公務員に労働基本権付与絶対反対-政府は巨悪と手を結ぶな

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2012年5月の21件の記事

2012/05/31

本日の頭上報告

8時35分頃から44分まで、事務所中央付近で都労連夏季一時金闘争の中央委員報告(全水道東水労)があり、組合の夏期一時金2・5ヶ月に対して条例・規則どおり1・9ヶ月、夏休み職免5日連続休暇の要求に対し、例年どおり完全消化推進、指導を行うという方針で不満だが、国家公務員の2年間平均7・8%カットなどの深掘りを許さないことができたので妥結した。それは5月11日に16時~第2庁舎前で、2割動員決起集会をやり、団体交渉の成果だうんぬん。今後退職手当見直しなどの闘争の準備を行うといったようなことを演説していた。なお、昨年11月15日の都労連賃金確定闘争では国家公務員の7.8%給与引き下げの法案が提出されている状況で、都人事委員会勧告〔公民較差(△979円、△0.24%)是正のため、給料月額を引下げという小幅のもの〕どおりの回答であったこと。年末一時金(期末手当+勤勉手当いわゆる冬のボーナス)は条例どおり2.05ヶ月分であること。全職員への成績率導入の提案などを阻止していることから、妥結したと明されていた。給与もほとんど下がってない。ボーナスも条例規則どおり。 国家公務員が平均7・8%削減、同じ地域独占企業なのに東電は管理職25%、一般職20%削減でそれでもなお叩かれているのに対し、かなり恵まれているといえる。 東日本大震災のとばっちり全くなしである。というより、大震災で都の職員は多少収入が上昇しているはず、地震当日、8時まで待機させたが、残業手当が払っているし、放射能騒ぎのときも、金町浄水場の水道水から乳児向けの暫定飲用基準を超える210ベクレル/kgの放射性ヨウ素が検出された日電話対応要員として8時まで一部の職員を残している。たった一本しか電話はかかってきてないが、残業手当を払っている。私は動員されなかったが計画停電に伴う突発事故対応の待機なんかでも残業手当を払っているはず。だから地震で少しもうかっている職員がいると思う。  さらに、被災地支援業務でも超過勤務手当は支払われているのである。管理職が自分の得点を上げるためか、南三陸町だの新人とか若手を送り込んでいた。本人の希望とかいっていたがね新人と二年生の3人とも出してるので自発的とは思えない。そのためか、夜のミーティングや、8時半前の会場準備とか、こまかくがめつく超勤請求を執拗に管理職が指導していた。はじめの頃仄聞するところによれば、先方は、罹災判定のプロがきてくれるのか思っていたら、単に素人というか何の経験もない人をよこしたので期待はずれだったという。新人と二年生を被災地くんだりに行かせて経験させる感覚で送り込んでいるからミスマッチ。本音は管理職自身の得点稼ぎと手当稼ぎだからだ。  夏休みの消化促進指導みたいなやるから、逆に仕事が押しつけられるだけ休めなくなるだけ。そのうえノー超勤ウイークみたいばかげたこともやるから、全く休めなくなるのが実情である。そもそも反対ので私は8年間全くとっていない。

2012/05/27

カード 組合集会等の食堂利用拒否 オリエンタルモーター事件(東京地裁-高裁-最高裁二小)

 本件は組合が11件について救済命令を申し立てた事案だが、初審の千葉地労委は、労働時間等に関する団体交渉を除き、いずれも不当労働行為であるとして、会社に対し、誠意ある団体交渉の実施、組合事務所の貸与、組合加入状況調査による支配介入の禁止、食堂利用拒否の禁止及びポスト・ノーティスを命じ、中労委は初審命名主文のうち組合備品の撤去、組合旗の撤去、上部団体の入構拒否、組合規約及び組合員名簿の提出を強要したことに関してポスト・ノーティスを命じた部分を変更し、そのほかは命令を支持した。
 これを不服として、会社が行政訴訟を提起したものであるが、ここでは問題を食堂の集会利用等の使用拒否の一点に絞ってとりあげる。

 オリエンタルモーター上告審判決最高裁第二小法廷平成7年9月8日『労働判例』679号の意義(要点)
 組合執行委員長らによる守衛への暴言、脅迫を契機として業務に支障のない限り食堂の集会利用等の使用を承認してきた慣行を変更し不許可とした事案につき、東京地裁は不当労働行為に当たらないとして、中労委の救済命令を違法として取り消した。ところが、控訴審東京高裁は、それでは組合活動が著しく困難となるとして、不当労働行為に当たるとした。上告審最高裁第二小法廷判決は控訴審の判断を覆し、これまで業務に支障のない限り使用を認めてきたとしても、それが食堂の使用について包括的に許諾していたということはできないし、食堂の無許可使用を続けてきた組合の行為は正当な組合活動に当たらないとした。さらに条件が折り合わないまま、施設利用を許諾しない状況が続いていることをもって不当労働行為には当たらないとしたことから、企業施設の組合活動の正当性を「許諾」と「団体交渉等による合意」に基づく場合に限定した国労札幌地本判決の枠組に従った判断と評価できる。
 なお、企業施設における組合活動の指導判例である国労札幌地本判決の判示する「権利の濫用と認められるような特段の事情」について、本判決では「使用者が労働組合による企業施設の利用を拒否する行為を通して労働組合の弱体化を図ろうとする場合に不当労働行為が成立し得ることはいうまでもない」としたうえで「本件で問題となっている施設が食堂であって、組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が一般的に大きいとはいえないこと、組合事務所の貸与を受けていないことから食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること、上告人が労働委員会の勧告を拒否したことなどの事情を考慮してもなお、条件が折り合わないまま、上告人が組合又はその組合員に対し食堂の使用を許諾しない状態が続いていることをもって、上告人の権利の濫用であると認めるべき特段の事情があるとはいえず、組合の弱体化を図ろうとしたものであるとも断じ得ないから、上告人の食堂使用の拒否が不当労働行為に当たるということはできない。」としている。食堂使用を一切認めなくても、そのことから弱体化の意図があるとは断じえないとしており、安易に法益調整を持ち込まない判断は妥当なものである。  河合伸一裁判官の反対意見があるが、プロレーバー的な法益調整論であり、先例の趣旨と反しており容認できるものではない。

オリエンタルモーター事件 東京地裁平成2年2月21日判決『労働判例』559『労働関係民事裁判例集』 41巻1号 16頁 『判例時報』1368号  136頁
http://web.churoi.go.jp/han/h00383.html

(要点)組合集会等の会社食堂の使用拒否は不当労働行為にあたらない。

(事件の概要)
 
 オリエンタルモータ-は東京都に本社のある精密小型モーターおよび制御用電子回路などの製造・販売を行う、従業員約2000人の企業で、柏(豊四季)、土浦、高松、鶴岡に事業所を有する。
 全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部は同社及び子会社の従業員により昭和49年12月に結成され、昭和50年に組合結成を会社に通知し、同年夏季一時金をめぐって時限ストライキも実施された。組合は柏と土浦の事業所における組合事務所設置・貸与を求め、いったんは会社が了解したが、合意はなされていなかった。会社は組合結成通知以来、柏市の豊四季事業所において、暫定的に会場使用許可願の提出があれば業務に支障のない限り、集会などのために労働組合が食堂を利用することを認めていたが、昭和51年2月23日「K守衛事件」の頃から労使関係が緊迫化した。これは、組合が食堂の一角で春闘学習会を行っていたところ守衛のK近づき、学習会参加者氏名をメモにとったところ、組合執行委員長が抗議して、記録用紙の交付を迫り、守衛から提出させた。翌日組合は、K守衛の行動は内政干渉として抗議したところ、会社側は、就業時間後の巡回と居残っている者の人数・氏名を確認することは守衛の重要業務であり、私権・施設管理権の行使として正当なものであり「K守衛事件」は重大な業務妨害行為であるとして、記録用紙の返還を求めるとともに、今後も内政干渉との主張を維持するならば、会社施設の使用を一切認めないとの警告および通告を行った。ところが、組合は会場使用許可用紙を、使用届に書き換えて提出するなどして、無許可で食堂を使用し、会社側も退去を求め電灯を消すなどして対抗した。その後、会社は使用目的、人数、時間を明確にして前日までに使用願を提出すること、外部団体役員以外の外部者の入場は総務部長の許可を得るなどを条件として、食堂利用を認める方針を示したが、組合はこの条件を受け容れず外部者の入場を制限しないなどの要求を行った。会社側は施設管理権を無視した要求であるとして食堂使用は許可できない旨文書で回答した。
 会社は同年7月に食堂の出入り口に扉をつけて施錠した。食堂内の組合備品も撤去した。
組合は千葉県地労委に救済を申立、地労委は、会社が使用する場合を除いて、組合会議、職場大会、分会大会等のための会場利用を許可すること、組合事務所問題が解決するまで組合備品を食堂に保管して使用することを認めるよう勧告したが、会社は食堂が組合事務所化するおそれがあるとして認めなかったたため、千葉地労委は昭和53年1月13日http://web.churoi.go.jp/mei/m01050.htmlに食堂利用拒否が不当労働行為に当たるとして救済命令を発し、平成62年5月20日中労委の命令http://web.churoi.go.jp/mei/m02241.htmlも同様だったため、会社が不服として行政訴訟を提起したものである。

判旨-救済命令取消。不当労働行為にあたらない
 「一般に使用者は職場環境を適正良好に保持し、規律のある業務運営態勢を確保するため、企業施設を管理する権限を有するものであり、労働組合は当然に企業施設を利用する権利を保障されているものではないから、使用者が労働組合にその企業施設の使用を拒否したとしても、それが団結権保障の趣旨等からみて右施設管理権の濫用であるという特段の事情がない限り、右使用拒否は不当労働行為にはならないというべきである。本件食堂使用も原告の企業施設であり、右の理が妥当するから、本件においても特段の事情の存否を検討する。前認定によれば、原告は補助参加人〔全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部〕に対し、従来は会場使用許可願の提出があれば業務に支障のない限り使用を認めたきたのに、前記K守衛の事件を契機として同51年2月27日補助参加人の食堂使用許可願を却下したものである。右の使用拒否は、労使間の慣行となりつつあった取扱いを変更したものであるところ、原告は前記のとおり補助参考人による守衛業務の妨害行為があったことを拒否の理由としている。‥‥そうすると、原告がK守衛の事件を契機に、その後補助参加人の食堂利用について従前の取扱いを変更したことには合理的な理由がないとはいえないのであって、これをもって施設管理権の濫用とまでいうことはできない」。「右事件が起きてか以来補助参加人に対して食堂の使用を一切許容していないが、これも特段不当労働行為を構成するものではないというべきである。なぜなら補助参加人は‥‥所定の使用許可願用紙を勝手に書き換えた使用届を提出するのみで原告の許可なく食堂を使用するようになり‥‥原告の施設管理権を無視しているといわれても仕方のない態度をとっていたものであり、他方、原告は、食堂使用につき一応考慮に値するルールを提案し、労使間の合意の形成に努める姿勢を取っていたものということができるのであるから、一切の使用を許可しなかったとしても、そのことが原告の施設管理権の濫用に当たるとはいえないからである」。

オリエンタルモーター事件東京高裁平成2年11月21日判決『労働判例』583号『労働関係民事裁判例集 』41巻6号  971頁 判例タイムズ 757号  194頁
http://web.churoi.go.jp/han/h00434.html
会社及び中労委の控訴
一審一部取消

判旨-食堂利用拒否は不当労働行為にあたる
「食堂の使用を、一時的にはともかく、一切拒否し続けるならば、補助参加人の組合活動を著しく困難にすることが明らかであり‥‥組合運営の支配介入に当たるものというべきである。‥‥第一審原告が補助参加人に食堂の使用を一切不許可としたことは、施設管理権の濫用に当たるというべきである」

オリエンタルモーター事件 最高裁第二小法廷判決平成7年9月8日『労働判例』679号
http://web.churoi.go.jp/han/h00640.html

会社及び中労委の上告
控訴審判決の一部破棄自判

判旨-食堂利用拒否は不当労働行為にあたらない
「労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると特段の事情のある場合を除いては、当該企業施設を管理運用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動には当たらない(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)。もとより、使用者が労働組合による企業施設利用を拒否する行為を通じて労働組合の弱体化を図ろうとする場合に不当労働行為が成立し得ることはいうまでもないが、右に説示したとおり、使用者が組合集会等のための企業施設を利用を労働組合又はその組合員に許諾するかどうかは、原則として使用者の自由な判断に委ねられており、使用者がその使用を受忍しなければならない義務を負うものではないから、右の権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、使用者が利用を許諾しないからといって、直ちに団結権を侵害し、不当労働行為を構成するということはできない。(中略)これを本件について考えてみると、組合結成通知を受けてからK守衛事件まで約九箇月にわたり、上告人は、許可願いの提出があれば業務に支障のない限り食堂の使用の許可をしていたというのであるが、そのことから直ちに上告人が組合に対し食堂の使用につき包括的に許諾をえていたということはできず、その取り扱いを変更することが許されなくなるものでもない。(中略)また、上告人は組合に対し使用を拒む正当な理由がない限り食堂を利用させることとし、外部者の入場は制限すべきではないなどとする組合側からの提案も、上告人の施設管理権を過少に評価し、あたかも組合に食堂の利用権限があることを前提とするかのような提案であって、組合による無許可使用の繰り返しの事実を併せ考えるならば、上告人の施設管理権を無視した要求と上告人 が受けとめたことは無理からぬところである。(中略)本件で問題となっている施設が食堂であって、組合がそれを使用することによる上告人の業務上の支障が一般的には大きいといえないこと。組合事務所を認められていないことから食堂の使用を認められないと企業内での組合活動が困難となること。上告人が労働委員会の勧告を拒否したことの事情を考慮してもなお、条件が折り合わないまま、上告人が組合又はその組合員に食堂の使用を許諾しない状況が続いていることをもって、上告人の権利の濫用であると認められるべき特段の事情があるとはいえず、組合の食堂利用拒否が上告人の食堂使用拒否が不当労働行為に当たるということはできない。」

河合伸一裁判官の反対意見(抜粋)
多数意見は、上告人が組合による食堂の使用を拒否していること及び本件照会票を配付して組合加入状況を調査したことがいずれも不当労働行為に当たらず、本件命令一及び二は取り消されるべきものであるというのであるが、私はこれに賛成することができない。
その理由は、以下のとおりである。
第一右上告理由第三点について
一企業施設の利用関係は使用者の有する施設管理権に服するものであり、労働組合が当然に企業施設を利用する権利を保障されているものでないことは、多数意見の説くとおりである。しかし同時に、憲法二八条は労働者の団結権及び団体行動権を保障しており、労働組合法も労使対等の理念に基づく団体交渉を助成し、労働者の団結と団体行動を擁護することをその目的として宣言しているのであるから、使用者の施設管理権の行使がこれらの法的要請に反するものであってはならないことも、多言を要しないところである。そして、現実には、使用者が施設管理権の行使としてする行為と労働組合が組合活動としてする行為が衝突し、正常な労使関係を実現するため、その間の調整を図る必要のある場面を生ずることは、避けることができない。多数意見は、その引用する判例とともに、右調整の手法として、権利濫用の法理を用いるものである。そのこと自体については、私も本件において特に異を唱えるものではない。しかし、その場合、右に説示したところからすれば、前示の法的要請が、
施設管理権の濫用の有無を判断するについての要素として作用することを認めなければならない。そして、一般に、具体的な権利行使が濫用に当たるかどうかについては、当事者間の利益較量等の客観的事情と権利行使者の意図等の主観的事情の両面を考慮してこれを判断すべきことは、ほば異論のないところである。したがって、本件のように施設管理権の行使としてされた使用者の行為をその濫用と評価すべきか否かは、主として、その行為によって使用者が確保しようとした利益に比較して労働者の団結権等に及ぼす支障の程度が過大であったか否か、使用者のその行為が労働者の団結権等を侵害する意図に基づくものであったか否かの両面から、これを判断すべきことになる。そして、使用者の行為が労使間の一連の対立ないし紛争の経緯の中で行われた場合には、右の判断もまた、その経緯の全体を視野に置いてしなければならないのである。
二原審が適法に確定した事実及び記録によれば、右の判断をするについて考慮すべき本件の事実関係として、多数意見の摘記するもののほか、次の事実がある。
1 上告人の昭和五〇年ころの従業員数は、子会社を含め約九七〇名であった。組合の加入者数は、同年七月の統一時限ストライキの当時には約六〇〇名程度に及んでいたが、本件に関する千労委昭和五〇年(不)第三号不当労働行為救済申立事件(昭和五三年一月に命令発令)の結審時には、約五〇名になっていた。2 本件食堂は、豊四季事業所内に所在し、四〇〇人分以上のテーブル、椅子等が配置され、従業員のサークル活動、勉強会等に利用されていた。昭和五一年七月までは、その出入口に施錠し得る扉がなく、事実上自由に出入りできる状態であった。
3 組合は、その公然化以来、各種の集会のため頻繁に食堂を使用していたが、K守衛事件が起きるまで、上告人が組合の集会のための食堂使用そのものを拒否したことはなかった(当時、食堂利用に関して両者間に対立があったのは、組合がその備品を食堂内に設置したことについてであった。)。
4 K守衛事件においては、同守衛は、組合の学習会が行われている食堂内の一角に近づいて参加者の氏名を記録したのであるが、本件命令及び初審命令によれば、それ以前には、食堂内での組合の集会についてその種の行為がされたことはなく、遠くから人数を確認するだけであったと認定されている。
三以上によれば、本件について、次のとおり指摘することができる。
1 労働組合が、組織を維持し、その結成の目的に沿う諸活動をするためには、各種の集会を持つことが不可欠である。
本件の組合は、いわゆる企業内組合であって、しかも結成から日も浅かったから、企業内施設に集会の場所を求めるのは自然の成り行きであり、現に、昭和五一年二月のK守衛事件を理由に上告人がこれを拒否し始めるまでの九箇月余、本件食堂を使用して頻繁に各種の集会を開いてきた。組合事務所を持たない組合にとって、以後食堂の使用が不可能になることは、組合の維持、運営を困難にするであろうことは、容易に推認できるところである。殊に、当時の組合は、組合事務所の貸与に関する問題のほか、就業時間中の組合活動の範囲に関する団体交渉拒否の問題、人事異動に関する団体交渉拒否の問題等、多くの問題を抱えて上告人と対立し(右二件の団体交渉拒否が不当労働行為に当たるものであったことは、多数意見も、その第三において認めるところである。)、同年一〇月には千葉地労委に本件救済申立てをすることになる状況にあったから、これらに関する組合の諸活動のためにも、大小各種の集会を催す必要があったのであって、これが不可能又は困難になることは、前示の労使対等の団体交渉の助成という労働組合法の要請に反して組合の団体交渉能力を著しく減殺し、ひいては組合員の団結権等に重大な障害を及ぼすものであったと考えられる。これに対し、食堂の前記のとおりの状況からして、これを組合の集会に使用させることにより、上告人の業務や他の従業員による使用に具体的な支障が生ずることはほとんど考えられない。
そうすると、上告人が組合の集会のための食堂使用を全面的に拒否した行為は、それによって守るべき利益に比較して、組合及び組合員の団結権等に与える障害が著しく過大であったことが明らかである。
2 上告人が組合に対し食堂の使用を拒否する理由として主張するのは、K 守衛事件における組合側の行動あるいはその後の組合の主張や行動が上告人の施設管理権を無視するものであって容認できないというところにある。
しかしながら、まず、右事件において組合側が暴言、脅迫等の行為をした事実は認められていない。かえって、当時の上告人と組合との間の対立関係を背景にK守衛の前記行動を見れば、組合がこれを組合活動に対する介入と受け取ったのも無理からぬところである。その後の組合の食堂使用の態様には、多数意見のいうとおり、正当な組合活動とはいえないところもあるが、それとても、当時の組合として食堂を使用せざるを得ない緊急の状況があったことと、右事件以後の会社の対応が硬直的であったことを考えると、それを理由に、上告人が従来の取扱いを一方的に変更し、組合に対して自己の定めた食堂使用に関する準則を押しつけようとすることを正当化するものということはできない。
 また、上告人が昭和五一年三月一八日に組合にした申入れは、一定の条件の下に組合大会開催のための食堂使用を許可するというものにすぎない。まだ組合事務所を持たず、しかも頻繁に各種の会合を開くことが不可欠であった当時の組合としては、そのままでは右申入れに同意することができなかったのは当然である。しかも、右申入れとこれに対する組合の反対提案との間には、集会目的の点を除いては、実質的にさしたる懸隔はなく、双方で誠実に交渉することによってその間の調整をすることも可能であった。しかるに、上告人は、白己の申入れの条件に固執し、千葉地労委の勧告にもかかわらず、その内容の変更に一切応じようとしなかったのである。
 本件事実関係の経緯に照らせば、上告人は、このような態度を貫くことによって、組合の活動に深刻な支障が生じ、ひいては組合員の団結権等が侵害されることを認識していたことは明らかであって、むしろ、これを侵害する意図をも有していたとみざるを得ない。
四以上を総合して判断すると、上告人が組合に対して食堂の使用を一切不許可とした行為は施設管理権の濫用と認めるべきであり、したがって、これを不当労働行為に当たるとした原審の判断は、結論において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はなく、この点に関する論旨は理由がない。

論評
辻村昌昭 施設管理権および照会票による組合員調査と支配介入--オリエンタルモーター事件・最高裁第2小法廷判決(平成7.9.8)の研究〔含 判決文〕『労働法律旬報』1383 1996『現代労働法学の方法』信山社2010所収
道幸哲也「組合集会等を目的とする従業員食堂の使用禁止及び三六協定締結のための組合加入調査の不当労働行為性--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)」『判例時報』1567 1996
秋田成就「労働判例研究-839-会社が食堂の使用を許可しないこと,三六協定に際し組合加入の有無を調査したことと不当労働行為の成否--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)『ジュリスト』1086 1996
判例要解--組合員調査と不当労働行為の成否--オリエンタルモーター事件(最高裁判決平成7.9.8)『労働法学研究会報 』 47(2) 1996 

カード 無許可組合集会 池上通信機事件(神奈川地労委-横浜地裁-東京高裁-最高裁第三小)

(要点)
組合結成以来、工場の食堂を会社の許可を得ないで職場集会のために使用してきたことに対して、職制による阻止、説得、組合に対する警告等が不当労働行為にあたるかが争われた救済命令取消訴訟で、横浜地裁は国労札幌地本判決の判例法理に従って救済命令を取消、不当労働行為にあたらないとした。東京高裁、最高裁第三小法廷とも地裁の判断を支持したものである。

(要旨)
 会社は業務用放送用機器等の製造販売を行う。初審当時、東京都大田区に本社及び工場を有するほか、川崎、藤沢、水戸、宇都宮の4 工場を有し、従業員約1,200 名を擁していた。日本電機機器労働組合連合会池上通信機労働組合が昭和48 年11 組合員数約370 名をもって結成された(なお昭和56年(初審の時点)の組合員数は約85 名であった)。本件は、組合結成直後の昭和49年春闘と昭和54年春闘の際、川崎工場において集会のための食堂利用の許可願いを会社にしたところ拒絶され、食堂使用を強行したところ、そのつど会社により警告書交付、社内放送を利用した集会中止命令、職制による入構制止等の集会開催妨害行為が行われたというもの。なお、サークル活動については食堂利用を認めていた。これに対し、組合が不当労働行為の救済申立てをなしたところ、神奈川地労委はこれを認容し救済命令を発したためその取消を求めて会社が行政訴訟を提起した。横浜地裁は国労札幌地本判決の判例法理に従って救済命令を取消、中止命令、職制による阻止、説得、組合に対する警告等は不当労働行為にあたらないとした。高裁、最高裁とも地裁の判断を支持したものである。

池上通信機事件神奈川地労委救済命令昭和56年 7月27日『労働判例』 369号
http://web.churoi.go.jp/mei/m01452.html

[認定した事実](抜粋)
(2) 昭和48 年11 月11 日の状況同日、組合は、午後2 時から3 時頃にかけて、川崎工場内従業員食堂で妨害を受けることなく約30 名が集合して集会を開いた。一方、会社は、10 日ないし11 日に社長と専務が帰国したことから11 月11 日午後1 時頃鶴見の総持寺に社長をはじめ部課長係長等職制約70 名を集め、各工場における組合員の把握、労務担当者を決定するなどの対応策をとった。
(3) 同48 年11 月12 日の状況
同日、組合は集会を開くため、午後5 時15 分過ぎ池上工場食堂附近に集合したが、食堂入口附近においてY5 常務、Y6 工場長らの職制がピケをはったため、同入口附近で、組合は同月10 日にY2 総務部長との間に食堂の暫定的使用を妨害しないとの約定が成立した旨を主張し、一方、会社は、食堂使用の事前の届出がないことを理由に食堂使用を許可しない旨を主張し、両者間での押し合い等のこぜりあいがあった。この衝突後同日、組合会社間で交渉がもたれ、その際組合は① 事務所施設として食堂または会議室の貸与② 団体交渉開催の申入れ③ 本日の混乱に関し、就業規則による処分はしない④ 会社側は不当労働行為をしないとの4 項目の要求をしたが、②については開催に関する合意が成立し、①については事前届出をせよとの会社の要求があり、その旨組合も承諾し、その余については明確な合意は成立せず、この交渉は、翌13 日午前2 時45 分頃終了した。(中略)
(4) ‥‥組合は、春闘活動の場として、昭和49 年3 月11 日、①ハンドマイクは持ちこまない、②人数を守衛所に伝える、③使用時の組合責任者を明確にする等の条件の下に、食堂使用許可願を提出していたが、同年3 月13 日の事務折衝時に会社は組合との食堂使用に関する協定の不存在と、春闘期間中の集会場所として、3 月15 日徳持会館、同月19 日産業文化会館、同月20 日徳持会館、同月22日貝塚会館、同月23 日産業文化会館を夫々会社が使用料を負担した上で食堂に代えて提供することを理由にこれを許可しなかった。
その後、更に組合は団体交渉を要求したが会社はこれも拒絶し、そのまま春闘に突入した。49 年春闘時には食堂の使用をめぐり度々組合と会社側の衝突がみられたが、同年4 月5 日には川崎工場の食堂使用を要求する組合とこれを阻止するため食堂入口でピケを張るY7 工場長、Y8 部長、Y9 課長らとこぜりあいとなり、組合は屋上へでる際、この3 名を階段に転倒さす全治10 日間の傷害を負わせた。
3 食堂使用許可願の提出状況とそれに対する会社の対応昭和48 年11 月12 日のY5 常務の事前届出の要求以来、組合は、食堂使用の必要がある度に事前に就業時間外における使用許可願を提出しているが、会社は昭和48 年11 月12 日付け社長名の申入書をもって「組合活動の自由とは労働契約上の就業時間外及び会社の施設を使用しない場合に自由ということであって、たとえ正当な理由によるものであっても就業時間中は勿論、就業時間外であっても会社施設構内の使用はできません」旨を回答しており、その後会社は昭和49 年3月13日の事務折衝時に年4 回程度の使用なら認める旨の発言をしてはいるが、会社としての基本的な態度はその後も変化せず、前記組合の使用許可願に対しては具体的な業務上の障害理由も付すことなく、また、付す必要もないとして、「当初の方針どおり一切貸す意思がない」旨の回答をして今日に至っている4 現実の食堂使用の状況以上のような使用許可願の提出、不許可という状況下で、組合は、昭和48 年9回、昭和49 年44 回、同50 年27 回、同51 年11 回の食堂集会を、会社の制止をふりきる形で開催しているが、その都度スピーカーを通じての会社側の中止命令、それに従わない場合の責任追及、処分の警告、高周波音、ピケ等による妨害によって円滑な食堂集会は開催できない状態であった。その後現在に至るまで会社の施錠関係、格子等の物理的強化、組合員の減少等から組合も他の場所を使用するなど食堂集会の回数は漸減し今日に至っている。なお、会社は、社員親睦会、写真部、野球部、卓球部等が食堂を使用することいた。
5 昭和54 年春闘時の食堂集会状況
(1) 昭和54 年春闘は、同年3 月28 日付け組合の川崎工場食堂使用許可願、同日付けの会社の不許可回答に始まり、同日午後5 時30 分から同工場内で全川崎労働組合協議会X4 事務局次長の講演会を開催しようとする組合と、施設管理権を楯にこれを阻止しようとする会社が対立し、双方合計100 名以上の人数で守衛所前附近でこぜりあいがあり、午後7 時頃X1 委員長とY10 総務部長との話し合いで、タイムレコーダー前で集会を開く旨の合意がなされ、組合は同日午後8時頃まで集会を開いた。
(2) 同年4 月11 日、組合は池上工場と川崎工場に勤務する組合員の合同集会のため川崎工場食堂使用許可願を提出したが、同日付けで会社はこれを拒否し、アコーディオンドア、鉄製ドア等を固めたため、会社側と組合側とこぜりあいになり、ドアの開閉機能に損傷が加えられ、組合は前回と同様タイムレコーダー前で集会を開き解散した。
(3) 同月12 日組合は電機労連機関誌記者X5 を囲んでの座談会を午後5 時30 分から川崎工場食堂で開催しようとしたが、会社に入構を拒否され、構内での座談会を開けなかった。
(4) 同月19 日組合の川崎工場食堂使用許可願、会社の不許可という状況下で、会社側はドアを完全に閉ざし、同日の合同集会は、川崎工場内にいる組合員は構内で、他の組合員は工場外で、という状態に分離された。組合は、会社との話し合いがついたため、午後9 時頃ようやくタイムレコーダー前で集会を開催することができた。
(5) 同月27 日は前回同様の使用許可願、不許可の状況下での合同集会に際しても会社はアコーディオンドア等を完全に閉めたので、通用口から正面玄関にまわった池上工場組合員との間にこぜりあいがあり、結局、組合は午後11 時過ぎ同集会を断念した。
(6) 同年5 月9 日、会社の食堂使用不許可通告の後、組合は午後5 時半過ぎから合同集会を川崎工場食堂で開催しようとしたが、前回と同様会社側に阻まれ、結局実質的な合同集会は開かれなかった。また、食堂内にいた組合員に対しても会社側は20 分おきくらいにスピーカーにより集会中止命令をだして集会を妨害した。
6 X2 に対する警告について
(1) 昭和54 年4 月27 日の状況X2 は昭和48 年4 月被申立人会社に入社し、同49 年1 月に申立人組合に加入
し、同51 年52 年に執行委員を経たのち、54 年当時は副執行委員長であった。同54 年4 月27 日、X2 は同日午後3 時から開催される予定の電機労連神奈川地協第9 回幹事会議に出席するため、午後0 時45 分から同5 時15 分までのいわゆる半日有給休暇届を提出し、同幹事会に出席後、同日の組合集会に参加するため午後5 時5 分頃川崎工場に引き返してきたところ、川崎工場入口附近でY11 警備員から操業時間終了後の入構を制止され、更に附近を通りかかったY12総務課長からも「君は半日休暇をとっているんだろう会社内へ許可なく入構しては困る」旨の注意を受けたが、X2 は両者の制止を無視し、入構後ロッカー室に行って着替えた後、食堂内に集合していた他の組合員に合流して同日午後11時30 分頃まで構内に残留した。
(2) その後の処分
(1)の行為に対し、54 年5 月7 日付けをもって会社からX2 に対して「服務規律違反であるから、今後社員としての規則を遵守し、規律を乱すことのないよう警告する。」旨の警告書がだされている。
なお、就業規則には業務以外の理由で構内に立入ってはならない旨の規定が、またその付則には警告書が5 枚以上発せられた者に対しては懲戒(戒告、出勤停止、停職、降職、減俸、解雇)を科せられる旨の規定がある。
また、同年3 月28 日X6 執行委員が有給体暇届後職制の制止にもかかわらず組合集会に参加し、53 年春闘時にも、副執行委員長であったX7 が有給休暇届後電機労連の委員会に出席し、その後川崎工場構内での組合集会に参加したことがあったが、いずれも警告書が発付された事実はない。

判断

まず本件食堂使用に関する交渉経過をみると、組合は昭和48 年11 月10 日の組合結成通告時に、会社が組合の食堂等の利用につき妨害はしないと約束し、その使用を黙認した旨主張し、会社はその事実を否定するが、当時Y3 社長及びY4 専務の二人が海外出張中であり、突然の組合結成という会社にとって決して軽視できない事態発生のため、一総務部長であるY2 総務部長がそのような約束をしたとまで認定することはできない。
しかし、昭和48 年11 月12 日の会社の食堂使用許可願提出の要求以来、組合は今日に至るまで一貫して就業時間外の食堂使用の度に、事前に許可願を提出してきており、認定した事実2(4)のとおり、昭和49 年3 月11 日の事務折衝時には、使用時の責任者を明確にする等3 つの具体的条件を呈示した上で食堂使用許可を求めたが、会社は組合活動は就業時間外に、しかも会社の施設外で行うべきものであるとの認識の下に、代替施設の提供、年4 回程度の食堂使用なら認めるという形式的な譲歩はしたものの、一貫して食堂を含む会社施設の組合利用を認めない態度をとり続け、施設利用に関する合意のないことを理由に、組合の許可願をすべて却下してきている。
なお、組合側にも食堂利用の際に昭和49 年4 月5 日Y7 工場長ほか2 名に対し傷害を負わせたり、昭和54 年の春闘時には川崎工場のドアに損傷を与える等若干行きすぎた行為があったことが認められるが、これも会社が食堂使用をかたくなに拒み、職制を動員して物理的圧力を加えたことに起因することが大きく、会社が施設利用を全面的に拒否することを正当化するほどのものではない。
イ 会社はその施設に対する管理権を有するものであるから、組合は当然には会社の施設を使用する権利を有するものではない。それ故、会社施設を組合が利用するについては会社の許認可を要するものと考える。
しかし、企業内組合組縦がその正当な組合活動の場を企業内施設に求めることも無理からぬことなので本件で会社が主張するように、施設管理権が会社にあることのみを理由として、会社にとって格別の支障がないにもかかわらず、就業時間内外を問わず、組合活動のための施設の利用を一切禁じ得ることは到底考えることはできない。
ウ そこで、本件食堂使用に関しての両当事者の実質的利害を衡量してみるに、組合としては、第1 に、企業内組合として結成される我国労働組合において、団体交渉等を通じて組合の目的を達成するためには、企業という場における活動が重要な役割を果すことは当然である。第2 に、本件組合においては川崎、池上両工場に組合員が分散しており、組合本拠地たる川崎工場に集合する必要がある。第3 に、就業時間外で、かつ組合の都合のよい日に会社施設以外の場所を確保することはきわめて困難である。
一方会社としては、就業時間外であれば、事業の遂行に格別の支障はない。また、施設の利用態様も当事者間の合意によって、施設の本来の目的を損わず十分に対処し得るし、現に社員親睦会、写真部、野球部、卓球部等のサークルが食堂を使用することは従来これを認めていた。
エ このようにみてくれば、業務上の支障がない限り、組合が食堂を使用する必要性は大きく、また会社にとって、同じ従業員組織である組合以外のサークル活動のための利用と組合の利用とを差別する格段の理由ないし事情もないことが認められる。
それにもかかわらず、認定した事実3 のとおり、会社は組合が設立された昭和48 年11 月10 日からわずか2 日後の同月12 日に当時のY3 社長名の申入書をもって「組合活動の自由とは労働契約上の就業時間外及び会社の施設を使用しない場合に自由ということであって、たとえ正当な理由によるものであっても、就業時間中は勿論就業時間外であっても、会社施設構内の使用はできません」旨の回答をし、その後組合との事務折衝時に年4 回程度の使用は認めるとの譲歩は一時あったものの、会社としての基本的態度は今日に至るまで終始一貫して変らず、組合の使用許可願に対しても具体的な業務上の障害理由等を付すことなく、また付す必要もないとして組合の食堂利用を全く認めないのは、組合の存在を嫌悪し、施設管理権の名の下に意図的になされた組合に対する支配介入行為であり、労働組合法第7 条第3 号に該当する不当労働行為である。
(2) X2 に対する警告について
昭和54 年4 月27 日午後5 時5 分頃副執行委員長であったX2 が組合集会参加のため川崎工場に入構しようとした行為は正当な組合活動の一環であり、その入構態様も比較的平穏であった。その上、認定した事実6 の(2)で明らかなとおり、同年3 月28 日X6 執行委員がX2 同様有給休暇届後、職制の制止にかかわらず組合集会に参加し、53 年春闘時にも前副執行委員長であったX7 が有給休暇届後電機労連の委員会に出席し、その後組合集会に参加したことがあったが、いずれも警告書を発付した事実はない。
それにもかかわらず、就業規則によれば解雇にまで発展しかねない警告書を発付したことは、X2 に対する不利益取扱であるとともに、正当な組合活動を抑制するものであって、組合に対する支配介人行為といわざるを得ず、労働組合法第7 条第1 号、第3 号に該当する不当労働行為である。

 神奈川地労委の救済命令は、受忍義務説を排除した昭和54年国労札幌地本判決の趣旨に反し、組合側の主張に沿った判断を下している。会社は不服として行政訴訟を提起した。

池上通信機事件 横浜地裁昭和58年9月29日判決『労働判例』420号
http://thoz.org/hanrei/%E6%98%AD%E5%92%8C56%28%E8%A1%8C%E3%82%A6%2913 http://www.gyoseishoshiblog.com/marutahoumuj/_9446.html http://web.churoi.go.jp/han/h00254.html

判旨要約-救済命令取消。不当労働行為にあたらない
「従業員の食堂利用はあくまで右施設本来の目的である食事のための使用であって、右目的以外の使用、例えば組合大会の会場として使用するは予め許容された範囲から逸脱するものであるから組合ないし組合員が組合大会その他組合活動の場として工場内食堂を使用したいときは、予め右食堂の所有者であり且つ管理者である会社の許諾を得なければならない」ところ、会社の阻止を実力で排除して無許可で食堂を組合活動のために使用しつづけた状況のもとでは、会社が食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用とはいえず、「会社が食堂使用の方法等について組合と協議が成立していないことを理由に組合からの食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用ということはできない。」 組合員の入構阻止・中止命令・警告等は、職場秩序を維持するための必要な施設所有権、管理権の正当な行使ということができる。

判決抜粋
「‥‥ 一般に企業に雇用されている労働者は企業施設内に設置されている機械、設備等を使用して労務を提供する義務を負つていることから、企業施設内に立入りこれら機械、設備等を使用することができることはいうまでもないが、さらに進んで生産設備以外の会社の物的施設の使用をもあらかじめ許容されているとみられる場合が少なくない。しかしながら、右の許容は、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において使用するという限度にとどまるものであり、労働者に対し右の範囲を超え右と異なる態様においてそれを使用し得る権原を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に企業の物的施設を使用する権利を保障されていると解すべき理由はないのであるから、労働組合又は組合員であるからといつて使用者の許諾なしに右物的施設を使用する権原をもつているということはできない。もつとも企業に雇用される労働者のみをもつて組織されるいわゆる企業内組合の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とすることが極めて便宜であるから、その活動につき右物的施設を使用すべき必要性の大きいことは否定し得ないところではあるが、使用の必要性が大きいことの故に、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために当然に使用し得る権原を有し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の使用を当然に受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない。したがつて、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有、管理する物的施設を使用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその使用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を所有、管理する使用者の権原を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当らないというべきである(昭和五四年一〇月三〇日最高裁第三小法廷判決参照)。
そこでこれを本件についてみるに、会社の川崎工場食堂は、同工場で働く従業員をして食事の際使用させることを目的に会社が設置した施設であることは明らかであるから、同工場の従業員は労働組合員であると否とに拘らず食事の際右食堂を自由に使用することは予め会社により許容されているといわなければならない。しかしながら従業員の食堂使用はあくまで右施設本来の目的である食事のための使用であつて、右目的以外の使用、例えば組合大会の会場として使用することは予め許容された範囲から逸脱するものであるから組合ないしは組合員が組合大会その他組合活動の場として工場内食堂を使用したいときは、予め右食堂の所有者であり且つ管理者である会社の許諾を得なければならないものといわなければならない。しかるに組合は、昭和四八年一一月、組合を結成した当初から組合活動のため会社施設を使用できるのは組合の権利であるとの考えに立ち、会社の許可を得ずに川崎工場食堂で集会を開き会社から警告を受けると会社に対し食堂使用許可の申入れはしたものの右の前提を変えず、会社が年四回程度の組合大会にのみ食堂使用を許すとの案を出してもこれを全く無視し、あまつさえ食堂使用問題を会社との協議の場に持ち出すこともせず会社の阻止を実力で排除して無許可で食堂を組合活動のため使用し続けてきたものであつて、かかる状況の下にあつては、会社が食堂使用の方法等について組合と協議が成立していないことを理由に組合からの食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用ということはできない。 もつとも組合は、前記認定のようにいわゆる企業内組合であり、組合員が会社の川崎工場と池上工場等に分かれ組合大会その他の組合活動には川崎工場内の食堂を使用することが種々の面で便宜であることは肯首できるけれども、それが故に組合が川崎工場内食堂を当然に使用できる権利を取得するものでないことは前記説示のとおりであり、また会社としても就労時間外に従業員をして食堂を食事の目的以外に使用させることによつて事業遂行上格別の支障が生ずるとは云えず、現に会社は従業員がつくつている卓球部、写真部等にそのサークル活動として川崎工場内食堂の使用を許していることは会社において自認するところであるが、かかる事情が存するからといつて、会社は組合に対し組合活動のために右食堂を使用させなければならない義務を負うものと解することはできない。
その他会社の組合に対する本件食堂使用の拒否が権利濫用であると認めるに足りる証拠はない。四 してみれば、会社による組合からの食堂使用許可申入れの拒否が権利濫用であると認められない以上組合の食堂使用許可要求の拒絶が組合に対する支配介入―不当労働行為―に該らないことは明らかであり、会社が組合による会社食堂の無許可使用に対し組合員の入構を阻止し中止命令を発し、無断使用を強行した組合もしくは組合責任者に対し再発防止のためその責任追及及び処分の警告を発することは、職場秩序を維持するために必要な施設所有権、管理権の正当な行使であつて何らの不当性もなく勿論不当労働行為にも該当しないことは多言を要しないところであり、また会社が、従業員のJが昭和五四年四月二七日の就労時間外に会社の制止を無視して川崎工場構内に立ち入り、同食堂で行われていた組合による無許可集会に参加したことに対し服務規律違反である旨警告したことも正当な行為であつて組合に対し何らの不当労働行為を構成するものではない。 以上の次第で、被告が本件を不当労働行為と認定して原告に対し救済命令を発したことは違法というべきであるから本件命令主文第一、二項は取消しを免れない。‥‥」

池上通信機事件東京高裁昭和59年8月30日判決『労働判例』439号『労働関係民事裁判例集』35巻3・4号  459頁 『判例時報』 1154号  150頁
   http://thoz.org/hanrei/%E6%98%AD%E5%92%8C58%28%E8%A1%8C%E3%82%B3%2986 http://web.churoi.go.jp/han/h00282.html

 神奈川地労委が横浜地裁の救済命令取消を不服として控訴したが、東京高裁は地労委の控訴を棄却した。

控訴棄却 不当労働行為にあたらない
「本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設をを利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のために企業施設を利用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、‥‥使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職場規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設の使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないことである。」
「本件においても以上に述べたところと別異に解すべき事情はなんら見当たらず、組合が組合員集会や組合活動のために会社の一般的又は個別的な許諾を得ないで当然に会社の従業員食堂を使用し得るものと解すべき理由はない」。「そして、組合が右のような不当な見解に固執して従業員食堂の使用につき会社と真摯に協議を尽くそうとせず、かえって会社の許諾を得ないままに会社の阻止を実力で排除してこれを使用し続けるという挙にでるという態度を採り続けたものである以上‥‥会社としても、団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかったのも、やむを得ない措置というべきであって、これを権利の濫用ということはできないし、会社が組合員の入構を阻止したり、組合員集会の中止命令などの措置を採って、会社の許可を得ないまま従業員食堂において開催されようとする組合員集会を中止させようとし、あるいは組合員が無許諾で従業員食堂を組合活動のために使用した場合に組合又はその責任者の責任を追求し処分の警告を発するなどしたのは、先に見たようないわゆる施設管理権の正当な行使として十分是認することができるのであって、これら会社が採った一連の行動が組合に対する不当労働行為に該当するものということはできない」。


池上通信機事件 最高裁昭和63年7月19日判決『労働判例』527号
http://web.churoi.go.jp/han/h00282.html
 神奈川地労委の上告を棄却

上告棄却。不当労働行為にあたらない
「所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はなく、また、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原審の認定にそわない事実を前提として原判決を論難するものであって、採用することができない。」
なお伊藤正己裁判官単独の補足意見を要約すると「原判決は、その措辞からみて、労働組合又は組合員が使用者の所有する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の判断について厳格すぎる感は免れないけれども、その結論は正当であるから、本件上告はこれを棄却すべきである」と記した。


伊藤正己裁判官の補足意見(全文)

私は、法廷意見と本件の結論を同じくするものであるが、被上告人のした本件食堂の利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するかどうかに関しては、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の有無が
問題となるので、この点についての私の見解を明らかにしたうえ、本件について検討を加えることとしたい。さきに、最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁は、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動が正当なものとされるためには、使用者の許諾を得ること、又は使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許さないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があることが必要である旨を明らかにしたが、法廷意見も右の説示を正当としているものと思われる。私も右の判例が一般論として説示するところは賛同できないものではない。けだし、使用者が当該施設の利用を許諸するのは、通常、労働組合が使用者と団体交渉等なんらかの交渉をした結果であろうし、これによって労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理
する物的施設を利用するのが本来の姿といわなければならないからである。それゆえ、右の物的施設の利用について労使間の合意を形成するために、労使双方の誠実な努力が求められることはいうまでもない。しかしながら、労使間に実際に紛争が生じるのは、右のような使用者の許諾ないし労使間の合意が存在しない場合であろうし、現に本件においても、被上告人(使用者)が本件食堂の利用を許諾しなかったため、労使間に紛争が発生しているのである。このような場合においても、労働組合又はその組合員が当該施設を利用して行う組合活動が常に正当性がないということはできず、使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許諾しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があるときはこれを正当なものというべきである。そして、右の特段の事情があるかどうかについては、硬直した態度で判断するのではなく、当該施設の利用に関する合意を形成するための労使の努力の有無、程度が勘案されなければならないことはもちろんであるが、さらに、いわゆ
る企業内組合にあっては当該企業の物的施設を利用する必要性が大きい実情を加味し、労働組合側の当該施設を利用する目的(とくにその必要性、代替性、緊急性)、利用の時間、方法、利用者の範囲、労働組合によって当該施設が利用された場合における使用者側の業務上の支障の有無、程度等諸般の事情を総合考慮して判断されるべきものであると考える。本件の場合、被上告人は本件食堂の利用を許諾しなかったのであるが、そのことをもって直ちに本件組合活動が正当性を欠くと即断することなく、さらに右の特段の事情の有無を検討する必要があるところ、原審の適法に確定した事実及びこれから推認しうるところによれば、(ア) 本件食堂の利用をめぐる紛争が発生した当時、上告捕助参加人組合は結成されて間もない時期であり、しかもその組合員が川崎工場と池上工場とに分れていたため、上告補助参加人組合が本件食堂(川崎工場食堂・池上工場食堂) において集会をもつ必要性は相当高かったうえ、その使用方法も不当な態様にならないように配慮されていた
ばかりでなく、(イ)上告補助参加人組合が本件食堂を利用しても、被上告人の業務ないし他の従業員のレクリエーション活動に格別の支障が生じたことは窺われないにもかかわらず、(ウ) 被上告人は、上告補助参加人組合の強引な態度に触発された面があることは否定できないものの、本件食堂の利用に相当強硬な姿勢を示したこともあるというのであるが、その反面、(エ)被上告人は、年約四回の定期大会、臨時大会については本件食堂を利用することを許諾し、暫定的に使用料を負担して外部の会場を借り受けるなど一定の譲歩をし、(オ) 上告補助参加人組合は、昭和四九年三月被上告人の提供した右会場で臨時大会を開催したのちは、多数回にわたって無許可で本件食堂を利用し、本件食堂の利用に関する合意を形成する努力を全くしないうえ、ときには暴力行為に及ぶなど行き過ぎた行為をした、というのである。
以上を総合すると、被上告人が上告補助参加人組合ないしその組合員に対し本件食堂の利用を許諾しないことが権利の濫用であると認められるような特段の事情があるとまではいえないのであって、結局、本件の場合、被上告人のした本件食堂の利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するということはできない。原判決は、その措辞からみて、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の判断について厳格にすぎる感を免れないけれども、その結論は正当であるから、本件上告はこれを棄却すべきである。

論評
大内 伸哉 「企業施設を利用した組合集会に対する使用者の施設管理権の行使と支配介入--池上通信機事件(最判昭和63.7.19)(労働判例研究-747-)」『ジュリスト』988 1991
『別冊ジュリスト 労働判例百選(第6版)』  安枝 英訷 134号  240頁

本判決の意義
 企業施設における組合活動についての指導判例である国労札幌地本最高裁判決の判例法理に沿った妥当なものである。組合は「組合は、一定の範囲の企業施設の利用権を有するものであり、その限度において会社の施設管理権は制約をうける」(救済申立の主張)という上記最高裁が否定したプロレイバー「受忍義務説」の一方的な見解に固執して行動にうつし、集会を強行したこと。プロレイバーの渡辺章ですら「会社の便宜供与を受けるために必要な交渉協議を粘り強く進め、合意の達成に努力する姿勢に欠いている」ことから救済命令取消はやむを得ないと評しているのである。渡辺章『労働法講義 下 労使関係法・雇用関係法Ⅱ』信山社2011 184頁
 最高裁が支持している高裁判決が「会社としても、団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかったのも、やむを得ない措置というべきであって、これを権利の濫用ということはできない」としており、施設利用に関して合意のない状況での、施設利用拒否を不当労働行為にあたらないとしていることを重視したい。
 伊藤正己裁判官の補足意見はこれと異なる見解で、施設利用に関して合意のない状況での、施設利用不許可の状況で、組合活動が強行されても、それが即、正当でない組合活動と評価されることはないとする。これは国労札幌地本判決の趣旨とはことなる。判例法理を変質させ、風穴を開けようという意図のあるもので賛同できない。渡辺章は、伊藤補足意見を解説して、当該企業施設を利用する「必要性が大きい実情を加味し」諸般の事情を総合考慮し、法益権衡の立場に立って評価診断しようとするもので、違法性阻却説の判断枠組みを提示したものとしているが、『権利の濫用と認められるような特段の事情』を緩めて違法性阻却説に引きづりこむ意図とすれば同裁判官は労働組合に好意的な立場であり危険な方向性とみる。
 いずれにせよ、伊藤補足意見は少数意見にすぎないのであり、最高裁の判断はそのような立場をとっていない。

カード 無許可組合集会 就業時間前ビラ配り 日本チバガイギー事件(中労委-東京地裁-高裁-最高裁第一小法廷)

 日本チバガイギーはノバルティスファーマの製造部門だが、私事だが10年ほど前、二コチネルTTSでほとんど禁断症状がなく楽に禁煙できたのでとても感謝している。
 しかし、この最高裁判決もそれに劣らぬ意義がある。この事件は多くの論点を含むが食堂等の集会について使用制限が不当労働行為にあたるかという争点で最高裁と中労委の判断が大きく対立したのが特色である。
 中労委は「組合を嫌悪したことを併せ考えると」会社の不許可は「業務上ないし施設管理上の支障に藉口」するもので不当労働行為にあたるとしたが、最高裁はこの判断を違法とし、国労札幌地本判決に沿った純法理的判断をとった。これは中労委が「権利濫用と認められる事情」に利益比較衡量基準を定立(上告趣旨)して、企業施設内組合活動の指導判例である国労札幌地本判決の判例法理に風穴をあけようとする企てを否定したものであり、その点を評価したい。

日本チバガイギー事件中労委救済命令昭和53年 7月 5日 は(『中央労働時報』 623号 17頁 『労働判例』 503号 76頁http://web.churoi.go.jp/mei/m01146.html

(事件の概要)
日本チバガイギーは、当時大阪に本社 宝塚市に医薬品本部・工場等を置く、医薬品・プラスチック・染料・肥料の総合化学会社で、スイス・バーゼルを本拠とするチバガイギーリミテッド(現在のノバルティスファーマ)の子会社である。昭和39年に全従業員の親睦団体(経費の9割は会社負担)である従業員会が組織され、賃上げ等は会社と従業員会との話し合いで決定されていた。化学産業労働組合同盟日本チバガイギー労働組合(のちに総評合化化同総連・化学一般労連日本チバガイギー支部)は昭和49年に結成、公然化した。組合員は救済申立時300人いたが、中労委結審時には17名まで減っている。同社には従業員会(親睦団体)から発展したチバ労組も同年結成され約千人の組合員がいる。本件は、化同日本チバガイギー労組が、朝礼での部長発言、就業時間前構内でのビラ配りに対する警告と、食堂使用および屋外集会開催の不許可、夏季一時金交渉の「さし違え条件」、掲示板貸与に際しての掲示物届出などについて、大阪地労委に救済を申立たものであるが、ここでは、食堂使用および屋外集会開催の不許可が不当労働行為にあたるか。就業時間前構内でのビラ配りに対する警告が不当労働行為にあたるかという争点のみに絞って取り上げる
初審大阪地労委は、集会不許可、ビラ配りの警告いずれも組合側の主張を容れ、不当労働行為とした。中労委もこの2つの事案については初審の判断を支持した。

中労委命令書抜粋

[認定した事実]

食堂等の使用制限

(4) 昭和49 年4 月10 日、組合は、その前日会社との間で行われた第1 回団体交渉の結果を報告するために、終業後各支部ごとに集会を開くことを決め、その旨指令した。この指令を受けた宝塚工場支部の役員は、会社に対し集会場所として本部社屋1 階の食堂を午後5 時から使わせてほしいと申入れた。しかし、会社は、工場部門の終業時刻は午後5 時であるものの、本部の終業時刻は午後5 時45 分であるから、それまでは本部への来客もあり、また、本部の会議室として食堂を使用することもあるので、午後6 時以降の使用しか認められないと回答した。これに対して宝塚工場支部の役員らは、これまで従業員会が会社との賃上げ交渉等の経過を報告する際には就業時間中であっても食堂の使用が認められた例があると主張し、もし、食堂の使用が業務上どうしても都合が悪いのであれば、やむを得ないから屋外での報告集会の開催を認めてほしいと申入れた。これに対して会社は、屋外集会であっても本部の従業員の執務に影響する等、施設管理上の理由から屋外集会の開催を拒否した。
(5) 宝塚工場支部の組合員約70 名は、同日午後5 時過ぎ頃から食堂に集合したところ、教育労政室係長Y2 は午後5 時20 分頃食堂に赴き、X1 委員長に対し、食堂の使用許可は午後6 時からであるのでそれまでは食堂から退出するよう求めたが、X1 委員長はこれに応じなかった。このため、両者間で押問答となって時間が経過して午後6 時頃に至ったので、Y2 係長は食堂から退出し、支部組合員らは食堂で集会を開いた。

ビラ配りへの警告

(9) 組合は、公然化以降会社構内において組合機関紙等のビラを配布したところ、4 月17 日会社は、組合に対して就業規則第2 条(ル)に規定してある「会社内において許可なく……ビラを配布しないこと」が遵守されていないので注意するよう求め、違反が著しい場合は懲戒処分の可能性がある旨を文書で通知した。これに対して組合は、会社にビラ配布の届出を行ったところ、会社が配布するビラの内容を届出るよう求めたため、4 月下旬頃から再び会社に届出ることなくビラ配布を行った。
(10) 5 月27 日早朝、組合員5~6 名は、夏期一時金の団体交渉の状況等を記載したビラを本部構内のタイムレコーダー設置場所付近で配布していたところ、「おはよう運動」(同日頃から数日間、会社職制らが組合員とチバ労組員のトラブルを防止する目的で早朝出勤していたもの)で早朝出勤していた会社職制及びチバ労組員ら数10 名が遠まきにした。そのなかで、労政室長Y3 は組合員
らに対し、会社の許可なくビラ配布をすることは就業規則に違反するから、門外で配るよう求めたところ、組合員らはこれに従って門外でビラ配布を行うこととした。しかし、従業員の多くは自家用車や会社の通勤バスを利用して入構するため、組合員らは、門外ではビラ配布ができないと判断し、再び本部構内に戻ってビラ配布を行った。
(11) 5 月28 日以降も組合員は、本部構内においてビラを配布していたところ、会社は、7 月15 日、ビラ配布を行った組合員4 名に対して、「会社内に於ける無許可ビラ配布行為」は就業規則に違反するものであり、「かかる行為をくり返さないよう厳重に警告すると共に、今後万一違反した場合の責任追及の権利を留保しておく」旨の通知書を交付した。

判断

2 食堂等の使用制限について
会社は、食堂の使用について、食堂のある本館の2 階以上には就業中の従業員がおり、商談等で食堂を使用することがあるので、就業を妨げ、業務の円滑な遂行に支障があり、また、施設内の集会は便宜供与であるから、会社のいう条件に従うのは、当然の措置であり、従業員会に就業時間中に貸したのは、従業員会が会社援助の親睦団体で業務に準ずる性質のものであり、従業員全員が参加しており、就業中の従業員はいないのであるから、従業員会の活動と組合の活動と同列に考えることは誤りであると主張する。
ところで、食堂の使用についてみれば、前記第1 の3 の(4)認定のとおり、本部の従業員は午5 後時以降も本館2 階以上で就業しており、来客等があれば本部の従業員が商談等のために、食堂を使用することがありうることが認められるが、当日午後5 時以降に食堂を具体的に使用する予定があったとする疎明はない。
また、組合は、食堂の使用が業務上都合が悪いのであれば、屋外で集会を認めてほしいと申入れたのに対し、会社は、これをも場所が陜隘で喧噪にわたるとの理由で拒否しているのであるが、集会の目的は前記第1 の3 の(4)認定のとおり、前日の団体交渉経過の報告のためであり、場所が陝隘であっても喧噪にわたるものとは通常考えられず、また、喧噪にわたることのないよう条件を付して許可することも考えられることであるから、会社の拒否理由には首肯しかねるものがある。
以上のことと、上記1 判断にみられるとおり会社が組合を嫌悪していたことを併せ考えると、会社が組合に対し食堂使用を制限し、かつ、屋外での集会も認めようとしなかったことは、業務上ないし施設管理上の支障に藉口して、組合集会の開催を困難にし、その活動を制限しようとしたものと認めざるをえないのであって、これを労働組合法第7 条3 号に該当する不当労働行為とした初審判断は相当といわざるをえない。

4 ビラ配布について
会社は、組合が会社構内において無許可のビラを配布したことは、就業規則の違反であり、会社がかかるビラ配布に注意をあたえたのは、正当な組合活動を妨害したことにはならないと主張する。
組合が前記第1 の4 の(9)認定のとおり、会社から無許可のビラ配布に対する警告をうけたので、ビラ配布を会社に届出たのに対し、会社がさらにビラの内容を事前に提示するよう求めたことは、許可権限の濫用にわたるものというべく、このような会社の態度に対して、組合がやむをえず会社に届出ることを止めてビラを配布した経緯からすると、ビラ配布の手続については組合としても、それ相応の対応をしていたことが認められる。
そこで、本件ビラ配布に対する警告についてみるに、前記第1 の4 の(10)認定のとおり、従業員らは通勤バスまたは自家用車で通勤しており、門外でビラを配布することが困難であったので、組合員はやむなく会社構内に若干入ったタイムレコーダー附近でビラ配布をしたものであり、その態様からみて従業員の出勤等に格別の支障があったものとは認められない。それにもかかわらず、会社は、これをとらえて無許可であることの一事をもって「責任追及の権利を留保」する旨の警告をしたものであって、上記事情を併せ考えると、本件ビラ配布に対する会社の行為は、就業規則違反に藉口して、組合の正当な活動を規制しようとしたものと認めざるをえない。
よって、これを労働組合法第7 条第3 号に該当する不当労働行為であるとした初審判断は相当である。

日本チバガイギー事件(東京地裁昭和60年4月25日判決労民集36巻2号『労働判例』452号)
http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html
http://thoz.org/hanrei/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E6%96%B9%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80/%E6%98%AD%E5%92%8C53%28%E8%A1%8C%E3%82%A6%29118

(要点)
①午後五時からの食堂使用および屋外集会(終業時刻が工場は午後五時、本部部門は午後五時四五分の開催の不許可は施設管理権行使の範囲内にあり、不当労働行為にあたらない。
②就業時間前の構内における無許可ビラ配布行為の警告は施設管理権の濫用に不当労働行為にあたる。

 会社は中労委の命令を不服として行政訴訟を提起した。東京地裁は、食堂等の使用制限について救済命令を取消し、不当労働行為にあたらないとしたが、ビラ配りの警告については中労委の判断を認容した。 
 
 
判旨①食堂等の使用制限-不当労働行為にあたらない

 組合集会のための食堂利用の不許可-不当労働行為に該当しない「参加人が許可を求めた本件食堂にしろ野外集会にせよいずれも原告の物的施設の利用を伴うものであって、これら施設は本来企業主体である原告の職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営体勢を確保しうるように物的施設を管理・利用しうる権限‥‥に基づいてその利用を原告の許可にかからしめる等して管理運営されているものである。したがって‥‥原告が参加人の本件食堂の使用の申出に対し許可しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情がある場合を除いては、これを許可しないことをもって不当な使用制限とはいえない‥‥集会の目的が第一回の団体交渉の報告であって必ずしも喧噪にわたることが当然に予想される集会ではなかったこと、更に従業員会には本件食堂の使用も許可したことがあること、また屋外の集会については必ずしも業務上の支障があったともいえないことからすれば、本件食堂の使用や屋外集会を参加人の希望どおり許可したことによる現実の業務上の支障は必ずしも大きくなかったものと推認されなくもないが、他方工場部門とは別に本部の従業員の就業時間は午後五時四五分までであってその間に集会が行われるとすれば就業中の従業員が集会に気をとられ、職務に専念することができないなどの事態も予想しえないだけでなく‥‥原告において本部就業時間中の本件食堂の使用を許可しないと考えたことにも合理性があること‥‥しかも原告はまったく許可しないというわけではなく午後六時からの使用は許可していること、そして参加人が集会の開催を午後五時に固執した理由は専ら組合員の帰宅時間の遅れを防ぐといった自らの結束力の弱さからくる事由であり、これに固執する合理性に乏しいこと‥‥これらの事情を比較考量すると、原告が参加人からの午後五時からの本件食堂の使用申出あるいは屋外集会を許可しなかったことについて、原告の権利濫用と認められるような特段の事情があったとはいえ‥‥ない」

判旨①-ビラ配布の警告-不当労働行為にあたる 

「就業規則がビラ配布を原告の許可にかからしめた趣旨は、原告の有する施設管理権に基づき、その配布されるビラの内容を事前に検討し、ことさら原告を誹謗中傷するなどの不当な内容の印刷物が従業員に配布されることを未然に防ぐとともに、配布の手段方法を予め規制する機会を得ることによって職場環境を適正良好に保持しようとするものであるから、右就業規則の定め自体は十分なる合理性を有し、また規定の仕方に明確性を欠くものでもなく、労働者の有する労働基本権によって当然に無効とされるものではないというべきである。したがって、原告は組合の無許可ビラ配布行為に対しては就業規則に基づき警告等を行うことができるものというべく、かかる警告等を行うことが原告の権利の濫用であるというような特段の事情がある場合のみ警告等の措置を行うことが許されず、無許可ビラ配布行為も正当な組合活動と評価されるべき」ところ、「本件で配布されたビラはその内容が一時金交渉の経過を報告する等であって特にビラの内容自体が原告を誹謗中傷し職場秩序を乱すものであったという事情は認められないこと、また配布された時間は早朝の就業時間前であったこと、ビラを配布した場所は本部及び工場構内であるが、その近くのタイムレコーダー設置場所付近やポーターハウス前等であって業務に直接支障を生ずるような場所とも認められないこと、ビラを配布したことによってその場で喧噪や混乱状態を生じた事情も認められないこと、構外のビラ配布では通勤バスの停車位置等の関係から実効性に乏しいこと‥‥ビラ配布という活動が組合にとって極めて重要な情報宣伝活動であることも考えあわせると、原告が参加人のビラ配布行為ら警告を行ったことは‥‥原告の権利濫用と認められるような特段の事情がある場合に該当するものというべく、したがって原告の行った右警告は参加人の正当な組合活動に対する支配介入と認められ」るとした。

日本チバガイギー事件(東京高裁昭和60年12月24日判決『労働判例』467号)
http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html
控訴棄却(一審判決維持引用)


日本チバガイギー事件(最高裁第一小法廷平成元年1月19日判決『労働判例』533号)
http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html
 上告棄却
判決抜粋「原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告会社が参加人組合に対してした本件食堂の使用制限及び屋外集会開催の拒否が施設管理権を濫用したものとはいえず、したがって、右使用制限等が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない」


論評

9680小西 国友「 労働界再編成下の組合活動と施設管理権--日本チバガイギー最高裁判決を契機に〔含 質疑応答〕」『労働法学研究会報』』40巻28号1989
9448「組合活動と施設管理権,併存組合と差し違え条件ー日本チバガイギー事件(最判平成1.1.19)」『労働法学研究会報』40巻24号1989

 上記小西論説は企業施設内の組合活動の指導判例である昭和54年国労札幌地本事件最高裁第三小法廷判決を著者は単純明快に「使用者の権利として「企業秩序に服することを要求することを労働者に要求する権利」」を認めた判決と述べる。おおまかにいえば、使用者はその行為者に対して行為の中止を求めることできる。原状回復等、必要な指示命令ができる。場合によっては懲戒処分をなしうる。会社が施設管理権を侵害するような組合活動に対して、これを認めるとなれば問題ない。しかし、認めないとと言った場合に、その認めないことが使用者にの「施設管理権」の濫用と認められる特段の事情があれば別だが、ない場合には、組合活動の正当性は認められないと説明している。
 要するに「施設管理権」を侵害する組合活動は原則として正当性はないけれども、権利の濫用と認められるような事情がある場合は別だということで、ポイントはなにが「権利の濫用」なのかということだが、最高裁は具体的な判断基準を示していない。
 この点、判決が言い渡された当時、『当該施設を許さないことが権利の濫用と認められるような事情』はリップサービスに過ぎないだろう、現実には濫用と認められるものはほとんどないだろうと考えられ、労働組合に大変厳しい判決と受け止められた。
 ところが、中労委が判例法理の『権利の濫用と認められるような事情』に着目し、組合側に有利な判定基準を提示し、リップサービスではなく実のあるものとしようとした。
 その一例が日本チバガイギー事件である。食堂等の使用制限についての中労委の上告趣旨は次のとおりである。
「したがって、労働者の団結権、団体行動権保障の趣旨からする施設利用の組合活動の必要性と、その施設利用により使用者が蒙る支障の程度との比較衡量により、両者の権利の調和を図ることが要請される。そして、使用者の施設管理権行使が右の調和を破るときには、権利の濫用があるといわなければならない」
 しかし、この判定基準((法益調整比較衡量)は国労札幌地本判決が否定したプロレーバー学説の受忍義務説にかぎりなく近づいていく危険性のあるものに思える。
 中労委はこの判定基準にもとづき、業務上ないし施設管理上の支障に藉口した不当労働行為とするのであるが、最高裁
 小西論説によれば最高裁は明言していないが、こういう基準をあえて否定することなく暗々裡に前提しており、おそらく比較衡量による判断であるとしている。なるほど、この事件では工場部門の終業時刻が五時だが、医薬品本部部門の終業時刻が五時四五分であることから、五時以降であっても本部への来客はあり得た、来客の中には食堂を利用する人もあり得たため、食堂・屋外の集会を許可しなかったが、会社は六時以降であればよいとしていた。小西論説は五時から六時のあいだは会社がそれを禁止する十分の業務上の必要性があるという判断と解説している。
 しかし、最高裁判決は「原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告会社が参加人組合に対してした本件食堂の使用制限及び屋外集会開催の拒否が施設管理権を濫用したものとはいえず、したがって、右使用制限等が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない」と述べているだけで、中労委の利益比較衡量基準それ自体を認めているわけではないし、その後の判例でも比較衡量基準が採用されているわけでもなく、中労委の風穴を開ける試みが成功していないし、国労札幌地本判決が判例法理が特に組合側に有利になったということはない。暗々裡の前提というのはあくまでもプロレイバー学者の見解と理解する。
 
 ビラ配り事案について、私は疑問なしとしないが、最高裁は住友化学工業事件 最高裁第二小法廷昭54・12・14判決『労働判例』997号、倉田学園事件 最高裁第三小法廷平成6年12・20民集48巻8号1496頁で就業時間前のビラ配りを理由とする懲戒処分を無効としており、ビラ貼りや無許可集会事案とは同列にくくれない問題となっている。

2012/05/26

入手資料整理73

9680 小西國友「労働界再編成下の組合活動と施設管理権-日本チバガイギー最高裁判決を契機に」『労働法学研究会報』40(28)
(要所)
 著者は違法性阻却説の論者、企業施設内の組合活動の指導判例である昭和54年国労札幌地本事件最高裁第三小法廷判決を著者は単純明快に「使用者の権利として「企業秩序に服することを要求することを労働者に要求する権利」」を認めた判決と述べる。おおまかにいえば、使用者はその行為者に対して行為の中止を求めることできる。原状回復等、必要な指示命令ができる。場合によっては懲戒処分をなしうる。会社が施設管理権を侵害するような組合活動に対して、これを認めるとなれば問題ない。しかし、認めないとと言った場合に、その認めないことが使用者にの「施設管理権」の濫用と認められる特段の事情があれば別だが、ない場合には、組合活動の正当性は認められないと説明している。
 要するに「施設管理権」を侵害する組合活動は原則として正当性はないけれども、権利の濫用と認められるような事情がある場合は別だということで、ポイントはなにが「権利の濫用」なのかということだが、最高裁は具体的な判断基準を示していない。
 この点、判決が言い渡された当時、『当該施設を許さないことが権利の濫用と認められるような事情』はリップサービスに過ぎないだろう、現実には濫用と認められるものはほとんどないだろうと考えられ、労働組合に大変厳しい判決と受け止められた。
 ところが、中労委が判例法理の『権利の濫用と認められるような事情』に着目し、組合側に有利な判定基準を提示し、リップサービスではなく実のあるものにしようとした。
 一つの例として日本チバガイギー事件である。
 昭和49年宝塚事業所における午後五時からの食堂利用の組合集会および屋外集会(終業時刻が工場は午後五時、医薬品本部部門は午後五時四五分)の開催の不許可について、中労委救済命令昭和53年 7月 5日 は(『中央労働時報』 623号 17頁 『労働判例』 503号 76頁http://web.churoi.go.jp/mei/m01146.html業務上ないし施設管理上の支障に藉口した不当労働行為とした初審判断を相当とした。 会社が不服として救済命令取消訴訟を起こすが、東京地裁日本チバガイギー事件(東京地裁昭和60年4月25日判決民集36巻『労働判例』452号)http://web.churoi.go.jp/han/h00308.html http://thoz.org/hanrei/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%9C%B0%E6%96%B9%E8%A3%81%E5%88%A4%E6%89%80/%E6%98%AD%E5%92%8C53%28%E8%A1%8C%E3%82%A6%29118は集会開催の不許可は、国労札幌地本判決を引用し施設管理権行使の範囲内にあり、不当労働行為にあたらないとし、高裁も地裁判断を支持したため、中労委が上告するが、中労委は施設管理権の濫用になるのはどういう場合か上告理由で次のように述べる。
「したがって、労働者の団結権、団体行動権保障の趣旨からする施設利用の組合活動の必要性と、その施設利用により使用者が蒙る支障の程度との比較衡量により、両者の権利の調和を図ることが要請される。そして、使用者の施設管理権行使が右の調和を破るときには、権利の濫用があるといわなければならない」
 しかし、この判定基準((法益調整比較衡量)は国労札幌地本判決が否定したプロレーバー学説の受忍義務説にかぎりなく近づいていく危険性のあるものに思える。
 中労委はこの判定基準にもとづき、業務上ないし施設管理上の支障に藉口した不当労働行為とするのであるが、日本チバガイギー事件最高裁第一小法廷平成元年1月19日判決『労働判例』533号http://web.churoi.go.jp/han/h00308.htmlでは権利を濫用したものとはいえないとしたのである。
 著者によれば最高裁は明言していないが、こういう基準をあえて否定することなく暗々裡に前提しており、おそらく比較衡量による判断であるとしている。なるほど、この事件では工場部門の終業時刻が五時だが、医薬品本部部門の終業時刻が五時四五分であることから、五時以降であっても本部への来客はあり得た、来客の中には食堂を利用する人もあり得たため、食堂・屋外の集会を許可しなかったが、六時以降であればよいとしていた。著者は五時から六時のあいだは会社がそれを禁止する十分の業務上の必要性があるという判断と解説している。
 しかし、最高裁判決は「原審の適法に確定した事実関係の下において、被上告会社が参加人組合に対してした本件食堂の使用制限及び屋外集会開催の拒否が施設管理権を濫用したものとはいえず、したがって、右使用制限等が労働組合法七条三号所定の不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない」と述べているだけで、中労委の利益比較衡量基準それ自体を認めているわけではないし、その後の判例でも比較衡量基準が採用されているわけでもなく、中労委の風穴を開ける試みが成功しているのではない。国労札幌地本判決が判例法理が特に組合側に有利になったということはない。暗々裡の前提というのはあくまでもプロレイバー学者の見解と理解する。

9681 久保貴子「近世天皇家の女性たち」『天皇・朝廷研究大会成果報告集』  2 2009 
9682石井保雄「ピエール・ヴェルジュ「ストライキの組合化」」『亜細亜法学』25(2)1991http://www.i-repository.net/infolib/meta_pub/G00000031kiyo_910700351
9683加藤節子「フランスのCompagnonnage(同職組合)について」『論集』4 1975http://ci.nii.ac.jp/naid/110006998099
9684恒藤武「フランスにおける勞働協約法の發展に關する一考察 : 勞働運動史との關聯において 」『同志社法學』 11  1951http://ci.nii.ac.jp/naid/110000199300
9685恒藤武二「フランス法における爭議權」『同志社法學』19, 1953-08-30 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000199404
9685恒藤武二「爭議權についての試論」『同志社法學』6(2)1954 http://ci.nii.ac.jp/naid/110000401210
9686谷本義高「アメリカにおける労働協約の法的効力(一)」『同志社法學』44(1)http://ci.nii.ac.jp/naid/110000199875

2012/05/20

「平清盛」第20話5/20放映分感想

保元元年七月二日の法皇崩御により一気に緊張が高まるはずが、緊迫感に乏しいドラマの展開にがっかりした。七月一一日未明の開戦までの間に何があったのか、
 元木泰雄『河内源氏』中公新書、河内祥輔『保元の乱・平治の乱』吉川弘文館によると七月五日に清盛次男の検非違使平基盛が後白河の動員に応じており、この時点で平氏一門の動向は明らかになっている。六日には頼長家人の源親治が予防拘禁され、七日には忠実・頼長が諸国から武士を動員するのを停止するよう命じられ、摂関家の本邸である東三条殿を没官、義朝によって接収され、頼長は謀反人となったが、ドラマではスルーだった。
 九日深夜、崇徳上皇が突如、鳥羽田中殿から白河の皇后統子内親王御所に渡御され人々を驚かせた。(統子内親王は同母妹であり、待賢門院より法金剛院領をた相続し管領していた。皇后というのは非婚内親王の皇后で後白河の准母もしくは管領としている所領を天皇もしくはその子孫に伝えるための立后と考えられる)、その後、白河北殿に入った。
 驚いた朝廷方は、慌てて武士を召集する。源義朝・義康・平清盛・源頼政といった有力武士のほか、検非違使、諸国国衙から地方の武士が動員されていたのに対し、崇徳上皇の白河殿に参入したのは崇徳側近の平正弘とその子息たち、頼長に近侍して宇治から同道した平忠正、多田源氏の頼憲、河内源氏の為義と頼賢、為朝、為仲以下の子息たちであり、主力は摂関家の家人だった。
 兵力でいえば国家的動員に対し摂関家家人の私的動員であり朝廷方のほうが圧倒していた。
 平忠正は宇治に居館が有り、早くから忠実・頼長に近侍していた。したがってドラマのような突然離反したわけでないし、勝ち目のない方になんで走るのか視聴者も納得しないだろう。
 『愚管抄』などが伝える源為義の作戦会議における献策はドラマでやるのだろうか。
待ちいくさは敗北する。急ぎ宇治に移るか、近江や関東への退却策、もしくは先制攻撃しか勝ち目はないというものである。このエピソードの真偽はわからない。軍事的にはこれが正しかった。防御線のある宇治に移って、興福寺の僧や吉野などからの援軍と合流したほうが勝ち目があった。
 上皇の権威を示すために白河殿から動きたくなかったが、メンツにこだわったのが失敗だったと考える。 
 

カード 無許可職場集会 東京城東郵便局事件(東京地裁昭和59年9月6日判決『労働判例』442号)

(要点)無許可集会の解散命令、集会強行を理由とする懲戒処分を支持-闘争指令下の集会であることを理由に会議室の使用を認めないことは、権利の濫用とは認められず、解散命令に従わず、無許可集会強行に積極的な役割を果たすことは懲戒理由に該当する。

(要旨)
昭和42年全逓のストライキ決行体制の確立業務規制闘争指令の下での城東支部による会議室での無許可職場集会強行及び欠勤、管理職への暴行等を理由とした郵政職員2名に対する懲戒免職処分の効力が争われ、判決はこれを有効とした。

 判決は、国労札幌地本ビラ貼り事件判決を引用したうえで「局長が会議室の使用を許可しなかったのは、全逓が同年五月一〇日、ストライキを決行する体制を確立すること及び業務規制闘争に突入することの指令を城東支部に発したため、右指令が公共企業体労働関係法一七条一項に違反するとしたためであ」り、「局長が施設の利用を許諾することは違法行為を助長する結果となるおそれが大きいと判断したことについては相当な理由があるというべきであるから、会議室の使用を許可しなかったことについて権利の濫用と認められるような特段の事情はないものというべきである‥‥」と「従って、会議室使用の許可を得ないで開催された同年五月一一日及び一二日の各集会は正当な組合活動として許容されるものということはできない‥‥原告の行為は、庁舎管理者の許可なく開催された集会に参加し、管理者の解散命令に従わず、かつ、集会の開催に積極的な役割を果たした点において、国家公務員法八二条一号及び三号に該当する」と判示、情状、懲戒処分の相当性について「原告は主催者としてこれを開催したものではないけれども‥‥単に集会に参加したにとどまらず、管理者の解散命令に抗議し、あるいは集会の進行を指揮すると等積極的かつ中心的な役割を果たしており、同原告の責任はかなり重い」とした。

(判決-抜粋)

(城東局における労使関係)
 昭和四一年当時、城東局では郵便物の大幅な遅配が続き、一日三千から四千通の滞留が常態であった。吉田局長は同年七月に着任後、職場規律の乱れに対し、同年八月、城東支部三役に対し、勤務時間の厳守、不就労についてはノーワーク・ノーペイの原則で対処する、局内の麻雀は厳禁する旨通告し、右是正策を実行に移すために管理職に職員の勤務状態を点検させる等の体制を採るようになった。また、同局長は、本来当局の責任で行うべき業務運営に対し組合が不当に介入しているとして、組合の介入を排除する対策を採ることとした。まず従来城東局においては、正規の団体交渉の他に各職場において管理者とその職場の組合員の代表者との間で職場交渉といわれるものが慣行的に確立しており(中略)正規の団体交渉の決定事項の具体的運用の協議の場として機能していたが、同局長は職場交渉を認めないとし、各課長が個別に組合と話し合うのを禁止した。更に、同局長は、正規の団体交渉においても、交渉事項はいわゆる三六協定と二四協定の締結に関するものに限られるとして、それ以外の議題を制限し、交渉人員の数にも制限を加えた。(中略)同局長の前記のような措置に対して内部から不満の声が出るようになり、同年九月頃から「既得権奪還」のスローガンを掲げて吉田局長追放運動を展開、同年の年末年始の繁忙期における超勤命令拒否、物だめ闘争を経過した後、翌四二年に入ると、同支部は、春季闘争、集中処理局設置に伴う合理化反対闘争等において、同局長追放運動とからませて、業務規制闘争を行うようになった。
原告Hの行為(抜粋)-城東支部執行委員会は昭和四二年五月二日、全逓中央本部からの指導により、当時全逓が取り組んでいた合理化反対闘争等にむけての団結を強めるため、各課単位で集会を開催することを決定し、これに基づき、郵便課、保険課等で順次集会が開催され、同月九日、集配課分会S執行委員名義で吉田局長に対し、いずれも組合業務を目的として城東局会議室を同月十一日及び十二日の両日使用したい旨の庁舎使用許可願いを提出した。同局長は、これに対し、全逓が同月一○日の指令第三二号により、同月一七日に二時間、二四日に半日の各ストライキを決行する体制を確立すること、及び同十六日以降業務規制闘争に突入することとの闘争指令を発したため、東京郵政局の指示に従い、右指令は公共事業体等労働関係法一七条一項に違反するとして、前記許可願につきいずれも許可しないこととし、同月一一日午前中に同局庶務会計課主事Uを通じて、S執行委員及び原告Hに対してその旨及び理由を通知した。
(五月一一日の集会)
 このような経緯で会議室の使用が許可されなかったにもかかわらず、同日午後四時七分頃から五時十六分頃まで、同会議室において、集配課員約四〇名による職場集会が開催され、K青年部長がこれを司会した。原告Hもこれに参加したが、この中で、同原告は、開会後間もなく無許可集会として解散命令を発した貝藤課長に対して抗議し、更に午後四時三六分頃、集合した集配課員に対し、「中に入ってやろう」と言って全員を集め、同課長の再三にわたり解散命令を無視して集会を続行した。
(五月一二日の集会) 
 同月一一日の集会で前記‥‥のような混乱があったためS執行委員は、翌一二日に予定していた集会を開くべきかどうかを城東支部長O及び東京地本のI執行委員に相談したところ、二人とも集会を開くよう指示をした。そこで同月一二日においても会議室の使用が許可されていなかったにもかかわらず、同日午後〇時三三分頃から同五一分頃まで、同局会議室において、集配課員訳六〇名による集会が開催され、K青年部長がこれを司会した。原告Hもこれに参加し、解散命令を発した吉田局長及び貝藤課長に対して抗議し、右両名の再三の解散命令に従わない態度を示し、また参加者全員に対して会場使用について説明をし、更に「青年婦人部長の指揮で歌を歌って終わることとする。」などと指示した。

(判断)
「‥‥郵政省庁舎管理規程七条は、「庁舎管理者は、庁舎等において、演説、ビラ等の配布、その他これに類する行為をさせてはならない。ただし、庁舎等における秩序維持等に支障がないと認める場合に限り、これを許可することができる。」と定め、また同第三条は、職員は、庁舎管理者が、庁舎管理上必要な事項を指示したときは、その指示に従わなければならない」と定められている‥‥「庁舎管理者は」同局の局長である吉田局長であることは(証拠略)により明らかであるから、結局、同局長が会議室の使用を拒否しなかったことの当否が問題となる。
 国の庁舎の管理権者は、公物たる庁舎の存立を維持し公務の円滑な遂行を図るため、その庁舎につき合理的・合目的的な秩序を定立し、公務員その他の者に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、その物的施設に許諾された目的以外には利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示・命令することができ、公務員でこれに違反する者がある場合には、その任命権者は、その者に対して懲戒処分を行うことができるものと解するのが相当であり、また公務員の労働組合又はその組合員が、庁舎管理者の管理する庁舎であって定立された秩序のもとに公務の運営の用に供されているものを、その管理権者の許諾を得ることなく組合活動のために利用すること許されないというべきであるから、右の労働組合又はその組合員が庁舎管理者の許諾を得ないで庁舎を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該庁舎につきその管理権者が有する権利の濫用であるという特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある公務の運営態勢を確保しうるように当該庁舎を管理利用する庁舎管理権の権限を侵し、公務の秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四八頁参照)。
以上の見地に立って本件について検討する。‥‥前記集会が行われた行われた会議室は吉田局長の管理する庁舎の一部であり、郵便局の業務のために使用されるべきものであって、全逓の組合や、その組合員に当然には使用が許されてはいないものであると認められるところ、吉田局長が会議室の使用を許可しなかったのは、全逓が同年五月一〇日、ストライキを決行する体制を確立すること及び業務規制闘争に突入することの指令を城東支部に対して発したため、右指令が公共企業体法等労働関係法一七条一項に違反するためとしたことは前記‥‥認定したとおりである。そしてこのような指令が発せられた場合において、吉田局長が城東支部に対し施設の利用を許諾することは違法行為を助長する結果となるおそれが大きいと判断したことについては相当な理由があるというべきであるから、同局長が会議室の使用を許可しなかったことにつき権利の濫用であると認められる特段の事情はないというべきである。なお‥‥五月の各課単位の集会は五月一一日以前に実施され、吉田局長もこれらの集会のために庁舎を貸与することを許可していたことが認められるけれども、その後前記のような指令が全逓から発せられたのであるから、従前庁舎使用を許可していたからと言って、集配課分会の会議室使用を許可しなかったことをもって権利の濫用とすることもできない。(中略)従って会議室使用の許可を得ないで開催された同年五月一一日及び一二日の各集会は正当な組合活動として許容されるものということはできない。よって(中略)同原告の行為は、庁舎管理権者の許可なく集会に参加し、管理権者の解散命令に従わず、かつ、その集会において積極的な役割を果たした点において、国家公務員法八二条一号及び三号に該当するということができる」

 本判決の意義
 
 企業経営内における組合活動の指導判例である国労札幌地本ビラ貼り事件・最高裁昭和54年10・30第三小法廷判決民集33巻6号647頁『労働判例』329号の「使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては」「使用者の許諾を得ることなく組合活動のために利用することは許されない」という判例法理に基づいて判断を下しており妥当な判決である。
 本判決の意義は、公共事業体等労働関係法によって争議行為が禁止されている国の公共企業体において、スト指令下における組合集会の施設利用を拒否することは、庁舎管理者の権利の濫用に当ず、解散命令も、従わなかった場合の懲戒処分も適法としたことにある。
 違法行為を助長することとなるような集会に許諾を与えなくてよいのである。やりたいなら外でやってくださいということでよいのである。プロレイバーから異論があるかもしれないが、公共事業体等労働関係法一七条一項が「職員及びその組合は、同盟罷業、怠業、その他業務の正常な運営を阻害する一切の行為をすることができない。又職員は、このような禁止された行為を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない」で明文で禁止されている以上、スト指令下で団結を強める趣旨の集会を是認することは、違法行為の共謀、あおりに当局が加担することになるから相当な理由なのであり、妥当な判決であると私は考える。

 事案は、当時全逓が取り組んでいた合理化反対闘争等にむけて団結を強めるため、各課単位で集会を開催することが決定され、郵便課、保険課等で順次集会が開催されたが、五月一一日と一二日の集配課の集会は許可されなかった。それは、全逓が五月一〇日に、同月一七日に二時間、二四日に半日の各ストライキを決行する体制を確立すること、及び同十六日以降業務規制闘争に突入することとの闘争指令を発したため、東京郵政局の指示に従い、指令は公共事業体等労働関係法一七条一項に違反するとしたためで、組合集会のための施設利用の許諾は違法行為を助長することになると庁舎管理者が判断したためであるが、判決は相当な理由として、「権利の濫用であると認められるような特段の事情」はなく、解散命令にもかかわらず集会を強行したとは正当な組合活動とは認められず、懲戒理由に該当するとしたものである。
 なお、無許可集会の時間と人数は一一日が午後四時七分頃から五時十六分頃まで約40名、一二日が午後〇時三三分頃から同五一分頃60名であった。主催者、集合した者が勤務時間中か否かが不明であるが、一二日の集会は一般的には昼の休憩時間に相当するものであるから、休憩時間の先例ともいえそうである。
 なお、三公社五現業に適用された、公共事業体等労働関係法は、昭和60年(1985年)に電電公社・専売公社が、昭和62年(1987年)に国鉄が民営化されたことに伴い、国営企業労働関係法と名称変更、平成14年(2002年)に特定独立行政法人等の労働関係に関する法律と名称が変更されたが、一七条の争議行為の禁止はそのままである。
 重要なことは、地公労法一一条一項も特定独立行政法人等の労働関係に関する法律一七条一項と同じ条文で争議行為が禁止されているから、この判例法理から東京都水道局のような地方公営企業においてもスト指令下の集会の利用拒否、解散命令等は適法とみなされるということである。
 これは下級審判例だが、国労札幌地本判決という最高裁判決の判例法理に沿った判断であるから
地公労法11条が廃止されることがない限り、これと違った判断がとられるということは考えにくい。同じ条文が適用されているのに郵便局では許容されず、水道局は許容することはないはずだからである。
 実際に東京都水道局では、全水道東水労のスト指令下の職場集会が、会議室ではなく事務室内で窓口・電話受付業務が行われているにもかかわらず黙認されている。許可を得ることもなくたんに通告で組合のやりたい放題というのが実態である。例えば、私の職場において過去1年間に4回、昼の休憩時間に事務室内での集会がなされている。
 そのうち3例を挙げる。
 足立営業所の監理団体への業務移転の提案に対する昼当番拒否闘争(明らかに争議行為)が行われている状況での平成11月2日の集会、http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-53e9.html
 12月14日の2時間スト、12月21日の1時間ストが構えられている状況でストライキに向けて組合員の意思統一を図る目的で平成23年12月9日の集会、http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-b43d.html
 3月16日2時間スト、3月29日29分職場大会を構えている状況でで一時金への成績率導入阻止都労連闘争課題についての意図統一を図るための24年3月8日昼休み職場集会http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-98bd.html
 郵政省は昭和36年に『新しい管理者』というテキストで現場管理職に対し訓練を行ったうえ、全逓の非合法な組合活動に対して徹底した労務管理を行ってきた。50年以上前から管理職は反動といわれることをおそれず対処してきた。それとは雲泥の差があるし、50年以上のタイムラグというものに私は耐えられないものを感じている。

入手資料整理72

72-1
2346座談会「全逓4.28処分の本質と人事院公平審査制度の意義」『労働法律旬報』1027、1981
2347真柄栄吉「人勧凍結に関するILO提訴闘争の意義」『労働法律旬報』1069、1983
2348中山和久「人事院勧告凍結と代償措置」『労働法律旬報』1069、1983
2349光瀬貞夫「全逓四・二八処分の経緯とその意味するもの」『労働法律旬報』1027、1981
2350片岡曻「人事院勧告と労働基本権」『ジュリスト』779、1982
2351座談会「労働組合の変容と団結権法理の再検討」上下『労働法律旬報』1039、1040
2352ILO結社の自由委員会211次報告『労働法律旬報』1046、1982
2353荻沢清彦「労働組合法はどのように変わったのか」『ジュリスト』945「労働組合法の誕生」『ジュリスト』946「労働組合法と労働関係調整法」『ジュリスト』9

72-2
272長渕満男「三六協定と時間外労働の拒否闘争」『文献研究労働法学』1978 総合労働研究所
273菅野和夫「国家公務員の団体協約締結権否定の合憲法性問題」『文献研究労働法学』1978総合労働研究所
274諏訪康雄「労働協約の規範的効力をめぐる一考察」『文献研究労働法学』1979総合労働研究所
275坂本重雄「労働協約の法的性質」『文献研究労働法学』1979総合労働研究所
276川口実「就業規則と労働契約」『法学研究』50巻1号 1977
277余宮道徳「西ヨーロッパ直系家族をめぐる最近の歴史的家族研究について-特にパックナーとラスレットを中心として-」(上・中・下)福岡大学人文論叢11-2,12-3,13-3 1979,1980,1981
278渡辺章「時間外労働協定の法理」『文献研究労働法学』1979総合労働研究所
280安枝英訷「労働組合員の『権利章典』(一)(二)(三)」同志社法学 28-4,29-1,29-2
281前田政宏「組合内部統制の法理」『文献研究労働法学』1979総合労働研究所
282古川陽二「翻訳と解説:英政府緑書『労働組合と組合員』」『沖縄法学』10 1988
283香川孝三「アメリカ企業、アメリカ日系企業、日本企業における苦情仲裁手続の比較研究『同志社アメリカ研究』29 1993
284茂善樹「ジョナサン・エドワーズとリバイバルに関する一考察」『同志社アメリカ研究』22 1986
285外尾健一「タフト・ハートレー法下のユニオンシヨップ制」『社會科學研究 : 東京大学社会科学研究所紀要』26巻3・4号 1975
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287菅野和夫「公務員団体交渉の法律政策」アメリカ(一)(二)」法学協会雑誌98.1.12 1981 100-1 1983
288村上淳一「ドイツ市民社会と家族」『法学協会雑誌』100巻3号 1983
289小池英光「ロックの生得原理論について」『アカデミア. 人文自然科学編,保健体育編 』25号 1975
290西谷敏「団結権論の回顧と展望」『日本労働法学会誌』77 1991
291唐津博「イギリス雇用契約における労働者の労働義務」同志社法学33巻4号5号
293『日本労働研究雑誌』NO.526 2004 特集外部人材の活用拡大と新しい課題中尾和彦「電機産業における請負労働者の活用と請負適正化の課題」村田弘美「フリーランサー・業務委託など個人請負の働き方とマッチングシステム」鎌田耕一「委託労働者・請負労働者の法的地位と保護」
292辻村昌昭「オリエンタルモーター事件施設管理権及び照会票による組合員調査と支配介入」旬1383 1996
294小松茂「聖書と聖トマス・アクィナスの神学」『アカデミア. 人文自然科学編,保健体育編』25号 1975
293外尾健一「アメリカのユニオンシヨップ制(1)(2)」『社会科学研究』24巻4号、25巻1号
295石橋泰介「『教会憲章』に示された原秘跡的教会観の神学的背景に関する一考察」『アカデミア』25 1975
296秋田成就「アメリカ労働協約における非争議事項の法的強制の問題(出所不明)
297小林玲子「エイレナイオスにおける聖体の解釈」『カトリック研究』56号1989
298ロジャー・L・ジヤネリ「祖先祭祀と韓国社会」第一書房1993
299泰地靖弘「世界主要国の公務員の労働時間について」(出所不明)
300深山喜一郎「休憩時間中の無許可の政治ビラ配布を理由とする懲戒処分の効力 判例研究 明治乳業事件」(出所不明)
301加藤尚文「女性の専門職・管理職登用の疑問」(出所不明)
302奥山明良「ユニオンショップ協定の法理」『文献研究 労働法学』1978総合労働研究史
303アンドリュー・P・ウッド講演「英国労働運動の復権は可能か」『日本労働研究雑誌』378 1991
304浅倉むつ子「男女雇用平等をめぐる今日的問題」(出所不明)
305尾崎正利「妊娠・出産保険と休暇に関するアメリカ労働協約規定の傾向(1975-1979)について」『月報三重法経セミナー』1979・6号、「資料紹介-仲裁と平等雇用機会問題(1)」『月報三重法経セミナー』1979・9号「資料紹介-仲裁と平等雇用機会問題(2)」『月報三重法経セミナー』1980・5号
306安枝英訷「イギリスの企業内組合活動」『季刊労働法』177 1980
307坂本重雄「アメリカの企業内組合活動」『季刊労働法』177 1980
308山崎隆志「諸外国における出産休暇   」日本労働協会雑誌360号1989
309石橋伊都男「米連邦職員の性・障害等による雇用上の差別の救済制度 人事院月報1992-7
310山田省三「一九九〇初頭のイギリスにおける労使関係と労働法の動向」『労働法律旬報』1370 1995

2012/05/14

カード 休憩時間 ビラ配り 目黒電報電話局事件最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決民集31巻974頁

目黒電報電話局事件最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決民集31巻974頁 『判例時報』871号『判例タイムズ』357号6頁『労働判例』287号
  懲戒戒告処分無効確認 - 最高裁判所第三小法廷昭和47(オ)777:判決 http://thoz.org/hanrei/%E6%98%AD%E5%92%8C47%28%E3%82%AA%29777
http://www.jil.go.jp/hanrei/conts/026.htm
http://fourbrain.blogspot.com/2002/04/blog-post_3841.html
http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/hanrei/data/124.htm
事件の概要-日本電電公社目黒電報電話局施設部試験課勤務の職員Xは、昭和42年6月16日から22日まで「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と書かれたプレートを着用して勤務したところ、これを取り外すよう上司から再三注意を受けた。同月23日Xはこの命令に抗議し、ワッペン・プレートを胸につけることを呼びかける目的で、「職場の皆さんへの訴え」と題したビラ数十枚を、休憩時間中に職場内の休憩室と食堂で手渡しまたは机上におくというという方法で配布した。
 電電公社は上記プレート着用行為が就業規則の五条七項「職員は、局所内において、選挙活動その他の政治活動をしてはならない」に違反する。ビラ配布行為は五条六項「職員は、局所内において、演説、集会、貼紙、掲示、ビラの配布その他これに類する行為をしようとするとき、事前に別に定める管理責任者の許可を受けなければならない」に違反し懲戒事由に該当するとして、Xを戒告処分に付したが、その効力について争われた事件である。一、二審は原告の主張を認容し、戒告処分を無効としたが、最高裁は破棄自判して一、二審の判断を覆した。

 判決抜粋-懲戒処分は適法
 
公社は設立目的からに照らしても企業性を強く要請されており、公社と職員の関係は、基本的には一般私企業における使用者と従業員との関係とその本質を異にするものではなく、私法上のものであると解される。‥‥一般私企業においては、元来、職場は業務遂行のための場であつて政治活動その他従業員の私的活動のための場所ではないから、従業員は職場内において当然には政治活動をする権利を有するというわけのものでないばかりでなく、職場内における従業員の政治活動は、従業員相互間の政治的対立ないし抗争を生じさせるおそれがあり、また、それが使用者の管理する企業施設を利用して行われるものである以上その管理を妨げるおそれがあり、しかも、それを就業時間中に行う従業員がある場合にはその労務提供業務に違反するにとどまらず他の従業員の業務遂行をも妨げるおそれがあり、また、就業時間外であつても休憩時間中に行われる場合には他の従業員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後における作業能率を低下させるおそれのあることがあるなど、企業秩序の維持に支障をきたすおそれが強いものといわなければならない。したがつて、一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきであり、特に、合理的かつ能率的な経営を要請される公社においては、同様の見地から、就業規則において右のような規定を設けることは当然許される‥‥被上告人が着用した本件プレートに記載された文言は、それ自体、アメリカ合衆国が行つているベトナム戦争に反対し、右戦争の遂行の拠点としての役割を果たす米軍立川基地の拡張の阻止を訴えようとしたものであるが‥‥わが国の政治的な立場に反対するものとして社会通念上政治的な意味をもつものであつたことを否定することができない。‥‥被上告人は右文言を記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えかけたものというべきであるから、それは社会通念上政治的な活動にあたり、しかもそれが目黒局の局所内で行われたものである以上、公社就業規則五条七項に違反することは、明らかである。‥‥ところで、公社法三四条二項は「職員は、全力を挙げてその職務の遂行に専念しなければならない」旨を規定しているのであるが、これは職員がその勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことを意味するものであり、右規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきである。本件についてこれをみれば、被上告人の勤務時間中における本件プレート着用行為は、前記のように職場の同僚に対する訴えかけという性質をもち、それ自体、公社職員としての職務の遂行に直接関係のない行動を勤務時間中に行つたものであつて、身体活動の面だけからみれば作業の遂行に特段の支障が生じなかつたとしても、精神的活動の面からみれば注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかつたものと解されるから、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱すものであつたといわなければならない。同時にまた、勤務時間中に本件プレートを着用し同僚に訴えかけるという被上告人の行動は、他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、この面からも局所内の秩序維持に反するものであつたというべきである。
すなわち、被上告人の本件プレート着用行為は、実質的にみても、局所内の秩序を乱すものであり、公社就業規則五条七項に違反し五九条一八号所定の懲戒事由に
該当する。 したがつて、前記のように公社就業規則に違反する被上告人の本件プレート着用に対しその取りはずしを命じた上司の命令は、適法というべきであり、これに従わなかつた被上告人の前記第一の一の(二)の行為は、公社就業規則五九条三号所定の懲戒事由である「上長の命令に服さないとき」に該当する。

被上告人の‥‥ビラ配布行為は許可を得ないで局所内で行われたものである以上、形式的にいえば、公社就業規則五条六項に違反するものであることが明らかである。もつとも、右規定は、局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであるから、形式的にこれに違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのを相当とする。ところで、本件ビラの配布は、休憩時間を利用し、大部分は休憩室、食堂で平穏裡に行われたもので、その配布の態様についてはとりたてて問題にする点はなかつたとしても、上司の適法な命令に抗議する目的でされた行動であり、その内容においても、上司の適法な命令に抗議し、また、局所内の政治活動、プレートの着用等違法な行為をあおり、そそのかすことを含むものであつて、職場の規律に反し局所内の秩序を乱すおそれのあつたものであることは明らかであるから、実質的にみても、公社就業規則五条六項に違反し、同五九条一八号所定の懲戒事由に該当するものといわなければならない。‥‥被上告人は、本件処分は、上告人が被上告人を共産党員であると認識し、その思想信条を嫌い、そのため行つた差別待遇にほかならないとして、労働基準法(以下「労基法」という。)3条違反を主張する。しかしながら、原審の確定した事実によれば、本件処分は被上告人の前記違法な行為を理由として行われたものであることが明らかであるから、被上告人の右主張は理由がない。‥‥また、被上告人は、本件ビラ配布は正午の休憩時間を利用して行つたものであるのにこれを懲戒処分の対象とすることは、労基法34条3項に違反する、と主張する。一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法34条3項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であつて、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。しかしながら、休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。しかも、公社就業規則五条六項の規定は休憩時間中における行為についても適用されるものと解されるが、局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であつても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあつて、その内容いかんによつては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。本件ビラの配布は、その態様において直接施設の管理に支障を及ぼすものでなかつたとしても、前記のように、その目的及びビラの内容において上司の適法な命令に対し抗議をするものであり、また、違法な行為をあおり、そそのかすようなものであつた以上、休憩時間中であつても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることは公社就業規則五条六項に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労基法34条3項に違反するものではない。‥‥」

判決論評
菊池高志「労働契約・組合活動・企業秩序法政研究 『法政研究』49(4) 1983 〔※ネット公開〕http://hdl.handle.net/2324/1792
楠元茂「<論文>いわゆる服装斗争の法的考察 : 人権規定の第三者効力との関連において」『商経論叢』27 1978ね http://ci.nii.ac.jp/naid/110000048788
石橋洋「企業内政治活動・ビラ配布の自由と企業秩序 : 目黒電報電話局事件・明治乳業事件判決を素材として」『季刊労働法』142 1987〔※ネット公開〕http://hdl.handle.net/2298/14089
吉田 美喜夫 「企業秩序と労働者の権利・義務-目黒電報電話局事件・富士重工業事件最高裁判決(回顧と展望)『日本労働法学会誌』52 1978
外尾健一「労働判例リ-ディングケ-ス-17-目黒電報電話局事件--休憩時間の自由利用」『労働判例』720 1997
大内伸哉「判例講座 Live! Labor Law(17)企業内での政治活動は,どこまで許されるの?--目黒電報電話局事件(最三小判昭和52.12.13民集31巻7号974頁)」『法学教室』347 2009

目黒電報電話局判決の意義

●プレート着用と職務専念義務について

 判決は「勤務時間中における本件プレート着用行為は‥‥作業の遂行に特段の支障が生じなかつたとしても、精神的活動の面からみれば注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかつたものと解されるから、職務上の注意力のすべてを職務遂行のために用い職務にのみ従事すべき義務に違反し、職務に専念すべき局所内の規律秩序を乱すものであつたといわなければならない。同時にまた、勤務時間中に本件プレートを着用し同僚に訴えかけるという被上告人の行動は、他の職員の注意力を散漫にし、あるいは職場内に特殊な雰囲気をかもし出し、この面からも局所内の秩序維持に反する」と述べており、単に自己の職務専念義務に反するにどまらず、他の労働者の職務への専念を妨げるものとして捉えている。
 批判的な論評を書いている菊池高志ですら「多数労働者が密接な関連・協力関係にたって業務が遂行される近代的経営の現実に立てば、他の労働者の義務遂行の障害とならないよう配慮すべき義務を負うと考えることにも合理性がある」と述べているのであるから、「他の職員の注意力を散漫にする行為」は秩序維持に反するものと言ってよい。

休憩時間と企業施設の管理権について

 一般に使用者は、労働基準法第三十四条第三項の規定により、労働者に対して休憩時間を自由に利用させる義務を負うとされるが、本件懲戒処分は休憩時間の自由利用を妨げるもので労働基準法に違反するとする被上告人の主張については次のような理由で退けた。
 休憩時間の自由利用も、それが「企業施設において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない」のであって「従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない」。局所内における「演説、集会、貼紙、掲示、ビラ掲示」は、休憩期間中になされても「その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるから」、これらの行為を局所管理者の許可制にした就業規則は休憩時間にも適用される。本件ビラ配布は、その目的とビラの内容ゆえに、配布態様において施設の管理に支障がなくても、企業秩序を乱すおそれがあるから、実質的にも就業規律違反であり、懲戒処分は労基法34条3項に反しないとした。
 ここで注意すべきことは、休憩時間の従業員の行動を規制する根拠として「施設管理権」だけではなく「企業秩序を維持するための規律に従うべき義務」を加えていることである。従業員には企業秩序遵守義務があるということは、本件決と同日の富士重工業事件(最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決、民集31巻1037頁)で明解の示されていた。「企業秩序」の根拠として「企業」という存在にとって不可欠を挙げ、「企業秩序」の維持確保のために「企業」に求められる権能として、(1)規則制定権(2)業務命令権(3)企業秩序回復指示・命令権(4)懲戒権を当然のこととして列挙し、このような「企業」体制を前提とした労働契約を媒介に労働者の「企業秩序遵守義務」を演繹している。「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによつて、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」としたのである。(池田恒夫池田 恒男「国労札幌ビラ貼り事件」最高裁判決の「画期的」意義--現代日本法の一断面」『社會科學研究』33(5) 1981)
 
 「施設管理権」だけではなぜ不都合かというと、プロレイバー労働法学が施設管理権を物的管理権に限定して定義づけたためである。つまり、元来「施設管理権」とは法律用語ではなく、昭和28・9年頃使用者側から主張された政策概念としたうえ、所有権・占有権の一つの機能として位置づけ、次のように物的管理権に限定して承認するという学説が広く流布されたためである。(西谷敏「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4), 1980 )
「本来それは、使用者が企業施設に対する所有権に基づいて当該施設を支配し、それの維持、保全のための必要な措置をする等の管理を行う権能(物的管理権)をさすものと解せられ‥‥」片岡曻『法から見た労使関係のルール』労働法学出版1962 109頁
 そのように、施設管理権の物権的性格を強調しそれゆえ「物的管理権である以上、施設管理権は組合活動に対して直接向けられるべきものではない」とされる(峯村光郎『経営秩序と団結活動』総合労働研究所1969 161頁、本多淳亮『業務命令施設管理権と組合活動』労働法学出版1964 21頁
 プロレイバー学説に従うと、施設管理権は人的管理権を含まない物的管理権であるため、使用利用自体の規制とそれに違反する者に対する制裁を行う権利とはならず、組合活動の経過生じた物的損害に対し(たとえば窓ガラスを割るなど)対象を毀損するなど損害を生じたときに事後的な原状回復ないし填補を求める権利に矮小化されるのである。
 これは、休憩時間における示威運動や闘争戦術を容易にし組合に利する学説であるが、この悪質なプロレイバー学説に対抗するための判例法理として「企業秩序を維持するための規律に従うべき義務」が案出されたものとみてもよい。

就業規則の形式的違反と実質的違反

 一般にこの判決は、被用者の企業施設の政治活動、あるいは組合活動に対して厳しく規制する判例と評価されることが多いが、私はそう思わない。それはこの判決の「形式的にこれに違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのを相当とする」という部分を引用して、休憩時間もしくは就業時間外におけるビラ配布を理由とする懲戒処分を無効とした判例が少なからずあるからである(明治乳業福岡工場事件 最高裁第三小法廷昭和58・11・1『労働判例』417号、倉田学園事件・最高裁第三小法廷平成6年12・20民集48巻8号1496頁)。
 つまり、ビラ配布の成否を論ずるに当たって、当該ビラ配布の態様は問題視されるものでなかったことを認めながら、その目的・内容が規律に反し秩序を乱すおそれのあるものであったことが実質的な就業規則違反となるというのが最高裁の見解である(菊池高志上掲論文)
 つまりこの趣旨からするとビラ配りは態様・目的・内容からみて形式的にではなく実質的な規則違反がないと、懲戒処分が無効となる可能性があるのである。
 

2012/05/13

「平清盛」第19話5/13放映分感想

 第19話は頼長の内覧の再宣下拒否、呪詛の噂、大蔵合戦、美福門院に忠誠を誓う祭文、法皇の臨終に駆けつけた上皇の面会拒否といった展開だったが、平治の乱の首謀者武蔵守藤原信頼が初めて登場した。
 平忠盛が皇后藤原得子の皇后宮亮、久安5年の院号宣下の後は内蔵頭兼播磨守の平忠盛が美福門院の別当も兼ねていた。筆頭殿上人で年預とされていたから、美福門院の有力な近臣である。
 したがって美福門院を盟主として忠誠を誓う祭文は当然のように思えるが、池禅尼が重仁親王の乳母であった(ドラマではなぜかスルー)ことから崇徳上皇とも縁があったため、平清盛は中立的な態度をはじめとっていたとされる。それが池禅尼の決断で、美福門院を盟主とする朝廷方に遅れて参戦することになったとふつういわれる。
 また平忠正は宇治に館があり、頼長の家人だったとされるが、ドラマの展開をみてると平忠正がなぜ、上皇・頼長方に参戦するのかよくわからないのである。
 大蔵合戦とは源義平が叔父源義賢らを殺害した事件だが、何のお咎めもなかった事情について説明がなかった。元木泰雄『河内源氏』中公新書によると武蔵守藤原信頼が黙認したのである。藤原信頼と源義朝との提携はこの時から始まっていたという。
 保元の乱の朝廷方でもっとも活躍したのが義朝であるが、美福門院だけでなく信頼を通じて後白河とも政治的提携があったから当然のことだった。
 

「平清盛」第18話5/6放映分感想(続)

 五月六日放映の『平清盛』が近衛崩後の皇位継承問題を扱っていたが、それ自体重要な事柄なので私の考えも述べておく。

 保元の乱の朝廷方の盟主となり、大きな政治的な影響力をふるった美福門院藤原得子について、保立道久がゴッドマザーと言っているが、それは近衛実母というだけでなく、崇徳皇子重仁親王(実母は兵衛佐局)の養母であり、後白河の践祚の後、皇太子に立てられた守仁親王(のちの二条、実母は贈皇太后藤原懿子)の養母であり、東宮妃よし子内親王(のち中宮、女院宣下高松院)の実母であったということである。
 保元の乱の後も王家の女性尊長として、皇太子と東宮妃双方の母后として宮廷で求心力を維持したためである。

 『古事談』『山塊記』『愚管抄』などで近衛崩後(久寿七年1155)の皇位継承候補に浮上したとされているのは、4名。

 孫王 (雅仁親王の息童・仁和寺の信法法親王の附弟)
 雅仁親王
 重仁親王
 暲子内親王(鳥羽皇女・実母美福門院)

 もっとも早く皇位継承候補に浮上したのは孫王(雅仁親王の息童、後白河践祚後に親王宣下、守仁と命名)である。この王子は生母藤原懿子が生後間もなく薨ぜられたため、鳥羽法皇が引き取り、美福門院が養育した。九歳で仁和寺に入寺させられていたが、仏典を読みこなし聡明だった。仁平三年(1153)、関白忠通が、近衛が病気のため孫王への譲位を鳥羽法皇に奏請したのである。しかし法皇はこれを却下した。この時はまだ病気が重篤であると認識していなかったか、謀略とみなしたためとされている。
 しかし『山塊記』によれば法皇は美福門院の意を汲んで孫王を皇位に即けたいと思ったが、現存の父を差し置いて子が即位するという例がなかったため、まず雅仁親王を践祚させ、相次いで孫王を皇位に即けることにしたとされている。これがたぶん真相に近いものと一般的には考えられている。というのは、久寿二年近衛崩後の八月に法皇の本所というべき鳥羽南殿・北殿を含む所領を美福門院に譲与し、孫王の立太子も美福門院が掌ったことから、女院は重い地位にあった。また王者議定で法皇の御前に召され相談に預かったのは側近の元右大臣源雅定と権大納言藤原公教であり、いずれも美福門院の近臣である(関白忠通とは消息を遣わして意見を聴取)、源雅定(前年に出家、ドラマでは関白の向かい側にいた僧体の人物)は、永治元年に藤原得子の皇后宮大夫に任ぜられている。また藤原公教は鳥羽院執事別当で、美福門院の別当職も兼ねていた。両者とも女院の意向に反する意見を持っていたとは考えにくいのである。実際、保元三年(1158)八月に突然、美福門院と信西入道の談合で後白河譲位の議が決定されたので、後白河はあくまでも守仁親王(二条)への中継ぎという位置づけである。

 『愚管抄』によれば法皇は雅仁親王が遊芸にばかり熱を入れ「即位ノ器量ニハアラズ」と評価していた。つまり望まれて即位したわけではない。
 帝王の器量にあらずという評価は基本的に当たっている。今日では、後白河の偏った性格(抜群の記憶力の良さ、特定の分野への強いこだわり、蒐集癖、冷酷な一面)からみてアスペルガー症候群という説があり(遠藤基郎『後白河上皇―中世を招いた奇妙な「暗主」』 (日本史リブレット人) 山川)、君主としての評価が難しい。
 にもかかわらず後白河が即位したのは、一般的には鳥羽院近臣になっていた信西入道の政治力とされることが多いが、『玉葉』『愚管抄』『古事談』によると、関白忠通による法皇の皇位継承についての諮問の奉答が雅仁親王であったと伝えている。つまり関白忠通は、孫王から雅仁親王に皇位継承の推薦者を変えたことになる。これについては、後白河即位の恩を摂関家の進言にしようとする作為とみなす橋本義彦の見解もあるが、私は『古事談』の雅仁親王は「后腹」なので即位を進言したという記事を重くみたい。
 もちろん白河や鳥羽の生母が女御であったように、生母が皇后であることは皇位継承の絶対条件ではない。しかしわが国では皇后は天子の嫡妻という本来の性格より、立后が皇太子を引き出す政治行為としての性格が強かった。少なくとも平安時代においては、母后が政治的に敗者となったケース(たとえば正子内親王や藤原定子所生の皇子)を別として、后腹の皇子が有力な皇位継承候補と認識されていたはずである。
 要するに法皇は後白河即位に消極的だったが、皇位継承の暗黙のルールを無視できなかったのでそういう結果になったと考える。
 重仁親王の即位が嫡々相承の正理から有力な候補だったとする説もあるが、后腹ではない。もっとも皇后藤原得子が養母であったから、三品に叙され后腹に准じた厚遇であったわけだが、肝心の養母である美福門院がノーといえば、それまでの存在であったいえるのではないか。
 暲子内親王(鳥羽皇女・実母美福門院)が候補に浮上したというのは、重仁親王への皇位継承を阻止して崇徳を復権させない、あくまでも天下の政柄は鳥羽法皇、美福門院で握るためのプランだろうが、非婚女帝では問題の先送りになるだけだし、おっとりした性格であったことから、崇徳上皇が挙兵するような危機に立ち向かえるか不安もあったので、このプランは消えたものと勝手に推測する。

 参考 橋本義彦『平安の宮廷と貴族』「美福門院藤原得子」吉川弘文館1996 河内祥輔『保元の乱・平治の乱』吉川弘文館2002
 

 

2012/05/11

本日はこの忙しい五月に突然係長に休暇を命じた所長と罵り合い

 本日午前10時頃所長が突然、収納係長に月曜日まで休めと言い出し、くどいほど繰り返しただけでなく、強制的に月曜まで休んでもらうとの出勤停止を命じたのである。
 ほとんど定時で帰ってしまう係長なので、体調を顧慮したものとは考えられず、たんに有給休暇の消化の強要である。5月と6月に2日ずつ休めといっていたから、同じことは新人教育でもやっていたので。

 私が割って入ってこれは就労妨害だから、就労の権利を侵害する行為と指摘したところ、私を名指しで休んでもらいたいといいかえしたから罵り合いになった。

 これは前例があり、昨年6月に係長級に休むようにさかんに言っていた。私に対しても夏休みを強要しようししたので、それは自分が判断することだといっても、強要しようとするので、この時、おれに喧嘩をふっかけるのかとか怒りだして険悪になった、
夏休みの奨励は都労連との合意で組合の求めでやっていることで、実は非常に迷惑なのである。休みが多いほど、人の仕事をフォローしなければまらないので、コスト吸収が大きくなるだけなのである。ただでさえ次世代育成ブラン、有給生理休暇、その他もろもろの休みがあり、休みを奨励すればするほど、そのコストを私のようなラインの末端が吸収しなければならないから、ますます休めなくなるという構造である。
 ワークライフバランスが国策だとして、こういうばかげたことがまかりおっているのはおかしい。
 休みの強制は出勤停止と類似しており就労妨害になるのでやめさせるよう局長に請求する予定。

 水道局では引っ越しシーズンの三月から五月は繁忙期と認識している。したがって私が5月に日曜出勤したことはあっても休むということはありえないし記憶がない。
ふつう5月は大型連休で休んだ分は必ず残業しないとおっつかないのが普通なのである。
それなのに休めなどいうのは神経を逆なでするものでする。
もちろん七~八年前にコールセンター(監理団体の株式会社PUCの委託業務)ができたので、営業所に直接かかってくる電話はかなり減っているはずである。しかしコールセンターのオペレーターが処理できない事案は、営業所に持ちこまれるし、新規の口座振替申し込み等の処理なども増えるからである。そのうえ担当替えもあるので、後任に教えたり、逆に新しい仕事だとノウハウを覚える必要がある。庶務系の仕事もやったことがあるが少なくとも五月までは忙しいという認識である。特に昨年は、病気で休む人がいたり、大震災の支援業務に行きたいという人がいて、その分の仕事もやったりけっこう大変だった。
 未納料金の催促をするセクション(収納係)は基本的に波がない仕事量だが、祝日の多い五月はその分日程がタイトになるので、
忙しくなる 今年は五月五日が土曜日で旗日が一日少ないだけでも助かったという認識である。
 営業所は月曜の来客や電話が多いのは昔からそうで、月曜と金曜に休むことはありえない。もっとも私は心臓を手術したのち定期的に診察を受けているので、金曜日の午前中休むようになったが、それは担当医師の診察側の都合で仕方がなかったたためである。とにかく私は月曜に休むということは絶対にない。せいぜい冠動脈バイパス手術のときくらいだ。
 また連休の谷間に休むということもありえない。連休の谷間に休まれるのは迷惑だということをよく知っているからである。五月一日は全労協系の日比谷メーデーの二割動員があり、月初め、三連休明けだから、人がすくない分大変なのである。
 ところが、所長は5月1日に休み、2日は飲み会が設定されていたのででてきたが、これも不快に思った。
 私語の多い所長だが、4月の人事異動で(株)PUCの出向を狙ってたようだが、あいつにとられたとか言って悔しがってた。天下りのための人脈を作るのに都合の良いポストらしい。局に戻ると本局の有力ポストに戻れるらしい。7月の異動はろくなポストが残ってないからな、とかいってあいつに文句いったから嫌われてるのかなとか言っていた。
 私はラインの末端だが、ランク・アンド・ファイルは年度末で忙しく働いてるのに、露骨に天下りに都合のようい利権ポストねらいとかいいたいほうだいなのは不快に思った。
 360度評価もないし、管理職はものすごく甘やかされている。

2012/05/10

火葬場の事例

 ブログを書くために上島亨『日本中世社会の形成と王権』名古屋大学出版会2010年という本を買ったのだが、「第四章〈王〉の死と葬送」に、鳥羽法皇など平安後期の葬送について比較的詳しく書かれている。火葬の例として一条、後一条、白河、堀河のケースに言及されている
 山作所(火葬場)の詳しいものとして『吉事略儀』の後一条天皇の長元九年(1036)五月一九日の事例である。それによると、場所は神楽岡(平安京の東北、吉田山)東辺、周囲は切懸を立てた方三六丈・高六尺の荒垣で巡らされ、切懸の上部に白布をめぐらす。南面に鳥居が建てられ、荒垣の内側にも切懸を立てた内垣が設けられ南面に鳥居が建てられた。内外の垣内に白砂が敷かれて清浄な空間とされていた。荒垣鳥居に西脇に「葬場殿」内垣の中央に「貴作所」が建てられる。その中央にある荼毘所は「貴所屋」と呼ばれ、清く貴い空間とされていた。これを火葬当日に造るのである。荼毘の際、念仏が唱えられ、火葬後は「貴所」の板敷壁等を破却し、酒で火を消す。さらに僧が真言を唱えながら土砂をまき、そののち権大納言藤原能信、源師房以下数名が御骨を拾った。
 棺を乗せた御輿が山作所に向かう時は、関白藤原頼通以下公卿が付き添うが、御骨を拾うのはゆかりのある人々、比較的小人数に限られる(白河法皇のケースは8名)のが通例のようだ。
 「天皇の遺骸は神聖なものとして荼毘にふされる」と著者は述べている。
 火葬を検討しているとのことだが、中世以降の例は知らないが、この山作所をどこに造ろうとしているのだろうか、酒をかけて火を消すことができるのか。御骨を拾うのはどのような人々が呼ばれるのかとの感想を持った。

2012/05/09

ノースカロライナ州憲法修正で同姓婚禁止

 「男女間の結婚のみが、この州で有効な、または承認される唯一のドメスティックな法的結合である」として同姓婚もシビルユニオンも禁止する州憲法修正である。すでに29の州で同姓婚は禁止されているが、南部ではノースカロライナだけが残っていた。憲法修正の賛成票は非公式な集計で61%と伝えられている。http://www.cbsnews.com/8301-503544_162-57430515-503544/north-carolina-passes-amendment-banning-same-sex-marriage/?tag=pop;stories http://www.newsobserver.com/2012/05/08/2052643/marriage-amendment-latest-results.html
 http://www2.journalnow.com/news/2012/may/08/16/marriage-amendment-supporters-hold-upper-hand-earl-ar-2258472/
 アメリカ人の50%が同姓婚擁護とされているから、反対派61%の得票は社会的に保守的な州であると理解できる。

条文の訳はこのブログからの引用http://d.hatena.ne.jp/miyakichi/20120509/p1

この記事は5/17に修正しました。

2012/05/08

「合葬」ご遠慮報道の感想

 

 宮内庁が葬送・陵所のあり方を見直すとの報道があったが、「合葬」も選択肢として検討というのは疑問に思っていたところ、本日の産経新聞に風岡次長の7日の定例会見で「合葬」を皇后さまがご遠慮の意向と報道された。ただしなお選択肢として残して検討するのだという。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120507-00000558-san-soci
 疑問というのは、先例との違和感である。新聞によると天皇と皇后の合葬は宣化と橘皇女、天武と持統の二例だけだという。15年くらい前に飛鳥に観光目的で行ったことがあり、自転車で回ったが、檜隈大内陵(天武持統合葬陵)も見た。
 しかし、橘皇女は仁賢皇女、持統は呂后に比擬される史上最強の皇后で、天智皇女である。なんで、持統女帝の例を現代において模倣しなければならないのか理解できないわけだ。ご遠慮も無理もないと思った。
 もっとも、例えば仁明女御藤原貞子(右大臣藤原三守女)のように、仁明天皇と同じ深草山稜の兆域内に葬られたという美しいエピソードもある。
文徳実録仁寿元年二月丁卯条によると「正三位藤原朝臣貞子、出家して尼となる。貞子は先皇の女御なり、風姿魁麗にして、言必ず典礼なり。宮掖の内、その徳行を仰ぎ、先皇これを重んず。寵数は殊に絶える。内に愛あるといえとせも、必ず外に敬を加う。先皇崩じて後,哀慕追恋し、飲食肯わず。形容毀削し、臥頭の下、毎旦、涕泣の処あり。左右これを見、悲感に堪えず、ついに先皇のために、誓いて大乗道に入る。戒行薫修し、遺類あることなし。道俗これを称す」 
 藤原貞子は、貴人の女性の出家の初例と考えられるが、尋常でない悲しみかたであり、位階最上位の女御で、寵愛されたこともあって同じ兆域内に葬られたということだが、合葬ではない。
 今放映されてる大河ドラマ『平清盛』に登場する鳥羽院と美福門院のケースだが、鳥羽院は、鳥羽東殿に塔二基を建て、一基は法皇納骨の料、もう一基は女院の料と定めていた。法皇の遺命により美福門院は鳥羽東殿を陵所と定められていたのである。
 ところが美福門院は永暦元年四四歳で崩御されるが、遺体は火葬に付され遺命により高野山に埋納された。これは法皇の遺命に反するものである。日本の歴史の一転機となった保元の乱の勝者であり、大きな影響力をふるった女院であるが、なぜ遺命に背いたかは余人の測り知れないことである。(橋本義彦『平安の宮廷と貴族』「美福門院藤原得子」吉川弘文館平成八年)
 いずれにせよ、合葬は千三百年以上なかったことであり、慎重な検討がのぞましい。

2012/05/06

「平清盛」第18話5/6放映分感想

 このドラマは角田文衛の崇徳=白河胤子説をとっている。『待賢門院璋子の生涯』によれば生理日まで詳細に検討したうえでの結論なので、宮廷史的にはそのほうが面白い。藤原忠実の『殿暦』が入内前の、藤原璋子と備後守藤原季通の密通を暴いており、「乱行の人」と罵っていることから、少なくとも処女ではなかった、摂関家では受け入れらない性的倫理観を持った女性であったと考えられるためである。
 ただ『古事談』の「叔父子」説は、橋下義彦、美川圭、元木康雄、河内祥輔といった歴史家が否定的な見解を述べており、美川圭の『院政』中公新書2006年によると、それは美福門院-忠通サイドが重仁親王への皇位継承を阻止するため流布させた噂にすぎないとする。確定的なことはいえないのである。
しかしいずれにせよ、鳥羽法皇と崇徳上皇の確執はドラマのように「叔父子」が決定的原因であったとは思えない。
 崇徳天皇は長承三年(当時16歳)、母后待賢門院の名誉を傷つけるものとして激怒し、藤原得子の一族眷属に厳しい処分を下している、得子の兄長輔は昇殿を停止され、備後守、伯耆守だった2人の兄も国務を停止させられ、一族眷属が財産を没収されただけでなく、得子と鳥羽上皇を結びつけたとされている鳥羽院近臣の実力者藤原顕頼も屋敷を召し上げられた。この毅然とした政治姿勢は、鳥羽上皇だけでなく院近臣にも警戒感をもたれる結果となったと考えられる。院政といっても公式的な権力の頂点は天皇だから、こういうこともあるのである。
 得子の善勝寺流藤原氏は諸大夫の範疇であるから、正式に上皇の宮に入侍したわけでく女御宣旨を蒙ることのできる家格ではないから、この時点では公式の配偶者とは認められていないにもかかわらず勝手に上皇の寵愛を得たためである。
 しかし、ドラマではこのエピソードをスルーしてしまったので、険悪になったのは「叔父子」の一点を原因と説明するしかなくなっている。
 悪僧の強訴に対しての法皇の閲兵もスルーだったが、天皇や法皇が毅然たる政治姿勢を示した史実は無視されている。これは根拠もとぼしいのに、さかんに流布されている昔から天皇不執政、昔から象徴天皇だった説に反してしまうので、NHKが教育的配慮であえてスルーしたのかもしれない。
 第18話は、近衛崩御と皇位継承者を決定する「王者の議定」だった。祈祷の場面はそれなりに臨場感があり絵的には悪くなかった。平氏の会合でどちらにつくか話し合うというシーンがあったが意味不明であり、池禅尼が重仁親王の乳母であったエピソードもスルーのようだ。
 史実の「王者の議定」では、ごく少数の人物だけが法皇の相談に預かったとみられている。関白藤原忠通、法皇の側近源雅定(元右大臣)、権大納言藤原公教だけ(河内祥輔『保元の乱・平治の乱』20頁)。ドラマのように会議を開いたわけではない。またドラマのように法皇が崇徳派に配慮するようなプランははじめからなかったと思う。

カード 休憩時間・無許可集会 全逓新宿郵便局事件

全逓新宿郵便局事件 東京地裁昭47・6・10判決『労働法律旬報』815号
全逓新宿郵便局事件 東京高裁昭55・4・30判決『労働判例』340

http://hanrei.biz/h71540
全逓新宿郵便局事件 最高裁第三小法廷昭和58年12月20日『労働判例』421号 『労働法律旬報』1087・88号
http://hdl.handle.net/2298/14070

  公労委救済申立事案。全逓と郵政労〔反全逓・労使協調の右派組合、現在は旧全逓の日本郵政公社労働組合と統合し日本郵政グループ労働組合となっている〕の対立をめぐり局長や職制の言動が不当労働行為に当たるか等についても争われているが、ここでは休憩時間中等の休憩室、年賀区分室(予備室)での無許可職場集会に対し、当局側が庁舎管理権にもとづく集会解散通告あるいは発言メモ・集会監視が支配介入に当たるか争われた事案にしぼって取り上げる。
      
全逓新宿支部では、昭和四〇年春闘頃から批判派が職場を明るくすると標榜して「新生会」を形成し、そのほとんどのメンバーが同年六月一日全逓を脱退したうえ、郵政労に加入し、新宿支部を結成した。そうした中、全逓新宿支部は、五月一〇日の昼休み、集配課休憩室で組合員70~80名を集めて、また六月七日午後五時過ぎ、同月一一日昼休み、四階年賀区分室付近で、職場集会を開催したが、右は無許可であったため、管理職らがマイクで解散を求め、あるいは集会の様子をメモする等したため、全逓新宿支部の職場集会を妨害・監視した等の当局の一連の行為が労組法7条3号の不当労働行為を構成するものとして公労委に救済申立を行った。
  公労委は不当労働行為の成立を否認した救済命令を発した(昭和42年2月13日『労働法律旬報』815号)。全逓はこれを不満として公労委・国を相手どり救済命令の取り消し求めたところ、第一審判決(東京地裁昭和47年6月10日『労働法律旬報』815号)は四七年六月、全逓の主張をほぼ認め、無許可集会の解散命令も不当労働行為に該当するとし、公労委の棄却命令を取り消した。しかし控訴審判決(東京高裁昭和55年4月30日)『労働判例』340号では、公労委・国の敗訴部分を全面的に取り消す判決を下した。国労札幌地本事件最高裁判決を援用し、休憩室での職場集会は正当な組合活動にあたらず、職制が解散を命じこれをメモするのは正当な職務と認めた。全逓の上告による最高裁第三小法廷昭和58年12月20日判決(『労働判例』421号)は、原判決を認容し、全逓の主張を斥けた。
昭和47年の第一審は庁舎管理権の性格を物的管理権にすぎないとするプロレイバー学説の影響を明らかに受けたもので、受忍義務説の立場に立っている。法益調整論により、無許可集会の解散通告を不当労働行為に該当するとしたのである。到底容認しがたいワースト判決と評価できるが、その後、施設管理権に関する判例法理が進展し、昭和54年の国労札幌地本事件判決によってプロレイバー学説が明確に排除された。昭和55年控訴審判決と、昭和58年の最高裁判決は指導判例である昭和54年の国労札幌地本事件最高裁判決の判例法理に沿い、無許可職場集会は正当な組合活動に当たらないから、当局による解散通告(命令)や監視は不当労働行為に当たらないと判決した。
 国労札幌地本事件判決はビラ貼り事案であったが、集会事案においてもその意義を確認できるものであり、労務提供義務のない休憩時間の無許可集会の解散通告を明確に不当労働行為に該たらないとした点でも重要な先例である。


  ●第一審  全逓新宿郵便局事件 東京地裁昭47・6・10判決『労働法律旬報』815号

判旨-不当労働行為に該当する
〔組合寄りの受忍義務説を展開〕

「無許可集会によって庁舎の一部を使用することが、庁舎管理権に抵触するがために、郵便局長が庁舎管理権に基づいて、無許可集会の解散命令を命ずることができることは、前述したとおりである。庁舎管理権とは、庁舎が国有の場合は、本来財産権に胚胎する機能であって、公物たる建物に損害または危害が及ぼす恐れのある場合に、その損害または危険を除去または予防するために相当な措置を講ずることを第一の内容とし、これとともに公物設置の目的に対する障害の防止と除去を内容とするものである。一方労働組合の集会は、組合活動としての法の保障するところである。わが国のように企業内組合の主流を占めるところにおいては、組合の集会は、多く使用者の施設を使用せざるを得ないことになる。ここに庁舎管理権と団結権(組合活動)との相克を生ずる。いかなる権利といえども、絶対的無制約なものはなく、他の権利による制約を受忍し、これと両立すべき相対性を内包する。すなわち、両者の調和の必要性が生じるのである。企業内組合の組合活動が庁舎使用を余儀なくされる場合も多いことを考慮すれば、施設に損害または危険を生じる恐れや施設設置の目的に障害を及ぼす恐れのない限り、正当な組合活動に対する庁舎管理権の発動は、できるたけ抑制的であることが望ましいことになる。‥‥本件においても、組合が使用した四階年賀区分室附近は普段郵便業務に使用している場所でもないし、また、これを組合の集会に使用することによって、新宿郵便局の業務上特別の支障や庁舎に損害を及ぼす危険等もなかったのである。そうすると、同局長が組合または集会の責任者に対して使用禁止を通告することはともかく、集会の運営そのものを妨害するような挙に出ることは、庁舎管理権の目的を逸脱したものと解さざるを得ない。‥‥殊に、労働組合の集会は、個々の労働者の意思を組合の運営に民主的に反映するための最良の手段である。そのため、集会においては、組合員の自発的意思決定と自由な発言が保障されなければならない。‥‥職制が組合集会を監視することは、組合の構成員としての労働者の自主的な意思決定と自由な発言を阻害し、組合の運営に影響を及ぼすことになるから、組合運営の支配介入となるのである‥‥休憩室は施設、その施設設置の目的に徹し、本来職員の自由使用に委ねられている所である。それを利用する職員が組合員だからといって、これを異別に取扱うべき理由はない。そして、職員が休憩室を利用する態様は、それが施設に損傷を及ぼしたり、または排他的であって他の職員の自由使用をことさら妨げたりしない限り、使用者によって制約されるべきものではないのである。その使用が組合の集会であることと、例えば娯楽のための集会であることによって許容を区別すべき理由はない。現に新宿郵便局の場合には、昭和三九年一一月ごろから組合は、休憩室を特段に使用許可を受けることなくして使用し、当局もこれについて別段の禁止措置を講じなかったのである。これは、集会が休憩室本来の使用目的に背馳する態様のものではなかったからと思われる。したがって、組合の排他的使用によって、非組合員たる他の多くの職員の休憩室使用が顕著に妨害されるとか、その集会に職員以外の者を導入するとか等、休憩室使用目的の障害自由が発生しない限り、庁舎管理権の発動としては、その集会の解散を命ずることは許されないのである」と判示。

●控訴審 全逓新宿郵便局事件 東京高裁昭和55年4月30日『労働判例』340号

   
判旨-不当労働行為に該当しない。

 ‥‥昭和四〇年五月一〇日午後〇時三五分ごろから、集配課休憩室において、休憩時間中の被控訴人組合員約七、八十名が職場集会を開いたこと、この集会は、休憩室利用について郵便局管理者の許可を得ていなかつたので、同集会場にH次長、A庶務課長、W集配課長らが赴き、再三携帯マイク又は大声で解散するよう通告したこと、この集会は午後一時ごろまで続行されたことは、当事者間に争いがない。‥‥
 1 右集会において携帯マイクを使つて解散するよう通告したのはH次長であり、それは、A・W両課長がこの集会は許可していないから解散するようにと命じたのに対し、「休憩室で休憩中の者が何をしようと自由ではないか。」などと言つて取り囲み、集会を中断して集団抗議を行つていたからであること。
 2 郵政省就業規則及びその運用通達は、国有財産の使用に関する取扱いにつき、「組合から組合事務室以外の庁舎の一時的な使用を申し出たときは、庁舎使用許可願を提出させ、業務に支障のない限り、必要最小限度において認めてさしつかえないこと。」と定めており、新宿郵便局においても、休憩室の使用を含めて、このとおり行われてきたところ、昭和三九年一二月ごろから、被控訴人新宿支部は、休憩室については自由に使つてよい室であるとして、庁舎使用許可願を提出しないで集会するようになり、右五月一〇日の集会も同様許可願の提出がなかつたものであるが、同支部のかかる方針については、許可願の提出を命ずる当局との間に、しばしば対立が見られたこと。等の事実を認めることができる。‥‥ 思うに、企業施設は、本来企業活動を行うために管理運営されるべきものであり、この点において、企業主体が国のような行政主体である場合と、また私人である場合とて異なるものではない。そして、企業主体は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設の使用については許可を受けなければならない旨を一般的に定め、又は具体的に指示命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示命令を発し、又は所定の手続に従い制裁として懲戒処分を行うことができるものと解するのが相当である。 ところで、企業に雇用されている労働者は、企業の所有し管理する物的施設の利用をあらかじめ許容されている場合が少なくない。しかしながら、この許容が、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において(休憩室、食堂等にあつては、休養をし食事をする等その設置の趣旨に従つた範囲において)、かつ、定められた企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然であり、したがつて、当該労働者に対し右の範囲を超え又は右と異なる態様においてそれを利用し得る権限を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に当該企業の物的施設を利用する権利を保障されていると解すべき理由は何ら存しないから、労働組合又はその組合員であるからといつて、使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限を持つているということはできない。もつとも、当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織されるいわゆる企業内組合の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とすることが極めて便宜であるのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定し得ないところではあるが、利用の必要性が大きいことの故に、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために当然に利用し得る権限を有し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を当然に受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない。したがつて、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理運営する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当たらない。 以上については、最高裁判所昭和五四年一〇月三〇日第三小法廷判決(裁判所時報七七七号一ページ)がほぼ同旨の判断を示すところであるが、本件においては、特に、被控訴人が休憩室を組合の職場集会のため使用するにつき、庁舎管理権者の許可を受けなければならないかどうかが争点となつている。そして、休憩室の使用については、右にいささか言及したところであるが、休憩室が職員の自由使用にゆだねられているといつても、それは、休憩時間における休養等その設置の趣旨に添う通常の休憩の態様において使用する場合に限られるものである。本件五月一〇日職場集会のように、明らかに他の目的をもつて集配課休憩室を使用することは、休養のための休憩室の自由使用とは著しくその態様を異にし、集会を行うこと自体休憩室設置の趣旨には到底添い難く、したがつて、一般の庁舎の目的外使用の場合と全く同様に、許可願を提出して承認を受けた上でなければ、該集会のために休憩室を使用することはできないものというほかはない。被控訴人は、休憩時間中に休憩室で交される親睦的な雑談でも時に多人数・長時間にわたることがあり、一方、職場集会といつても複数の職員の話合いにほかならないと主張するけれども、かかる事由をもつて右の判断を左右することはできない。また、本件の全証拠によつても、休憩室の使用につき郵政省と被控訴人との間に特段の合意が成立していたこと、及び許可願の提出がないことを理由に被控訴人新宿支部の本件集配課休憩室の使用を許さなかつたことが当局の権利濫用と目すべき特段の事情は、これを認めることができない。 このように見てくると、A庶務課長及びW集配課長が、本件五月一〇日職場集会の現場である集配課休憩室に赴き、この集会は許可していないから解散するようにと命じたことは、何ら被控訴人新宿支部の組合集会を不当に妨害したこととはなり得ない。そもそも右職場集会は正当な組合活動に当たらないものというべきであり、特に、携帯マイクによるH次長の解散通告があつた時には、集会を中断して右両課長を取り囲んで集団抗議をしていたのであるから、右解散通告が組合集会を不当に妨害したことにならないことはいうまでもない。したがつて、五月一〇日職場集会に対する解散通告は、不当労働行為を構成するものではない。

  六月七日・一一日の被控訴人新宿支部の各職場集会に対する監視について 昭和四〇年六月七日午後五時ごろから、四階年賀区分室付近において、被控訴人組合員約八〇名が職場集会を開いたが、この集会は、年賀区分室利用について郵便局管理者の許可を得ていなかつたので、午後五時一五分ごろ同集会場にA庶務課長及びY労務担当主事らが赴き解散するよう通告したけれども、この集会は午後五時四五分ごろまで続行されたこと、その際、A庶務課長らは、組合員が解散するか、勤務時間中の者がいないかを見極めるため同集会場にとどまつたこと、次いで、同月一一日正午ごろから、四階年賀区分室付近において、被控訴人組合員約一二〇名が組合掲示物撤去に対する抗議集会を開いたが、この集会は、年賀区分室利用について郵便局管理者の許可を得ていなかつたので、午後〇時二〇分ごろ同集会場にA庶務課長らが赴き解散するよう通告したけれども、この集会は午後〇時五五分ごろまで続行されたこと、その際、A庶務課長らは、組合員が解散するか、勤務時間中の者がいないかを見極めるため同集会場にとどまつたこと、以上の各事実は、当事者間に争いがない。 ‥‥
右各集会は、いずれも庁舎使用許可願の提出がなかつたものであり、また、右各集会現場においてA庶務課長とともに組合員が解散するかどうか等を見極めていたY労務担当主事は、集会の模様(開始・終了の時刻、解散命令を発したか・これに応じたか等)のメモを取つていたこと。

2 右各集会が開かれた四階年賀区分室付近という所は、会議室と呼ばれており、年賀郵便を区分するために年末年始にかけて使われるのが本来の目的であり、その時期を除いては、職員が平常執務する場所ではなく、いわば予備室的なものであること。等の事実を認めることができる。 被控訴人は、右のごとき年賀区分室付近は、組合集会のため使用するにつき許可願を提出する必要がないと主張するけれども、右六において休憩室の使用につき詳細に説示したところと同じ理由により、右主張は採用することができない。もつとも、年賀区分室付近は、右認定2のように年末年始以外は平常使われていないという点において、休憩室の場合といささか異なるところがあるけれども、これを組合集会のために使用することは、年賀区分室設置の本来の趣旨目的とは遠く隔るものであり、使用の態様も本来のそれと大いに異なるのであるから、結局においては、休憩室の場合と同様に、平常は使われていない年賀区分室付近といえども、許可願を提出して承認を受けた上でなければ、組合集会のためにこれを使用することはできないものというべきである。 そうすると、右のように許可願を提出しないで開いた四階年賀区分室付近における右各集会は、正当な組合活動に当たるものではなく、したがつて、A庶務課長らが各集会現場に赴き解散するよう通告するとともに、現場にとどまつて組合員が解散するかどうか等を見極めていたことは、組合集会を不当に妨害し監視したこととはなり得ない。また、右六において指摘したように、右解散通告の指示命令に従わないことは、懲戒事由にも該当するのであるから、これを現認したA庶務課長らは上司に報告する義務があり、したがつて、Y労務担当主事がその模様(開始・終了の時刻、解散命令を発したか・これに応じたか等)をメモに録取することは、正当な職務の遂行であり、何ら組合集会に対する不当な妨害・監視となるものでもない。 右のとおりであるから、本件六月七日・一一日の各職場集会におけるA庶務課長らの行為は、不当労働行為を構成するものではない

上告審 全逓新宿郵便局事件 最高裁第三小法廷昭和58年12月20日『労働判例』421号
   
 判旨-不当労働行為に該当しない

「 ‥‥労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有し管理する物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を管理利用する使用者の権利を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動に当たらず、使用者においてその中止、原状回復等必要な指示、命令を発することができると解すべきことは、当裁判所の判例とするところであり(最高裁五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁)、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。原審の適法に確定した事実関係の下においては昭和四〇年五月一〇日新宿郵便局集配課休憩室において、同年六月七日及び一一日同局四階年賀区分室付近において、それぞれ無許可で開かれた上告人組合新宿支部の職場集会に対し、同局次長らの行った解散命令等が、不当労働行為を構成しないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」(以下略)

http://oohara.mt.tama.hosei.ac.jp/rn/51/rn1981-544.html
(論評)
石橋洋「無許可職場集会の正当性 : 全逓新宿郵便局事件・最高裁第三小法廷判決(昭五八・一二・二〇)」『労働法律旬報』1087・88号 1984.1.25〔※ネット公開〕http://hdl.handle.net/2298/14070
9923 秋山泰雄「使用者の言論と不当労働行為-新宿郵便局事件・最高裁第三小法廷判決(昭五八・一二・二〇)」『労働法律旬報』1087・88号 1984.1.25
藤内和公「新宿郵便局事件(最判昭和58.12.20)」『日本労働法学会誌』 64 1984 

カード 休憩時間・アカハタ号外配布 日本ナショナル金銭登録機懲戒解雇事件東京地裁判決

9677日本ナショナル金銭登録機懲戒解雇事件 東京地裁昭和42・10・25判決『労働関係民事裁判例集』18巻5号1051頁 『判例時報』506号56頁、『判例タイムズ』213号147頁
 休憩時間中のアカハタ号外配布を理由とする全国金属労組日本ナショナル金銭登録機支部中央執行委員兼蒲田支部委員長に対する懲戒解雇が不当労働行為に当たらないとした事例であるが、控訴審で取り消された。なお類似した事案では明治乳業福岡工場事件 最高裁第三小法廷昭和58・11・1『労働判例』417号が休憩時間に食堂において『赤旗』号外等の配付について、工場内の秩序を乱すことのない特別の事情が認められる場合として就業規則違反とみなすことができないという判断を下しているが、この判決は、休憩時間における政治活動禁止の根拠を比較的長文で説示している点で関心を持つ。

 「‥‥本件のように特定政党の党勢拡張を計り、あるいは公職選挙に特定政党の候補者に投票させる目的のもとに宣伝を行う文書を配付する如き政治活動は、たとえ「労働組合の行為」として行われても‥‥「労働組合の正当な行為」に該るとは認めることができない‥‥‥‥労働基準法第三四条第三項が休憩時間を自由に利用させることを使用者に命じているのは、労働者に義務を課するなどしてその休憩を妨げることを禁じたものであって、労働者が休憩時間中いかなる行為をも自由にできることを保障したものではない。従って、労働者は休憩時間中法の禁ずる行為をすることができないのは勿論、使用者がその事業場の施設及び運営について有する管理権にもとづいて行なう合理的な禁止には従わなければならない。換言すれば使用者が、事業場内における労働者のある種の行動を休憩時間中も含めて一般的に禁止しても、それが労働者を完全に仕事から切り離して休息させ、労働による疲労の回復と労働の負担軽減をはかろうとする休憩制度本来の目的を害せず、また事業場管理権の濫用にわたらない合理的な制限である限り無効ということはできない。これを本件についてみると事業場内において過すことを通例とする多数労働者の休憩時間が一部労働者の政治活動によって妨げられることがあっては休憩制度本来の趣旨はかえって没却されることとなり、ひいては事業場内における生産能率の低下をまねくおそれもないではないから、使用者が事業場内における労働者の政治活動を休憩時間中にそれを含めて一般的に禁止しても事業場管理権の濫用ではなく、もとより休憩制度本来の趣旨をなんら害するものではない。従って、事業場内における労働者の政治活動禁止を規定した就業規則の前記条項は物理的管理権の侵害を伴うと否とに拘らず、休憩時間中の政治活動一般に適用があるべきものであって、これと相容れない見解に立脚する申請人の主張はこれを採用し難い。」

論評

正田 彬「休憩時間中の政治活動日本ナショナル金銭登録機事件東京地裁昭42・10・25判決」『季刊労働法』68号
沼田稲次郎「休憩時間中の政治活動--日本ナショナル金銭登録機事件判決(東京地裁42.10.25)を中心に(講演)」『労働法学研究会報 』749 1968

2012/05/05

カード 就業時刻前・ビラ配り 日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁判決

日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁昭43・2・9判決『労働判例』NO.172 『労働経済判例速報』805号

 就業時間前、従業員通用口前の通路及びタイムレコーダー設置の通路におけるビラ配布について会社側の無許可で配布してはならない旨の警告を無視し、ビラ配りを継続したことは、正当な組合活動と肯定できる特段の事由はなく、1~2日の出勤停止処分も適法であるとした。

 日本ナショナル金銭登録機は現在の日本NCRの前身で、キャッシュレジスター、計算機、電子計算機の製造・販売等を業務とする。藤山コンツェルンの1社として外相・自民党総務会長等を歴任した藤山愛一郎によって設立されたが、戦後はアメリカ・NCR社の子会社となった。なお、本件は大磯工場の事案であるが同工場は数年前に閉鎖している。
 事案は大筋で次のようなものである。
 全国金属労組日本ナショナル金銭登録機大磯支部(以下「支部」と略す)は昭和32年結成当時約650人を組織していたが39年10月に分裂し、翌年5月には約150人に減少していた。分裂と同時に第二組合日本NCR労組が結成され、判決当時は第二組合が多数派組合となっていた。また大磯工場は未組織の非組合員も多数存在していた。
 支部は分裂後、教宣活動の強化のため無許可で朝ビラ配布を開始していたが、会社側は直ちに中止を申し入れ、会社施設内における組合活動は就業時間内外を問わず凡て会社の許可制を建前とする方針を示した。なお就業規則に就業時間外敷地内でのビラ配布を明文で禁止する規定はない。
 支部は一連の不当労働事件の一つとして、地労委に申立てを行い、その後3年間朝ビラ配布が継続されていたところ、昭和43年2月に至って再度組合に対しビラ配布問題について協議を申し入れ、中止を要求し、協議が不調に終わると一方的にビラボックスを設置し、これを利用する配布方法に変更を要求し、これに従わなかった組合執行委員に対して懲戒処分(出勤停止1~2日)を行ったというもののである。
 問題となった配布の態様は、支部の日刊機関紙「おはようみなさん」(わら半紙の半切りないし4分の1切りのサイズ)を「晴天の日は大磯工場一号館A及びCブロックの各通用口前の幅約一・八メートルの通路上の両側に、それぞれ数名宛並び、雨天の日には同通用口のタイムレコーダーの設置してある通路上の両側または片側に数名宛並んで、毎朝就業時刻前出勤ししてくる従業員の前に」差し出すというものであり「大磯工場においては、従業員の相当多数が国鉄平塚駅から会社構内まで乗り入れるバスで通勤してくる関係上、従業員が比較的集団で右通用口を通行あることが多く、このため通用口の通路幅が狭いこともあった、従業員のほとんどがこれを受けとっていた。しかし前記のとおり組合は分裂し、別に日本NCR労働組合が結成されていたこともあり‥‥その場に放置、散乱することも多かった」というもの。
 神奈川地労委は、救済申立から7年たった、昭和47年11月24日判断を示したが、結論はあえて救済を要しないものというものであったため、組合側は施設管理権に基づく指示、命令は、企業施設の物的利用の仕方に関するものに限られ、それ以上に企業施設内における労働者の行為そのものについてまで発しうるものではないとして、ビラの配布行為を禁止できないなどとして、懲戒処分の無効を訴えたものである。

 
判決の主要部分

「‥‥およそ企業の有する施設管理権は、企業がその目的に合致するようその施設を管理する権限であって、単に物的管理のみを指称するものではないというべきであり‥‥その組合の活動が、使用者の建物、敷地等を利用して行う場合には、使用者の施設管理権に基づき使用者の意思にな反して活動することはできず、このことは特段の事情のない限り、休憩時間中あるいは就業時間外のものであっても変わることはないといわなければならない。
 ‥‥大磯工場においては、昭和四〇年四月一二日以前は同工場入口においてビラを手渡すという配付方法がとにれていなかつたこと。‥‥被告会社は配付につき被告会社の許可をとるよう再三申入れ警告をなしていること。配付場所の通路が狭いため従業員の出勤に混乱を生じることは皆無ではなく、特に雨天の日は混乱を生じる場合があったこと‥‥被告会社はビラボックスを設置して配付方法を考えていること等の事実が明らかであって、右事実下において、むあくまで配付方法についても自由であるという考えから自己の立場に固執し、被告会社の指示に従わなかった原告らの行為は、相当と言い難い。他に原告らり行為をとして肯定しうる特段の事由は認められない。‥‥
、。‥‥本件懲戒処分を課したことは被告会社の有する適法な懲戒権の範囲内にあるというべく、原告らの主張はいずれも理由がない。」

判例の論評
9615菊地高志「組合のビラ配布と施設管理権ー日本ナショナル金銭登録事件を中心としてー」日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁昭43・2・9判決『労働判例』NO.172

●評価-ベスト判決である。

 下級審判例であるが、「施設管理権は、企業がその目的に合致するようその施設を管理する権限であって、単に物的管理のみを指称するものではない」と人的管理を含むものと明言したことでプロレイバー受忍義務説を排除した嚆矢となる判決としての意義を評価する。
 プロレイバー受忍義務説の論理構成は「施設管理権」とは元来法律用語ではなく、昭和28・9年頃使用者側から主張された政策概念としたうえ、所有権・占有権の一つの機能として位置づけ、次のように物的管理権に限定して承認するというものである。(西谷敏「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4), 1980 )
「本来それは、使用者が企業施設に対する所有権に基づいて当該施設を支配し、それの維持、保全のための必要な措置をする等の管理を行う権能(物的管理権)をさすものと解せられ‥‥」片岡曻『法から見た労使関係のルール』労働法学出版1962 109頁
 そのように、施設管理権の物権的性格を強調しそれゆえ「物的管理権である以上、施設管理権は組合活動に対して直接向けられるべきものではない」とされる(峯村光郎『経営秩序と団結活動』総合労働研究所1969 161頁、本多淳亮『業務命令施設管理権と組合活動』労働法学出版1964 21頁
 プロレイバー学説に従うと、施設管理権は人的管理権を含まないから、狭義の業務命令権と抵触しない就業時間外、休憩時間は、示威運動であれ、騒々しい集会も、広範な組合活動が許容されることとなるが、詭弁のように思える。つまり、プロレイバー学説は、人が自らの所有権もしくは占有権の対象となる土地もしくは家屋内での他人の行動を、所有権もしくは占有権に基づいて規制できないというのも同然で、到底納得できるものではなく、本判決はそのような学説を排除し、常識的な判断をとったことに意義がある。

カード 休憩時間・集会 米空軍立川基地出勤停止事件

休憩時間の集会を禁止する基地司令官の命令に反し、組合集会を開催した組合員の出勤停止処分を是認した例。

 米空軍立川基地出勤停止事件 東京高裁昭和40・4・27判決『労働関係民事裁判例集』16巻2号317頁は、昭和33年8~9月全駐留労組東京地区立川支部組合員が無許可で休憩時間中に基地内の屋外、食堂、休憩所において職場報告会等を開催し報告を行ったことが、基地司令官の駐留軍務労務者に対する休憩時間を含む基地内滞在時間中の、基地内における集会、示威行動等を禁止する命令に反するとして8名の組合員に5日間の出勤停止処分とした事案で、組合側は出勤停止処分が休憩時間を自由に利用させる義務を規定した労働基準法34条3項、組合活動の故に不利益に差別的取扱いを禁止する労働組合法7条に反し無効であるなどと主張したが、控訴を棄却した

判決は「‥‥一般に使用者は労働基準法第三十四条第三項の規定により、労働者に対して休憩時間を自由に利用させる義務を負うものであるが、使用者がその事業施設における管理権を有する以上、右管理権の行使として施設内における労働者の休憩時間中の行動を規制しても、それが労働者を完全に仕事から切り離して休息せしめ、労働による疲労の回復と労働の負担軽減を図ろうとする休憩制度本来の目的を害しないかぎり、また管理権の濫用とならないかぎり、これを違法ということはできない。‥‥‥また本件命令は、一般に、駐留軍労務者の前記集団的行動を禁止したものであって、それが組合活動としての行動であると否とを問わないのであるから、労働者を組合活動の故に不利益に差別的取扱いをすることを禁止した、労働組合法第七条‥‥に違反するものではない‥‥」と説示した。

なお、口頭、翻訳文による掲示あるいは配布されていた日本人労務者に対する命令の内容は以下のとおりである。
「労働者の大会、示威運動、祝典、政治的又は一般的な会議又は集合は、正式あるいは非公式の招集、集合のいかんにかかわらず、日米行政協定第三項に従って司令官の管理下にある施設内においては労働者の昼食時間及び休憩時間を含む日常時間又は基地内にある間許可されない。‥‥『アメリカ合衆国はその組織、使用、活動、防衛又は統制のため必要とする施設及び地域内における権限、権力及び権威を有する。』」
 

2012/05/04

入手資料整理71

9651永井敏雄(法務省刑事局付検事)「庁舎管理権と裁判所」『警察学論集』31巻9号 1978
9652宮橋一夫(警察大学教授)「いわゆるリボン闘争の違法性」『警察学論集』36巻5号1983
9653鎌原俊二(警察庁警備課長補佐)「労働組合活動と施設管理権」『警察学論集』36巻8号 1983
9654山口浩一郎(上智大教授)「組合活動としてのビラ貼りと施設管理権-国鉄札幌駅事件を題材として」受忍義務説を批判する違法性阻却論者。
9655阿久澤亀夫(慶大教授)「ロックアウト論序説」『警察学論集』31巻9号
9656茂田忠良(警察庁警備課課長補佐)内田淳一(警察庁警備課)「昭和郵便局掲示板撤去事件に対する昭和57年10月7日最高裁判決について--庁舎管理権をめぐる問題」『警察学論集』36巻1号 1983
「本判決は行政財産たる掲示板の使用関係につき、国有財産法18条3項の目的外使用であることを否定し、庁舎管理権に基づく掲示物の使用許可によって事実上使用を許可されたものであることを明らかにしたうえ、その許可の性質は講学上の「許可」、すなわち一般的禁止の解除であって、これにより私法上のみならず公法上においてもなんら権利を設定、付与させるものではないことを明言したことに意義があり、注目される」
とまとめている。判決は「庁舎管理者は、庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは、右許可を撤回することができる」とした。
9658のように、仮に掲示板が国有財産法の目的外使用であったとしても、それは民法上の使用許可で契約関係を生じるものであるから、被許可者に何ら使用の権利を生じさせるものではない説く見解もある。しかし判決は掲示板の使用関係はそのように議論のある目的外使用ですらないので、なんら組合に占用利用の権利性を設定、付与するものではないとしたもの。

9657田村和之(広島大学助教授)「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)六条の定める許可の性質(最判昭和57.10.7)」判例時報 (1088) 1983
9658槇重博「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達第七六号)六条に定める許可の性質(最判昭和57.10.7)『民商法雑誌』 89(1) 1983
9659村上敬一「郵政省庁舎管理規程(昭和40年11月20日公達第76号)6条に定める許可の性質(最判昭和57.10.7)」『法曹時報』39(6) 1987
9670名古道功「西ドイツ協約自治の限界論(一)」『民商法雑誌』 89(3) 1983
9671枡田 大知彦「ワイマール期初期の自由労働組合における組織再編成問題 : 産業別組合か職業別組合か」『立教経済学研究』 55(3) 2002http://ci.nii.ac.jp/naid/110000987134〔※ネット公開〕

英国のコモンローでは労働協約は営業(取引)制限そのものとされ違法なのであり、法外的な紳士協定にすぎないのである。しかし大陸においても、20世紀初期まで規範的効力は否定されていた。ドイツにおいては、ワイマール時代1918年11月15日に大企業と労働組合が締結した「中央労働共同体協定」(特に6条「すべての男女労働者の労働条件は、当該業種の関係に応じて、被用者の職業団体との集団協定によって決定されなければならない。これに関する交渉はすみやかに行い、直ちに締結のはこびに至らなければならない)を受け、同年12月23日に公布された「労働協約、労働者委員会及び職場委員会並びに労働争議に関する命令」(労働協約令)によって労働協約が法認された。【引用9670】
これによってドイツは団体主義への移行が明確になった。労働協約の法認とは個人の取引の自由を犠牲にした社会主義的な政策である。同一労働同一賃金地域労働協約は賃金カルテルのようなもので自由企業体制とはいえない。
 今日のドイツの中央交渉による協約自治の原点となっている「中央労働共同体協定」とは、19世紀以来の労働組合の要求を概ね呑んだものであるが、共産主義革命を防ぐためには労働組合に経営権を認めさせたたうえで体制内化させたほうが無難という戦術的譲歩の結果にすぎない。
 それが『敗戦による混乱と革命への恐怖という[労使]両者に共通の基盤」の上に成り立っていたことは疑いない。【引用9671『』内は栗原良子「ドイツ革命における『ドイツ工業中央共同体』(二)完」『法学論叢』91巻4号1972】
 つまり、労働協約の法的承認は、欧州における戦間期に特有の政治的事情により、成立したものであって、それが歴史的必然であるわけではない。
9672「郵政省庁舎管理規程の一括許可に基づく組合の掲示板使用につき,管理者は,庁舎等の維持管理又は秩序維持上の必要又は理由があるときは許可を撤回し掲示板を撤去しうるとした事例--全逓昭和郵便局事件(最判昭和57.10.7) 」「『労働法律旬報』1066 1983
9673「税務署会計係長が民主商工会員の庁舎内立入りを阻止した行為が適法とされた事例-墨田民商事件控訴審判決 東京高裁昭和52・5・30判決」『判例時報』882号
9674「庁舎内で不当な行状をする者を庁舎外に運び出し、あるいは押し出す程度の実力による排除行為が庁舎管理権の行使として許されるとされた事例 東京高裁昭和52・11・30判決」『判例時報』880号
9675「林野職員の半日ストライキ指導又は参加を理由とする懲戒処分が裁量の範囲を逸脱した違法なものとされた事例 青森地裁昭和52・12・13判決」『判例時報』885号
9676米空軍立川基地出勤停止事件 東京高裁昭和40・4・27判決『労働関係民事裁判例集』16巻2号317頁
9677日本ナショナル金銭登録機懲戒解雇事件 東京地裁昭和42・10・25判決『労働関係民事裁判例集』18巻5号1051頁
9678西日本新聞賃金請求事件 福岡高裁昭和40・11・1判決『労働関係民事裁判例集』16巻6号819頁
9679都水道局時間外労働拒否事件 東京地裁昭和40・12・27判決『労働関係民事裁判例集』16巻6号1213頁

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