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2012/09/30

カード 国労札幌地本事件最高裁判決の意義(7)法益権衡論の排除その3

(承前)

(2)敷地内であっても事業場内ではない等の理由で施設管理権の発動を否定した-住友化学工業名古屋製造所事件 最高裁第二小法廷昭54・12・14判決『労働判例』336号

 佐藤訪米阻止闘争に参加し逮捕拘留されたこと等を理由とするYの10日間の出勤停止処分に反対し、「バリケード春闘に決起せよ」等と題する化学反戦名義のビラを配布したことが「会社の許可を受けないで、みだりに文書、図画を配布し、事業所内の秩序、風紀を乱したとき」に該当するとしてなされたY(15日間)、T(10日間)の出勤停止処分を無効とした原判決を支持し、会社側の上告を棄却した。
 「その配布の場所は、上告会社の敷地内ではあるが事業所内ではない、上告会社の正門と歩道との間の広場であって、当時一般人が自由に立ち入ることのできる格別上告会社の作業秩序や職場秩序が乱されるおそれのない場所であった、というのであるから、被上告人らの右ビラ配布行為は上告人の有する施設管理権を不当に侵害するものではない」としている。
 『労働判例』の解説は本判決が「正当な組合活動であるかを判断するまでもなく」とする一・二審の判断を維持したことと、国労札幌事件との整合性を問題視しているほか、事業場内の組合活動は具体的影響がなくても禁止をおかすかぎり「企業秩序」を侵害するとした国労札幌事件判決、休憩時間のビラ配布行為を「企業秩序」を侵害するとした目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13日民集31巻974頁 『労働判例』287号
と異なることを指摘しており、先例との整合性に疑問のある判決といえる。
 なお、この事件では合化労連住友化学労組名古屋支部執行委員長はビラ配布の中止命令を出しており、少数の組合員が組合の方針に反して行った行動である。
 「みだりに文書、図画を配布し、事業所内の秩序、風紀を乱したとき」を厳密に解釈したといえなくもないが、こういう判決があるから就業規則においては、公開空地を含む構内での秩序違反行為を問える文面にしたほうが無難といえそうである。
 敷地内であっても正門の外でビラを配って出勤停止10日は重いという判断もあるのだろうか。

 
(3)目黒電報電話局事件・最三小法判昭52・12・13日民集31巻974頁 の『特別の事情論』の適用して懲戒処分を無効とした判例

 明治乳業福岡工場事件 最高裁第三小法廷昭和58・11・1『労働判例』417号は組合支部長の地位にある従業員が昼の休憩時間に食堂において『赤旗』号外や共産党の参議院議員選挙法定ビラを食堂における、手渡しまたは食卓に静かに置くという態様のビラ配りについて、工場内の秩序を乱すことのない特別の事情が認められる場合は就業規則違反とみなすことができないとして、戒告処分を無効とする判決を下しているが、これは目黒電報電話局事件最高裁第三小法廷昭和52年12月13日で判示した「形式的にこれに(就業規則)違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのを相当である」という『特別の事情』論の適用である。
 ではなぜ、最高裁は目黒電報電話局事件では実質的違反として「ベトナム反戦、米軍立川基地拡張阻止」という政治活動を行った職員の戒告処分を是認する一方、明治乳業福岡工場事件では形式的違反にすぎないとして赤旗号外や共産党参院挙法定ビラ等の配布行った従業員の戒告処分を無効にしたのかというと、前者はワッペン・プレートを胸につけることを呼びかける目的でビラを配布しており、その行為は単に自己の職務専念義務に反するにとどまらず、他の労働者の職務への専念を妨げるものとして企業秩序を乱すと判断されたのに対し、後者は工場内の秩序を乱さないと判断された点が異なる。また後者は就業規則に企業内政治活動禁止規定がなく、政治活動であるかは問われず、たんに無許可ビラ配布事案としての判断なのである。

 倉田学園事件・最高裁第三小法廷平成6年12・20民集48巻8号1496頁は就業時間前に職員室において、ビラを二つ折りにして、机の上に置いたというもので、業務に支障を来していないこと、ビラの内容も団体交渉の結果や活動状況で違法・不当な行為をそそのかす内容が含まれていないため、無許可で職場ニュースを配布したことを理由とする組合幹部の懲戒処分は懲戒事由を定める就業規則上の根拠を欠く違法な懲戒処分と判示しているが、これも「ビラの配布が形式的にはこれに違反するようにみえる場合でも、ビラの内容、ビラ配布の態様等に照らして、その配布が学校内の職場規律を乱すおそれがなく、また、生徒に対する教育的配慮に欠けることとなるおそれのない特別の事情が認められるときは、実質的には右規定の違反になるとはいえず、したがって、これを理由として就業規則所定の懲戒処分をすることは許されないというべきである(最高裁昭和四七年(オ)第七七七号同五二年一二月一三日第三小法廷判決・民集三一巻七号九七四頁参照)」。と形式的違反であって実質的違反でないという『特別の事情』論が引用されている。
 もっとも私は国労兵庫鷹取分会事件神戸地裁昭和63年3月22日決定『労働判例』517号のように詰所内における休憩時間におけるビラ配布妨害排除の仮処分申請を否認した判例があるように、就業時間外のビラ配布についても「権利の濫用」「特別の事情」として許容しない下級審判例もあることから上記の最高裁判決について疑問なしとしない。
 なおビラ配り事案では「出勤してくる従業員を巾約一・六メートルの工場内通路の片側ないし両側にならんで迎え、出勤者一名に対し通路手前にならんだ者から順次一名が出勤者の前に「おはようみなさん」を差し出し、出勤者が受け取らなければ、次にならんだ者が続いてその出勤者の前にビラを差し出し、雨天のため従業員が雨具等を所持していたこともあつて、混乱がないではなかった」日本エヌ・シー・アール事件東京高裁昭和52年7月14日判決『労働判例』281号が無許可ビラ配布を理由とする出勤停止処分を是認したように、たとえ就業時間外であっても、両側に取り囲む態様で半強制的なビラ配布の態様や混乱を予想できる態様では、企業秩序を乱すものとして懲戒処分も妥当なものであると私は考える。
 いずれにせよ、明治乳業事件や倉田学園事件の判例があるため就業時間外のビラ配布については、企業秩序を乱す態様とみなされないケースでの懲戒処分は慎重にならざるをえない。

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