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2011/06/26

下書き-Lochner era(広義)の主要判例(6)

1923年アドキンズ対児童病院判決Adkins v. Children's Hospital261 U.S. 525-その2(今回はとくに論評せず、判決の内容だけ)

第1回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/lochner-era-194.html
第2回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/lochner-era2-89.html
第3回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/lochner-era-48d.html
第4回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/lochner-era-35e.html
第5回http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/lochner-era-c23.html

 1923年◎アドキンズ対児童病院判決Adkins v. Children's Hospital261 U.S. 525 http://www.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0261_0525_ZO.htmlは、女性及び未成年者に対する最低賃金を定めた連邦法(コロンビア特別区に適用される)について、成人女性に適用され限り、修正5条のデュープロセス条項により保護される契約の自由を侵害するものとして票決5対3で違憲と判決したものである。(サザーランド判事が法廷意見を記し、マッケナ、ヴァン・デヴァンター、マックレイノルズ、バトラー各判事が賛同した。タフト主席判事が反対意見を記し、サンフォード判事が加わった。ホームズ判事は単独で反対意見を記した。ブランダイス判事は判決に加わらなかった。)

 事案はウィリー・ライオンズWillie Lyonsという女性エレベーター操作員によるの最低賃金法の執行の差止命令を求める請願と、コロンビア特別区の児童病院が、最低賃金法施行に伴い、最低賃金に満たない女性従業員を多数雇っていたため最低賃金法が契約の自由を侵害するものとして提訴した二つの訴訟を併合審理したものである。

 ウィリー・ライオンズは、21歳の女性で、首都ワシントン(コロンビア特別区)のコングレスホールホテル会社にエレベーター操作員として雇用され、月35ドルの賃金と2食の食事も給与された。その仕事は簡単で、時間も短く、清潔な環境で快適な職場であり、彼女はその賃金に満足していた。
 ところが1918年9月、議会はコロンビア特別区最低賃金委員会を設立する法律を可決した。この法令は、首都で働いている女性や子供に支払われる最低賃金を設定する。その立法趣旨は、生活するのにまともな水準を維持するためには不十分である低賃金に起因している健康や道徳に有害な状況から女性や子どもを保護することだった。賃金委員会は食事提供のある雇用の女性のための週16.50ドル、印刷で働いていた人のための週15.50ドル、および洗濯の労働者のための週 15ドルに最低賃金を設定したのである。
 ライオンズは、コングレスホールホテル会社が罰則を受けないために最低賃金に満たない自分を解雇せざるをえなくなるだろうと予測した。彼女にスキルはなくよそで職をみつけることは困難であったこともあり、ジェシー・アドキンズ賃金委員会委員長による法の執行の差止命令を求めて裁判所に請願した。Read more: Adkins v. Children's Hospital - Significance - Court, Lyons, Congress, Board, Wage, and Minimum http://law.jrank.org/pages/25332/Adkins-v-Children-s-Hospital-Significance.html#ixzz1QNm6N8R6

 一方、コロンビア特別区の児童病院はさまざまな仕事の様々な女性の多くを採用していて、週16.50ドルに満たない賃金の女性も少なくなかった。このためライオンズと同様に、病院は最低賃金法が修正5条のデュープロセス条項によって保護される契約の自由を侵害するものだとして、賃金委員会委員長アドキンズを訴えたものである。
 つまりこの事件は、使用者側と労働者側の双方から憲法違反の訴えがあった事件である。それも女性従業員の解雇を避けたいという趣旨のもので、資本家が労働者保護立法を攻撃したというものでは全くない。
 アドキンズ側の弁護士はハーバード・ロースクール教授で後の最高裁判事フランクファーターである。レイバー・インジャンクションを裁判所による統治と非難し、後に1932年ノリス・ラガーディ法にもかかわり、F・D・ルーズベルトのスピーチライターとなり、大統領に第二次大戦参戦をすすめ、最高裁判事でありながら裏ではシオニズム運動にもかかわったという大物だが、サザーランド判事は最低賃金立法が必要だというフランクファーターのブリーフを退け、違憲判決を下したのである。

◎サザーランド判事による法廷意見

 サザーランド判事による法廷意見はまず、契約の自由が一般的ルールで、制約が例外であると一般論を述べ、、女性が従属的地位にあるものとして契約の自由を認めなかった先例については合衆国憲法修正第19条(1920年批准)による婦人参政権が認められたなどの変化から形式主義的平等論を展開し、今日では女性についても契約の制限は認められないと述べる。

「‥‥合理的な疑いがないほど打ち負かされるまで、議会制定法の合法性を支持するあらゆる推定が働く。しかし、ある制定法が憲法に反していることが明確で疑いの余地のない仕方で証明されるのであれば、われわれはそのように述べる以外の選択はない。【*1】‥‥自分に関する事柄について契約をする権利が、この〔憲法修正第5条の〕条項によって保護される自由の一部分であるということは、当裁判所の判決で確定し、もはや問題のない事柄である。〔先例としてAllgeyer v. Louisiana, 165 U.S. 578, 591; New York Life Insurance Co. v. Dodge, 246 U.S. 357, 373-374; Coppage v. Kansas, 236 U.S. 1, 10, 14; Adair v. United States, 208 U.S. 161; Lochner v. New York, 198 U.S. 45; Butchers' Union Co. v. Crescent City Co., 111 U.S. 746; Muller v. Oregon, 208 U.S. 412 〕‥‥雇傭契約はこの自由のうちにある。一般的にいって、このような契約をなすにあたっては、当事者は、互いに相手方から私的な交渉の結果として得られる最良の条件をうる権利を有するのである。‥‥
 勿論完全な契約の自由というものは存在しない。それは種々様々な制限に服するものである。しかし、それにもかかわらず、契約の自由は一般原則であり、制限は例外である。そして、契約の自由を奪うためになされる立法権の行使は、例外的事情が存在する場合に限って正当化されるのである。【*2】」と述べ、違憲判断と「契約の自由」保護への意欲を示したうえで、制限が有効とされる場合として先例を分類し次の四つの場合を挙げている。
(1)公益に関する事業によって課せられる料金を定める法律
(2)公の事業を遂行するための契約に関する法律
(3)賃金支払の態様、方法、日時を定める法律
(4)労働時間を定める法律
 そしてサザーランドは最後の点について、このような立法は、婦人労働に関する場合にのみ合憲にするのが現在の判例法であるとし、オレゴン州で工場労働で一般的に一日10時間労働を定め、所定時間外の割増し賃金を定める州法を合憲とした1917年バンティング対オレゴン事件BUNTING v. STATE OF OREGON , 243 U.S. 426によって それまで黙示的にくつがえされたものと思われていた1905年ロックナー対ニューヨーク事件Lochner v. New York198 U.S. 45 (製パン・製菓の労働時間を1日10時間、週60時間を超えることを規制する州法を違憲)を先例として引用している【*3】。
 そのうえで、婦人労働に関する立法も、憲法修正第19条により婦人参政権が認められるなどの状況の変化から、現在においては違憲とされるべきであるという理由を述べた。
「ミューラー対オレゴン事件Muller v. Oregon, 208 U.S. 412 (1908)においては或る工場で、女性に一日10時間を超えて働くことを禁止しているオレゴン州の法律が支持された。この判決は、性による相異が、労働時間に関して、女性の場合には、男性の場合とは相異した法則が行われることを、正当化するという考えにもとづいている。このことは、肉体的構造の相違に存する、特に母親としての機能の点に存すると指摘された‥‥しかし、ミューラー事件で示された様な肉体的構造以外の点についての性による差別は、次第に減じつつある。あの判決以来、女性の契約上の、政治上の、市民上の地位に生じた大きな-革命的なとはいわないが-変化をみるならば、これらの相違は、今や完全ではないとしても、殆ど消滅しつつある問題となった、といっても過言ではない。【*4】‥‥われわれは、成年女性が同じ条件の下では、男子の場合には適法には課すことのできないような契約の自由に対する制限を認めることは、女性は契約関係および市民的関係において特別な制約に服すべきという古い理論から解放してきた今日的立法動向から引き出される意義を無視することとなる【*5】」として、男性にない最低賃金法という契約の自由の制限を要求する、あるいは制限に服させるという理論を認めることはできないとする。

 このように「契約の自由」と女性の権利について一般的提言をした後サザーランドは、最低賃金法は労働時間制限する立法と同様に論ずることはできない旨を説明する【*6】。
 「〔労働時間を制限する法律等は〕、契約の附属条項に関するものであり、必ずしも契約の核心に影響を与えるものではない。契約の核心とは、授受される金額の額である。一定時間を超えて労働することを禁じる法律は、賃金について契約をし、賃金額による調整によって、〔労働〕時間の制限の結果使用者に課せられた負担を均等化する自由を、両当事者に残しているのである。‥‥〔ここで問題となっている法律は〕公共の利益もしくは公共の事業を託された事業に関する法律でもなく、また一時の緊急事態をしのぐための法律でもない。それは賃金の支払の性格、方法、または時期とは何の関係もない。それは労働時間またはそれにもとづいて労働がなさるべき諸条件を定めたものでもない。それは法律上の無能力者を保護するためのものでもなければ、詐欺のための防止のものでもない。それは成年女子に限って適用のある価格制限法以外の何ものでもない。そして、法律的には、これら成年女子は男子と同様に、彼女等自身のために契約する能力を有するのである。」【*7】
 次いで法廷意見は、最低賃金法は、女性労働者の必要生活費の支払いを命ずるもので、女性の健康および道徳の保護のために必要であり、その点でポリスパワーによって基礎づけられるという主張を、両者の間には必ずしも関係はないとして排斥している。
 必要生活費というものは状況により異なる。個々の気質、倹約の習慣、ケア、インテリジェントに必需品を購入する能力、そして女性が単独で生活しているか、または彼女の家族と一緒に住んでいるかどうか。 たっぷりと収入のある女性が、より道徳的だということも言えないので、最低賃金法が道徳の保護に役立つ合理的根拠はないと述べている。
 そして、この法律は労働者側の事情のみを考慮し、使用者側に理由のない負担を課しているものであって違憲であると結論した【*8】。
 判決の中心的理由は、「女性の必要生活費」の支払いを命ずる女性最低賃金法は「労働の価値」をこえて「契約の核心、すなわち授受される賃金の額」を侵害し、「合衆国憲法のもとで許されることのできない剥き出しの、恣意的な権限行使」であるということであった【*9】。最後に、サザーランド判事は、「全体としての社会の善には各構成員の自由を保障することが最も良く寄与する」と述べた【*10】

×タフト主席判事の反対意見

 タフト主席判事の反対意見は1917年バンティング対オレゴン判決が1905年ロックナー対ニューヨーク判決を黙示的に覆しており、労働時間の制限を認めている以上、低賃金を防止する法律も認められるべきとするものであった。
「ポリスパワー〔州が人やものを規制する権限〕の限界、これをこえると憲法の修正第5条・14条に規定する自由の保障の侵害となるが、この限界を定めることは容易ではない。‥‥われわれは、できうる限り、その限界を定めるにつき注意深くならなければならない。そして現実的より、形式的区別を示すことによって、そこから遠ざかってはならないと思う。‥‥最低賃金によって、労資間の契約の自由を制限して立法府は、最低の報酬を受け取る階級である被傭者は、その選択につき、雇用者と完全な平等になく、彼等の困窮せる環境においては、提供されたものを、殆どなんでも受け取りがちであるという考えに立脚している。‥‥労働者搾取制度およびその特質である長時間・低賃金の害毒は、一般によく知られている。そこで、最高時間、あるいは、最低賃金を立法上定めることが、いかにこれらの害毒に対する有用な救助策であるか、ということは、経済学の分野において充分議論される余地のある問題である」【*11】と述べ、最低賃金法も支持されるべきとした。

【*1】中里見博「合衆国最高裁判所における女性労働『保護』法理の展開 : 女性最低賃金法違憲判決のジェンダー分析名古屋大學法政論集. v.171, 1997 http://hdl.handle.net/2237/5781
【*2】田中英夫】田中英夫「私有財産権の保障規定としてのDue Process Clauseの成立-7-」『國家學會雑誌』72巻7号1958
「私有財産権の保障規定としてのDue Process Clauseの成立-6-」『國家學會雑誌』72巻7号
【*3】田中英夫 前掲論文
【*4】高原賢治「アメリカにおける「警察権能」の理論の展開-公共の福祉についての一考察-2-」 『國家學會雑誌』74巻1.2号
【*5】田中英夫 前掲論文
【*6】ここで、労働時間制限立法と最低賃金法の違いを述べるのは、連邦最高裁が労働時間規制立法を違憲としたのはロックナー判決(1905年製パン・製菓労働)だけであり、1898年ホールデン判決Holden v Hardy169 U.S. 366 (鉱山労働)、1917年バンティング判決(工場労働)、1917年ウィルソン対ニュウWilson v. New, 243 U.S. 332(鉄道)では労働時間規制が、それぞれ理由は異なるがとくに1917年のケースはロックナー判決で示された司法審査基準も適用せずに合憲とされ、しかもバンティング判決の判決文起草者のマッケナ判事が、本件では違憲判断をとっており、事実上決定票となったという事情によるものと推察する
【*7】田中英夫 前掲論文
【*8】田中英夫 前掲論文
【*9】中里見博 前掲論文
【*10】常本照樹「 司法審査とリーガル・プロセス -アメリカでの司法の機能に関する理論的発展-」『 北大法学論集』31巻2号1980  http://hdl.handle.net/2115/16318 ...
【*11】高原賢治 前掲論文  〈ただし警察機能はポリスパワーと言い換え〉〉

時の児童病院の写真があります。20年代なので看護婦は足首を見せない長いスカートです。http://www.pbs.org/wnet/supremecourt/capitalism/landmark_adkins.html

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