9・4最高裁大法廷非嫡出子(婚外子)相続分規定(民法900条4号但書)違憲決定はきわめて悪質だといえる理由その一
私はきわめて悪質な決定だと思う。その理由の第一が虚偽を述べていること。つまり国民を騙したこと。
大法廷決定は、「現在、我が国以外で嫡出子と嫡出子でない子の相続分で差異を設けている国は欧米諸国にはなく、世界的にも限られた状況にある。」と言い切っているが事実ではない。
アメリカ合衆国では、婚姻法、相続法は州によって異なるが、アメリカ法律協会と アメリカ法曹協会による統一州法に関する全国委員会が相続権に関して非嫡出子を実質的に平等に扱う統一遺言検認法を1969年に採択し、1973年に嫡出子であれ非嫡出子であれ父母との法的関係において完全に平等とする統一親子関係法をと承認し、1990年の統一親子関係法では両親の婚姻に関係なく両親の子とされ、2000年、2008年モデルもあるが、これは法案モデルにすぎないのであって、州法改正を強要するものではまったくない。相続をどうするかは州権、州議会である。
西村真理子の2012年の論文「<論説> 非嫡出子(婚外子)の相続とその前提となる親子関係成立の問題について : アメリカ法を中心として」『学習院大学大学院法学研究科法学論集』 19,
59-106, 2012(ネットで公開されている http://hdl.handle.net/10959/2268
)の脚注11によると、1973年オリジナルの統一親子関係法を採択したのは、アラスカ、アリゾナ、カリフォルニア、コロラド、コネチカット、ハワイ、カンザス、ミシガン、ミネソタ、モンタナ、ネバダ、ニュージャージー、ニューメキシコ、ノースダコタ、ロードアイランド、サウスダコタ、ワシントン、ユタの各州の18州と、コロンビア特別区と書かれている。
ほかに、統一親子関係法モデルを採択した州の言及はない。ということは残りの32州の多くは父親からの相続権は限定的なままと推定できる。
西村真理子は遺言や相続法の専門家のようだが、非嫡出子の相続分の平等化は、世界的潮流でもあるが、アメリカ法はそうでないとはっきり言っているのだ。判例は嫡出子と非嫡出子の多くの違いを縮小したにもかかわらず、すべての差別を廃止することに消極的であり、父親からの相続が事実上認められたが、それは限定的なものだと言っている。
1977年の合衆国最高裁はトリンブル判決Trimble v. Gordon 430 U.S. 762 http://www.law.cornell.edu/supct/html/historics/USSC_CR_0430_0762_ZS.htmlの評価が問題になる。嫡出子には父母双方からの無遺言(法定)相続の権利があるのに対し非嫡出子には母親からの無遺言(法定)相続しか認めないイリノイ州法を平等保護条項に反し違憲としたものだが、これは父からの無遺言相続を一切認めない州法が違憲とされただけなのであって、全く嫡出子と同権でなければ違憲と言っているのではないのでないだろうか。非嫡出子は疑わしい区分ではないのだ。
西村真理子はアメリカでは学説でも非嫡出子の全面的平等を認めてないと言う。Browne Lewis, Children Of Men’Balancing The Inheritance Rights Of Marital、And Non-Marital Children,39 U. ToL L. REv.L 18(2007).という学説を紹介し、非嫡出子(婚外子)に対し、「相続に関する厳格なる平等ではなく平等の機会を与えることを主張する。そして、非嫡出子(婚外子)の相続権を扱う制定法を起草する際には、極端な結論一非嫡出子の全面的排除と全面的包含一を回避しなければならないとする。‥‥ほとんどの州の制定法は,非嫡出子(婚外子)がpaternityを立証するについて必要な段階を経るのであれば,非嫡出子(婚外子)に対し,その父親から相続する機会を与えている」。
つまり多くの州では母親からの相続権を認めるものの、父親からの相続権は範囲が限定的だが、父親から相続する機会を与えているから問題ないということのようだ。
アメリカでは実は無遺言相続(法定相続)同権論は弱いということである。西村の論文の結論は「アメリカ法においては,無遺言相続(法定相続)は遺言相続の補完的存在であるため,遺言の自由の要請が強く,非嫡出子(婚外子)の相続についてもできる限り遺言で対応することが望ましいとされている」というものだが、いずれにせよ、欧米諸国すべてが同権となったという最高裁の見解は嘘である。
いずれ残りの32州を調べるが、さしあたりノースカロライナはどうだろう。2011年のUnequal rights for children born out of wedlockという弁護士のブログ http://ricefamilylaw.com/blog/2010/09/19/unequal-rights-for-children-born-out-of-wedlock/によると、同州では44.5%が非嫡出子だが、同州は父親からの財産を継承しないことがある。非嫡出子は父が死亡しても、生存者の社会保障給付の対象とはならないと書かれている。その法律事務所のサイトNC Legitimation http://www.ricefamilylaw.com/family/legitimation.htmによると、ノースカロライナ州の法律では嫡出子と非嫡出子を区別する。非嫡出子が嫡出子に与えられるすべての権限、権利と利益を享受するには、のちの婚姻による準正やその他の準正手続きにより嫡出子にならなければならないみたいなことが書かれている。
ノースカロライナは人口950万でバンカメの本社もある。人口規模でいえば920万のスウェーデンより大きい。ほかの31州とカナダの各州も順次調べる予定だが、アメリカ合衆国で過半数を超える州が、平等にはなっていないとすれば、最高裁のいう「嫡出子と嫡出子でない子の相続分で差異を設けている国は欧米諸国にはなく」という言い分は通らない。
たった9回しかない重大な違憲判断を行ったのだから、最高裁判事が2012年の最新の研究成果である西村の論文を見てないというはずはない。ネットでも簡単に見れるのだから。意図的にだましているから悪質だというのだ。
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