それでもケネディ判事はよくやったと思う
昨日のBS-TBSの7時30分放映のCBSイブニングニュースを見ました。クロフォード記者のレポートで、ロバーツ主席判事ははじめ国民皆保険に反対で、違憲判断だったが、意見を書く段階になって気持ちが変わり、課税権についてもロバーツ主席判事とリベラル派の4判事が意見を同じくしたということです。ロバーツ主席判事は保守派とも意見交換し、ケネディ判事が翻意させるため説得したが、ロバーツは意見を変えなかったということです。フォーブスにもう少し詳しいことが載ってました。
反対意見はケネディ、スカリア両判事によって書かれましたが、読み上げたのはケネディ判事です。反対意見というのは医療保険改革法の全てが違憲であり叩き潰すべきというものです。
したがって、もっともオバマケアを嫌っていたのはケネディ判事だということがわかります。
同判事は第3の男として最高裁入りしました。ボークが上院で承認されず、二人目の指名者はマリファナ吸引報道で辞退したため、代打の代打としてレーガンが指名したのです。就任時にはケースバイケースの判断をとる穏健な保守派という評判でした。
連邦地裁判事になるのが夢だった。最高裁判事になれたのは望外の幸運と謙虚に語っていたので小物なのかと思いましたが、同判事の実績からすれば、重要判決で決定票を握るか議論をリードしており名裁判官といえると思います。
つまり、ケネディ判事のかかわった重要判決として記憶に残るのは、公立高校卒業式の祈祷-違憲、星条旗焼却処罰-違憲、ヴァーチャルチャイルドポルノ規制-違憲、男色行為処罰州法-違憲、拳銃所持禁止立法-違憲、特定の候補を支援する目的での企業・団体献金に枠をはめる連邦法-違憲といったものがあります。
要するに、宗教の自由、表現の自由、私的空間で成人が合意によりアナルセックスをやる自由、銃所持の権利、企業団体が政治献金する自由を断固擁護しております。
私が疑問に思ったのは男色行為だけで、あとはケネディ判事の判断が正しいと思います。この流れからすれば、ケネディが保険加入を強制されない個人の自由を擁護するのに相当頑張るだろうということは予想できました。最高裁長官を説得できなかったのは残念ですが。
« L・トライブ教授「政府の課税権は広範で、違反者を投獄せず、税金を課す法律なら個人に商品購入を義務づけることができるという判決だ」と強弁 | トップページ | カード 国労札幌地本事件最高裁判決の意義(3) 企業秩序定立権について-その1- »
「英米法」カテゴリの記事
- 連邦最高裁 ホワイトハウスがソーシャルメディア企業に「偽情報」を削除するよう圧力をかけることを容認 (2024.06.29)
- 旧統一教会の解散命令請求に反対します(2023.10.04)
- ジョン・ポール・スティーブンス元合衆国最高裁判事死去(2019.07.18)
- ケーキショップは宗教的信念により同性婚のウェディングケーキの注文を拒否できる(2019.06.18)
- 連邦最高裁開廷期末に反労働組合、リバタリアン陣営大勝利 Janus v. AFSCME判決 (2018.06.29)
« L・トライブ教授「政府の課税権は広範で、違反者を投獄せず、税金を課す法律なら個人に商品購入を義務づけることができるという判決だ」と強弁 | トップページ | カード 国労札幌地本事件最高裁判決の意義(3) 企業秩序定立権について-その1- »
コメント