非嫡出子相続分規定違憲決定は悪しき「裁判官立法」として非難されるべきものなので、法改正は最小限にとどめ、もうこれ以上の家族法の変更を欲しない旨の政府・与党への要望の下書きその四
2.「家族形態の多様化」「国民の意識の変化」は裁判官の主観的判断か願望にすぎない。事実は逆であって日本の法律婚制度は国民に定着し、外国と比較して成功例として評価されるべきものであるから判例変更の理由にならない
先例が「民法が法律婚主義を採用している以上,法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが,他方,非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものである」として合理的な根拠を認めていたのにそれを覆して法律を叩き潰すからには相当な理由がなければならないが、大法廷決定はその一つとして「家族形態の多様化」「国民の意識の変化」を挙げている。
具体的に大法廷決定は、「戦後の経済の急速な発展の中で,職業生活を支える最小単位として,夫婦と一定年齢までの子どもを中心とする形態の家族が増加するとともに,高齢化の進展に伴って生存配偶者の生活の保障の必要性が高まり,子孫の生活手段としての意義が大きかった相続財産の持つ意味にも大きな変化が生じた。‥‥さらに,昭和50年代前半頃までは減少傾向にあった嫡出でない子の出生数は,その後現在に至るまで増加傾向が続いているほか,平成期に入った後においては,いわゆる晩婚化,非婚化,少子化が進み,これに伴って中高年の未婚の子どもがその親と同居する世帯や単独世帯が増加しているとともに,離婚件数,特に未成年の子を持つ夫婦の離婚件数及び再婚件数も増加するなどしている。これらのことから,婚姻,家族の形態が著しく多様化しており,これに伴い,婚姻,家族の在り方に対する国民の意識の多様化が大きく進んでいることが指摘されている」というのだが、上述のことが、法律婚主義を採用し、嫡妻・嫡出子に相続分を優遇していることを不都合とする根拠とするのは飛躍している。しかも昭和23年の嫡出でない子どもの割合は2.2%にすぎないのである。1%だったのが2%になったのは大きな変化だという見方もあるが、事実婚がの割合について、9月5日の産経新聞掲載の統計によれば、フランス56%、ノルウェー55%、英国47%、米国41%、ドイツ34%である。これらの欧米諸国からすれば、うらやましいほど法律婚制度が成功しているのが我が国だといえるのである。
私は最高裁の認識とは反対に我が国において「家族形態の多様化」「国民の意識の変化」は進んでいないと思う。我が国の法律婚制度は、婚姻の成立は届出により容易であり、挙式も要求されないし、政府がライセンスを発行することもない。性病などの診断も必要でないし、待婚期間とか煩わしさがないだけでなく、離婚も協議離婚によって容易であり、婚姻に関して押しつけがましい政府の干渉のない制度である。比較法的にみて煩わしさのある欧米の法律婚とは違うのである。したがって我が国のリベラルな法律婚制度が民間の婚姻慣行にマッチしていたからこそ、法律婚制度が定着したのである。
明治大正であれば法律婚をとらない内縁関係は結構多かった。とくに民法制定前の明治前半期は都市部の下層の国民の離婚件数は非常に多かった。昭和30年代くらいまでは「足入れ婚(試験婚)の悲劇」といわれるような、嫁が家風に馴染むかをみきわめてすら入籍させる経過的内縁関係が広く見られた。しかし今日ではそういう古風な慣行がなくなった分、国民の意識は結婚=法律婚(入籍)であるという観念が完全に定着したのである。法律婚定着とは現代的現象なのだ。
内閣府世論調査でも昭和24年に非嫡出子相続分格差を変えないほうがよい35.6%、格差をなくしたほうがよい25.8%で、消極的支持も含めて、多数の国民が民法900条4号をよくないとは思っていない。
今回の大法廷決定について嫡出子側が「私たちにとって納得できるものではなく、非常に残念で受け入れ難い」とのコメントを出したことが報道されているが、今回の判断を「日本の家族形態や社会状況を理解せず、国民の意識とかけ離れたもの」と批判、「違憲判断には絶望した」と締めくくっているが全くそのとおりだと思う。
「家族形態の多様化」「国民の意識の変化」は民法を改正したい日弁連や戸籍を廃止して家族を解体しようとする市民団体側の願望にすぎない。
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