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2011/04/17

団体交渉コレクティビズムから個別雇傭契約自由放任主義へパラダイム変換(下書き11)

前回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-13ba.html

合衆国-非組合企業隆盛の理由(11)

1.アメリカの経営者の反労働組合主義と憲法革命以前の保守的な司法

承前

● Lochner era(ロックナー時代)の経験(3)

今日でも、アメリカの雇傭関係の基本はコモンローの随意的雇用原則である。つまり期間の定めのない雇用契約は、当事者が明示的に反対の旨を表示しない限り随意的なものと推定され、正当な理由があろうとなかろうと、いかなる理由でも解雇・離職自由を原則としており、個別交渉・個別契約が基本なのであるhttp://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/019_7.pdf。欧州などの労働者保護に厚く解雇規制のある硬直的な労働法制の諸国と比較して柔軟なシステムを維持している。この原則が崩れない限りアメリカは活力のある社会であり続けると私は考える。
 これに対して、コモンローの随意的雇用原則や被用者の忠実義務法理は、被用者にとってある種の過酷な結果をもたらし、労働者が個別交渉によっては自らのニーズを満たせないという主張により、団結団体行動保護立法が革新主義時代からなされた。それは大恐慌時代に1932年のノリス・ラガーディア法、1935年ワグナー法(全国労使関係法)で結実することとなる。
 しかし、仮に、それが大恐慌時代において求められたものだとも、今日のアメリカにおいて民間企業の組織率が7%である。しかも、全国労使関係法がいわゆる会社組合や従業員代表制度を禁止しているために、組合のない企業は原則として個別契約なのである。
 ウォルマート、インテル、マイクロソフト、シスコシステムズ、IBM、プロクター&ギャンブル、我々がよく知っているアメリカの代表的企業が組合不在である。石油化学、化学のように組合の組織化が進まなかった産業があるほか、金融・保険などホワイトカラーはほとんど組織化されていない。これらの労働者が過酷な状況にあるのか。そのようなことはないのである。
 組合セクターでは大きな交渉力を得たのは、消費者に労働コストの上昇を転嫁でき、管理価格を設定できる寡占部門(自動車・鉄鋼など)であった。たとえ組合が強力でも競争の激しい産業(衣服や繊維)では労働組合は高いレベルの賃金と付加給付を保証できなかった。【*1】。
 アメリカでは1970年代より生活水準より生産性向上が国民的目標となり、労働組合は生産コスト上昇の元凶として、世界市場での敗退の責任を負うものとして非難され、組合に敵対し排除する動きが加速化した【*2】。ニクソン政権、特にレーガン政権における全国労使関係局の保守化により組合の組織化は容易なものではなくなった。高いレベルの所得保障を勝ち取っていた寡占部門の組合セクターでも外国資本の組合不在企業と競争で自動車産業の巨大企業が危機を迎えたことは周知の事柄だろう。ひるがえって、我が国の団体主義を基本とする労働三法も根本的な見直し、オーバーホールが必要である。労働協約と解雇規制等で保護された正社員=労働組合員と非正規労働者の格差問題が喧伝されるが、格差解消というなら、このさいコレクティビズムと決別し個別契約を基本として賃金は市場経済原理でならしてしまったほうが格差は解消するという逆説すら成り立つと私は考える。
 アーチェリーの山本博のACのコマーシャルがいうほど私は日本を信じてない。90年代以降の我が国の経済低迷の要因については林=プレスコット説(労働基準法改定等による「時短」政策により、週当たりの雇用者平均労働時間が、バブル期前後で44時間から40時間に低下したこと,もう一つは,生産の効率性を図るTFPtotal factor productivityの成長率が,90年代の中ごろから低下したこと)が明快である。従って失われた20年から回復するためには生産性の向上と第二次勤勉革命を国民目標とすべきであるのにそのような政策目標を掲げる政党はない。。それとは反対の生活第一、ワークライフバランスや男女共同参画などの社会民主的政策を推進したことが事態をよけいに悪化させるだけである。地震と原発事故で外資や観光客が逃げたともいわれる。取り戻すためには、団体交渉コレクティビズムから個別雇傭契約自由放任主義へパラダイム変換によりプロビジネスな社会に体質を変換していかなければならない。そのような脈絡からLochner era(ロックナー時代)を再評価すべきであるというのが私の考えである。

Lochner eraにおける「契約の自由」の侵害としての違憲判決、及び州際通商条項違憲判決の主要な判例を取り上げる。

.黄犬契約を禁止するエルドマン法(鉄道労働法)を「契約の自由」の侵害として違憲と判断したアデア対合衆国判決ADAIR v. U S, 208 U.S. 161 (1908) http://caselaw.lp.findlaw.com/cgi-bin/getcase.pl?court=us&vol=208&invol=161

 1908年アデア判決は、1915年コッページ判決と並んで、「契約の自由」というという明文規定はないが実体的デュープロセスとしての憲法上の権利を根拠に、団結団体行動に対する経営支配を排除する立法を違憲と判決したベスト判決と考える。
 1898年制定のエルドマン法Eldman Act(連邦法)10条は運搬業者労働者を組合員であるという理由だけで、組合に加入しない協定にサインすることを拒絶したという理由だけで解雇することを犯罪とし、さらに、争議に参加した労働者をブラックリストにのせて回覧することを違法とした【*3】。
 ハーラン判事による法廷意見は「労働者が適当と考える条件と、労働の買手が買う条件を定める権利とは異ならない。雇用者と被用者は平等な権利を有しており、この平等性を妨害する立法は、契約の自由に関する専断的な干渉になる」【*4】と述べ、修正5条のデュープロセス条項違反として違憲判断が下されている。黒人解放の先駆、偉大な少数意見裁判官として知られロックナー判決で反対意見に回ったハーランが法廷意見が反労働組合判決の起草者であることでも有意義な判決である。
 なお、この判例は1926年鉄道労働法を合憲としたTexas & New Orleans R. Co. v. Brotherhood of Ry. Clerks, 281 U.S. 548 (1930) http://supreme.justia.com/us/281/548/case.htmlにより黙示的に判例変更されるまで20年以上効力を有した【*5】。
 

2.黄犬契約禁止の州立法を違憲としたコッページ対カンサス判決COPPAGE v. STATE OF KANSAS, 236 U.S. 1 (1915)
 http://caselaw.lp.findlaw.com/cgi-bin/getcase.pl?court=us&vol=236&invol=1

 ピットニー判事の法廷意見は労働者側は経済上の弱者であって労働の売買は対等な立場で行われていないゆえ、黄犬契約禁止を認める州裁判所の見解を排した優れた理論を示している。
 「実際、少し考えれば、私的所有の権利と自由な契約の権利が共に共存するところでは、当事者は契約をする時、他方より多く財産を持っているか、少ないか、または全く持っていないという問題によって影響を受けることは避けられない。‥‥全ての物が共有されない限り、ある人々が他の人々よりも多くの財産をもつことは自明であるので、契約の自由と私的所有を認めるならば、同時に、これらの権利の行使の必然的結果である財産の不平等を正当と認めなくては道理上あまくいかない。‥‥修正第14条は『リバーティ』と『プロパーティ』を共存する人権かと認めており‥‥」目的の審査でパスするとしても次ぎに、手段の合理性が、すなわち問題となっている法律は達成される目的にむとって「合理的」「実質的」な関連をもっているかが厳しく問われると述べた【*6】。
 私有財産権の存するところには富の不均衡はつきものであり、あらゆる契約で当事者双方が平等な立場に置かれるとは限らない。契約や私有財産権の自由を守りながら、これらの権利の行使に必然的に伴うことになる富の不均衡の合法性を認めないということは、事理に反するとしたのである。契約当事者の交渉力の対等性などありえない。元請けと下請けの関係、大企業の押し込み営業、あらゆる契約に交渉力の格差はつきもので、それを否定すれば社会主義となってしまう。現代においては古典的自由主義者シカゴ大学ロースクールのエプステイン教授がピットニー判事と同様の趣旨を述べている。

.児童労働法を違憲としたハマー対デイゲンハート判決Hammer v. Dagenhart, 247 U.S. 251 (1918)http://caselaw.lp.findlaw.com/cgi-bin/getcase.pl?court=US&vol=247&invol=251
 合衆国議会は1916年に、工場から出荷させる前30日以内に、その工場で14歳未満の者を使用したり、14歳以上16歳未満の者を1日8時間以上、、もしくは週48時間を超えてまたは午前む6時以前と午後7時以降に就労させた場合、その工場で製造された商品を州際通商で輸送することを禁止する【*7】 Child Labor Act が制定された。16歳未満の子供を2人綿糸工場で働かせていた父親がこの法律の違憲性を理由に法律の執行の差止を求めた。
 連邦最高裁は5対4の僅差であった。デイ判事による法廷意見は、合衆国議会に附与された州際通商をみ規制する権限の範囲内にないとした。つまり商品の製造や石炭の採掘は通商ではなく,これらのものが後に州際通商で輸送されたり使用されるものであったとしても、それによってこれらの生産が通商になるわけではないとして、法律を違憲とした。PDFhttp://www2.kobe-u.ac.jp/~emaruyam/law/faculty/2009/090629memo.pdf
 このように、最高裁は通商と製造の二分論によって州際通商規制権限を狭く解釈し、州の内部事項管理権限とそれぞれ排他的という考えを用いて、児童労働規制を叩きつぶしたのである。
 

【*1】竹田有『アメリカ労働民衆の世界-労働史と都市史』ミネルヴァ書房2010 219頁以下
【*2】前掲書 221ページ以下
【*3】松岡三郎「アメリカ憲法とワグナー法」『法律論叢』31巻6号1958
【*4】石田尚『実体的適法手続』信山社出版1988
【*5】松岡三郎 前掲論文
【*6】中谷実『アメリカにおける司法積極主義と消極主義』法律文化社1987 22頁
【*7】木南敦『通商条項と合衆国憲法』東京大学出版会1995 175頁

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