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2012/12/07

入手資料整理88

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清水昭俊『家・身体・社会 家族の社会人類学』弘文堂1987
厳密な定義で定評のある人類学者 国立民族学博物館総合研究大学院大学名誉教授 専門はオセアニア地域の民族誌だが、日本の家の分析が優れていると思う。
蒲生-中根論争に関連して中根批判 154頁以下
 「中根が出自集団の基準としたものは、出自の理論的モデルである。‥‥しかしながら現実の社会過程が観念の再現とは限らない。‥‥父系集団とは父系モデルに近似した事例の称にすぎない‥‥日本の家の連続者として規範が指定するのは第一に長男子、第二に娘、第三に養子である。第一の規則は父系的継承、第二の規則は双系的継承、第三の規則は事実上非出自的継承を構成する。中根は家は「血縁集団」ではないとするのは第三の規則まで視野に含めるからであって-勿論それは適切な扱いである-仮に視野を第一の規則に絞るならば家は父系的に連続するといえる。このような優先順位を伴った規則の複畳と称したい。そしてこの観点からいわゆる父系集団の事例を検討するならば、その多くが父系親以外の者を帰属させる副次的規則を伴っていることが分かろう。アフリカの父系集団にしばしば「娘の子供達」と言われる準父系親(婚入した男の父系子孫)などが含まれている。双系親・姻族・養子の帰属を許している場合も多い。韓国の門中など、この点で徹底して父系的規則のみによって構成される事例はむしろ例外的との観すらある。規則の複畳という規範の構成を考慮に入れるならば、日本の家・同族といわゆる父系出自集団との差異がいわれるほど大きいわけではない。‥‥政治的関係が父系系譜に沿って編成される体系の中には、その父系系譜自体が政治の実勢に合わせて操作されることがある。‥‥ヤップの事例はその一例であって‥‥日本の家・同族といわゆる父系出自集団の事例とは互いに異質なのではない。規則の複畳および出自の文化的構成の二点を考慮するならば、両者が互いに連続的であることが分かろう」
230頁以下で日本の出自形式(準父系)について説明している・
「(中国、朝鮮・韓国の)宗族・門中が父系出自で構成されているのに対し、日本の家・同族の構成は、せいぜい父系近似であって、忠実に父系的ではない。しかしながらこの差異もまた、質的な懸差ではなく,連続的差異とみなしうる‥‥
 日本の出自形式について、蒲生(正男)は同族は「practicalなlevelで言うなら‥‥cognatic lineage‥‥idealなlevelで言うならpatri-lineage」と言っている。また末成(道男)は同族における系譜パターンを「結果的選系」と表現している。これに対し筆者は次のように考える。家の継承の典型的な規則は、第一に長男子による継承を、それが不可能の場合には長女子による継承を、そしてこれらがいずれも不可能な場合の最後の方策として養子による継承を規定している。この規則の所産として、家と祖先と子孫とを結ぶ系譜には、男の連続の間に散発的に女が加わり、さらに少ない頻度で養子が介在することとなる。この系譜パターンは、双系出自の諸形式でもっとも父系に近い「準父系」(quasi-agnatic)などと表示されるものに相当する。‥‥
 エミックな[註-当事者が抱いている解釈 一部の差異をあえて無視して 分析単位を同定しようとする視点をイーミックと呼ぶhttp://www.int-arch.net/emic-etic.html]イデオロギーとしては父系出自を強調する事例においても、しばしば準父系への傾斜が観察される。父系的理念は結婚後の夫方=父方居住を規定するが、それに反する妻方居住をまったく排除する父系社会はむしろ稀である[註-この見解は妻問い婚があるからとか、妻方居住があるから父系を原則とする社会ではないという発想が人類学的にはナンセンスであることを示唆している]。つまり理念上は父系出自を掲げる集団も、生活集団としては事実上準父系的に構成されている場合が多い。そしてこの事実上の構成を規則にとり込んでいる事例も少なくない。つまり集団を継続すべき父系親(agnatic)がない場合の、女性成員の息子という双系親(cognate)の登用を規則が規定し、あるいは許容する場合がある。古典的な事例はagnatic・cognateの語の起源地である古代ローマおよびギリシアであり、実をいえば中国もまたそうである。‥‥
 ‥‥系譜の準父系化の頻度において日本の家・同族はポリネシア的複系に近似する。しかし所属集団を選択する余地の制限において、日本の事例は父系出自集団に近い。出自形式において日本の家・同族は、中国の宗族のような父系(厳密には準父系)出自集団と、ポリネシア的複系集団の間に位置するといえよう。
‥‥日本の事例においては、父系出自に沿った系譜の継続が困難なのである。それは系譜の連続者を求める範囲が狭いことと関連する。‥‥系譜の連続は個々の夫婦ごとに行われ、しかも各夫婦の子供の中にのみ求められる。系譜の連続を傍系親にまで拡大して求めることがない。それは同世代成員の区分・分断と読みかえることができる」

  「規則の複畳」というのがこの人らしい分析で、日本の家継承のルールは、優先順位で父系それがだめなら双系それがだめなら非出自となるというのはフィールドワークをやっているからこそよく説明できるのだと思う。
 
 中国、朝鮮・韓国の宗族・門中は異姓養子を排除するルールなので、直系継承できない場合は、傍系親が養子となるが、日本の家は同族の傍系親よりも非同族・非血縁の婿養子や養子を選択するのはなぜかというと、日本は、高麗のように元を宗主国としていないため、宗法による親族集団の再編はなされなかったし、朝鮮のように儒学者による廃仏運動もなく、朱子家礼による祖先祭祀はほとんど受容されなかったこと。徳川幕府は朱子学を官学としたが、寺請制度による宗教政策をとったためである。

また日本においては家の継承は家職の継承であるから、傍系親より経営能力のある他人の婿養子ないし非血縁養子を継承者にしたほうが得策だからとも考えられる。先進地域では村落共同体は同族との結びつきよりも地縁(たとえば宮座)の結びつきのほうが重要であり、本家と分家も横並びか競争関係で仲が悪いことが多い。
 非血縁継承のはじまりは院政期に特定の家に(例えば局務家の中原氏とか)に固定された官職請負体制の実務官人に由来すると考えるが、大阪の商家に女系継承が多いとされるのは、家職の経営能力のある継承者を求めるためだと考えられる。
 この違いはけっこう大きいと思うが、それでも日本の家・同族はポリネシアよりは父系に傾斜している出自形式なのであって、我が国の家・同族は、中国の宗族とポリネシア的複系の中間の位置づけで「準父系」と定義する清水氏の学説は大筋で妥当なものだと思う。
 引用したのうにローマやギリシアも「準父系」の位置づけなのであって、むしろ純粋な父系のほうが稀なのである。その意味で純粋類型とみなされる韓国の門中はすごいとも思う。

1-112
清水昭俊「序章 周辺民族と世界の構造」清水昭俊編『周辺民族の現在』世界思想社1998年
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金山直樹『法典という近代 装置としての法』頚草書房2011年
フランス法の概説書以外でナポレオン法典(民法典)の父、ポティエの業績に言及した書物は少ない。日本の「民法典の父」梅謙次郎の評価も読むべき価値があった。

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