連邦最高裁 未成年者に暴力的なビデオゲームの販売やレンタルを禁止する州法を叩きつぶす
今開廷期のラスト27日に連邦最高裁はBrown vs. Entertainment Merchants Assn事件について7対2で違憲判決を下した。http://www.law.cornell.edu/supct/html/08-1448.ZO.html一審・二審と違憲判断であり、ほぼ予想されていた結論なのでインパクトはないが、我が国の各メディアも一斉に報道している。http://www.asahi.com/international/update/0628/TKY201106280118.html
スカリア判事の法廷意見にケネディ、ギンズバーグ、ソトマイヨ-ル、ケーガン各判事が賛同した。アリート判事の同意意見にロバーツ主席判事が賛同し、トーマス判事とブライヤー判事が反対意見を記している。
スカリア判事はレーガン任命の保守派だが、1989年テキサス対ジョンソン事件でデモで星条旗に火をつけけ焼却した行為は政治的表現として憲法によって保護されるとして国旗冒涜の罪で起訴を違憲とするブレナン法廷意見に同意している。更に、1992年の未成年者の白人数人が黒人家族の住む家の庭に侵入し,そこで十字架を燃やしたため,十字架焼却を禁止するセント・ポール市条例に違反したとして逮捕・起訴されたケースR.A.V. v. City of St. Paulで同条例を文面上違憲と判決を下している。星条旗焼き捨て(政治的表現)と焼かれた十字架(人種差別的な含意)を擁護したことから、表現権を重んじる態度であり、今回、暴力的ビデオゲームを擁護したことは意外なことではない。少し意外だったのは左派女性3判事がそろって暴力的表現擁護でスカリアと結合した組み合わせである。
ニュースを読んだところによると、スカリア判事の法廷意見は、ビデオゲームについて、書籍、演劇、映画と同様、社会的メッセージを伝えるもので、修正第一条の保護を受けると述べた。グリム童話に暴力的表現がある。高校生の読書リストにあるホメロスの『オデュッセイア』にも暴力的表現がある等を持ち出してビデオゲームも同様に擁護されるということのようだ。嫌悪は、表現を制限するための有効な基礎ではないとしているから、本質的な暴力的表現の擁護のように思える。また暴力的表現が反社会性を助長するという見解も退けた。
これに対して、アリート判事は違憲という結論に同意するが、問題の州法が曖昧性により無効とする判断が妥当として、ケネディ大統領の頭にライフルショットを発射しようとするようなゲームなどに嫌悪感を示し、スカリア判事がビデオゲームと他のメデイアと同列に扱うのは時期尚早という考えで、本格的憲判断を回避して、さしあたり州法の曖昧性という技術的議論でかわす無難な見解を示しているが、これは少数意見にとどまった。
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