないように人々を説得する目的でなされたピケッティングは、単に情報の取得または交換と見なされないものと考えられるべきで、1875年法に反し違法である」とされたのである。【*5 5頁】この判例によると人を「スト破り」blacklegと 呼ぶことは脅迫行為と考えられている。第七条にあるように、他人に合法的なことをするよう、あるいはしないよう強制する目的で、監視・包囲することは違法行為とされた【*5 129頁】
 平和的説得まで容認している点で、保守党政権の労働改革は本当の意味で1906年法体制を否定してはいない。1906年以前のあり方と比べれば、労働組合に有利な性格を有しているといえるだろう。
 アメリカでも1917年のヒッチマン判決Hitchman Coal & Coke Co. v. Mitchell, 245 U.S. 229  が「ピケ・ラインをはること自体脅迫であり違法である」としている。1921年のアメリカン・スチール・ファンダリーズ対三都市労働評議会判決AMERICAN STEEL FOUNDRIES v. TRI-CITY CENTRAL TRADES COUNCIL, 257 U.S. 184 (1921)「グループでやるピケットの人数が脅迫を構成する。ピケットという言葉そのものが戦争的目的を含んでいて平穏の説得とは両立しがたいのである。」とし、ピケットは工場、事業場の出入口ごと一人に限定されるべく、その一人も悪口、脅迫にわたってはならず、嫌がる者に追随してはならない。また工場などの近くでぶらぶら歩きをしてはならないという判例法が成立した【*7】
 1932年ノリス・ラガーディア法以前のアメリカ・スチール・ファンダリーズ判決つまり1921年のタフト長官(元大統領)による判例がピケットは辛うじて出入り口に1人なら認めるが悪口も許さないものであったから、これとの比較でも6人まで認めるイギリスの行為準則はそれでも労働組合に有利なものといえるのである。
 
 というわけで、私は平和的説得も反対なのであって、決して最善の法改正ではないことを断ったうえで、にも関わらず、先進的立法として評価して良いと思うのは、ワッピング争議でも「脅し」(intimidation)や契約違反誘因(Inducement)があればそれは合法的なものではない歯止めが示された。1980年雇用法行為準則にも
 「暴力的、脅迫的、妨害的行為を伴うピケッティングは違法である。ピケッティング参加者はできるだけ説得的に自己の行為について説明しなければならない。他の者を説明を聞くようににおしとどめ、強制し、自分達が求めている通り行動するよう要求してはなない。人がどうしてもピケットラインを越えようとする場合には、それを認めなければならない。」として、1988年雇用法ではたとえ合法的ストであっても、ビケラインを越える組合員個人の権利を明定したのであるから、他人の権利侵害は否定し、消極的団結(団結否認)権を認めていることは評価してよいのである。
 これが考えられる妥協の最低ラインだろう。つまりイギリスの場合はあくまでも個人の権利の総和としての団結であって、労働組合に組合員や他の労働者の自己決定を否定し、団体行動を強制する全体主義的な威力をもたせないあり方にしている点で健全なあり方と考えるのである。
 翻ってわが国のピケッティングをめぐる状況は、労働省がピケ通達(〈労働関係における不法な実力の行使の防止について〉1954年11月6日)を出して、平和的説得の範囲を越えるピケは違法であると警告していたが、プロレーバー労働法学者が猛反発して平和的説得論は労働者側を敗北させる理論として、実力阻止を認める、説得のため実力阻止を認める、説得の限界を超えたスクラムなどの防衛を認める、階級的団結として強制力を認める等々の非情に悪質な学説が流布された結果、非情に労働組合に有利な解釈が説かれることが多い。
 戦後労働法学批判が十分なされていないことに強い懸念がある。明らかにわが国の労働法制は、。消極的団結権を明定している英米よりもずっと労働組合に有利で左翼的な体制なのである。ここに問題がある。
 しかし憲法28条は労働組合に他人の権利を侵害し強制力をもつ権利を与えているという解釈は疑問であり、私は、英米法の理論を調べた感想からすれば団結というものも個人の権利の総和以上の団体の強制力としてとらえることには反対であり、そのような観点から「ピケット権」のあり方も根本的に見直すべきである考える。民主党菅直人政権が公務員に争議権を含めた、労働基本権付与を政治日程にのせた以上、ピケットの態様は大問題であり、労働協約改定期に公務員が長期ストを構えた場合の危機管理も必要であるから、この点を煮詰めて具体的な提案を行いたい。

   
【*1】家田愛子「ワッピング争議と法的諸問題の検討(1) : 一九八六年タイムズ新聞社争議にもたらした,イギリス八〇年代改正労使関係法の効果の一考察」名古屋大學法政論集. v.168, 1997, p.105-150  http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/dspace/handle/2237/5752家田愛子「ワッピング争議と法的諸問題の検討(2)完 : 一九八六年タイムズ新聞社争議にもたらした,イギリス八〇年代改正労使関係法の効果の一考察」名古屋大學法政論集. v.169, 1997, p.153-195 http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/dspace/handle/2237/5761
【*2】小宮文人『現代イギリス雇用法-その歴史的展開と政策的特徴』信山社出版2006年
【*3】小島弘信「海外労働事情 イギリス 雇用法の成立とその周辺-二つの行為準則と労働界の反応を中心として」『日本労働協会雑誌』22巻11号 1980.11
【*4】渡辺章「イギリスの労働法制とその変遷(講苑)」『中央労働時報』804号 1990
【*5】松林高夫『イギリスの鉄道争議と裁判-タフ・ヴェイル判決の労働史』ミネルヴァ書房2005
【*6】片岡曻『英国労働法理論史』有斐閣1952  
【*7】有泉亨「物語労働法第11話レイバー・インジャンクション(2)『法学セミナー』188号 1971

2010/11/03

テキサス州マンセー記事

 ビッツバーグトリビューン(保守系の新聞とされている)のジャック・マーコビッツのコラムを読みましたが、テキサスの見通しは明るいとの記事です。Prospects bright deep in heart of Texas
 http://www.pittsburghlive.com/x/pittsburghtrib/business/s_706824.html
 ビッツバーグのような Rust Beltの保守的市民から見るとテキサス州はとても良い州に思えます。州税として所得税がない(全米で7州が取ってない、ただし消費税は州と郡をあわせて8.25%あり、連邦の所得税は当然取られる)。労働権州 right-to-work state(全米で23州)です。労働権というのは雇用条件として労働者に組合加入と組合費の支払いを義務づける組合保障協定を定めた労働協約の交渉を禁止することで、労働組合に加入せずに働く権利、組合費を払わずに働く権利を保障する反労働組合的な州を労働権州といいます。テキサスの労働組合の組織率は4.5%(2008年のデータ)ですから、労働組合の影響力がほとんどない州です。
 テキサス州公務員は警察と消防だけ団体交渉が認められてますが、一般の公務員には団体交渉は認めてません。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2006/04/post_f8f3.htmlビッツバーグのように組合が市役所を牛耳るようなことはありません。
 ダラス、サンアントニオ、およびオースチンなど成長しています。
 Directorshipのビジネスしやすいランキングの1位がテキサスです。http://blogs.yahoo.co.jp/sfscottiedog/60057054.html全米50大都市圏の失業率のデータをみすると、テキサス四大都市圏ははすべて、42位以下の低いランクにある Milken Instituteの経済基盤の良い都市圏の第1位がオースティンで4大都市が全て5位までに入ってます。http://blogs.yahoo.co.jp/sfscottiedog/61916260.html

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