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2010/11/14

入手資料整理42

1-1 竹田有『アメリカ労働民衆の世界-労働史と都市史の交差するところ』
ミネルヴァ書房2010年
 今年9月の新刊書。竹田有の論文のコピーはいくつか持っているしブログでも引用し知ってはいたが、著者の単著はこれが初めてのようだ
 
 後書きで著者が自画自賛している。「わが国ではほとんど研究蓄積のない労働民衆についての先駆的な実証研究」「ウィスコンシン学派へのアンチテーゼ」「19世紀後半から現在までの労働史と都市史の史的潮流の輪郭をともかく提示」したとのことである。
 アメリカの経営史では数多くの業績を知っている。組合不在企業の経営史を書いたジャコ-ビィの翻訳や平尾武久や伊藤健市の労務管理経営史などの一連の著作・論文は大抵持っている。それもおもしろかったが、経営史が専門でなくアメリカ史(アメリカ地域)研究者である竹田有の視角のほうが広いように思えた。
 労働民衆史ではハワード・ジンの翻訳もあるが、とにかく左翼的で辟易する。また、労働法制史では水町勇一郎の著作も出ているが、連合総研に関わっている人なので気に入らない。この点、竹田有はどうか。アメリカの組合の衰退の要因を探りながらも、労働組合に好意的な表現もみられ、例えば240頁にある非組合企業IBM、マクドネル・ダグラス、マックスウェルのリーン生産方式より、組合のある企業ゼロックス、サターン、コーニングガラス、AT&Tのチーム生産方式が優れているなどとしているところなど疑問である。サターンのブランドは廃止したではないか。が、しかし、基本的にはアメリカ史の研究者なので比較的客観的に論じているとは思う。私が特に関心があるのは第4章「反組合主義とビジネス・ユニオニズムの成立」と第6章「ニューディ-ル労使関係の終焉」である。

 
 第6章では組合組織率低下の要因を明らかにしている。産業構造の変化というよりも、最大の要因が反組合主義の伝統から「経営者の反対と抵抗」と分析している。また組合勢力の「地域的偏在」も挙げている。
 「経営者の反対と抵抗」を可能にした法制度的要因は1947年タフト・ハートレー法と特に全国労使関係委員会(著者は全国労働関係局と訳すNLRB)の保守化にあることを示しているが重要な事柄なので、稿を改めて検討したい。
 
 著者は1947年タフト・ハートレー法の性格について「一方では団体交渉権を擁護したワグナー法の原則をそのまま取り入れたものの、他方では労働組合による通商の妨害と組合の不当労働行為を指摘し、雇用主の反組合的な言論の自由を保障することで組合の力を弱めようとした。さらに‥従業員個人の『組合に加入ししない』権利(労働権)を擁護し、団体交渉の原則と相反する自由な個別交渉の権利を尊重する原則を打ち出した‥‥」と説明しているがわかりやすい要約と思う。(217頁)

 ニューディール立法である1935年ワグナー法は団体交渉による産業平和のため団体交渉を促進したのである。しかし、その期間は短かった。わが国の不幸は戦争に負けてアメリカでも最も左傾化した時代の影響を受けたことである。わが国は団体交渉を促進させる法体系であり、労働政策は政労使三者構成原則の審議会で策定されるため、労働組合の既得権を無視した政策は実効されない構造になっているわけだが、アメリカでは日本国憲法が施行されたその年に重要な政策転換があり、団体交渉の無推進者としての連邦政府の役割から著者のいう「タフト・ハートレー法における、個別交渉と団体交渉との間の従業員の自由な選択の『中立的保証人』という連邦政府の概念」に変化した。著者はアメリカにおいて「団結権と団体交渉権は確固たる国法でなかった」と述べているが事実とのとおりであり新鮮な表現に思えた。
 脱線するが、私が尊敬する政治家を1人挙げるとすれば、ミスター共和党ロバート・タフト上院議員である。共同提案のもう一人の議員フレッド・ハートレー下院議員の法案は全国労使関係局の廃止、反トラスト法への労働組合への適用を含む、1920年代以前もしくは1914年のクレイトン法以前に戻す反労働組合立法であった。(長沼秀世・新川健三郎『アメリカ現代史』岩波書店1991 471頁)それが本当は一番よかったとは思う。しかしタフト上院議員はワグナー法の原則を維持しつつ、労働組合の力を削ぐ中立立法でよいという考え方であったから、中道の政策ともいってもよいが、それはトルーマン大統領の拒否権行使を覆し再可決するための現実的妥協でもあったが、ともかく、アメリカ社会のコレクティビズムの流れをストップさせたこと、アメリカが健全な軌道に乗るために必要な立法であることからその業績を評価するものである。

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