本日の頭上報告と脱原発署名要請
本日、午前中全水道東水労本部から各分会役員あてに流されたのファックスをちらっとみたのだが、「東水労ニュース」9月30日号外配布時刻の徹底とあり、30日13時以後と書かれていた。ビラの内容を見てないので具体的なことは不明だが、人事院勧告を批判する見出しで、たぶん人事院を解体し自律的労使関係による協約締結が既定路線なのに、最後っぺのように政治的な動きをしているというようなことではないかと思う。
このファックスから、勤務時間内に配布することが組織ぐるみであることがわかる。使用者には企業の人的要素と物的要素を総合して企業秩序を定立する権限があり企業内組合は組合活動のために企業施設を利用する必要性がいかに大きいとしてもそのことゆえに「労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない」とした国労札幌地本判決の趣旨からすれば、勤務時間内の配布は禁止できるはずだが、当局はそれをやってない。もっとも明治乳業事件や倉田学園事件の最高裁判決では、昼休みや就業時間前のビラ配りに対する懲戒処分を無効としているが、そのような事例とは異なるのである。
これは14時14分に配布された。所長は休みだった。
次いで、16時44分頃、分会書記長が脱原発の署名用紙を配りながらよろしくなどといって各席を回り、昨日の書記長会議報告が始まりこれは、54分までと短かったが、ちょうどお客さんと電話をかけていたので、電話に集中できなくなり、相手の声も小さかったので長電話になった。
演説の内容は人事院勧告批判と、自律的労使関係うんぬん、都労連闘争は先日決起集会があったように始まっており、今後の日程も決まるので協力云々ということと、脱原発の署名要請だった。これは原水爆禁止日本国民会議(原水禁)と大江健三郎などが呼びかけ人になっている有識者らで構成する「さようなら原発1000万人アクション」のものである。9月19日に明治公園で警察発表3万人の「さようなら原発5万人集会」http://mainichi.jp/select/wadai/graph/20110919/を主催した団体のフォーマットである。
9月19日集会には、勤務時間中配布の「東水労ニュース」で告知されており、組合掲示板にも「東京全労協」の新聞が張りだされ、9月19日5万人参加を呼びかけていた。全労協系の組合なので署名活動に協力するということだろうが、
ビラ配布事案で日本エヌ・シー・アール事件東京高裁昭和52年7月14日判決『労働判例』は。
「一般に事業場は、当然に使用者の管理に属し、労働者は、自己の労働力を使用者に委ねるために事業場に出入りを許され、就業時間中は使用者の指揮命令に従い労務に服する義務を負うものであり、労働組合は労働者が団結により経済的地位の向上を図ることを目的として自主的に結成加入した団体であって、使用者から独立した別個の存在である。従って、労働者の労働組合活動は原則として就業時間外にしかも事業所外においてなすべきであって、労働者が事業上内で労働組合活動をすることは使用者の承認のない限り当然には許されず、この理は労働組合運動が就業時間中の休憩時間に行われても、就業時間外に行われても変わりがないと解すべきである」と説いている。
また大成観光(ホテルオークラ)事件東京地裁昭和50年3月11日判決『労働判例』221号は「リボン闘争にかぎらず、ほかに鯨波(シユプレヒコール)を挙げ、握り拳を突き上げてする集団示威もそうであるが、本来労働組合が自己の負担及び利益においてその時間及び場所を設営しておこなうべきものであつて、このことは負担及び利益の帰属関係からして当然の事理に属する。ところで、勤務時間中であるという場面は、労働者が使用者の業務上の指揮命令に服して労務の給付ないし労働をしなければならない状況下のものであり、まさに使用者の負担及び利益において用意されたものにほかならないから、勤務時間の場で労働者がリボン闘争による組合活動に従事することは、人の褌で相撲を取る類の便乗行為であるというべく、経済的公正を欠くものであり‥‥‥誠意に労務に服すべき労働者の義務に違背するものと解するのが相当」と説いている
このような趣旨から原水禁および大江健三郎らの呼びかける脱原発という署名活動を勤務時間中、本来水道事業のために使用されるべき庁舎執務室内で行うことはまさに「人の褌で相撲を取る類の便乗行為」にほかならず、容認しているほうがおかしい。私のところにはこないとはいえ、趣旨説明を聞かされ、原水禁であれ、大江であれ嫌いなので不愉快である。
なお、昼休み休憩時間における趣旨説明、説得を伴う署名活動に対する懲戒処分を認めた判例として下記があるので掲載しよう。
大日本エリオ事件・大阪地裁平成元・4・13『労働判例』538号
(要約)大日本エリオ(現DNPエリオ)は印刷鋼板メーカーで本社は神奈川県愛川町、大阪府寝屋川に大阪工場がある。休憩時間中に労基法改悪の反対署名運動をしたことによる分会委員長に対する譴責処分の効力につき、署名活動は施設内において、趣旨説明、説得を伴っていたことから、施設管理権、秩序維持権を侵害した上、休憩中の他の従業員の自由に休憩する権利をも相当妨げたことが推認され、これをもって正当な組合活動であったということは到底できないとされ、処分を認めた。
事件の概要
原告は総評全国一般大阪地連大阪一般労働組合大日本エリオ分会の分会長で、当時唯一の分会員であるが、総評大阪地評の統一指令に基づき、昭和六二年四月一五日の休憩時間中であるである午後〇時三〇分ころ工場B棟2階にある和室休憩室において将棋を指したり新聞を読んでいる従業員に対し、労働基準法の改正に反対するという趣旨を説明したうえ「絶対に迷惑かけないから」と説得し「労働基準法の全面改悪に反対し最低基準の大幅引上げを求める請願書」への署名を求め、従業員渡辺と岩村が応じた。この用紙には従業員中祖の署名があり、別の用紙二枚に同日までに二〇名の署名を集めていた。
渡辺が署名していたとき同室に来た総務係長平尾は原告に対し「文書の配布とか署名をする場合は会社の構内である限り会社の許可が必要である。就業規則をみたことがないのか。その署名したものはちょっと預かる」等と申し向けたところ、原告は「昼休みだから何も迷惑をかけない。就業規則のことは知らない」等といっていたが、署名用紙を渡した。
原告は同月一七日午前、堤技術部長、三村総務副部長、下川副課長から事情聴取を受け、三村副部長就業規則第五条9号(会社施設、こ構内を利用する政治活動の禁止)及び第八二条2号、13号に違反する旨説明したが、原告は「今後もやります」と答え、同副部長より「厳正な措置をとらざるをえないが、今後違反行為をしないと誓えないか」と尋ねたところ、「誓えない」と答えた。同副部長は「衆参両院宛の請願書に署名を求める行為は就業規則で禁止されている会社施設内の政治活動であり、たとえ組合活動であっても会社の許可なくしてはできないはずである。昼休みだから自由にできるというのは君の勝手な主観によるものだ。他の従業員の邪魔になり迷惑である」等と述べたのに対し、原告は今回の行為は組合を通じての組合活動ではない。昼休みの時間なので会社に届を出す必要はない」等と述べた。
同月二四日、譴責処分を発令し口頭で伝えた。
本件は譴責処分を受けた分会委員長は譴責処分の無効確認、慰藉料50万円の支払い、署名活動、ビラ配布等の妨害の予防を各請求したものである。
なお、事件の背景として原告側の主張によれば、原告ら従業員約六〇名は昭和四二年に大阪一般労働組合メタル分会を結成したが、これを会社が快しとせず、団交を拒否したり、分会の組織破壊を行ったたため、同四四年には分会員は一五名に激減、さらに脱退工作により昭和五三年には分会員は原告一人となった。署名用紙は会社が取り上げて返還しなかったが、仮処分の審尋期日に訴訟代理人を通じて、漸らくこれを返還した。
判旨-処分無効確認請求、署名活動への妨害予防請求等いずれも棄却。
なるほど憲法一九条、二一条で保障されている政治活動の自由は重要な市民的権利として市民間の公序を形成していることはいうまでもないが、他方、私人間においてはき私的自治の原則が支配し、会社の就業規則において合理的理由のもとに無従業員の政治活動の自由を制約することは許容されるものと回される。そして、ここに禁止された政治活動は不特定多数の従業員を対象とした署名運動等が予定されている特別の事情考えるところ、これらの行為が会社施設を利用して或いは会社構内で行われたならば、労働者の労働義務の履行を妨げ、従業員間に不必要な緊張や反目を生じさせ、ときには従業員側の融和の崩壊や勤労意欲の減退を招き、ひいては会社の秩序維持や生産性の向上にまで支障をきたすおそれがあることに鑑みれば、会社が事故の有する施設管理権及び秩序維持権に基づきこれらの行為を禁止することは合理的理由による制約と解することができる。したがって、政治的活動を禁止している被告の就業規則第五条9号は有効であると解され、原告の右主張は採用できない。
もっとも、従業員の政治的活動が重要な市民的活動として尊重されるべきこみとに鑑みれば。形式的に同号に該当する政治活動であっても実質的に会社内の秩序を乱すおそれのない特段の事情が認められるときには、右規定に違反するものではないと解するを相当とする。そこで再抗弁1を検討するに‥‥本件署名活動は会社施設内において労働基準法改正に反対するための衆参両院議長に対する請願書に署名を求めるという濃厚な政治活動であったうえ‥‥‥‥「絶対に迷惑をかけない」等と説得に及んだものであり、‥‥右事実を総合すれば原告の行為は相当程度会社内の秩序が乱されたものと推認され、実質的に会社秩序を乱すおそれのない特段の事情があったとは到底いえない。
さらに再抗弁2について検討する。
なるほど‥‥本件署名活動は、その上部団体の指令に基づきなされたものであり、労働者の労働条件や経済生活に密接に関連する政治活動の性質を有し、しかも会社施設内でなされたとはいえ休憩時間中であったことが認められる。しかしながら、前記のとおり会社の施設内においては会社の施設管理権、秩序維持権に服することが是認されなければならず、さらに右認定事実によれば、本件署名活動はその趣旨説明、説明を伴っていたことが認められる。そして、休憩時間中において他の労働者が休憩時間を自由に利用する権利を有していることが尊重されなければならないから、これを妨げる行為を当然にはなしえないと解するべきである。そうすると、本件署名活動が上部団体の指令にもとづきなされた組合活動であったとしても、右署名活動は、被告の施設内において、しかもその趣旨説明、説得を伴っていたことから、被告の施設管理権、秩序維持権を侵害したうえ、休憩中の他の従業員の自由に休憩する権利をも相当程度妨げたと推認され、これをもって正当な組合活動であったということは到底できない。したがって、被告の本件処分は、原告が秩序を乱した等の行為に及んだことに対してなされたものであり、原告が正当な組合活動をしたことを理由になされたものではないと認められるから、これをもって不当労働行為ということはできず、最抗弁2は理由がない。 以下略
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