日弁連は麻木久仁子を擁護しないのか 民法733条が争点に
麻木久仁子の不倫問題で、民法733条1項の女性は離婚後から半年間は再婚できないという点が、新たな争点として浮上していると報道されている。http://media.yucasee.jp/posts/index/5960 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101225-00000007-sph-ent
私が知る限りネット世論は「略奪婚」事件と認識しており、麻木久仁子に批判的だ。ライブドアーのネットリサーチでも麻木久仁子の「交際時には夫婦関係が破綻していたとして不倫にはならない」という主張に対して78%が理解できないとしている。http://research.news.livedoor.com/r/56815 もっともこの事件で麻木久仁子を引退させるのは行き過ぎのように思えるが、日弁連や女性団体は民法733条の女性の再婚禁止期間撤廃を主張しており、形式的平等主義の法改正案と世論とのずれがはからずも浮き彫りとなったといえるだろう。世論は法律婚制度を意義のあるもの認め、尊重しているし、「略奪婚」には厳しい反応とみるべきだろう。
日弁連や戸籍廃止を主張する女性弁護士などは再婚禁止期間撤廃を主張しているのだから、このさい民法改正を先取りするような進歩的で法律婚制度に風穴を開ける主張を行った麻木久仁子を擁護すべきだろう。それをやらないということは、論理的一貫性がないものとして非難されるべきである。
ところで、平成八年二月二十六日法制審議会総会決定「民法の一部を改正する法律案要綱」http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi_960226-1.htmlにおいて選択的夫婦別姓導入、16・17歳女子の法律婚資格剥奪、非嫡出子の相続分差別撤廃などともに民法733条1項の女性の再婚禁止期間を離婚後から半年より100日に短縮する法改正が盛り込まれている。日弁連は女性差別撤廃のためさらにすすんで再婚禁止規定の撤廃を主張しているが、日本会議などが強く反対している夫婦別姓とセットになっているために、今日まで法改正されてない状況にある。
民主党はこの民法改正に積極的な立場で、千葉元法相が法改正を推進していたが、連立を組む国民新党の反対で辛うじて今年の通常国会で法案提出には至らなかった経緯がある。
本件については昨年鳩山首相に対して民法733条改正断乎反対の請願書を出している。よい機会なので再掲する。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-35cb.html
請願書
鳩山由紀夫内閣総理大臣 殿
平成21年10月27日
【請願する法案】
民法733条改正(女性の再婚禁止期間を6ヶ月から100日間へ短縮)に反対
【法案に反対する理由】
6か月の再婚禁止期間は国民的倫理として堅持されるべきものである。
民法733条の再婚禁止期間は明治民法767条を引き継いだものだが、これは道徳的理由にもとづかない。父性不明防止のためであり、近代的再婚禁止規定といわれる。しかも、明治民法767条は、明治7年9月29日太政官指令の300日、西欧の立法例、フランス300日、ドイツ10ヶ月、スイス300日より短い6か月であり、明治民法起草委員の梅謙次郎は「六ヶ月の期間は法医の意見を聴いて定めた」とされているが進歩的であったといえる。
ソ連・東ドイツ・中国等の社会主義国では機械的男女平等の原則により再婚禁止期間が全くない。日弁連は社会主義国を規範とし再婚禁止期間を廃止すべきとする主張だが、1996年法制審議会民法部会答申は100日間の短縮という結論であった。
しかし今日でもドイツが10か月、フランスが300日と我が国より長期の再婚禁止期間が堅持されている。我が国でも明治民法施行から110年を経過しもはや6か月の待婚は国民的倫理として定着したものであり、あえてフェミニスト・女性団体のご機嫌をとるためにいじる必要はないと考える。
私は滝沢聿代法政大教授の「民法改正要綱試案の問題点(上)」(『法律時報』66巻12号1994年11月)の意見に賛同するので以下、引用する。
「100日に短縮したとしても、回避されるのは法文上の形式的推定の重複だけであるから、事実に反する推定がなされた場合は民法773条の嫡出否認の訴えに持ち込まれることとなる‥‥(中略)‥‥待婚期間の短縮は必然的に別個の対応による問題解決の提案を含まざるをえないが‥‥余りに不用意である。現行民法の733条の六ヶ月の期間は明治民法以来のわが国の伝統であり、いわば国民的倫理となり得るものではなかろうか。婚姻は長期にわたる深い人間関係を予定する制度であるから、前婚と後婚との間に六ヶ月程度の時間的空白が置かれることは、原則的に見ればそれほどの重大な拘束ではない。またその空白の必要性は子の出生の可能性に根拠を置く故に女性だけの拘束となる事も合理的である。」
以上
この法務省の民法改正案の不健全さ悪質さは、民法900条4四号ただし書にある非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の二分の一とする、相続分の差別撤廃、つまり「嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分と同等とするものとする。」とセットになっている点にある(これについても私は反対の請願書を出しているので参照くださいhttp://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-4e41.html)。
16・17歳女子の入籍は子どもを非嫡出子にしないための動機もあると考えられるが、90年代の統計で年間約3000組ある16・17歳女子の法律婚を否定してもよいという理由として、非嫡出子差別をなくすのだから、非嫡出子でもいいじゃないかという乱暴な議論がなされている。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-323d.html総じていえばこの民法改正案は法律婚制度の解体であり、かつてスターリン時代にソ連がやっていた事実婚主義マンセーという思想背景を看取できる。
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