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2011/01/23

団体交渉コレクティビズムから個別雇傭契約自由放任主義へパラダイム変換(下書き2)

アメリカ合衆国-非組合企業隆盛の理由(2)
   

 2011年1月21日プレスリリースのアメリカ合衆国労働省統計によると、2010年の労働組合の組織率は前年より低下して11.9%となった。民間部門は6.9%、公共部門が36.2%と発表されている。http://www.bls.gov/news.release/union2.nr0.htm
 州別のデータはhttp://www.bls.gov/news.release/union2.t05.htm次のとおりであるが、2009年から2010年にかけて目立って低下した州としてミシガン州18.8%から16.5%に、イリノイ州17.5%から15.5%に、マサチューセッツ州16.6%から14.5%といずれも2%以上の低下を示した。

労働組合の組織率の低い州(括弧内は2008年大統領選挙結果)

1位 ノースカロライナ3.2% 労働権州(オバマ)
2位 ジョージア4.0% 労働権州(マケイン)
2位 アーカンソー4.0% 労働権州(マケイン)
4位 ルイジアナ4.3% 労働権州(マケイン)
5位 ミシシッピ4.5% 労働権州(マケイン)
6位 ヴァージニア4.6% 労働権州(オバマ)
6位 サウスカロライナ4.6% 労働権州(マケイン) 
7位 テネシー4.7% 労働権州(マケイン)
8位 テキサス5.4% 労働権州(マケイン)
9位 オクラホマ5.5% 労働権州(マケイン)
10位 フロリダ5.6% 労働権州(オバマ)
10位 サウスダコタ5.6% 労働権州(マケイン) 

労働組合の組織率の高い州

1位 ニューヨーク24.2% (オバマ)
2位 アラスカ22.9% (マケイン)
3位 ハワイ21.8% (オバマ)
4位 ワシントン19.4% (オバマ)
5位 カリフォルニア17.5% (オバマ)
6位 ニュージャージー17.1% (オバマ)
7位 コネチカット16.7% (オバマ) 
8位 ミシガン16.5%(オバマ)
9位 ロードアイランド16.4%(オバマ)
10位 オレゴン16.2% (オバマ)

(註)一般に南部は組織率が低い。労働権法(Right to Work law)とは組合に加入せず、あるいは組合費を徴収されないで勤労する被用者の権利を定めたもので、州憲法か州法で規定しているのは南部など23州とグァム準州である。
 ノースカロライナ州の組織率の突出して低い要因は、たぶん州法で州公務員は任意の団体交渉も禁止されており労働組合が否認されてため。但し州従業員協会という職員及び退職者の団体があり、議会への陳情などの活動を行っているが労働組合員にカウントされないためと思われる。
 

 争議行為が合法化されていなかった1930年に9.3%の組織率であったことからすると、2010年の民間企業の6.9%(710万)、公共部門(760万)を含めても11.9%(1470万人)という数値はやはり低いといわなければならない。現実には労働組合に政治的影響力があることはオバマが当選したことでも明らかだが、もはや団体交渉によるニューディール型労資関係は少数派にすぎないものとなったといわなければならない。
 なお、アメリカでもっとも組織率が高かったのは第二次大戦中の40%である。労働組合員は1933年の300万人未満から1945年には1500万人に急増し、戦後の組合員の増加は緩慢になったが、1960年が1800万人を超える水準に達した。しかし組織率は1940年代後半から50年代は33~38%の範囲で推移し、1960年代以降民間セクターはとめどのない下降を示している。【*3】
 平成21年6月末の日本の民間企業の労働組合員数は832万8千人http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/09/kekka.htmlと発表されているから、米国は710万なので日本より民間企業の組合員数は120万も少ないことになる。
 これだけ組織率が低下した理由は、さしあたり、以下の要因を指摘できる。

1.アメリカの経営者の反労働組合主義
2.労働法制の要因
 (1)タフト・ハートレー法における使用者の対抗言論の容認
 (2)全国労働局(NLRB)の保守化
 (3)南部など23州の労働権法
3.産業別組合の制限的組合就業規則が技術革新に対応できなかったこと
4.非組合(ノンユニオン)企業の企業文化の高い評価
 以下、それぞれの論点について概説する。
 
1.アメリカの経営者の反労働組合主義と憲法革命以前の保守的な司法

●アメリカと欧州の違い

 20世紀の最初の30年間、アメリカと欧州は対照的な歩み方だった。
 欧州大陸では社会主義と労働組合運動の高揚に対応して企業横断的な雇主協会を結成し、この協会が、財産権と経営権を組合が支持するという約束と引き換えに、組合を容認し産業レベルの団体交渉に応じることになる。これは組合を既存の秩序に組み込んで、これ以上過激にならないようにするためでもあったが、しかしこのことは、労働組合が政府に対して社会保障プログラムを充実させることに圧力をかける要因となり【*4】、過度に保護された労働規制立法を結果した。欧州大陸モデルの典型がドイツであるが、使用者団体の高い組織率と産業別労組による集権的な構造の団体交渉・協約自治システムと強い労働協約の拘束力を特徴としている。労働協約法により企業協定より産業別労組との労働協約が優位する。
 イギリスではコモンローにおいては、争議行為を営業制限の法理により犯罪とされ、あるいは民事共謀、契約違反の誘致行為、契約の履行不能をもたらす行為、強迫、共謀、営業妨害等不法行為とされてきたが、自由党のバナマン内閣が当時少数政党だった労働党提案を丸呑みした1906年労働争議法により争議行為を不法行為として起訴されないとする免責規定によって組合を市民法の枠外に特別に扱うこととして、組合の力を強くした。ただイギリスの場合はドイツとは違って、そもそも団体協約が法的には営業制限そのものでであり経営権の侵害そのものであるから、団体協約はあくまでも法外的なものとして処理された。

 これに対して、アメリカは組織労働者の抑制において成功した工業国だった。裁判所が労働者の集団行動に敵対的だっただけでなく、雇用者団体の主流はオープンショップ運動がその典型だが、反労働組合政策、労働組合排除で一貫していた。20世紀初頭、2010年代末期、大恐慌の後の1930~40年代が20世紀における労働運動の高揚期であるが、NAM(全米製造業者協会)などの雇用者団体は組合の組織化の抑止に全力を挙げて取り組んだのである。ウィルソン政権で労働組合に有利な立法政策があったが、1930年まではコモンローの時代であり、労働問題も最終的には司法により制御され無体財産に拡大された財産権が擁護された。裁判官は労働者の集団的行動よりの個人の自由を重視した。1920年代は組織率が低下したように、大企業の多くは1930年代の大恐慌と産業別労働組合の台頭までは組織化の浸透を阻止してきた。

●オープンショップ運動とレイバー・インジャンクション
 
 全米製造業者協会(NAM)など雇用者団体が20世紀初頭から展開したオープンショップ運動が反労働組合主義の典型である。これは組合員である否かを問わず労働者を雇用し、第三者である組合に掣肘されることとない非組合員の雇傭契約の自由を神聖なものとして、雇傭条件の決定から組合を排除しようとするものである。
 1920年代においてはクローズドショップによる労働市場の独占はアメリカ的でない慣行として「アメリカン・プラン」をスローガンとして全米でこの運動が展開されたのである。オープンショップ運動の理念を継承しているのが現代の非組合(ノン・ユニオン)企業といえるだろう。

 オープンショップ運動は裁判所の労働者の団体行動に厳しい姿勢によって支えられていた。もっとも争議行為抑止に効果があったのは営業権(自らの資本や労働を用いる権利)は財産権であリ、取引を妨害する団結は公的不法妨害  public nuisanceという判断【*5】にもとづき、争議行為の事前予防的手段となったレイバー・インジャンクション(労働争議差止命令labor injunction))である。
 これは、1868年のイギリスの判例を継受したもので、イギリスでは先例に従わなくなったが、アメリカにおいて1880年以降使用者が差止命令を強く求めるようになり【*6】、アメリカでは1880~1930年に少なくとも4300件のレイバー・インジャンクションが発せられた。とりわけ1920年代にはストライキの25%に差止命令が発せられていた【*7】。争議行為を潰す効果は大きかった。  
 共謀法理によるコモン・ロー上の救済(損害賠償救済)が事後的であるのに対して、衡平法上の救済である差止命令は、事前的、保全的に発給が可能である。長期化する公判をもつ必要がなく、陪審員は排され、裁判官単独で迅速に救済を発しえる。損害が拡大する前に判事は自ら不適切と判断したあらゆる行動(ストライキの呼びかけ、ピケッティング、「スト破り」と叫んだり、話しかけ説得すること)を一方的に禁止することができた【*8】。差止命令違反は法廷侮辱罪となり、これは起訴にもよらず、侮辱を受けた裁判官が審理し罰金刑を課すことができる。

財産権の拡張解釈

 争議行為はコモンローにおいては営業制限の法理や共謀法理により犯罪とされ、あるいは契約違反の誘致等の不法行為とされてきたが、アメリカ合衆国では裁判所が「財産権」の概念を持続的に事業を運営する権利等に拡大することによって争議行為を抑圧したところに大きな特徴がある。
 実体のある物のみを「財産」としてしまうと組合の平穏な、脅迫も暴力もない圧力によってもたらされた損害は財産権の侵害に当たらないため差止命令が使えない。そこで「財産」は、有体財産(physical property)だけではなく、無体財産(intangibleroperty)権をも意味するものとの拡張解釈がなされた。この拡張解釈によると、営業行為、使用者・被用者関係、商人・顧客関係、商品の流通も「財産権」である。
 連邦最高裁はDebs v. United States, 158 U.S. 564 (1895)においてそのような解釈により1894年のプルマンストライキ【*9】において、郵便車輌運行の妨害が行われたが、連邦政府の営業(郵便)は財産であること、これを保護するに普通法上の救済では不十分であること、州際通商を妨害するストライキは公的不法妨害(public nuisance)であることを確認し、又、州際通商妨害抑止のため、法務総裁の申し立てに基づく差止命令の利用を認めたシャーマン法(1890年)の労働争議への適用を支持した。これによって労働争議は衡平法管轄権にとりいれられ、レイバー・インジャンクションの著名な歴史がはじまった【*10】。

【*3】S・M・ジャコービィ/内田・中本・鈴木・平尾・森訳『会社荘園制-アメリカ型ウェルフェアキャピタリズムの軌跡』北海道大学図書刊行会1999 67頁
【*4】前掲書 3頁
【*5】山内久史「アメリカ連邦労働政策の変化とレイバーインジャンクションの機能 : ノリス・ラガーディア法の成立とタフト・ハートレー法以後の展開」『早稲田法学会誌』36(1986)191頁http://hdl.handle.net/2065/6448
【*6】谷口陽一「労働差止命令-ニューディール以前におけるアメリカ労働法の形成過程」『創価大学大学院紀要 』31, 85-98, 2009 http://daigakuin.soka.ac.jp/bulletin-law.html
【*7】竹田有『アメリカ労働民衆の世界-労働史と都市史』ミネルヴァ書房2010 157頁
【*8】前掲書155頁
【*9】  1894年プルマンストライキにおける差止命令の概要は以下のとおり。

 シカゴのプルマン寝台車会社は寝台車や展望車を製造し、シカゴに集まるすべての鉄道会社と契約して、会社の車輌を旅客列車に連結して料金を徴収し営業を行い、寝台車の客室サービスもプルマン寝台車会社の直営だった。
 1894年5月、20%賃下げの提案をめぐって労働争議となり、労使交渉は進捗せずストライキが続いていたが、6月26日からデブスを組合長とする産業別組合のアメリカ鉄道従業員組合が、プルマン車の連結した列車の取り扱いを拒否する、一種のボイコットを行った。このためプルマン車と契約関係にあるすべての鉄道会社が紛争に巻き込まれ、当時はまだ自動車輸送が発達していなかったので、州際取引商品の輸送が止まり、郵便も止まった。
 6月30日にシカゴ駐在の連邦司法検事は首都の法務総裁に次のように報告した。「29日夜ストライキ参加者によって郵便車が止められ、機関車が切り離されて動かなくなった。情勢は次第に切迫し、あらゆる列車がとまるおそれがある。執行吏に、列車に乗り込んで郵便を守り、妨害者を逮捕し、執行代行者を雇い入れる権限を与えることが望ましい」。 法務総裁はこの提案を認め、時のクリーブランド大統領はインジャンクションを裁判所に申請した。
 その根拠は第一に憲法及び普通法の下において郵便および州際取引は連邦政府の専管に属するものであり、その保護には連邦裁判所が差止命令によって干渉する権能を有する。第二に1890年7月2日に成立したシャーマン法が州際間の営業または取引を制限する共謀は違法であると宣言され、連邦巡回裁判所にこの種の共謀を防止し差止める権限が付与されていることであった。
 全般的差止命令は7月3日に送達された。
 内容は大略して被告デブス、ハワード…ならびにかれらと団結し共謀するすべてのものに下記の行為を禁止するものあった。
 州際の旅客並びに貨物の運送人としての業務、郵便車、州際取引に従事する列車、機関車、車輌、鉄道会社の財産につき業務を妨げ、阻止しまたは停止する行為。鉄道の構内に上記の目的で立ち入る行為、信号機に対する同様の行為、鉄道会社の従業員の何人に対してでも、従業員としての義務の履行を拒みまたは怠るよう、威嚇、脅迫、説得または暴力を用いて強要しまたは勧誘し、あるいはそれを企てる行為、従業員になろうとする者を同様の手段で妨げる行為、州際輸送を妨害するための共謀、団結の一環をなすすべての行為、上掲のいずれかの行為を行うよう命令、指令。幇助、助成する行為。
 しかし7月3日の状況は、ロック・アイランドの連絡駅で、2千から3千人の暴徒の群れが占拠していて、郵便車を転覆させ、すべての車輌の通過を妨害した。解散命令には応じず、嘲笑と怒声になった。さらに暴徒は数台の手荷物車を横倒しにしたため、軍隊の出動が要請された。夜9時には陸軍司令官の出動命令を出され、軍隊が到着したが、鉄道施設の破壊や焼打ちが行われ、連邦裁判所の差止命令に公然たる挑戦がなされた。
 しかし6日に逮捕が進行し、8日に大統領より市民は暴徒に近づかないよう告示が出された。10日にはデブスら労働組合幹部が逮捕され、20日には軍隊が去りストライキは終息した。 ( 有泉亨「物語労働法12第11話レイバー・インジャンクション」『法学セミナー』1971年8月号)
【*10】】山内久史「アメリカ連邦労働政策の変化とレイバーインジャンクションの機能 : ノリス・ラガーディア法の成立とタフト・ハートレー法以後の展開」『早稲田法学会誌』36(1986)191頁http://hdl.handle.net/2065/6448

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