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2011/02/08

団体交渉コレクティビズムから個別雇傭契約自由放任主義へパラダイム変換(下書き5)

第4回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-df3f.html

アメリカ合衆国-非組合企業隆盛の理由(5)

1.アメリカの経営者の反労働組合主義と憲法革命以前の保守的な司法

承前

 ●シャーマン法の労働組合への適用 (1)

 我が国の独占禁止法の母法である1890年シャーマン法の正式名称を「違法な制限および独占から取引および通商を保護するための法律」という。この法律の制定にリーダーシップを取ってきた上院議員の名前を付してシャーマン法と通称される。
 その立法目的は、一般的には州際通商および外国との交易において「完全で自由な競争」を促すことであり、直接的にはトラスト等による大規模な結合体が生産、供給、価格を支配することから消費者の経済的利益と小規模企業の独立および生存権を保護することである。当時の社会において、大衆の大多数が競争的な社会を望み、大企業の活動に敵意を抱いていたことが背景にあった。
 シャーマン上院議員はトラスト問題の解決のため営業(取引)制限や独占に関するコモン・ローの法理を継承することを提案した。連邦議員のメンバーは好意的だったが、合衆国憲法通商条項が連邦議会にトラスト問題を規制する権限を授与しているのか、関税法との関連などで意見の対立があり、結局シャーマン法は、多くの妥協案が取り入れられ、コモン・ローのアプローチを採用しながら、違反者に罰金、禁固刑などの刑事罰を科したこと、違反行為を停止する差止命令を求めうること。損害を蒙った者に私的訴訟を許し、三倍額の賠償を認めた点で、コモン・ローの範囲を超えた内容になっている【*1】。
 以上の立法趣旨からシャーマン反トラスト法は、先買・再販・買占め規制の1552年制定法に由来するという説もあるように古い由来があり、歴史的には営業制限の法理、一定の団結や営業制限に対する合意に対する敵意を前提としたコモン・ローのパブリックポリシーの延長線上に位置するものと理解できる。
 重要なことは、そもそも労働組合が営業または企業の行為に制約的諸条件を課そうとする団結であり、営業制限を目的とされ不法とみなされていた歴史があることだ【*2】。シャーマン第1条は「州際、外国との間の取引あるいは通商を制限する全ての契約、トラストその他の形態の団結、共謀を不法とする」と規定していたことから、「団結」「共謀」と言う文言により労働組合にも適用される可能性がはじめからあったということである。
 言い換えると独占禁止法の法源をたどるとそこに労働組合を一網打尽に叩く法理をみいだすことができる。独占禁止法と反労働組合政策は元々親和的な性質を有していた。営業制限の法理の歴史を辿ると長文になるのでここでは要点に絞ることとする。

(営業制限の法理と労働組合)

 反独占はコモン・ローの伝統であった。あらゆる営業独占が敵視された。契約法の大家P・Sアティアが強調しているように「独占」Monopoliesという言葉が極めて広い意味をもっていた。つまり「営業を制限もしくは規制する排他的権利」を「独占」というのである【*3】。
 16世紀末期からの国制論争において国王大権たる独占特許状の付与をコモン・ローに反すると裁定されたことにより法の支配が確立したのである。私はそれが絶対王政の国王大権を実質制限した立憲君主制-近代市民社会の成立でもっとも重要な意味のある事柄であった。
 営業独占が有害であるという法廷による決定的なステートメントは、1602年ダーシー対アレン判決Darcy v.Alleinという著名な判決である。1598年原告エドワード・ダーシーは、女王エリザベス1世から英国の市場でトランプの全てを輸入し販売する開封勅許状を受取っていた。ところがロンドンの小間物商が女王と原告の許可なしにトランプを販売したため訴えられた。
 王座裁判所全員一致の意見は次のように述べた「原告にたいする……前記の権利付与はまったく無効である……第一に、すべての営業は……国家にとって有益であり、したがって、トランプの独占権を原告に付与したことは、コモン・ロー、および臣民の利益と自由に反する。…」【*4】。
 1711年営業制限について全般的に考察した指導判例ミッチェル対レイノルズ判決Mitchel v. Reynoldsにおいては「非任意的制限(当事者の合意に基づかないもの)に関して、国王の権利附与および特許状ならびに定款による制限が一般的に無効であるという第一の理由は、法が営業および誠実な勤勉さに与えている奨励に由来し、臣民の自由に反するからである。」とされた。【*5】。
 
 コモン・ローの独占に対する敵意は、多くの形態の団結に対する一般的な敵意をも表明した。1721年の南海泡沫会社事件以来あらゆる法人に対する敵意が存在していたのであり、18世紀を通じて奨励されていたのは個人企業であった【*6】。有限責任会社の創設は19世紀の後半、1856~62年に反コモン・ローのベンサム主義者による契約の自由の拡大の努力によりもたらされたものである、自己の財産の一部を損失の危機にさらさずに、営業をなすべき個人の機能は、コモン・ローが認可する契約ではなかったのである【*7】。
 コモン・ローは独占的性質をもつあらゆる団結に対して敵意をもつが、団結が商品価格を固定するものであろうと、労働価格を固定しようとするものであろうと差異はなかった。
 18世紀中葉の法曹の大御所であったマンスフィールド卿(王座裁判所King,s Bench主席裁判官、積極的に法制度改革を試み近代において最も偉大な法曹の一人)の1783年のエックレス事件の意見はよく引用される。
「起訴状に共謀を実現する手段を記述する必要はない。何故ならば犯罪は害悪を何らかの手段をもって実現する目的のもとに、共謀することにあるからである。違法な結合が犯罪の眼目である。商品を所有する者は個人として自己の欲する価格でそれを販売し得る。しかし彼等が一定価格以下では販売しないことを共謀し、合意するならば、それはコンスピラシーである。同様にあらゆる人間は自己の好む場所で労働できる。しかし、一定価格以下では労働しないとして団結することは、起訴さるべき犯罪である」【*8】
 このように、裁判所は、営業の制限を内容とする複数人の結合はそれ自体コモンローのpublic policy(公共政策、公序)に反し、共謀に該り、犯罪として起訴されるという法理を形成していた。要するに反独占とは反団結でもある。
 マンスフィールドを引き継ぎ王座裁判所の主席判事をつとめたのは保守的な法曹と評価されるケンヨン卿であるが、ケンヨン卿は1799年ハモンド事件 R.v.Hammond and Wabbにおいて(事案は1792年に靴製造職人の団結の規約が作られ、そこには彼らの集会、相互援助のための基金、その他彼らの企図を進めるために相互に運営して行く事項が印刷されていた。本件は組合を結成し、賃金の引き上げのために共謀したことを理由に起訴された)。労働者団体を「一般的共謀」【*9】と断言した。組合の結成そのものも刑事共謀罪に該当すると判示した。1799-1800年団結禁止法は営業制限の法理を制定法により具現化したものといえる。 

 
   
【*1】谷原修身『現代独占禁止法要論』六訂版 中央経済社 2003年 45頁
【*2】イギリスの1871年労働組合法は組合基金に法的保護を与え、その共済手当給付を自由とした世界史上初の労働組合合法化立法であるが、「本法がなければその目的が営業制限の理由により不法の団体と見なされるべき」労働組合を「単にその目的が営業制限という理由のみでは不法とみなさない」(同法2条)(秋田成就「イギリスにおける争議権」『季刊労働法』5(1)1955年)と規定した。同法では新たにトレードユニオン(労働組合)となづけた団結を次のように規定した。労働組合の定義として最もわかりやすいものである。「労働者と雇主たち(マスターズ)、あるいは労働者たちと労働者たち、あるいはマスターズとマスターズとの間を規律しようとする団結、ないし営業または企業の行為に制約的諸条件を課そうとする団結」。(中西洋『《賃金》《職業=労働組合》《国家》の理論》』ミネルヴァ書房1998年141頁以下)
【*3】矢崎光圀監修 大阪大学法文化研究会 「イギリス契約法史の一潮流--アティアの近著に依拠して」-1-『阪大法学』通号125 1982
【*4】堀部政男「イギリス革命と人権」東大社会科学研究所編『基本的人権2』東京大学出版会1968所収
【*5】松林和夫「イギリスにおける「団結禁止法」および「主従法」の展開」高柳信一,藤田勇編『資本主義法の形成と展開. 2 』東京大学出版会1972
【*6】矢崎光圀監修 大阪大学法文化研究会 「イギリス契約法史の一潮流--アティアの近著に依拠して」-1-『阪大法学』通号125 1982
【*7】A・V・ダイシー 清水金二郎訳『法律と世論』法律文化社1972 211頁
【*8】片岡曻『英国労働法理論史』有斐閣1952
【*9】松林和夫「イギリスにおける「団結禁止法」および「主従法」の展開」高柳信一,藤田勇編『資本主義法の形成と展開. 2 』東京大学出版会1972

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