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2012/05/27

カード 無許可組合集会 池上通信機事件(神奈川地労委-横浜地裁-東京高裁-最高裁第三小)

(要点)
組合結成以来、工場の食堂を会社の許可を得ないで職場集会のために使用してきたことに対して、職制による阻止、説得、組合に対する警告等が不当労働行為にあたるかが争われた救済命令取消訴訟で、横浜地裁は国労札幌地本判決の判例法理に従って救済命令を取消、不当労働行為にあたらないとした。東京高裁、最高裁第三小法廷とも地裁の判断を支持したものである。

(要旨)
 会社は業務用放送用機器等の製造販売を行う。初審当時、東京都大田区に本社及び工場を有するほか、川崎、藤沢、水戸、宇都宮の4 工場を有し、従業員約1,200 名を擁していた。日本電機機器労働組合連合会池上通信機労働組合が昭和48 年11 組合員数約370 名をもって結成された(なお昭和56年(初審の時点)の組合員数は約85 名であった)。本件は、組合結成直後の昭和49年春闘と昭和54年春闘の際、川崎工場において集会のための食堂利用の許可願いを会社にしたところ拒絶され、食堂使用を強行したところ、そのつど会社により警告書交付、社内放送を利用した集会中止命令、職制による入構制止等の集会開催妨害行為が行われたというもの。なお、サークル活動については食堂利用を認めていた。これに対し、組合が不当労働行為の救済申立てをなしたところ、神奈川地労委はこれを認容し救済命令を発したためその取消を求めて会社が行政訴訟を提起した。横浜地裁は国労札幌地本判決の判例法理に従って救済命令を取消、中止命令、職制による阻止、説得、組合に対する警告等は不当労働行為にあたらないとした。高裁、最高裁とも地裁の判断を支持したものである。

池上通信機事件神奈川地労委救済命令昭和56年 7月27日『労働判例』 369号
http://web.churoi.go.jp/mei/m01452.html

[認定した事実](抜粋)
(2) 昭和48 年11 月11 日の状況同日、組合は、午後2 時から3 時頃にかけて、川崎工場内従業員食堂で妨害を受けることなく約30 名が集合して集会を開いた。一方、会社は、10 日ないし11 日に社長と専務が帰国したことから11 月11 日午後1 時頃鶴見の総持寺に社長をはじめ部課長係長等職制約70 名を集め、各工場における組合員の把握、労務担当者を決定するなどの対応策をとった。
(3) 同48 年11 月12 日の状況
同日、組合は集会を開くため、午後5 時15 分過ぎ池上工場食堂附近に集合したが、食堂入口附近においてY5 常務、Y6 工場長らの職制がピケをはったため、同入口附近で、組合は同月10 日にY2 総務部長との間に食堂の暫定的使用を妨害しないとの約定が成立した旨を主張し、一方、会社は、食堂使用の事前の届出がないことを理由に食堂使用を許可しない旨を主張し、両者間での押し合い等のこぜりあいがあった。この衝突後同日、組合会社間で交渉がもたれ、その際組合は① 事務所施設として食堂または会議室の貸与② 団体交渉開催の申入れ③ 本日の混乱に関し、就業規則による処分はしない④ 会社側は不当労働行為をしないとの4 項目の要求をしたが、②については開催に関する合意が成立し、①については事前届出をせよとの会社の要求があり、その旨組合も承諾し、その余については明確な合意は成立せず、この交渉は、翌13 日午前2 時45 分頃終了した。(中略)
(4) ‥‥組合は、春闘活動の場として、昭和49 年3 月11 日、①ハンドマイクは持ちこまない、②人数を守衛所に伝える、③使用時の組合責任者を明確にする等の条件の下に、食堂使用許可願を提出していたが、同年3 月13 日の事務折衝時に会社は組合との食堂使用に関する協定の不存在と、春闘期間中の集会場所として、3 月15 日徳持会館、同月19 日産業文化会館、同月20 日徳持会館、同月22日貝塚会館、同月23 日産業文化会館を夫々会社が使用料を負担した上で食堂に代えて提供することを理由にこれを許可しなかった。
その後、更に組合は団体交渉を要求したが会社はこれも拒絶し、そのまま春闘に突入した。49 年春闘時には食堂の使用をめぐり度々組合と会社側の衝突がみられたが、同年4 月5 日には川崎工場の食堂使用を要求する組合とこれを阻止するため食堂入口でピケを張るY7 工場長、Y8 部長、Y9 課長らとこぜりあいとなり、組合は屋上へでる際、この3 名を階段に転倒さす全治10 日間の傷害を負わせた。
3 食堂使用許可願の提出状況とそれに対する会社の対応昭和48 年11 月12 日のY5 常務の事前届出の要求以来、組合は、食堂使用の必要がある度に事前に就業時間外における使用許可願を提出しているが、会社は昭和48 年11 月12 日付け社長名の申入書をもって「組合活動の自由とは労働契約上の就業時間外及び会社の施設を使用しない場合に自由ということであって、たとえ正当な理由によるものであっても就業時間中は勿論、就業時間外であっても会社施設構内の使用はできません」旨を回答しており、その後会社は昭和49 年3月13日の事務折衝時に年4 回程度の使用なら認める旨の発言をしてはいるが、会社としての基本的な態度はその後も変化せず、前記組合の使用許可願に対しては具体的な業務上の障害理由も付すことなく、また、付す必要もないとして、「当初の方針どおり一切貸す意思がない」旨の回答をして今日に至っている4 現実の食堂使用の状況以上のような使用許可願の提出、不許可という状況下で、組合は、昭和48 年9回、昭和49 年44 回、同50 年27 回、同51 年11 回の食堂集会を、会社の制止をふりきる形で開催しているが、その都度スピーカーを通じての会社側の中止命令、それに従わない場合の責任追及、処分の警告、高周波音、ピケ等による妨害によって円滑な食堂集会は開催できない状態であった。その後現在に至るまで会社の施錠関係、格子等の物理的強化、組合員の減少等から組合も他の場所を使用するなど食堂集会の回数は漸減し今日に至っている。なお、会社は、社員親睦会、写真部、野球部、卓球部等が食堂を使用することいた。
5 昭和54 年春闘時の食堂集会状況
(1) 昭和54 年春闘は、同年3 月28 日付け組合の川崎工場食堂使用許可願、同日付けの会社の不許可回答に始まり、同日午後5 時30 分から同工場内で全川崎労働組合協議会X4 事務局次長の講演会を開催しようとする組合と、施設管理権を楯にこれを阻止しようとする会社が対立し、双方合計100 名以上の人数で守衛所前附近でこぜりあいがあり、午後7 時頃X1 委員長とY10 総務部長との話し合いで、タイムレコーダー前で集会を開く旨の合意がなされ、組合は同日午後8時頃まで集会を開いた。
(2) 同年4 月11 日、組合は池上工場と川崎工場に勤務する組合員の合同集会のため川崎工場食堂使用許可願を提出したが、同日付けで会社はこれを拒否し、アコーディオンドア、鉄製ドア等を固めたため、会社側と組合側とこぜりあいになり、ドアの開閉機能に損傷が加えられ、組合は前回と同様タイムレコーダー前で集会を開き解散した。
(3) 同月12 日組合は電機労連機関誌記者X5 を囲んでの座談会を午後5 時30 分から川崎工場食堂で開催しようとしたが、会社に入構を拒否され、構内での座談会を開けなかった。
(4) 同月19 日組合の川崎工場食堂使用許可願、会社の不許可という状況下で、会社側はドアを完全に閉ざし、同日の合同集会は、川崎工場内にいる組合員は構内で、他の組合員は工場外で、という状態に分離された。組合は、会社との話し合いがついたため、午後9 時頃ようやくタイムレコーダー前で集会を開催することができた。
(5) 同月27 日は前回同様の使用許可願、不許可の状況下での合同集会に際しても会社はアコーディオンドア等を完全に閉めたので、通用口から正面玄関にまわった池上工場組合員との間にこぜりあいがあり、結局、組合は午後11 時過ぎ同集会を断念した。
(6) 同年5 月9 日、会社の食堂使用不許可通告の後、組合は午後5 時半過ぎから合同集会を川崎工場食堂で開催しようとしたが、前回と同様会社側に阻まれ、結局実質的な合同集会は開かれなかった。また、食堂内にいた組合員に対しても会社側は20 分おきくらいにスピーカーにより集会中止命令をだして集会を妨害した。
6 X2 に対する警告について
(1) 昭和54 年4 月27 日の状況X2 は昭和48 年4 月被申立人会社に入社し、同49 年1 月に申立人組合に加入
し、同51 年52 年に執行委員を経たのち、54 年当時は副執行委員長であった。同54 年4 月27 日、X2 は同日午後3 時から開催される予定の電機労連神奈川地協第9 回幹事会議に出席するため、午後0 時45 分から同5 時15 分までのいわゆる半日有給休暇届を提出し、同幹事会に出席後、同日の組合集会に参加するため午後5 時5 分頃川崎工場に引き返してきたところ、川崎工場入口附近でY11 警備員から操業時間終了後の入構を制止され、更に附近を通りかかったY12総務課長からも「君は半日休暇をとっているんだろう会社内へ許可なく入構しては困る」旨の注意を受けたが、X2 は両者の制止を無視し、入構後ロッカー室に行って着替えた後、食堂内に集合していた他の組合員に合流して同日午後11時30 分頃まで構内に残留した。
(2) その後の処分
(1)の行為に対し、54 年5 月7 日付けをもって会社からX2 に対して「服務規律違反であるから、今後社員としての規則を遵守し、規律を乱すことのないよう警告する。」旨の警告書がだされている。
なお、就業規則には業務以外の理由で構内に立入ってはならない旨の規定が、またその付則には警告書が5 枚以上発せられた者に対しては懲戒(戒告、出勤停止、停職、降職、減俸、解雇)を科せられる旨の規定がある。
また、同年3 月28 日X6 執行委員が有給体暇届後職制の制止にもかかわらず組合集会に参加し、53 年春闘時にも、副執行委員長であったX7 が有給休暇届後電機労連の委員会に出席し、その後川崎工場構内での組合集会に参加したことがあったが、いずれも警告書が発付された事実はない。

判断

まず本件食堂使用に関する交渉経過をみると、組合は昭和48 年11 月10 日の組合結成通告時に、会社が組合の食堂等の利用につき妨害はしないと約束し、その使用を黙認した旨主張し、会社はその事実を否定するが、当時Y3 社長及びY4 専務の二人が海外出張中であり、突然の組合結成という会社にとって決して軽視できない事態発生のため、一総務部長であるY2 総務部長がそのような約束をしたとまで認定することはできない。
しかし、昭和48 年11 月12 日の会社の食堂使用許可願提出の要求以来、組合は今日に至るまで一貫して就業時間外の食堂使用の度に、事前に許可願を提出してきており、認定した事実2(4)のとおり、昭和49 年3 月11 日の事務折衝時には、使用時の責任者を明確にする等3 つの具体的条件を呈示した上で食堂使用許可を求めたが、会社は組合活動は就業時間外に、しかも会社の施設外で行うべきものであるとの認識の下に、代替施設の提供、年4 回程度の食堂使用なら認めるという形式的な譲歩はしたものの、一貫して食堂を含む会社施設の組合利用を認めない態度をとり続け、施設利用に関する合意のないことを理由に、組合の許可願をすべて却下してきている。
なお、組合側にも食堂利用の際に昭和49 年4 月5 日Y7 工場長ほか2 名に対し傷害を負わせたり、昭和54 年の春闘時には川崎工場のドアに損傷を与える等若干行きすぎた行為があったことが認められるが、これも会社が食堂使用をかたくなに拒み、職制を動員して物理的圧力を加えたことに起因することが大きく、会社が施設利用を全面的に拒否することを正当化するほどのものではない。
イ 会社はその施設に対する管理権を有するものであるから、組合は当然には会社の施設を使用する権利を有するものではない。それ故、会社施設を組合が利用するについては会社の許認可を要するものと考える。
しかし、企業内組合組縦がその正当な組合活動の場を企業内施設に求めることも無理からぬことなので本件で会社が主張するように、施設管理権が会社にあることのみを理由として、会社にとって格別の支障がないにもかかわらず、就業時間内外を問わず、組合活動のための施設の利用を一切禁じ得ることは到底考えることはできない。
ウ そこで、本件食堂使用に関しての両当事者の実質的利害を衡量してみるに、組合としては、第1 に、企業内組合として結成される我国労働組合において、団体交渉等を通じて組合の目的を達成するためには、企業という場における活動が重要な役割を果すことは当然である。第2 に、本件組合においては川崎、池上両工場に組合員が分散しており、組合本拠地たる川崎工場に集合する必要がある。第3 に、就業時間外で、かつ組合の都合のよい日に会社施設以外の場所を確保することはきわめて困難である。
一方会社としては、就業時間外であれば、事業の遂行に格別の支障はない。また、施設の利用態様も当事者間の合意によって、施設の本来の目的を損わず十分に対処し得るし、現に社員親睦会、写真部、野球部、卓球部等のサークルが食堂を使用することは従来これを認めていた。
エ このようにみてくれば、業務上の支障がない限り、組合が食堂を使用する必要性は大きく、また会社にとって、同じ従業員組織である組合以外のサークル活動のための利用と組合の利用とを差別する格段の理由ないし事情もないことが認められる。
それにもかかわらず、認定した事実3 のとおり、会社は組合が設立された昭和48 年11 月10 日からわずか2 日後の同月12 日に当時のY3 社長名の申入書をもって「組合活動の自由とは労働契約上の就業時間外及び会社の施設を使用しない場合に自由ということであって、たとえ正当な理由によるものであっても、就業時間中は勿論就業時間外であっても、会社施設構内の使用はできません」旨の回答をし、その後組合との事務折衝時に年4 回程度の使用は認めるとの譲歩は一時あったものの、会社としての基本的態度は今日に至るまで終始一貫して変らず、組合の使用許可願に対しても具体的な業務上の障害理由等を付すことなく、また付す必要もないとして組合の食堂利用を全く認めないのは、組合の存在を嫌悪し、施設管理権の名の下に意図的になされた組合に対する支配介入行為であり、労働組合法第7 条第3 号に該当する不当労働行為である。
(2) X2 に対する警告について
昭和54 年4 月27 日午後5 時5 分頃副執行委員長であったX2 が組合集会参加のため川崎工場に入構しようとした行為は正当な組合活動の一環であり、その入構態様も比較的平穏であった。その上、認定した事実6 の(2)で明らかなとおり、同年3 月28 日X6 執行委員がX2 同様有給休暇届後、職制の制止にかかわらず組合集会に参加し、53 年春闘時にも前副執行委員長であったX7 が有給休暇届後電機労連の委員会に出席し、その後組合集会に参加したことがあったが、いずれも警告書を発付した事実はない。
それにもかかわらず、就業規則によれば解雇にまで発展しかねない警告書を発付したことは、X2 に対する不利益取扱であるとともに、正当な組合活動を抑制するものであって、組合に対する支配介人行為といわざるを得ず、労働組合法第7 条第1 号、第3 号に該当する不当労働行為である。

 神奈川地労委の救済命令は、受忍義務説を排除した昭和54年国労札幌地本判決の趣旨に反し、組合側の主張に沿った判断を下している。会社は不服として行政訴訟を提起した。

池上通信機事件 横浜地裁昭和58年9月29日判決『労働判例』420号
http://thoz.org/hanrei/%E6%98%AD%E5%92%8C56%28%E8%A1%8C%E3%82%A6%2913 http://www.gyoseishoshiblog.com/marutahoumuj/_9446.html http://web.churoi.go.jp/han/h00254.html

判旨要約-救済命令取消。不当労働行為にあたらない
「従業員の食堂利用はあくまで右施設本来の目的である食事のための使用であって、右目的以外の使用、例えば組合大会の会場として使用するは予め許容された範囲から逸脱するものであるから組合ないし組合員が組合大会その他組合活動の場として工場内食堂を使用したいときは、予め右食堂の所有者であり且つ管理者である会社の許諾を得なければならない」ところ、会社の阻止を実力で排除して無許可で食堂を組合活動のために使用しつづけた状況のもとでは、会社が食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用とはいえず、「会社が食堂使用の方法等について組合と協議が成立していないことを理由に組合からの食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用ということはできない。」 組合員の入構阻止・中止命令・警告等は、職場秩序を維持するための必要な施設所有権、管理権の正当な行使ということができる。

判決抜粋
「‥‥ 一般に企業に雇用されている労働者は企業施設内に設置されている機械、設備等を使用して労務を提供する義務を負つていることから、企業施設内に立入りこれら機械、設備等を使用することができることはいうまでもないが、さらに進んで生産設備以外の会社の物的施設の使用をもあらかじめ許容されているとみられる場合が少なくない。しかしながら、右の許容は、特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において使用するという限度にとどまるものであり、労働者に対し右の範囲を超え右と異なる態様においてそれを使用し得る権原を付与するものということはできない。また、労働組合が当然に企業の物的施設を使用する権利を保障されていると解すべき理由はないのであるから、労働組合又は組合員であるからといつて使用者の許諾なしに右物的施設を使用する権原をもつているということはできない。もつとも企業に雇用される労働者のみをもつて組織されるいわゆる企業内組合の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とすることが極めて便宜であるから、その活動につき右物的施設を使用すべき必要性の大きいことは否定し得ないところではあるが、使用の必要性が大きいことの故に、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために当然に使用し得る権原を有し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の使用を当然に受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない。したがつて、労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで使用者の所有、管理する物的施設を使用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその使用を許さないことが当該施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、当該施設を所有、管理する使用者の権原を侵し、企業秩序を乱すものであり、正当な組合活動に当らないというべきである(昭和五四年一〇月三〇日最高裁第三小法廷判決参照)。
そこでこれを本件についてみるに、会社の川崎工場食堂は、同工場で働く従業員をして食事の際使用させることを目的に会社が設置した施設であることは明らかであるから、同工場の従業員は労働組合員であると否とに拘らず食事の際右食堂を自由に使用することは予め会社により許容されているといわなければならない。しかしながら従業員の食堂使用はあくまで右施設本来の目的である食事のための使用であつて、右目的以外の使用、例えば組合大会の会場として使用することは予め許容された範囲から逸脱するものであるから組合ないしは組合員が組合大会その他組合活動の場として工場内食堂を使用したいときは、予め右食堂の所有者であり且つ管理者である会社の許諾を得なければならないものといわなければならない。しかるに組合は、昭和四八年一一月、組合を結成した当初から組合活動のため会社施設を使用できるのは組合の権利であるとの考えに立ち、会社の許可を得ずに川崎工場食堂で集会を開き会社から警告を受けると会社に対し食堂使用許可の申入れはしたものの右の前提を変えず、会社が年四回程度の組合大会にのみ食堂使用を許すとの案を出してもこれを全く無視し、あまつさえ食堂使用問題を会社との協議の場に持ち出すこともせず会社の阻止を実力で排除して無許可で食堂を組合活動のため使用し続けてきたものであつて、かかる状況の下にあつては、会社が食堂使用の方法等について組合と協議が成立していないことを理由に組合からの食堂使用許可の申入れを拒否しても権利の濫用ということはできない。 もつとも組合は、前記認定のようにいわゆる企業内組合であり、組合員が会社の川崎工場と池上工場等に分かれ組合大会その他の組合活動には川崎工場内の食堂を使用することが種々の面で便宜であることは肯首できるけれども、それが故に組合が川崎工場内食堂を当然に使用できる権利を取得するものでないことは前記説示のとおりであり、また会社としても就労時間外に従業員をして食堂を食事の目的以外に使用させることによつて事業遂行上格別の支障が生ずるとは云えず、現に会社は従業員がつくつている卓球部、写真部等にそのサークル活動として川崎工場内食堂の使用を許していることは会社において自認するところであるが、かかる事情が存するからといつて、会社は組合に対し組合活動のために右食堂を使用させなければならない義務を負うものと解することはできない。
その他会社の組合に対する本件食堂使用の拒否が権利濫用であると認めるに足りる証拠はない。四 してみれば、会社による組合からの食堂使用許可申入れの拒否が権利濫用であると認められない以上組合の食堂使用許可要求の拒絶が組合に対する支配介入―不当労働行為―に該らないことは明らかであり、会社が組合による会社食堂の無許可使用に対し組合員の入構を阻止し中止命令を発し、無断使用を強行した組合もしくは組合責任者に対し再発防止のためその責任追及及び処分の警告を発することは、職場秩序を維持するために必要な施設所有権、管理権の正当な行使であつて何らの不当性もなく勿論不当労働行為にも該当しないことは多言を要しないところであり、また会社が、従業員のJが昭和五四年四月二七日の就労時間外に会社の制止を無視して川崎工場構内に立ち入り、同食堂で行われていた組合による無許可集会に参加したことに対し服務規律違反である旨警告したことも正当な行為であつて組合に対し何らの不当労働行為を構成するものではない。 以上の次第で、被告が本件を不当労働行為と認定して原告に対し救済命令を発したことは違法というべきであるから本件命令主文第一、二項は取消しを免れない。‥‥」

池上通信機事件東京高裁昭和59年8月30日判決『労働判例』439号『労働関係民事裁判例集』35巻3・4号  459頁 『判例時報』 1154号  150頁
   http://thoz.org/hanrei/%E6%98%AD%E5%92%8C58%28%E8%A1%8C%E3%82%B3%2986 http://web.churoi.go.jp/han/h00282.html

 神奈川地労委が横浜地裁の救済命令取消を不服として控訴したが、東京高裁は地労委の控訴を棄却した。

控訴棄却 不当労働行為にあたらない
「本来企業施設は企業がその企業目的を達成するためのものであって、労働組合又は組合員であるからといって、使用者の許諾なしに当然に企業施設をを利用する権限を有するものではないし、使用者において労働組合又は組合員が組合活動のために企業施設を利用するのを受忍すべき義務を負うというものではないことはいうまでもなく、‥‥使用者は、企業目的に適合するように従業員の企業施設の利用を職場規律として確立する一方、企業目的の達成に支障を生じさせ秩序を乱す従業員の企業施設の使用行為を禁止又は制限しあるいは違反者を就業規則等違反を理由として懲戒処分に付するなどにより、企業目的にそわない施設使用を企業秩序違背として規制し排除することができるのはいうまでもないことである。」
「本件においても以上に述べたところと別異に解すべき事情はなんら見当たらず、組合が組合員集会や組合活動のために会社の一般的又は個別的な許諾を得ないで当然に会社の従業員食堂を使用し得るものと解すべき理由はない」。「そして、組合が右のような不当な見解に固執して従業員食堂の使用につき会社と真摯に協議を尽くそうとせず、かえって会社の許諾を得ないままに会社の阻止を実力で排除してこれを使用し続けるという挙にでるという態度を採り続けたものである以上‥‥会社としても、団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかったのも、やむを得ない措置というべきであって、これを権利の濫用ということはできないし、会社が組合員の入構を阻止したり、組合員集会の中止命令などの措置を採って、会社の許可を得ないまま従業員食堂において開催されようとする組合員集会を中止させようとし、あるいは組合員が無許諾で従業員食堂を組合活動のために使用した場合に組合又はその責任者の責任を追求し処分の警告を発するなどしたのは、先に見たようないわゆる施設管理権の正当な行使として十分是認することができるのであって、これら会社が採った一連の行動が組合に対する不当労働行為に該当するものということはできない」。


池上通信機事件 最高裁昭和63年7月19日判決『労働判例』527号
http://web.churoi.go.jp/han/h00282.html
 神奈川地労委の上告を棄却

上告棄却。不当労働行為にあたらない
「所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係及びその説示に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はなく、また、所論引用の判例は、事案を異にし、本件に適切でない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、失当である。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づき若しくは原審の認定にそわない事実を前提として原判決を論難するものであって、採用することができない。」
なお伊藤正己裁判官単独の補足意見を要約すると「原判決は、その措辞からみて、労働組合又は組合員が使用者の所有する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の判断について厳格すぎる感は免れないけれども、その結論は正当であるから、本件上告はこれを棄却すべきである」と記した。


伊藤正己裁判官の補足意見(全文)

私は、法廷意見と本件の結論を同じくするものであるが、被上告人のした本件食堂の利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するかどうかに関しては、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の有無が
問題となるので、この点についての私の見解を明らかにしたうえ、本件について検討を加えることとしたい。さきに、最高裁昭和四九年(オ)第一一八八号同五四年一〇月三〇日第三小法廷判決・民集三三巻六号六四七頁は、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動が正当なものとされるためには、使用者の許諾を得ること、又は使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許さないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があることが必要である旨を明らかにしたが、法廷意見も右の説示を正当としているものと思われる。私も右の判例が一般論として説示するところは賛同できないものではない。けだし、使用者が当該施設の利用を許諸するのは、通常、労働組合が使用者と団体交渉等なんらかの交渉をした結果であろうし、これによって労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理
する物的施設を利用するのが本来の姿といわなければならないからである。それゆえ、右の物的施設の利用について労使間の合意を形成するために、労使双方の誠実な努力が求められることはいうまでもない。しかしながら、労使間に実際に紛争が生じるのは、右のような使用者の許諾ないし労使間の合意が存在しない場合であろうし、現に本件においても、被上告人(使用者)が本件食堂の利用を許諾しなかったため、労使間に紛争が発生しているのである。このような場合においても、労働組合又はその組合員が当該施設を利用して行う組合活動が常に正当性がないということはできず、使用者がこれらの者に対し当該施設の利用を許諾しないことが権利の濫用と認められるような特段の事情があるときはこれを正当なものというべきである。そして、右の特段の事情があるかどうかについては、硬直した態度で判断するのではなく、当該施設の利用に関する合意を形成するための労使の努力の有無、程度が勘案されなければならないことはもちろんであるが、さらに、いわゆ
る企業内組合にあっては当該企業の物的施設を利用する必要性が大きい実情を加味し、労働組合側の当該施設を利用する目的(とくにその必要性、代替性、緊急性)、利用の時間、方法、利用者の範囲、労働組合によって当該施設が利用された場合における使用者側の業務上の支障の有無、程度等諸般の事情を総合考慮して判断されるべきものであると考える。本件の場合、被上告人は本件食堂の利用を許諾しなかったのであるが、そのことをもって直ちに本件組合活動が正当性を欠くと即断することなく、さらに右の特段の事情の有無を検討する必要があるところ、原審の適法に確定した事実及びこれから推認しうるところによれば、(ア) 本件食堂の利用をめぐる紛争が発生した当時、上告捕助参加人組合は結成されて間もない時期であり、しかもその組合員が川崎工場と池上工場とに分れていたため、上告補助参加人組合が本件食堂(川崎工場食堂・池上工場食堂) において集会をもつ必要性は相当高かったうえ、その使用方法も不当な態様にならないように配慮されていた
ばかりでなく、(イ)上告補助参加人組合が本件食堂を利用しても、被上告人の業務ないし他の従業員のレクリエーション活動に格別の支障が生じたことは窺われないにもかかわらず、(ウ) 被上告人は、上告補助参加人組合の強引な態度に触発された面があることは否定できないものの、本件食堂の利用に相当強硬な姿勢を示したこともあるというのであるが、その反面、(エ)被上告人は、年約四回の定期大会、臨時大会については本件食堂を利用することを許諾し、暫定的に使用料を負担して外部の会場を借り受けるなど一定の譲歩をし、(オ) 上告補助参加人組合は、昭和四九年三月被上告人の提供した右会場で臨時大会を開催したのちは、多数回にわたって無許可で本件食堂を利用し、本件食堂の利用に関する合意を形成する努力を全くしないうえ、ときには暴力行為に及ぶなど行き過ぎた行為をした、というのである。
以上を総合すると、被上告人が上告補助参加人組合ないしその組合員に対し本件食堂の利用を許諾しないことが権利の濫用であると認められるような特段の事情があるとまではいえないのであって、結局、本件の場合、被上告人のした本件食堂の利用の拒否、警告書の交付等が不当労働行為に該当するということはできない。原判決は、その措辞からみて、労働組合又はその組合員が使用者の所有し管理する物的施設を利用して行う組合活動の正当性の判断について厳格にすぎる感を免れないけれども、その結論は正当であるから、本件上告はこれを棄却すべきである。

論評
大内 伸哉 「企業施設を利用した組合集会に対する使用者の施設管理権の行使と支配介入--池上通信機事件(最判昭和63.7.19)(労働判例研究-747-)」『ジュリスト』988 1991
『別冊ジュリスト 労働判例百選(第6版)』  安枝 英訷 134号  240頁

本判決の意義
 企業施設における組合活動についての指導判例である国労札幌地本最高裁判決の判例法理に沿った妥当なものである。組合は「組合は、一定の範囲の企業施設の利用権を有するものであり、その限度において会社の施設管理権は制約をうける」(救済申立の主張)という上記最高裁が否定したプロレイバー「受忍義務説」の一方的な見解に固執して行動にうつし、集会を強行したこと。プロレイバーの渡辺章ですら「会社の便宜供与を受けるために必要な交渉協議を粘り強く進め、合意の達成に努力する姿勢に欠いている」ことから救済命令取消はやむを得ないと評しているのである。渡辺章『労働法講義 下 労使関係法・雇用関係法Ⅱ』信山社2011 184頁
 最高裁が支持している高裁判決が「会社としても、団体交渉等を通じて組合活動のための会社施設の利用について基本的合意を締結するのが先決であるとして、組合がその後個別にした従業員食堂の使用申し入れに対して許諾を与えなかったのも、やむを得ない措置というべきであって、これを権利の濫用ということはできない」としており、施設利用に関して合意のない状況での、施設利用拒否を不当労働行為にあたらないとしていることを重視したい。
 伊藤正己裁判官の補足意見はこれと異なる見解で、施設利用に関して合意のない状況での、施設利用不許可の状況で、組合活動が強行されても、それが即、正当でない組合活動と評価されることはないとする。これは国労札幌地本判決の趣旨とはことなる。判例法理を変質させ、風穴を開けようという意図のあるもので賛同できない。渡辺章は、伊藤補足意見を解説して、当該企業施設を利用する「必要性が大きい実情を加味し」諸般の事情を総合考慮し、法益権衡の立場に立って評価診断しようとするもので、違法性阻却説の判断枠組みを提示したものとしているが、『権利の濫用と認められるような特段の事情』を緩めて違法性阻却説に引きづりこむ意図とすれば同裁判官は労働組合に好意的な立場であり危険な方向性とみる。
 いずれにせよ、伊藤補足意見は少数意見にすぎないのであり、最高裁の判断はそのような立場をとっていない。

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