(争議行為及びピケッティング等の基本的な刑事判例その4)
9934第七青函丸・長万部駅事件 最一小判昭45.7.16 最高裁判所刑事判例集24巻7号475頁 (最高裁判例検索システムよりプリントアウト)
石田和外コートの判例。まだ最高裁が公務員の争議行為禁止を限定合憲論としていた労働組合寄りの判断をとっていた時期のものであるが、4人の多数意見は限定合憲論をとりながら、船長の乗船拒否にもかかわらず青函連絡船での組合のオルグ活動のため艦船を1時間40分ほど退去しなかったことが、艦船不退去罪、長万部駅の信号扱所立入禁止にもかかわらず、職場集会に参加させるオルグ活動へため立ち入ったケースで建造物侵入罪とした原審の判断を是認した。長部謹吾裁判官は一律違法論の立場で同意意見を記す。
事件の概要
(第七青函丸)
国鉄青函船舶鉄道管理局が、合理化定員削減目的の職員配置換え対象者に対する事前通告の手続を進めたのに対し、国労青函地方本部は事前通知を一括返上させる方針を決め、返上を指揮するために、組合役員のオルグを各船舶に派遣することを決定し、昭和37年1月28日午後8時30分頃、出航予定の第7青函丸に乗り込んだところ、船長より退船を要求されたが拒否し、出航予定時刻を過ぎた午後9時50分頃になって下船した。一審無罪、原審破棄、艦船不退去罪(刑法130条)、最高裁は棄却。
(長万部駅事件)
国鉄当局が函館本線長万部駅構内の立入を禁止し、組合員による信号扱所占拠に備えるべく、警備員・公安職員等百~百数十名を配置したが、組合側は第2信号所に組合員約250名、第1信号所に約200名で警備側を挟撃、激しい押し合い、もみ合いのすえ、組合側が階段上り口を占領するにいたり、2名が各信号扱所内に勤務する組合員に職場大会への参加を呼びかける目的で第1信号所に立ち入った。原判決は建造物侵入罪(第7青函丸事件の不退去罪と併合罪)、最高裁は棄却。
多数意見(一部略)
弁護人伊達秋雄、同大野正男、同彦坂敏尚、同矢田部理の上告趣意第一点について。
所論は、先ず、被告人Aにつき艦船不退去罪の成立を認めたのは刑訴法四〇〇条、憲法三一条に違反すると主張する。
よつて考えるに、第一審判決は、その無罪理由の欄において、「第一、被告人Aに対する艦船不退去について」として、証拠により、日本国有鉄道青函船舶鉄道管理局(以下、青函局という。)は、青函連絡船における船舶運行の近代化、合理化の一環として、青函連絡船乗務職員の定員を削減し、これを陸上の船員区に配置換えすることを計画し、昭和三七年一月二四日から定員削減案による配置換え対象者に対する事前通知の手続を進めたので、これに反対する日本国有鉄道労働組合青函地方本部(以下、青函地本という。)は、事前通知をとりまとめて一括して返上する方針を決め、Bを含む各船舶支部組合員に対し青函地本の方針を周知徹底させ、事前通知の対象者に対しては動揺することなく青函地本の団結の力に信頼して事前通知を返上するように指導するため組合役員のオルグを各船舶に派遣することを決定し、被告人Aは、この決定に基づき、同月二八日午後八時三〇分頃、ほどなく青森に向けて出航予定のBに、その航海中に乗務船員の非直者(勤務当直者でない者をいう。)を対象として前記のようなオルグ活動をする目的で乗り込んだところ、かねて青函局海務部長から組合役員を乗船させたまま出航してはならないと厳命されていた同船船長Cは、被告人Aに対して退船方を要求したが、被告人Aは、これを拒否して応ぜず、結局、出航予定時刻を過ぎた同日午後九時五〇分頃になつてようやく下船した旨の事実を確定したうえ、被告人Aの右行為は青函地本の組合の行動として正当な行為といい得るに対し、C船長が被告人Aに退船を要求したことは不当であつて、被告人Aがこれを拒否して退船しなかつたからといつて直ちに艦船不退去罪を構成するとすることはできない旨判断して、同被告人に無罪の言渡をしているのである。すなわち、本件第一審判決は、法律判断の対象となる事実を認定し、法律判断だけで右事実は罪とならずとして無罪を言い渡したものであり、これに対し原審は、結局は、第一審判決が確定した右事実を前提とし、被告人AがC船長の下船命令を拒否して下船しなかつたのは正当な行為とは称し難く、第一審判決の法律判断は法令の解釈適用を誤つたものとしてこれを破棄し、同被告人に有罪の言渡をしたものである。それゆえ、原判決は、何ら直接主義、口頭弁論主義の原則に反するものではなく、刑訴法四〇〇条但書に違反するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和三九年(あ)第三〇五号同四四年一〇月一五日大法廷判決、刑集二三巻一〇号一二三九頁参照)。‥‥
次に、所論は、原判決は憲法二八条に違反する旨主張するので、考えるに、憲法は、勤労者に対し団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障するとともに、すべての国民に対し平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、これら諸々の基本的人権が勤労者の団体行動権の無制限な行使の前に排除されることを認めているのではなく、これら諸々の基本的人権と勤労者の権利との調和を破らない限度内の正当な団体行動権の行使を許容しているのであるから、この限度を越える行為は、たとい団体行動権の行使としてなされたものであつても憲法二八条の保障するところでないことは、当裁判所昭和二三年(れ)第一〇四九号同二五年一一月一五日言渡の大法廷判決(刑集四巻一一号二二五七頁)の示すところである。
そこで、被告人Aが所論Bに乗り込んだのは、同船に乗り組んでいる同船支部組合員に対し青函地本の方針を周知徹底させ、事前通知の対象者に対して事前通知を返上するように指導するための、組合役員としての活動としてであつたとしても、原判決の確定するところによれば、同被告人は、Bの乗組員ではないのに出航間際の同船に乗り込み、同船の船長から下船を命ぜられたのにこれを拒否して出航予定時刻後まで同船に滞留して退去しなかつたというのであるから、同被告人の右行為が労働組合の目的達成のためにする正当な行為として憲法二八条の保障する範囲内のものであるか否かを考えなければならない。ところで、船舶の航行の安全は、ひとり当該船舶の所有者や船舶を利用する企業経営者の利害に関するのみではなく、当該船舶の船員、乗客等の乗船者全体の生命身体や積荷の安危にかかわるものであるから、絶対にこれを確保しなければならないものであつて、これが確保の責任はすべて船長に帰せられているのである。されば、船員法七条は、「船長は、(中略)船内にある者に対して自己の職務を行うのに必要な命令をすることができる。」と定めているのであつて、この船長の権限は、船舶航行の安全確保という責任を負う船長の特殊な地位に基づくものである。このことは日本国有鉄道の連絡船の船長についても変りはない。もとより国鉄労働組合員の団体行動の自由は考慮されなければならないが、連絡船という船舶を団体行動の場所とする場合には、陸上における場合とは異なつた考慮を要し、右のごとき船舶航行の指揮者、責任者としての船長の命令は尊重されるべきものである。このように考えるならば、被告人Aが本件Bに乗り込んだのは、所論のようにその航行中に乗務船員の非直者たる組合員らに対するオルグ活動のためであつて、青函地本の団体行動としてであるとしても、船長が被告人Aに対し退去を命令したときは、この命令に従わなければならないものであり、船長のかかる退去命令に従わないで船内に滞留することは、それ自体船長の職務である船舶航行の指揮を妨げるものであり、ひいては航行の安全に危険を及ぼさないとはいえない行為であるから、労働組合の目的達成のためにする正当な行為と認めることはできない。そうとすれば、同被告人の前記行為は憲法二八条の保障する範囲内の行為とはいえず、艦船不退去罪を構成するとした原判決が労働組合法一条二項、憲法二八条に違反するものではないことは、前記大法廷判決に徴して明らかである。論旨は、理由がない。
同第二点について。
所論は、要するに、原判決が被告人D、同Aにつき建造物侵入罪の成立を認めたのは、憲法二八条、労働組合法一条二項に違反し、ならびに当裁判所昭和四一年一〇月二六日大法廷判決に違反するというのである。
しかし、原判決の維持する第一審判決が確定したところによれば、国鉄当局が、国鉄の正常な運転業務を確保するため、長万部駅構内への立入を禁止し、組合員による信号扱所占拠に備えるべく各信号扱所周辺にそれぞれ警備員、公安職員等百名ないし百数十名を配置し、信号扱所の確保を図つたのに対し、組合側は、当局側の警備を排除すべく、第二信号扱所においては、組合員約二五〇名がスクラムを組んだ四列縦隊で二手にわかれて当局側警備員を挾撃し、激しい押合い、もみ合いのすえ、被告人Dは組合員と共に当局側の警備を排除して第二信号扱所入口の階段をかけ上つて、長万部駅長管理にかかる第二信号扱所内に故なく侵入したものであり、また第一信号扱所においては、組合員約二〇〇名が同様にスクラムを組んだ四列縦隊で二手にわかれ、当局側警備員を挾撃する態勢をとつたところ、当局側警備員の指揮者であるE工事課長と青函地本側F執行委員との間で、怪我人が出るのを防ぐため、組合側は当局側を挾撃するのを止め、線路側からやんわり押す、当局側は押されれば下る、信号扱所階段上にいる公安職員はおろすとの妥協が成立し、公安職員が回階段からおりて同所南に隣接する継電器室をまわり、線路側に出ようとしたところで、組合側は漸時第一信号扱所と継電器室間の当局側警備員を押して階段付近まで押し進み、第一信号扱所階段上り口を占拠するに至つたが、この状況を一段高い所から見ていた被告人A、同Dが同信号扱所階段をかけ上つて、長万部駅長の管理にかかる第一信号扱所内に故なく侵入したというのであつて、いずれも組合員多数の勢力をもつてする実力行動により各信号扱所に対する当局側の管理を排除して侵入したものであるから、同被告人らの立入りは、各信号扱所内に勤務する組合員に職場大会への参加を呼びかける目的に出でたもので、組合員の原判示時限ストを実行するためになされたものであるとしても、これをもつて直ちに労働組合の目的達成のためにする正当な行為とはいい難く、憲法二八条の保障する範囲内の行為とはいえない。
そうとすれば、被告人Aおよび同Dの右所為を建造物侵入罪として処罰した原判決が労働組合法一条二項、憲法二八条に違反しないことは、前記当裁判所昭和二五年一一月一五日大法廷判決に徴して明らかである。
次に、所論は、判例違反をいうが、所論引用の当裁判所昭和三九年(あ)第二九六号同四一年一〇月二六日言渡の大法廷判決(刑集二〇巻八号九〇一頁)は、同盟罷業として単に郵便の取扱いという労務の提供をしなかつたとの消極的不作為による争議行為は郵便法七九条により処罰することはできないとしたものであるところ、本件被告人らの行為は、同盟罷業として単に労務を提供しなかつたという消極的な不作為ではなく、他人の看守する建造物に故なく侵入するという積極的な行為であるから、所論引用の判例は本件に適切でなく、所論は適法な上告理由にあたらない。
長部謹吾裁判官の同意意見
‥‥わたくしは、上告趣意第二点の所論を採りえないとすることについては、他の裁判官と結論を同じくするが、その理由を異にする。すなわち、原判決が維持する第一審判決が確定したところに徴すれば、被告人Dの長万部駅第二信号扱所への侵入行為 同被告人および被告人Aの同駅第一信号扱所への各侵入行為は、いずれも公共企業体等労働関係法一七条一項に違反するものであることは明らかである。そして、このような同条項に違反する争議行為については、労働組合法一条二項の刑事上の免責規定適用の余地ははなく、したがつて、被告人らの右行為は、正当な行為ということはできず、このように解しても、憲法二八条に違反するものではないと考える。その理由の詳細は、前示当裁判所昭和四一年一〇月二六日大法廷判決における裁判官奥野健一、同草鹿浅之介、同石田和外の反対意見のとおりであるから、それを引用する。
9935 浜松動労事件 最一小判昭45.7.16判例時報605号95頁(LEX/DBプリントアウト)
国鉄動力車労組の中央委員、中部地区評議会事務局長が、争議行為に際し派遣されて、浜松動労組合員約200名とともに、線路上に立ち塞がりスクラムを組むなどして、列車運行を妨害したことが、威力業務妨害罪を構成するとした、原判決を是認したもの。最高裁多数意見4人は、公労法17条違反の争議行為についても刑法1条2項の刑事免責の適用はあるが、本件は正当な争議行為とはいえないとした。長部謹吾裁判官の同意意見は、刑事免責の適用の余地なしという一律違法論。
9936全逓横浜中郵事件 最大判昭45.9.16最高裁判所刑事判例集24巻10号1345頁(LEX/DBプリントアウト)
本件は全逓横浜郵便局支部が全逓中央の指令に反し、勤務時間にくいこむ2時間の職場大会開催を拒否したため組合幹部が総辞職した。このため臨時闘争司令部が組織され中央の指令を確認し、神奈川県地労評の支援を要請、同地評の組合員約200名が郵便局通用門前の道路上でピケを張り、局員の就労を妨げたため、郵便局長の要請で機動隊が出動し、ピケ隊が警告に応じず、引き抜きを行ったため、激しい揉み合いとなり、ピケ隊2名が機動隊員に足蹴り等の暴行を働いたため公務執行妨害に問われた事件である。
大法廷判決は被告人を有罪とする、全逓東京中郵判決以前の原判決を破棄、高裁に差戻した。なお東京高裁〔差戻審〕判決昭47・10・20 『労働判例』822号(別途掲載)は公企体職員の争議を可罰的違法性なしとしながら、ピッティングは相当限度を越えた違法があるとして威力業務妨害罪の成立を認めている。
(公訴事実)
被告人Aは神奈川県地方労働組合評議会事務員、同Tは日本鋼管川崎製作所労働組合員であるが、昭和33年3月17日同地評傘下の全逓神奈川地本が春季闘争の一貫として横浜郵便局支部に対し、同月20日、午前8時30分より2時間勤務時間にくいこむ職場大会の開催指令をなしたところ、支部長が不法な職場大会の開催を拒否し、同指令を返上したため、被告人等は、20日午前6時10分頃より神奈川地評傘下の労働組合員約200名が、横浜郵便局通用門前道路上においてピケを張り、郵便職員の出勤就労を不法に阻止し、横浜公園で開催される職場大会参加の誘導を企図するに至ったので、同郵便局長の要請により神奈川県警察本部警備部機動隊約100名が出動し、立ち退きを数次にわたり警告した。しかし、容易に応じず、座り込みを開始したので。機動隊員は実力をもって排除したため双方激しい揉み合いとなった。
被告人Aは同日9時30分頃、ピケ隊員の引き抜きを始めたとき、機動隊員巡査Kの制服の襟元掴んで引張りボタン3個をあおる揉ぎ取りネクタイを引張って首を絞め、左腿部を二、三回蹴り上げる等の暴行をなし、被告人Tは、9時25分頃は機動隊員巡査Sに対し左下腿部、左太腿部を各一回足蹴りする等の暴行をなした。
第一審横浜地裁判決昭38.6.28下級裁判所刑事裁判例集5巻5.6号595頁、判例時報341号は、本件におけるピケッティングは威力業務妨害罪の構成要件の構成要件に該当し、公労法7条1項違反の違法争議行為であったが、しかしながら本件警察官の排除行為も、その際の客観情勢においては警職法第5条後段所定の要件たる「人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害を受ける虞があつて、急を要する」が如き事態は全く存しなかった故に、「本件ピケによって郵便業務が妨害され、国民の財産に損害を及ぼすととするような遠く且つ漠たる要件で、本条後段の制止できる筈がないということは今更いうまでもない」として、本件警察官による排除行為は適法でないとして無罪を言い渡した。
控訴審東京高裁判決昭41.8.29高等裁判所刑事裁判例集19巻6号631頁は、公労法17条違反の争議行為は違法であり、労組法1条2項の適用のないことはすでに最高裁の判例(全逓島根地本、国鉄檜山丸事件昭和38.3.15二小判、最高裁判所刑事判例集17巻2号23頁)で明らかになっているとして、本件ピケッティングは国の経済、国民の財産に重大な損害の虞れのある威力業務妨害罪の現行犯であった故に、その制止は警職法5条後段所定の適法な職務遂行行為であったとして、被告人に懲役三月(執行猶予一年)の有罪を言い渡した。
被告人側より昭和41年10月の全逓東京中郵判決に違反するなどとして上告の申立がなされ、最高裁は大法廷を開いて原判決を破棄し東京高裁に差戻す旨の判決を下した。
(多数意見8・反対意見6)
多数意見-要所
「原判決は、全逓のような国が経営する公共企業体の職員で組織される労働組合は、公共企業体等労働関係法の適用を受け、同法一七条一項により争議行為が禁止されているのであるから、本件争議行為、したがつてその手段たるピケツテイングが一般の企業の場合と異なりそれ自体違法な行為であり、威力業務妨害罪を構成するものであるとの前提に立つて、これに対してした警察官の排除行為を適法な職務行為であるとしているのである。
しかし、同条項に違反してなされた争議行為にも、労働組合法一条二項の適用があるものと解すべきであり、このことは、すでに当裁判所の判例とするところである(前記昭和四一年一〇月二六日大法廷判決)。しかも、原判決が参照している昭和三七年(あ)第一八〇三号同三八年三月一五日第二小法廷判決(刑集一七巻二号二三頁)は、右大法廷判決によつて変更されているところである。したがつて、これと異なる見地に立つて、公共企業体等労働関係法一七条一項に違反するというだけの理由で、ただちに本件ピケツテイングを違法であるとした原判決は、法令の解釈適用を誤つたものであり、この点の判断いかんによつては、本件ピケツテイングの違法性にはもとより、警察官のした排除行為の適法性にも影響を及ぼすものと認められるから、原判決を破棄しなければ破棄しなければ著しく正義に反するものといわなければならない」
石田和外、草鹿浅之介、長部謹吾、下村三郎、松本正雄、村上朝一各裁判官の反対意見
「‥‥公共企業体等労働関係法一七条一項は、公共企業体等に対するいつさいの争議行為を禁止しているのであるから、これに違反してなされた争議行為は、すべて違法であつて、正当な争議行為というものはありえない。したがつて、このような争議行為には、労働組合法一条二項の適用ないし準用はないものと解すべきである。その理由の詳細は、昭和三九年(あ)第二九六号同四一年一〇月二六日大法廷判決(刑集二〇巻八号九〇一頁)における裁判官奥野健一、同草鹿浅之介、同石田和外の反対意見と同趣旨であるから、ここにこれを引用する。そして、右見解によると、原判決が、公共企業体等労働関係法一七条一項に違反してなされた本件ピケツテイングを違法なものとしたのは、もとより相当であるといわなければならない。 以上のとおりであるから、本件上告は、棄却されるべきものである。
裁判官草鹿浅之介は、右の反対意見に次の意見を付加する。
わたくしの意見は、右大法廷判決において述べたとおりであるから、ここにこれを引用する。
裁判官松本正雄は、右の反対意見に次の意見を付加する。
わたくしの意見は、昭和四二年(あ)第一三七三号同四五年六月二三日第三小法廷決定(裁判所時報五四九号所載)におけるわたくしの反対意見の二と同趣旨であるから、ここにこれを引用する。」
コメント
上告趣意書によると、本件争議行為は全体として平穏に行われ、「局員(支部組合員)を除く、管理者その他の者の通行は全く阻止されたわけではなく、多少のいやがらせはあったにしろ、大体八時一五分速達一号便の出局うるまで一応通行できた」(一審判決)というが、そもそも本件のように約200名の郵便局前道路上での大量動員ピケッティングは、今日において英米であれば私企業であれ違法である。http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/91-d3ff.htmlまた本件は神奈川県地労評の組合員約200名がピケを張った。その職場で働いている者でない者がピケ隊の主力であった。英国では、1980年にいわゆるフライングピケット、よその職場の者をピケ隊に編成する事自体違法としているのである。
現代の労使関係法との比較でいえば、本件のようなマスピケ容認、とくに一審判決は、警察の介入それ自体が違法ということであるから、非常に野蛮な司法判断に思える。
引用、一・二審の要約 国武 輝久「公務員・公共企業体職員のピケット権--全逓横浜中郵大法廷判決〔45.9.16〕をめぐって『法政理論』 3(2) [1971.03.00]
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