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2013/01/14

入手資料整理96

(争議権・ピケッティングに関連して基本的な判例その一)

9918滝野川事件 最高裁大法廷昭和24年5月18日(Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集3巻6号772頁
はじめて労働法と刑法の関連を示した判決
「勤労者の労働条件を適正に維持しこれを改善することは、勤労者自身に対して一層健康で文化的な生活への途を開くばかりでなく、その勤労意欲を高め、一国産業の興隆に寄与する所以である。然るに勤労者がその労働条件を適正に維持改善しようとしても、個別的にその使用者である企業者に対立していたのでは、一般に企業者の有する経済的実力に圧倒せられ、対等の立場においてその利益を主張しこれを貫徹することは困難なのである。されば勤労者は公共の福祉に反しない限度において、多数団結して労働組合等を結成し、その団結の威力を利用し必要な団体行動をなすことによつて適正な労働条件の維持改善を計らなければならない必要があるのである。憲法第二八条はこの趣旨において、企業者対勤労者すなわち使用者対被用者というような関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならない。それ故、この団体権に関する憲法の保障を勤労者以外の団体又は個人の単なる集合に過ぎないものに対してまで拡張せんとする論旨の見解にはにわかに賛同することはできないのである。もとより一般民衆が法規その他公秩良俗に反しない限度において、所謂大衆運動なるものを行い得べきことは、何人も異論のないところであろうけれど、その大衆運動なるの一事から苟くもその運動に関する行為である限り常にこれを正当行為なりとして刑法第三五条に従い刑罰法令の適用を排除すべきであると結論することはできない。所論の労働組合法第一条第二項においても労働組合の団体交渉その他の行為について無条件に刑法第三五条の適用があることを規定しているのではないのであつて、唯、労働組合法制定の目的達成のために、すなわち、団結権の保障及び団体交渉権の保護助成によつて労働者の地位の向上を図り経済の興隆に寄与せんがために、為した正当な行為についてのみこれが適用を認めているに過ぎないのである。従つて勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪に該当する行為が行われた場合、常に必ず同法第三五条の適用があり、かゝる行為のすべてが正当化せられるものと解することはできないのである。」

9919山田鋼業事件 最高裁大法廷昭和25年11月15日 (Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集4巻11号2257頁 判例タイムズ9号53頁
事案は罷業中に組合の占有下で生産管理にはいり、経営担当者の指揮命令を排除しハンマー、鏨、モンキーレンチを製作販売して、組合員の賃金に充当し、鉄板約29屯を搬出したことが窃盗罪に問われたもの。
 要旨は、団結権・団体行動権は、国民の平等権・自由権・財産権に絶対的に優位するものとは認められない。争議権の正当性の限界は、法律制度の精神を全般的に考察し決せられるべきもので、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでない。当然に勞働者が企業の使用収益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するのでもない。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を搖がすような争議手段は許されないというもの 。生産管理をはじめて違法とした。市民法秩序が根幹であることを示した点で意義がある判決に思える。
「論旨は、憲法が労働者の争議権を認めたことを論拠として、従来の市民法的個人法的観点を揚棄すべきことを説き、かような立場から勞働者が争議によつて使用者たる資本家の意思を抑圧してその要求を貫徹することは不当でもなく違法でもないと主張する。しかし憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない、寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権の正当性の限界である。その調和点を何処に求めるべきかは、法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、労働者の団体行動権等のためある程度の制限を受けるのは当然であるが、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでないと認められる。それは労働者側の争議権を偏重して使用者側の権利を不当に侵害し、法が求める調和を破るものだからである。論旨は理由がない。
 同第三点について。
 論旨は生産管理が同盟罷業と性質を異にするものでないということを理由として、生産管理も同盟罷業と同様に違法性を阻却される争議行為であると主張する。しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。勞働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に勞働者が企業の使用収益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するのでもない。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を搖がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは勞働力の給付が債務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点において同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
よつて論旨は採用することができない。(中略)
 同第五点について。
 論旨は、原判決が、本件鉄板は会社の占有を完全に離脱したものではないので被告人等が擅にこれを工場外に搬出した行為は会社の所持を奪つたものであり、窃盗の罪責を免れない、と判示したことを非難し、生産管理の下においては占有の所持は勞働者側にあり、会社は観念上間接占有を有するに過ぎないから、所持の奪取即ち窃盗はあり得ない。被告人等には占有奪取の意思もなく、不正領得の意思もなかつた。と主張する。しかし労働者側がいわゆる生産管理開始のとき工場、設備、資材等をその占有下においたのは違法の占有であり、判示鉄板についてもそのとき会社側の占有に対して占有の侵奪があつたというべきであるが、原判決はこれを工場外に搬出したとき不法領得の実現行為があつたものと認定したのである。これを証拠に照らし合わせて考えてみても、被告人等が争議期間中の労働者の賃金支払等に充てるために売却する目的を以て、会社側の許可なくしてこれを工場外に運び出し、自己の事実上の支配内に収めた行為は、正に不法領得の意思を以て会社の所持を奪つたものというべきであつて、原判決がこれを窃盗罪にあたるものとしたのは当然である。」
*コメント 労働法学者から次のような批判がある。「この判決から推論されるものは「暴力の行使」の違法性判断基準は「私有財産制度の基幹」ということになる。しかし、この「私有財産制度の基幹」を基準として考えるということは、「暴力の行使」を市民法的な視点のもとで考えるものであり、とうてい容認しえない」9919-1高橋保「争議行為と暴力の行使(故久禮田益喜教授追悼号)On the Strike and the Exercise of Violation」『創価法学 』務5(1/2) 1975〔ネット公開のため紙出力せず〕

9920理研工業小千谷工場事件 最高裁大法廷昭和26・7・18 (Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集5巻8号1491頁 判例タイムズ13号75頁
事案は会社業務の妨害の現行犯として検挙に向かった警官などに対してスクラムを組んで公務の執行を妨害したとして起訴されたものだが、東京高裁は無罪とし、最高裁も支持したもの。
「本件公訴事実中公務執行妨害の点につき原判決が無罪とした部分に対する非難であるが
 (一) この点に関し、原判決が無罪理由として判示するところを仔細に検討するに、原判決は先ず、証拠に基ずき、昭和二三年五月二三日の検挙は、警察官等の工場正門到着と殆んど同時に開始され、その以前には、被告人等において積極的な抵抗を試みていないし又その時間的余裕もなかつたと認定しているのであつて、この点所論の如くスクラムによつて振切るとか体力を以てはね返す等積極的な抵抗のあつた事実を認定していないのである。原判決のかかる認定は、その証拠説明に徴し十分首肯し得るところであつてその間所論の如き採証の法則に違背したと認むべきものはない。
 この点に関する論旨は、結局原審の適法な証拠の取捨判断ないし事実認定をいわれなく非難するに過ぎない。
 (二)次にスクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げた被告人等の行為自体が所論の如く有形力の行使即ち暴行となるか否かの点について原判決は、前記の如き認定事実を基礎として、結局積極的抵抗を欠くものとして証明不十分と結論しているのである。即ち原判決は、被告人等がスクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げた事実を認定してはいるが、それだけで警察官等に対して暴行脅迫が行われたものとは認定していないのである。故にこの点に関する論旨も結局原判決の事実誤認を前提とする議論であつて採用するを得ない。
 (三) 論旨は更に進んで、以上の如き被告人等の行為が暴力でないとすれば威力であるから、公務執行妨害罪が成立しないとしても、業務妨害罪が成立すると主張するのであるが、業務妨害罪にいわゆる業務の中には、公務員の職務は含まれないものと解するを相当とするから、公務員の公務の執行に対し、かりに、暴行又は脅迫に達しない程度の威力を用いたからといつて、業務妨害罪が成立すると解することはできない。故にこの点に関する論旨も理由がない。」

9920-1朝日新聞西部本社事件 最高裁大法廷昭27.10.22(最高裁判例検索システムプリントアウト) 最高裁判所民事判例集6巻9号857頁
 民事事件であるが、事案は部長級の非組合員が印刷局活版部の罷業対策として四版の大組みにとりかかろうとしたところ、活版部員約30名がスクラムを組んで3名の部長を取り囲んで作業をたまたげたので、版組作業を断念して引き揚げたが、一部長が無理矢理引っ張れ出されて左手小
指に治療日数五日を要する傷害を被った。これがため当日発行の新聞は平常通り輸送されたのは僅かに五万九千部列車に積遅れたためトラックで輸送されたもの九万八千部で他の四七万部は全部一日遅れとなったというもの。
「当時上告人等組合員側のした行為は単なる職場占拠に止まらず、被上告人会社側の非組合員職員によつてなさんとした業務の遂行を暴行脅迫をもつて妨害したものであつて、違法な争議行為であることは寔に明瞭といわねばならない。けだし、同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するが如き行為は、叙上同盟罷業の本質とその手段方法を逸脱したものであつて到底これを目して正当な争議行為と解することはできないのである。そしてこの事は法令等に特別の規定が存しない限り労働事情の如何によつて右解釈を左右されるものとは考えられない。若しそれ所論の如く使用者側による所謂切り崩し又はスト破り行為等の行われる恐れありというだけでは、未だもつて上告人等労働者側の前示行為を正当化せんとする根拠とはなし難いものと解せられるのである。又被上告人会社側の僅少な職員による作業も、たとえこれをもつては当時予定作業(四版大組作業)の全部を完遂することはできなかつたとしても、その作業の遂行をなさんとしたものであることは右原判決の認定事実によつて認めることができるところであり、次に原判決の新聞紙の持つ重大使命云々並びに損害に関する各判示は、前者は新聞紙の重大使命に鑑み当時一刻も猶予し難い事態であつたため非組合員職員による作業を遂行せんとしたのを違法な行為によつて之を妨害したものであるとの意味の判示であつて、新聞従業員に正当なる労働争議乃至争議行為権のあることを否定した趣旨でないことは明瞭である。又後者は本件違法な争議行為による損害をも含めた意味の判示であつて、正当な同盟罷業によつて生ずる本然の損害を示した意味の判示でないことも亦明瞭であるのである。」

  9921三友炭鉱事件 最三小昭31.12.11(Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集10巻12号1605頁 判例時報96号1頁いわゆるピケッティングが威力業務妨害罪に当たらず無罪とした判例。
要旨 炭坑労働組合が同盟罷業中一部組合員が罷業から脱退して会社の石炭運搬業務に従事した炭車を連結したガソリン車の運転を開始した際、組合婦人部長たる被告人が、右一部組合員の就業は裏切り行為であり、これにより罷業が目的を達成し得なくなると考え、既に多数婦人組合員がガソリン車前方路上に立ち塞がり、座り込みまたは横臥(おうが)してその進行を阻止していたところに参加して「ここを通るなら自分たちを轢き殺して通れ」と怒号して車の運転を妨害した行為はいまだ違法に刑法234条にいう「威力を用い人の業務を妨害したる者」というに足りない。
要所は「組合が争議権を行使して罷業を実施し、所属組合員の一部が罷業から脱退して生産業務に従事した場合においては、組合(従って組合役員ならびにその意思に従った組合員) は、かかる就業者に対し口頭又は文書による平和的説得の方法で就業中止を要求し得ることはいうまでもないが、これらの者に対して暴行、脅迫もしくは威力をもって就業を中止させることは、一般的には違法である。…… しかし、このような就業を中止させる行為が違法と認められるかどうかは正当な同盟罷業その他の争議行為が実施されるに際しては特に諸般の情況を考慮して慎重に判断されなければならないことはいうまでもない」
*私の見解-本件は組合から脱退しない経営側と縁故のある罷業に反対する組合員の業務を罷業派組合員が妨害した事件だが、組合の統制を重視し組合員の消極的団結権(就労の自由)に否定的な判断であるが、英米など比較法的にみて現代的水準からみると疑問に思える判例である。つまり英米では組合員であろうとストに加わらない権利を制定法で明文化しており、個人の権利としては対等なのである。経営者との縁故ゆえに裏切り者とされ就労の権利を否定されるべきではない。 労働基本権思想レジームからの脱却が求められる。

9922ホテル・ラクヨー事件 最一小昭和32.4.25(Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集11巻4号1431頁 判例時報122号18頁
「原審の是認した第一審判決の認定した事実によれば、被告人らは判示会社と争議中組合員数十名ともにスクラムを組んでO外四名をとりかこみ、労働歌を高唱し、ワッショ、ワッショと掛声をかけて気勢をあげながら、約二〇分間に亘り、押す、体当りをするなどの行動を続け、以て多数と共同して右五名に対し暴行を加えたというのであって、かかる被告人の所為が刑法二〇八条の暴行に当ることは明らかである。そして、所論労働組合法一条二項は、勤労者の団体交渉における所為について無条件に刑法三五条の適用があることを規定したものではなく、右所為が刑法所定の暴行罪又は脅迫罪等の犯罪にあたる場合においてもこれを正当化するものと解することを得ず、かかる所為は憲法二入条の保障する勤労者の団体行動権の行使にあたるものといえないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年五月一八日大法廷判決)。」

9923羽幌炭鉱鉄道事件 最高裁大法廷昭和33.5.28 (Lexisプリントアウト)最高裁判所刑事判例集12巻8号1694頁
事案は罷業決行派が脱退者などの採炭業務を制止し、出炭業務を不能にするため軌道上でスクラムを組んだり坐り込むなどして電車の運行を阻止したものであり、昭和31年三友炭鉱事件判決(無罪)と類似しているが、本件は有罪とされた。三友炭鉱事件では被告人じしんの違法性が軽微と判断されたが、本件では「長時間にわたり、一〇〇余名の者と共に電車軌道上およびその附近に座り込み又は立塞り或はスクラムを組み且つ労働歌を高唱する等の挙に出で、同会社電車運転手R等の運転する電車の運行を阻止し威力を用いて同会社出炭業務を妨害した」ことは「諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる」としたのである。、

「… 同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすること
は許されないものといわなければならない(昭和二四年(オ)一〇五号同二七年一〇月二二日大法廷判決、民集六巻九号八五七頁)。されば労働争議に際し使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するたに執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情からみて正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。本件について原審が確定した事実によれば、北海道苫前郡a町a炭鉱鉄道株式会社b鉱業所の従業員約七八〇名をもつて組織する労働組合は、右会社に対し労働協約の改訂、割増賞与金の要求、福利厚生施設の改善等を要求して昭和二五年五月頃から争議に入り、数次交渉を重ねるうち、右組合員中争議から脱退するものが出てこれら脱退は従業員会を組織し、その数は漸次増加して約三三〇人に達したが、一方会社では従来から会社の業務に従事していた組夫約五〇名を従業員に採用し、これらの者と職員ならびに従業員会の者で採炭を続行していたので、罷業決行派はこれを制止しようとし互に反目して抗争を続けて来たものであるが、被告人B、同A等は、罷業決行派の者と共に同会社の出炭業務を不能ならしめようとし、判示第一の一ないし三記載の三日長時間にわたり、一〇〇余名の者と共に電車軌道上およびその附近に座り込み又は立塞り或はスクラムを組み且つ労働歌を高唱する等の挙に出で、同会社電車運転手R等の運転する電車の運行を阻止し威力を用いて同会社出炭業務を妨害したというのである。
 以上諸般の事情を総合すれば、本件行為は正当なものとは認められず、不法に威力を用いて会社の業務を妨害したものというのほかないのであるから、原判決が右行為に刑法二三四条、二三三条を適用処断した第一審判決を肯認したのは正当であつて、原判決には所論のような違憲違法はない。‥‥」

 9924進駐軍横浜事件 最二小昭33.6.20最高裁判所刑事判例集12巻10号2250頁(Lexisプリントアウト)
 「‥‥憲法二八条は勤労者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障しているが、この保障も勤労者の争議権の無制限な行使を許容し、それが国民の平等権、自由権等の基本的人権に優立することを是認するものではなく、従つて勤労者が労働争議において不法に使用者側の自由意思を抑圧するような行為をすることは許されないこと及び同盟罷業は必然的に業務の正常な運営を阻害するものであるが、その本質は労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として目らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為は、右同盟罷業の本質とその手段方法を逸脱したものであつて、正当な争議行為と解することのできないことは、すでに当裁判所の判例が示しているところである(昭和二三年(れ)一〇四九号同二五年一一月一五日大法廷判決、刑集四巻一一号二二五七頁、昭和二四年(オ)一〇五号同二七年一〇月二二日大法廷判決、民集六巻九号八五七頁)。原判決の確定した事実によれば、被告人三名は駐留軍横浜陸上輸送部隊に勤務する日本人労務者により組織された同部隊労働組合の組合員であつたが、同組合は昭和二八年七月二八日から七二時間ストライキに入つたところ、同月二九日午前六時四〇分頃判示場所の右部隊バス通用門からストライキに参加しなかつた同部隊勤務の日本人運転手B外六名が駐留軍軍人、軍属等を輸送するためa駅に赴くべく各一台のバスを運転し一列縦隊で順次出門しようとするや、被告人三名は右通用門前においてピケラインを張つていた組合員約三〇名位と共謀の上、その出門を阻止しようとして右門前において、一、被告人Cはバスを一台も出すなと呼びながら組合員数名とともに右Bの運転するバス前面の道路上に寝転んで、その進行を停止せしめ、二、被告人Dは所携の赤旗竹竿を右B運転のバス運転台窓からバスのハンドルめがけて突き込み、三、被告人Eは組合員数名とともに右B運転のバス内に乗り込み、車外の組合員等と呼応して同人を運転台窓から多衆の威力を示し且つ数名共同してバスの外に押し出して転落せしめる暴行を加えて、Bをしてバスの運転を不能ならしめると同時に、同人に続いてバスを運転して出門しようとしたF外四名の出門をも不能ならしめ多衆の威力を示して右B外五名の運転業務を妨害したというのであつて、かかる被告人らの所為が、争議権の行使として許された範囲内の行動ということができないことは前記判例の趣旨に徴し明らかであるばかりでなく、不法に威力を用いて使用者側の業務を妨害したものというのほかないのであるから、原判決には所論のような違憲、違法はないと云わなければならない。(なお昭和二七年(あ)四七九八号同三三年五月二八日大法廷判決参照)‥‥」

 9925東北電力大谷発電所(いわゆる電源スト)事件 最一小昭33.12.15最高裁判所刑事判例集12巻16号3555頁 判例タイムズ86巻96頁 (Lexisプリントアウト)
 ピケットの「平和的説得」の限度を真正面から判示した重要判例とされている。というのは、本件が「会社側から臨時に雇われたが説得に応ぜず強引にピケラインを突破しようとする」状況での違法性判断だからである。あくまでも会社の指示どおり業務を遂行しようとする臨時雇用者と、ストライキ決行の労働組合員との衝突という事案であるからである。
 原審の東京高裁昭31.7.19判決は第一審の有罪判決を破棄して威力業務妨害にならないと判示した。
 
最高裁が破棄した東京高裁昭31.7.19判決)
「電源ストの当否について審究するに、右挙示の各証拠及び記録編綴の「電源職場労務提供拒否スト実<要旨第一>施要領」と題する書面(略)を総合すると、本件電源ストは発電所の水車室、機械室、配電盤室その他堰堤取水口等の電源職場において従業員が一旦、発電施設の運行を停止せしめた上その職場を離脱し一定時間労務の提供を拒否することにより一定の減電量の実現を目的とする争議方法として案出されたものであつて、これにより会社の発電量の低下を来たし、その業務の正常な運営を阻害するものであるが、本来、争議行為において使用者の業務の正常な運営を阻害なる結果を伴うことに、その性質上巳むを得ないところであるから(労働関係調整法第七条)、C1がその争議方法として上記のような電源ストを決定し、その実施によつて会社の正常な業務の運営が阻害せられ水利の妨害を受けることがあつても、このことのみを以て不当な争議方法であるとはいえない。ただ、この争議方法によるときは、電源職場従業員が会社側より発電施設の操作を停止することなく、現状のまま引き継ぐよう要求されても、これに従うことなく敢て発電施設の運行を停止せしめ、一時会社の施設の管理を行う状態を伴う点において、不法性を帯びるやの疑を生ずるけれども、C1がかかる電源ストの方法を採用なるに至つた理由を考按するに、原審証人A1、当審証人B1、同B5等の各供述を総合すると、電気事業は最も重要な基礎産業としての公益事業であるから、全国ないし一地方のC1従業員が一斉に労務不提供入れば、社会的経済的に頗る深刻な影響をもたらすことが予想されるので、当時C1としてはかかる大規模なストの実施を良識的に避けて、電気の供給に実質的な障害を生ぜしめないよう減電量を定め被告の少ない一定時間、一部発電所に限つて行う電源ストの方法を採つたものであること、かように電源ストは一部発電所を対象として限られた時間だけ行う争議方法であるから、単に職場を放棄するのみでは会社側非組合員の手により操業を継続させることが容易であり、従来のC1争議の経験に徴しても、会社側は当然そのような対抗策に出ることが予想せられ、かくては短時間小部分の電源職場を単純に離脱するのみでは、その実効を挙げ得ないため一時発電機の運転を停止して減電量十五パーセント程度(保安電力及び一般需要家に支障を生ぜしめないよう考慮し電源ストとしては最低線と認められる限度)を実現確保する必要があるとして会社の上記要求に従うことなく、敢て発電施設の操作を停止なる方法を採るに至つたものであることが認められるのである。して見れば、叙上の限度において会社側の前記要求に応ぜず、発電停止の準備操作の間一時、会社の当該施設を会社側の意思に反して管理する状態に立ち至ることも、電源職場の特質上洵に已むを得ないところといわなければならない。然らばC1の採用した本件電源ストの方法は、正当な争議手段と認めることができるのである。
 (三) 次に前項(二)掲記の諸証拠によると、C1中央本部は電源スト実施にあたり会社側が対抗策として臨時人夫その他の代替要員を現場に派遣し、右発電停止の準備操作を防ぎ会社の操作を継続せしめようとした場合には、右ストの実効を期するため発電停止のための操作を実施する間ピケットラインを以て非組合員の現場(当該所要部分の施設)への立入を阻止すると共に飜意するよう説得し、C1組織の威力を示して争議組合員に協力させるよう努力し、更に説得困難のときはスクラムを組んでも阻止し、指定の減電量を実現すべく、ただ飽くまでも暴力には訴えず、これを阻止することができないで職場放棄定刻迄に操作が完了しないときはそのまま退去する旨の方針を昭和二十七年七月中に決定し、右方針はその当時各地方本部に指示されえのであるが、本件電源ストの実施に先立ち、東北地方本部は右方針と同趣旨の記載ある前顕「電源職場労務提供拒否スト実施要領」と題なる文書を作成し、同年八月二十八日頃管下各県支部責任者会議において右実施要領を解説してその趣旨を徹底せしめ、C1C2支部は同年九月十七日頃被告人G1を含む同支部常任執行委員から管下各分会責任者に右実施要領を詳しく説明し、C3分会は同月十九日頃同分会常任執行委員会を開催して前示実施要領を確認し、同分会執行委員を管下各地区班の職場大会に派遣してこれが周知徹底を計り、更に同月二十三日頃被告人G1以外の被告人等五名を含む組合員等出席のうえ合同地区班会議を開催し、前記実施要領の周知徹底に努めたことが認められる。
 右によつて見るときは、本件電源ストにおけるピケッテイングも一般のそれと同じく「平和的説得ないし団結力の示威」を本来の建前とし、ただ説得困難の場合に限りスクラムによつて会社側臨時人夫等非組合員の現場立入を阻止なることを認めでいるのてあるが、本件電源ストの性質が上記のようなものである以上、その目的を貫徹するため、発電機の運転を停止する準備操作をするに際し、会社側から臨時に雇われた人夫が容易に説得に応ぜず、強引にピケラインを突破しようとする場合には、右準備操作を妨害されないための手段としてその操作実施の時間に限りスクラムによるピケッティングの方法をとることは已むを得ないところとして許容されなければならない。従つて本件電源ストの実施にあたりC1が右のようなピケッティングを指令し、被告人等が該指令に従つて時間、場所及び方法において右実施に必要な最少限度の行動をしたとしても、これを目して正当な争議行為の範囲を超えたものということはできない。(略) 本件の事実関係を次の如く判定なるのが相当であると認める」。
   (中略)
「被告人G2が前掲「電源職場労務提供拒否スト実施要領」に従い、E1発電所操作規程に定められた全停断水の準備操作として、同発電所取水口の水路排水門(略)を手動式ハンドルによつて開扉しようとするや、F2がこれを阻止しようとして接近して来た。被告人G1がF2に「帰つて呉れ」と言つたが殆んど耳もかさなかつたので、被告人G2を除く被告人等五名が、水路排水門の門扉上の前記ハンドルを背にして、F2に向つて左側から被告人G1、同G3、同G5、同G6、同G4の順で右ハンドルに至る進路いつぱいに横に並んでスクラムを組み、F2の進入を阻止する態勢(原判示の「立塞り」)を執つた。そして被告人G1から更にF2に「止めて帰つて呉れ」と言つたが聴き容れず、飽くまでスクラムを突破しようとしてスクラムを組む被告人等の股間や腕の間際を狙つて潜り抜けようとしたが割り込めないと見るや、附近から長さ六尺余、幅四寸位、厚さ一寸余の角材を携えて来て、これを水路排水門の三角点に架け渡して橋代用とし、これを渡つて右排水門のハンドルに近付こうとしたが、スクラム左端(被告人G1)にこれを阻止された。するとF2はその反対側に駈け寄りスクラムの間隙を狙つて潜り抜けようとし、これを被告人等が阻止なると、また他の間隙を狙うという風に、同じ動作を幾度か繰り返すうち、スクラム右端の被告人G4がその右側間際を通り抜けようとするF2の着衣(作業衣)の袖を一回だけ片手で掴み、またF2が自ら同被告人の足に当り、その脇に捨ててあつた木葉溜りに滑つて転ぶ等のことがあつたが、間もなくF2は橋代用の角材を渡つて前記排水門扉のハンドルに取り付き、既に被告人G2の右操作により約十糎ほど開いていた同門扉を閉めようとしたので、被告人G1はこれを阻止するため右ハンドルに上半身で乗り掛ると共に、被告人G2に対して本流排砂門(略)を開扉するよう指示したが、その直後、来合せた前記F3より「やめろ」と言われたので、同排水門の開扉操作半ばにして右排水門を退去し、一方被告人G1より右指示を受けた被告人G2は原判示第二の如く前記排砂門の北端の門扉を附近にある操作小屋の電鍵を操作して約十五糎ほど開き、E1発電所の発電に使用するために堰き止められているH1川の流水の一部を、間もなく同所に駈け付けた右F2によつて閉鎖されるまでの数分間、H1川本流に放流したものである。」という事実を認定しておきながら「労働組合法第一条第二項但書にいわゆる「暴力の行使」と目せらるべきやの点であるが、前記認定のように相手方が正当なものと認められる程度のスクラムを強引に突破しようとなる瞬間において、相手方の着衣の袖をただ一回だけ掴む程度のことは、右スクラムの状況及び一般社会通念に照らし不法性がないものと解するのが相当である。然らば被告人G4に右程度の所作があつたからといつて、直ちにこれを暴力の行使と断ずることは当を得ない。従つて被告人等の右行為が正当なる争議行為の範囲を逸脱するものとして、被告人等に右会社及び右F2に対する各業務妨害の罪責を負わしめることはできない。次に被告人G2の前記水路排水門及び本流排砂門の一部開扉によつて、E1発電所の用水がH1川本流へ若干放流され、その結果幾分なりとも会社の水利を妨害すべき状態を発生せしめたとしても、前記(一)及び(二)の理由により右各水門の開扉は、被告人G2が前記の分会闘争指令に基き同発電所の全停断水のため、成規の方法による準備操作として行つた正当なる争議行為と認められる以上、労働組合法弟一条第二項本文、刑法第三十五条により罪とならないものといわなければならない。
 要するに、本件公訴に係る業務妨害の事実はその訴因たる暴力の行使が認められないので、結局、犯罪の証明なきに帰し、また水利妨害の事実は法律上罪とならないに拘らず、原審が何れもこれを有罪と認定したのは、判決に影響を及ぼすこと明らかな事実の誤認ないし法令の解釈適用の誤を冐したものであるから、論旨は理由がある。‥‥」

 
 (上記を覆した最高裁判決)
 威力業務妨害に当たらないとする高裁判決に対して、最高裁はスト破りの代替雇用者であっても、容易に説得に応じないからといってピケットにより阻止することは違法であるとした。
 
「昭和三三年五月二八日の大法廷判決は、前示の引用した判文に引き続き「されば、労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情から見て正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」と判示している。しかるに、原判決は、判示(三)において、
「次に前項(二)掲記の諸証拠によると、G中央本部は、電源スト実施にあたり会社側が対抗策として臨時人夫その他の代替要員を現場に派遣し、右発電停止の準備操作を防ぎ会社の操業を継続せしめようとした場合には、右ストの実効を期するため発電停止のための操作を実施する間ピケツトラインを以て非組合員の現場(当該所要部分の施設)への立入を阻止すると共に翻意するよう説得し、G組織の威力を示して争議組合員に協力させるよう努力し、更に説得困難のときは、スクラムを組んでも阻止し、指定の減電量を実現すべく、ただ飽くまでも暴力には訴えず、これを阻止することができないで職場放棄定刻迄に操作が完了しないときは、そのまま退去する旨の方針を昭和二七年七月中に決定し、右方針はその当時各地方本部に指示されたのである……ことが認められる。右によつて見るときは、本件電源ストにおけるピケツテイングも一般のそれと同じく「平和的説程ないし団結の示威」を本来の建前とし、ただ説得困難の場合に限りスクラムによつて会社側臨時人夫等非組合員の現場立入を阻止することを認めているのであるが、本件電源ストの性質が上記のようなものである以上その目的を貫徹するため、発電機の運転を停止する準備操作をするに際し、会社側から臨時に雇われた人夫が容易に説得に応ぜず強引にピケラインを突破しようとする場合には、右準備操作を妨害されないための手段としてその操作実施の時間に限りスクラムによるピケツテイングの方法をとることは已むを得ないところとして許容されなければならない旨」判示しているのである。しかし、原判決の右前段の認定によれば、本件電源ストにおけるピケツテイングは、
説得前すでに非組合員の現場への立入を阻止する目的を以てなされるものであること明白であつて、説得行為のごときはその実、名のみに過ぎないものであることを看取するに難くはないのである。にもかかわらず原判決は、前記判示後段のごとく「平和的説得ないし団結の示威」を本来の建前とし、ただ説得困難の場合に限りスクラムによつて会社側臨時人夫等非組合員の現場立入を阻止することを認めているのであると判示しているのは、判決理由に喰い違いがあるか又は重大な事実誤認であるといわなければならない。しかも、原判決の認定した事実関係(論旨第二点(ニ)(ロ)の摘録事実参照)の下においても、前記判例にいわゆる諸般の事情から見て正当な範囲を逸脱し刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない場合に該るものということができる。されば、原判決は、この点でも破棄を免れない。」

9926四国電力財田発電所事件 最一小昭33.12.25 最高裁判所刑事判例集12巻16号3627号(最高裁判例検索システムプリントアウト)

 事案は電源ストでスクラムを組んで会社側の業務を妨害したにもかかわらず威力業務妨害罪が成立せず無罪と判示した高松高裁昭32.11.25判決をら破棄差戻しの判決を下したものである。「原判決が、その判示三において、労動争議の本質、争議行為が正当であるか否かの基準等につき所論摘示のごとく判示したこと、並びに、その判示四において、本件各証拠を綜合して認められる事実として、昭和二十七年十一月七日午前十時より同十二時まで判示a変電所における停電ストライキの争議行為に対し、B会社側がこれに対抗して停電を拒否して送電を継続するため、同会社b支店の庶務課長C、同労務係長Dは臨時工員E、同Fと共に同日午前九時半頃同a変電所に行き、Cは会社側からの同変電所の器物に触れてはならない旨その他の記載をした業務命令書を読み上げた上、これを同所の掲示板に貼つた後C及びDは同日午前一〇時少し前判示配電盤前に立ち居たるに対し、同日午前十時過被告人は同配電盤のオイルスイツチを切るため同盤に近づき同人等に対し「切りますよ」と言うと、同人等は切つてはいかんと言いCは右手で同スイツチのハンドルを握り左手で被告人の腰の辺を押し、被告人は一旦退いたが、また配電盤に近づきC、Dの隙を見て、同人等が握つていた同ハンドルの先を掴んで引きしやくつて同スイツチを切つたこと、そこで
Cは、前示技術屋のEを呼び、Eは早速同スイツチを入れたところ、被告人は、同午前十時十五分頃再び右配電盤前に行き、被告人が近づいて来たのを知つて同配電盤の椅子に腰掛けていたC、Dが右スイツチのハンドルを守るため立ち上るや、被告人は、その椅子に掛けた上、C、Dが技術屋でないためスイツチ開閉装置であることを知らなかつた同配電盤の前面下方にあつたリレーのプランジヤーを右両名の足下から手を延ばして押し上げてスイツチを切つて屋外に出たこと、これに応じて被告人から指揮を受けていたいずれもB株式会社b支店勤務員でA労働組合員であつたG、H、I、J、Kの五名は、右配電盤の前に行きCが前示Eを呼んで同スイツチを入れさせようとするのを防ぐため約五分間スクラムを組んだこと、および、被告人は、同日午前十時半頃屋外の南方の柱上開閉器の紐を引いてスイツチを切り、他の者が北方の柱上開閉器のスイツチを切り同日午前十一時五十分頃までに及んだ旨の事実を認定したこと、および、原判決が、その判示五において、被告人の本件右各行為は、正当な争議行為であると判断したことは、いずれも、所論のとおりで
ある。
 そして、所論第一点、二、(3)掲記のL本社の仮処分事件についての昭和二七年一〇月二二日最高裁判所大法廷判決(民事判例集六巻九号八五七頁以下)竝びに、昭和二三年(れ)一〇四九号同二五年一一月一五日大法廷判決(刑事判例集四巻一一号二二五七頁以下)が、「同盟罷業は、必然的に業務の正常な運営を阻害するものではあるが、その本質は、労働者が労働契約上負担する労務供給義務の不履行にあり、その手段方法は、労働者が団結してその持つ労働力を使用者に利用させないことにあるのであつて、これに対し使用者側がその対抗手段の一種として自らなさんとする業務の遂行行為に対し暴行、脅迫をもつてこれを妨害するがごとき行為はもちろん、不法に、使用者側の自由意思を抑圧し或はその財産に対する支配を阻止するような行為をすることは、許されないものといわなければならない旨」を判示していることが明らかである。そして、その趣旨は、その後昭和二七年(あ)四七九八号昭和三三年五月二八日大法廷判決(刑事判例集一二巻八号一六九四頁)においても判示するところである。ことに、後の判決は、右判示に引き続いて、「されば、労働争議に際し、使用者側の遂行しようとする業務行為を阻止するため執られた労働者側の威力行使の手段が、諸般の事情から見て正当な範囲を逸脱したものと認められる場合には、刑法上の威力による業務妨害罪の成立を妨げるものではない。」と判示しているのである。 従つて、原判決の判示は、労働争議の本質、争議行為が正当であるか否かの基準等についてなした前記判例の趣旨に違反するものであり、原判決の認定した前記の事実関係によれば、被告人の所為は、労働争議における労働者側の争議手段として正当な範囲を逸脱することも明白であるといわなければならない。にもかかわらず、原判決が被告人の本件行為は、正当な争議行為であると判断したことは、違法であつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する‥‥

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