そもそも政府は団体協約を締結してはいけない-統治権の否定
ウィスコンシンステートジャーナルのブレ-キングニュースはウォーカーは解雇通知もあり得ると警告しますとあります。http://host.madison.com/wsj/news/local/govt-and-politics/article_551d34c2-3e8f-11e0-8f91-001cc4c03286.html
ニューヨークタイムズのディベートルームでウィスコンシンの事件を有識者が議論をしてますが、ヘリテージ財団のジェームズ・シャークの記事が明解です。http://www.nytimes.com/roomfordebate/2011/02/18/the-first-blow-against-public-employees/fdr-warned-us-about-public-sector-unions、「労働協約は、有権者が最終的には公共政策に関する発言権がないことを意味します。」
つまり常に労働組合の圧力によって、予算支出、政策決定をゆがめられることになります。統治権の否定です。
戦前は官吏の俸給は天皇大権事項だから団体交渉などあり得ないように、アメリカでも主権理論であり得ないことだった。1959年まで団体交渉は容認されなかったし、労働組合もそれははわかっていた。1937年のいわゆるルーズベルト書簡が「すべての政府職員は普通に知られている所謂団体交渉の手段は公務員の場合は採用できないものであることを理解せねばならぬ。団体交渉は国家公務員制度に適用せられるに当たっては明確なそして変更しえない制限を受ける。」と述べ、明解に団体交渉権付与を否定していた。ただ議員への陳情と言う形で、労働条件について発言権がありました。
実は1935年のワグナー法、民間企業労働者に団体交渉権を認めた全国労使関係法ですが、労働協約の締結を義務づけることはしません。強制仲裁もしません。それが合憲判断の理由ともなってます。
そもそも、1921年の判決で民間企業、商店などの営業行為は財産権と最高裁は断言し、労働争議の禁止命令を正当化してました。財産権というのは、その財産の処分について他者の干渉を容認しないことです。所有者に独占的に決定権がなければ所有権ではありません。
政府においても同じことで、有権者の代表者である国会議員が予算を議決しますが、国民に選ばれている訳でもない、労働組合に予算の決定についての干渉を許すと言うことで不完全な統治体制になるのです。
ウォーカー知事の法案は、統治権を取り戻す正しい政策であり、議事堂を占拠し野営して、州議会の機能をマヒさせている組合員こそ民主政体を否定しています。
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すみませんが、ワグナー法についてもう少し詳しくお願いします。
この法律こそアメリカと日本の労使形態の差を形作ったと(私は)思っています。
それ以前の労使は家族的なところが多く、一昔前の日本の中小企業のような会社が多かった、ということです。
ワグナー法以後は、労使の対立が盛んになり、とういうより、構造的にプロの労働運動家が誕生したのではないか?と考えています。
そして、そのため労使の協調路線が行えなくなったのではないか?とみているのです。
ただ、私は法律は素人ですので、専門家の意見をお聞きしたいと思います。
投稿: みやとん | 2011/02/23 17:50
関西汽船の子会社"関汽交通社”は
異常な会社、
関西汽船乗船券船場営業所において
異常セクハラが発生被害者の女性はノイロー
ゼになり退職、加害者は会社も労働組合も
解雇を示したが、親の謝罪で加害者は在職
することのなるが、また同じ様なことをする
会社側は
予見していたのであれば注意義務
に使用者責任が存在します。
その上、書類は盗まれるは、
私物は盗まれる、女性がストーカー
加害者の男性は精神疾患になる
異常すぎるこの会社
闘わなければ。
投稿: 善野 | 2011/02/23 21:18
関西汽船の子会社"関汽交通社”は
異常な会社、
関西汽船乗船券船場営業所において
異常セクハラが発生被害者の女性はノイロー
ゼになり退職、加害者は会社も労働組合も
解雇を示したが、親の謝罪で加害者は在職
することのなるが、また同じ様なことをする
会社側は
予見していたのであれば注意義務
に使用者責任が存在します。
その上、書類は盗まれるは、
私物は盗まれる、女性がストーカー
被害者の男性は精神疾患になる
異常すぎるこの会社
闘わなければ。
投稿: 善野 | 2011/02/23 21:20
>ワグナー法についてもう少し詳しく
私も素人です。非常にわかりにくかったと思いますが、いわんとしたことは、イギリスの普通法(コモンロー)では労働協約に法的拘束力は認めない。そもそも労働協約自体が営業(取引)制限の法理により普通法に反するとみられているから。アメリカにおいては労働協約の強要は契約(取引)の自由という大原則に反し、財産権の侵害とみることができ、憲法上の問題になるとい問題意識を前提とします。
そもそも、労働組合と交渉するか否認するかは取引の自由という大原則のもとに経営者の任意の判断、自主交渉でした。
1920年代、大抵の大企業は労働組合を否認しました。組合を敵視しブラックリストなどで徹底的に排除するやりかたもありましたが、洗練された手法としては組合の組織化を阻むために従業員代表制を設けたり、従業員福祉を重視する日本の経営家族主義みたいな経営をやってました。実際、USスチールが組合を承認して団交するようになったのが1937年から、GMも1937年からです。それ以前のデトロイトの自動車産業は組合を否認してたし、組織化を防止してました。1930年の組合組織率は9%程度です。組織率が低かったのは、労働争議差止命令が発給され、争議行為が潰されることもありましたが、20年代まではAFL(熟練工を中心とする職種別組合)が組合の主力でした。鉄鋼業の不熟練工は南欧東欧の移民が多く、熟練工が差配する職種別組合に反発もあったから、広範な組織化は困難でした。産業別組合CIOが台頭したのワグナー法以降のことです。また1932年まで組合に加入しないことを雇用条件とする黄犬契約も契約の自由として認められていました。
30年代、大恐慌と産業別組合の台頭によりアメリカ社会は左傾化します。組織率が9%程度だったのが第二次大戦中のピーク時に最大40%まで組織率が上昇します。
ニューディール政策として「被用者は団結し、自ら選出した代表者を通じて団交をする権利」を有すると定めたのは1933年の全国産業復興法(NIRA)です。企業はこの対策として会社組合カンパニーユニオンを作りました。外の労働団体から組織化されるより従業員組織の御用組合が無難だとというためです。しかしNIRAを進化させた1935年のワグナー法は明確に会社組合を認めませんでした。従って、現行のアメリカの全国労使関係法では従業員代表制とか会社の支援を受けた会社組合はないという建前です。従ってはじめから労使協調的な組合というのはアメリカにはありえない。
ワグナー法(民間企業に適用)では「適正単位内の被用者の過半数によって、団交目的のために選出された代表者は、賃金率、賃金、労働時間その他の労働条件に関する団交目的のために、当該単位内のすべての被用者の排他的代表者」となる。
従業員の過半数の支持を得た排他的交渉代表制として交渉単位で複数組合がないのがアメリカの特徴です。
ところで問題は国家が私企業の団交過程まで関与する誠実団交義務という考え方ですが、それを義務づけること自体、取引の自由との関連で問題があるとも思いますが、つきつめた議論はなされてない。しかしワグナー法は労働協約締結を義務づけないので、今日では、全国労使関係局の監督する組合代表選挙に勝って組合が承認されても、交渉が不調で協約が締結されないケースが多いのである。
経済界はおおかたワグナー法は違憲になると考え甘くみていました。ところが1937年ジョーンズ・ラフリン鉄鋼会社判決で合憲とされた。主な争点となった通商条項の判断については省略しますが、ヒューズ主席判事は労働協約締結を義務づけていないことも合憲の理由としてあげている。決定的に契約の自由、経営権を縛るものではないという判断と思われる。
アメリカでは民間企業でも労働協約を強要しないのに州政府が強要されるのは理屈にあわないというのが私の主張。
日本では労働基準法で過半数組合とのみ時間外労働の協定を結ぶことを強要してますがそういう制度自体が、契約の自由、取引の自由の侵害と考える。
投稿: 川西正彦 | 2011/02/23 23:54
ワグナー法では会社組合を認めていない理由が、契約の自由にあるのですか。
しかし、会社組合を作れない、というのは違憲にならないのでしょうか。
トヨタがGMとの合弁会社を作った時に、ワグナー法の事を知って、アメリカにはこんな法律があるんだって驚きましたね。
労働組合は有るのが当たり前、と思っていましたから、眼からウロコが落ちたみたいでしたよ。
労働組合を作らない自由--ある日本の経営者が『アメリカはある意味で経営者にとって天国みたいな所だ』というのが、よくわかりましたね。
投稿: みやとん | 2011/02/24 21:35
>会社組合を認めていない理由
ひとことでいえば、使用者支配組合を禁止して労働組合を保護する目的ですが、その経緯は以下のとおりです。
1920年代のアメリカの経営者の態度は「好戦的な反労働組合主義」と「洗練された反労働組合主義」に分けることができます。前者が全米製造業者協会、アメリカ自由同盟、後者がSCC加盟企業にみられます。組合の組織化を阻止したい、しかし団体交渉とは違う協調的な集団協議を評価する立場で、非組合型の従業員代表制(労使協議会)を採用する企業が多くありました。信頼と好意にもとづく労資協調主義です。(*1)
F・D・ルーズベルトの政策である1933年全国産業復興法は、賃金の安定化と、購買力の復活による総需要の創出を目的として、民主党政綱にはなかった団体交渉権を承認したことで革新的な立法でしたがもいくつかの矛盾点がありました。
その一つが実業界の主張する一企業のみで構成される従業員代表制を含む労働組織(会社組合)を禁止できず、真の団体交渉ではなく形式的な団体交渉で済ます方便として用いられたことでした。
組織労働者側の政策を推進したロバート・F・ワグナーは「1933年秋に、鉱業および製造業に関係する労働者のうち、わずかに9.3%が真の労働組合に属し、45.7%が未組織状態、残り45%が使用者の支配する会社組合のもとにあった」と指摘、使用者がルール・手続の決定に関与し、拒否権を行使できる従業員代表制を敵視したため、1935年全国労使関係法(ワグナー法)では、第8条(a)(2)において労働組織の結成あるいは運営を支配し、干渉し、財政的支援もしくは他の支援をすることを不当労働行為と規定し、第2条(5)で労働組織を「従業員が参加し、苦情、労働争議、賃金、賃率、労働時間、その他の労働条件に関し、使用者と協議することをその目的の全部または一部とする、あらゆる種類の組織、代理機関、従業員代表制度」と幅広く規定した。(*2)
1937年ワグナー法が合憲と判決され経済界は苦境に立った。この年が憲法革命の年で、連邦最高裁は契約の自由や財産権といった経済的自由を擁護しなくなり、経済的自由を侵害する社会経済立法は立法府の判断を否定しない方針に切り替わった。司法においても自由放任経済を擁護しなくなったのである。
判例を積み重ねて従業員代表制の違法性は確定的なものとなり、相当な抵抗があったものの従業員代表制度は①自発的に廃止、②独立組合への転換、③全国組合への吸収によって30年代末までに姿を消すこととなる。
会社組合を廃止したのは、労働組合を強くして、産業平和を確立し、賃金を安定化し、購買力の復活で経済を立て直すという(それは経済学的に間違った考えだが)ニューディール政策であり、産業別組合を台頭させました。
皮肉なことに2010年の民間企業の組織率は6.9%です。組合不在企業が多いのです。これらの組合不在企業には公式的には従業員代表制もないことになってますから、多くの企業では団体主義は過去のものとなり実質的に個別雇用契約と考えてよいわけです。
出所(*1)平尾・伊藤・関口・森川編著『アメリカ大企業と労働者-1920年代労務管理研究』北海道大学図書刊行会1998の96頁
(*2)伊藤健市『インターナショナル・ハーヴェスター社従業員代表制の研究』関西大学出版部2008年序章4頁以下
投稿: 川西正彦 | 2011/02/25 00:06
会社組合がない、とすると、必然的に職業別の組合にならざるをえませんね。
という事は、職種の転換に企業側が教育をすることが難しい、という事にもなりませんか?
また、新技術の導入にもそしょう、いや、支障が出る可能性が高いですね。(組合のある企業では)
技術革新の少ない時代ならいざ知らず、現代において職業別の組合では時代に取り残される恐れが大きい、と思うのですが、どうお考えですか。
個別雇用契約が主となる社会では、政府(自治体等)がよほど職業教育に力をいれなければ競争から取り残される、と思います。その点、アメリカの教育はどうなのでしょう?
ともあれ、憲法上でワグナー法の正当性が保証された以上、ウォーカー知事の法案の方が正しいでしょうね。(日本では到底こうはいきそうにないですが)
ある意味、自由の国アメリカの面目躍如たるもんですねぇ!
投稿: みやとん | 2011/02/25 22:02