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2012/06/24

カード 国労札幌地本事件最高裁判決の意義(2)「施設管理権」という言葉をあえて用いなかった意味

カード 国労札幌地本ビラ貼り判決の続編である
http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-359d.html

企業施設内の組合活動に関する指導判例である国労札幌地本ビラ貼り事件最高裁第三小法廷昭和54年10・30判決民集33巻6号647頁『労働判例』329号の意義についてポイントを6点挙げると

1 プロレイバー学説(受忍義務説・違法性阻却説)の明確な排除

2 使用者の企業秩序定立権という判例法理の確立

3 労働組合に個々の労働者の権利の総和を超える権能を認める団結法理の否認

4 抽象的な企業秩序の侵害のおそれのみで、施設管理権の発動を認めていること(具体的な企業の能率阻害を要件としない)

5 「利用の必要性が大きいことのゆえに‥‥‥労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない」と明確に述べ、法益権衡論を排除していること

6 本件は国鉄の事案でありながら、私企業における施設管理権対組合活動の問題ととらえられており、官公庁の庁舎管理権とは一線を画している

1については前回説明しているので2以下の論点を取り上げる。

施設管理権という言葉をあえて用いなかった意味

 
 およそ労働法学なるものの通説は信用してはいけない。労働法学者の圧倒的多数が濃淡の差こそあれプロレイバーであり、ミリバントで階級的な労働組合運動を支援し労働基本権を確立するというイデオロギー的立場にあると考えられるからである。「受忍義務説」(使用者の施設管理権も団結権・団体行動権の保障によって内在的・本質的に制約を受け「受忍義務」を負うとする悪質な学説)などもそうである。
 受忍義務説の論理構成は「施設管理権」とは元来法律用語ではなく、昭和28・9年頃使用者側から主張された政策概念としたうえ、所有権・占有権の一つの機能として位置づけ、次のように物的管理権に限定して承認するというものであった。【註1】
「本来それは、使用者が企業施設に対する所有権に基づいて当該施設を支配し、それの維持、保全のための必要な措置をする等の管理を行う権能(物的管理権)をさすものと解せられ‥‥」【註2】 そのように、施設管理権の物権的性格を強調しそれゆえ「物的管理権である以上、施設管理権は組合活動に対して直接向けられるべきものではない」とされる。【註3】
 プロレイバー学説に従うと、施設管理権とは、物的管理権であって、企業の秩序の維持のために措置を行う権能ではない。そうすると狭義の業務命令権と抵触しない就業時間外、休憩時間は、示威運動であれ、騒々しい集会も、広範な組合活動が規制できないことになる。対象物を毀損するなど損害を生じせしめた場合(例えば窓ガラスを破損した)、結果的損害の事後的塡補を請求する権利程度のものに矮小化されるのである。
 詭弁のように思える。工場や機械を所有しても実際に人を配置して操業しなければ財産を生み出さない。店舗の主人であっても実際に営業行為をやらなければ財産を生み出さない。物的施設は経営目的に従って使用収益にまで用いるのでなければ財産としての意味をなさないのであるから、施設管理権を使用者が物的施設に対して有する所有権等に基づく権能を、その消極的な維持改善にとどめるというのは到底納得がいくものではない。 

 そこで、国労札幌地本ビラ貼り事件最高裁判決は、「施設管理権」という言葉をあえて用いず、「職場環境を適正良好に維持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限」と表した。
 その権限の根幹となるものとして「企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく」と判示している。【註4】
 「施設管理権」と表さないのは、労働法学者の主流であるプロレイバー学説がそもそも政策概念であって、物的管理権に限定されるべきものとしているからで、つけこまれる隙をみせない判断によると考えられる。しかし、「当該物的施設を管理利用する使用者の権限」はほぼ「施設管理権」と同じ意味と解し、「施設管理権」判例と理解してさしつかえないだろう。

 国労札幌地本判決に道を開いた組合活動に厳しい施設管理権に関する下級審判例の集積

 国労札幌地本事件最高裁判決は突然出されたものではなく、以下のような組合活動に厳しい判断を下した下級審判例の集積を背景としている。【註5】

 
 ビラ配布事案で日本ナショナル金銭登録機事件横浜地裁昭43・2・9判決『労働判例』NO.172 『労働経済判例速報』805号 は「‥‥およそ企業の有する施設管理権は、企業がその目的に合致するようその施設を管理する権限であって、単に物的管理のみを指称するものではないというべきであり‥‥その組合の活動が、使用者の建物、敷地等を利用して行う場合には、使用者の施設管理権に基づき使用者の意思に反して活動することはできず、このことは特段の事情のない限り、休憩時間中あるいは就業時間外のものであっても変わることはないといわなければならない。」と判示している。

 
 国鉄がビラ貼りによる損害賠償を請求した動労甲府支部ビラ貼り事件東京地裁昭和50・7・15判決労民集26巻4号567頁『判例時報』784号はより明確に「施設管理権」には「管理及び運営の目的に背馳(はいち)し、業務の能率的かつ正常な運営を阻害する行為を一切排除する権能を有する」と示している。
 同判決は原告国鉄によるビラ貼り制止行為について、本件建物につき「その所有権が内容とする権能の範囲において自由にその権能の範囲において自由にその権能を行使することができるから、本件ビラ貼りの如き施設利用行為を許容しないで同事務所を使用することを享受することができるわけであり、さらに施設管理権に基づいて同事務所の管理及び運営の目的に背馳(はいち)し、業務の能率的かつ正常な運営を阻害する行為を一切排除する権能を有するから、本件、ビラ貼りの如き業務阻害行為を禁止することができるわけである。したがって、本件ビラ貼り行為は原告の右所有権ないし施設管理権を侵害するものである」。と述べ、労働組合が使用者の施設を利用してビラ貼り活動をするためには「当該施設にビラをはる権原‥‥があることを要するところ、‥‥右のような権原があることの主張及び立証がない以上、動機たる目的がなんであろうと、」所有権ないし施設管理権を侵害するものであり、損害を賠償すべきものであるとした。

 
 ビラ配布事案である日本エヌ・シー・アール事件東京高裁昭和52年7月14日判決『判例時報』NO.868『労働判例』NO.281は「一般に事業場は、当然に使用者の管理に属し、労働者は、自己の労働力を使用者に委ねるために事業場に出入りを許され、就業時間中は使用者の指揮命令に従い労務に服する義務を負うものであり、労働組合は労働者が団結により経済的地位の向上を図ることを目的として自主的に結成加入した団体であって、使用者から独立した別個の存在である。従って、労働者の労働組合活動は原則として就業時間外にしかも事業所外においてなすべきであって、労働者が事業上内で労働組合活動をすることは使用者の承認のない限り当然には許されず、この理は労働組合運動が就業時間中の休憩時間に行われても、就業時間外に行われても変わりがないと解すべきである‥‥使用者の有する事業場の管理権は本来経営目的達成のために管理するものであるから、これに基づく指示命令を施設の物的利用の仕方に関するものに限られると解するのは相当ではなく」と判示している。
 同判決の「労働者は、自己の労働力を使用者に委ねるために事業場に出入りを許され」という部分は、国労札幌地本事件最高裁判決では「労働者は‥‥雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において(企業施設を)利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然であり」と述べられ、ほぼ同趣旨で採用されていることがわかる。

 
 中でもプロレイバー受忍義務説を明確に排除した判例としてプロレイバー労働法学が最も敵視したのが、東京地裁民事一九部中川幹郎裁判官チームによる動労甲府支部東京地裁判決であった。
 動労甲府支部判決は「企業内組合であっても、当該施設にビラを貼る権原があることを要する」と述べ、ビラを貼る組合の「権原」があるとの主張も立証もない以上、所有権、施設管理権の侵害とする明快なものでわかりやすい。
 「権原」とは有斐閣法律用語辞典によると「ある行為をすることを正当なものとする法律上の原因。例えば地上権、賃借権等を有する者が他人の土地に工作物を設置している場合に、地上権、貸借権がこれに当たる‥‥」ということであるが、この判決の意義は、使用者の施設管理権と組合活動との間の衝突紛争における司法判断において、プロレイバー的な利益衡量、法益調整処理を行わず、ビラ貼りをめぐる争いをあくまでも法律上の権利・権限問題として捉え、組合の企業施設利用を端的に財産権侵害としたことであり、【註6】市民法理でわりきったことである。
 ただし、動労甲府支部判決は、ビラを貼る組合の権限という箇所にかっこをつけて「使用者がその施設の利用を許容しなかったことによって不当労働行為が成立するにいたった客観的事情も含む」としており、組合にビラ貼りの権原があるとすれば、労働協約によって使用者がビラ貼りの場所を貸与した場合であることを示唆しており、【註7】この考え方は国労札幌地本最高裁判決にも採用された。「労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものである」と述べているからである。
 なお、動労甲府支部判決は国鉄の春闘時のビラ貼りや落書きについて「こういう争議行為戦術の横行は国民のひんしゅくをかい、国鉄を私物化するものではないかと問い糺されることを懼れなければならない」とも述べており、名判決といえるだろう。
 要するに憲法二十八条の認める労働基本権といえども、契約その他市民法秩序の下で認められている権原なくしては、私有財産を利用し得る何らの権限を与えるものではないという趣旨であるが、市民法秩序を覆し、財産権の侵害を正当化する悪質なプロレイバー学説を粉砕する意義のある判決として私は評価する。
 国労札幌地本事件最高裁判決は、「権原」なくして利用権限なしという直接的表現はとってないが、我が国の労働組合が企業別組合が大半であるため、組合活動をする際、企業の物的施設の利用の必要性が高いことを認めながらも「利用の必要性が大きいことゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない」と述べているから、実質的に、「権原」なくして利用権限なしと言っているのも同然であり、動労甲府支部東京地裁判決の判例法理と大筋において違いはないもの解釈してよいだろう。

 
企業秩序定立権の先例

 しかし、国労札幌地本事件最高裁判決は、動労甲府支部事件東京地裁判決のような所有権・財産権侵害という明快で正面切った論理構成をとってない。強い反発の予想される直球勝負をあえて回避して、プロレイバー学説排除、法益権衡論排除の観点でより巧妙な論理構成をとることとなったものと考えられる。
 そこで、最高裁がプロレイバー学説に対抗すべく案出したのが、富士重工業事件最高裁昭和52年12月13日第三小法廷判決、民集31巻1037頁で示された「企業秩序定立権」を進展させた判例法理ということではないだろうか。
 富士重工業事件は、ある従業員の違反行為の調査に別の従業員が応ずる義務の有無に関するもので、結論は調査に応じない従業員の懲戒譴責処分を違法無効とするものであるが、「企業秩序」の一般論を次のように述べた。
 「そもそも、企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は、この企業秩序を維持確保するために、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令することができ、また、企業秩序に違反する行為があった場合には、その違反行為の内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に制裁を行うため、事実関係の調査をすることは、当然のことと言わなければならない。」
 「企業秩序」の維持確保のために「企業」に求められる権能として、(1)規則制定権(2)業務命令権(3)企業秩序回復指示・命令権(4)懲戒権を当然のこととして列挙したうえ、このような「企業」体制を前提とした労働契約を媒介に労働者の「企業秩序遵守義務」を演繹している。【註8】「労働者は、労働契約を締結して企業に雇用されることによつて、企業に対し、労務提供義務を負うとともに、これに付随して、企業秩序遵守義務その他の義務を負うが、企業の一般的な支配に服するものということはできない」と述べた。
 使用者と被用者はマスター・サーバント関係でもなければ、親分子分関係でもない。だから一般的支配に服するものではないのである。ただし従業員は労働契約に基づく約定の労務義務のほか、企業秩序遵守義務とその他の義務も負うとするのである。

 この企業秩序論は同日の判決である目黒電報電話局事件最高裁第三小法廷昭和52年12月13日判決民集31巻974頁でも採用され「一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべき」「従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律による制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない」と判示している。

(つづく)
 

 

引用・参考文献
【註1】西谷敏「施設管理権の法的性格とその限界」『法学雑誌』大阪市立大学法学会26(3・4), 1980
【註2】片岡曻『法から見た労使関係のルール』労働法学出版1962 109頁
【註3】峯村光郎『経営秩序と団結活動』総合労働研究所1969 161頁、本多淳亮『業務命令施設管理権と組合活動』労働法学出版1964 21頁
【註4】河上和雄「企業の施設管理権と組合活動--昭和54年10月30日最高裁第三小法廷判決について(最近の判例から)法律のひろば』33(1)1980 参照
【註5】河上和雄前掲論文では、本文で取り上げた、動労甲府支部事件東京地裁判決、日本エヌシーアール事件東京高裁判決、目黒電報電話局最高裁判決のほか東京新聞争議事件東京地裁昭44・10・18判決労民集20巻5号1346頁も参照指示しているが、私はこの東京新聞事件のピケッテイングの判断を疑問に思うので、ここではあえて無視することとする。
【註6】菊池高志「労働契約・組合活動・企業秩序法政研究 『法政研究』49(4) 1983 〔※ネット公開〕http://hdl.handle.net/2324/1792
【註7】角田邦重「リボン闘争・ビラ貼りー中川判決の法理と問題点ーホテル・オークラ事件・動労甲府事件」討論 籾井・角田・雪入・山本「企業内組合活動の自由と東京地裁労働部中川判決批判」『労働法律旬報』888号〔1975〕
【註8】池田恒男「国労札幌ビラ貼り事件」最高裁判決の「画期的」意義--現代日本法の一断面」『社會科學研究』33(5) 1981

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