新学習指導要領の懸念 24年度中学校武道必修化
『月刊高校教育』2011年1月号学校安全の死角シリーズで内田良(愛知教育大学「柔道事故と武道⑤体育授業における安全指導」を読んだ。平成24年度から中学校1.2年の武道必修化完全実施の懸念を述べたものである。現場の声として「今までの武道とダンスの選択履修の段階でさえ、武道を専門としない保健体育教員が、学校現場で指導方法を苦慮されている現実を考えると激震が走るような事実」「柔道はサッカーやバレーボールなどとは違い専門性の高い競技である。したがって、柔道の指導に指導に苦慮している教員が多いのが現実である」ということが挙げられている。
私が思うに武道指導の強化で喜んでいるのは、武道国会議員連盟や、武道具用品店などごく一部の人々だけで、現場では歓迎されていないのではないか。
内田氏は「初心者(教師)の指導のもと、初心者(生徒)が投げ、初心者(生徒)が受ける」事を懸念するが、これは事故が多発する予感がある。
しかし、生徒がけがしようが、体育の授業に礼儀が徳育を持ち込みたい保守系国会議員が満足すればそれでいいのだという非常に政治的な意味の強い教育課程改定は私は間違い だと思う。
むろん従来の体育教育の目標にも「各種の運動の経験を通じて、公正、協力、責任などの育成」も指導されていることだが、武道はやや異質なものを感じる。
柔道や剣道は専門性の高い競技で、他の個人スポーツ、集団スポーツとはわれがちがう。必修化になお強い疑問を感じるのである。
体育教育は旧来の鍛錬主義、体力向上という観点より、運動機能を習熟させる目的になついて、運動の楽しさを味わせることにより、生活を健全に明るくする能力と態度を育てるという目標が強調されるようになってきている。これは歓迎すべきことで、運動を継続的に実践していくことで、生涯体育の基礎づくりとしての学校体育に目標はシフトしてきたはずだ。
武道必修はその方向性から、昔の心身鍛練主義に戻す、反動的性格を有するものと考える。
また、宗教上の少数者の権利についても十分な配慮が必要だ。武道を信仰上の理由で拒否するエホバの証人信者の良心の自由や親の監護教育権の尊重も是非願いたい。
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