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2014年1月の2件の記事

2014/01/30

潮田玲子似研究者が世紀の大発見の感想

 最近衝撃的だった事件としては被害者がかなり美人だった三鷹JK殺人事件である。潮田玲子似はほめすぎかもしれないがそれ以来のインパクトのあるニュースだった。
 ネットからから出てきた情報によれば、ハーバードで1週間寝ずに200本の論文を読んで研究成果を仕上げたとか、こだわりのある人だとか、AО入試でこの人を合格にした常田教授は賞賛されている。早稲田出身者が医学部のある慶応に勝ったと喜んでいる。報道規制を敷いたのは、クローン羊「ドリー」の成功論文の発表以来。常識破り、想定外、革命的というものである。
 ネーチャー掲載だから、森口尚史元東大特任教授のようなことにはならない、これは本物だと思った。
 『二重らせん』のドラマを25年ほど前に教育テレビで見たことがあるが、DNAの構造の発見は、ワトソンやクリック、ウィルキンスの業績だけではなく、ロザリンド・フランクリンのX線回析の成果によるところが大きい。ただ彼女はキングスカレッジでウィルキンス博士と衝突し干され、37歳で亡くなったので、ノーベル賞を受賞できなかったということだが、したがって女性研究者の世紀の発見にさほど驚くことはないかもしれない。
 IPS細胞がオワコンになったら山中教授のメンツ丸つぶれだが、競争社会だからそれも仕方がないと思う。

2014/01/05

入手資料整理127

10105~10116は昭和50年代から平成初期の公務員争議行為(民事)主要判例(昭和52年神戸税関判決~平成元年北九州市清掃局事件まで)法曹時報で掲載され最高裁判所判例解説の年鑑に収録されている判例を中心に判例評釈(一部のみだが)、関連判例の一部も含めて収集したもの。10117~10357は目的外でついでに収集したもの。10358~10376は昭和51年岩教組学力テスト事件~平成2年埼教組事件の期間の公務員争議行為(刑事)主要判例と判例評釈の一部の収集である、一部の判例は内容を省略した。争議行為及びピケッティング等の基本的な刑事判例等その9にあたるものでこれでこのシリーズは終了する。
むろんこれだけでは足りないわけであるが、基本的なものは概ね収集したので次のステージの作業に移りたい。

 星印は個人的な関心度による重要性で、刑事事件は中村秀次「刑法総論に関する裁判例資料 違法性及び違法性阻却正当行為等」熊本ロージャーナル4 2010年が大審院以来の判例をコンパクトにまとめており、そこに記載されている判例を主に収集した。

(争議行為及びピケッティング等の基本的な刑事判例等シリーズ前回まで)
その1 滝野川事件、山田鋼業事件、理研小千谷工場事件、朝日新聞西部本社事件(民事)、三友炭鉱事件、ホテル・ラクヨー事件、羽幌炭鉱鉄道事件、東北電力大谷発電所事件、四国電力財田発電所事件http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-7098.html  その2嘉穂砿業事件、国鉄檜山丸事件、全逓東京中郵事件、安西郵便局事件 http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-e5e0.html その3 都教組事件、全司法仙台事件、札幌市労連事件(札幌市電ピケット事件) 、http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-68d7.html その4 第七青函丸長万部駅事件、浜松動労事件、全逓横浜中郵事件http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-c91b.htmlその5福教組事件、佐教組事件http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-e80f.html その6国労久留米駅事件、全農林警職法事件http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/post-0951.htmlその7日本鉄工所事件http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-8188.html その8光文社事件 http://antilabor.cocolog-nifty.com/blog/2013/08/post-2995.html

10105★★★神戸税関(全税関神戸支部)事件上告審判決 昭和52年12月20日最高裁第三小法廷 民集31-7-1101 判時874
 公務員の懲戒処分に関するリーディングケース。官公労働者の争議行為を理由とする懲戒処分に関する初めての最高裁判決で、組織労働者側に厳しい内容となっている。
10105-1★★四国財務局(全財務四国地本高松支部)事件上告審判決 最三小昭和52.12.20 民集31巻7号1225頁 判時874
10105-2★★★越山安久(神戸税関事件判決の解説) 最高裁判所判例解説民事篇昭和52年 法曹時報33-2 
10105-3★★★宍戸達徳「勤務評定反対闘争の際の違法行為を理由としてされた財務局職員たる国家公務員に対する懲戒免職処分が懲戒権者に任された裁量権の範囲 最高裁判所判例解説民事篇昭和52年(四国財務局事件の解説)

10105-4室井力「公務員の争議行為と懲戒処分-神戸税関事件・四国財務局事件-」『ジュリスト』臨時増刊666 判決を批判する内容。
(プロレーバー学説の多数は)「争議行為の権利は‥‥集団的行動の権利であり‥‥職務秩序に違反する職員の個別的非違を制裁する懲戒制裁とは論理的性格を異にするから、原則として懲戒処分を科しえないとするものであり、裁判例にもこのような考え方を示すものがあった(東京地裁昭46.11.12判時658号)‥‥。(本判決は)争議行為禁止違反が同時に職務命令服従義務、職務専念義務、勤務時間中の組合活動をしない義務等にも違反するものとし、かつ国公法八二条一号(法令違反)とともに場合によっては同三号(「国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合)にも該当するものとしている(ことによってプロレーバー学説を否認し、争議行為禁止違反について民事責任を問えることを明確にした)‥‥東京中郵判決が、公務員の労動基本権の尊重の必要性を強調し、その制約と制裁の最小限の原則を説示してからは、ほとんどの下級審判決も、労働基本権行使の懲戒制裁を最小限をきわめて制限的に解釈してきた‥‥ところが、本判決にはそのような考慮は一切みられない。」などというが、刑事の名古屋中郵判決等と並んで、民事の本判決は、東京中郵判決以来の公務員に事実上争議行為を容認する流れを完全に断ち切ったことで意義のある判決とみるべき。
10105-5外尾健一「公務員の争議行為と懲戒処分-神戸税関事件」ジュリスト増刊(労働法の判例第二版)判決を批判する内容。「公務員が争議行為が禁止されているからという理由で、争議行為中でも上司の命令に従う義務や職務専念義務等は免れないという誤った結論を導き出している」とする。逆にいうと、闘争期間中に職務命令を出せないなどいう職場慣行は、プロレイバー学説に依存したものあって、本判決によりそのような見解は否認されているといえる。
 過去の下級審判例の多数引用している。東京中郵事件以来の争議行為禁止規定の限定解釈の流れから、懲戒処分の適用についても一層のしぼりをかけた下級審判例として神戸税関事件の第一審判決(神戸地裁昭和44.9.24)「争議行為であっても‥‥違法性の弱いものについては、国公法九八条五項で禁止する争議行為には当たらないものというべき」という。この立場に立つ裁判例としては(イ)山形地判昭和四四・七・一六(鶴岡市職事件、労旬712号)(ロ)佐賀地判昭和四六・八・一〇(佐教組事件判時六四〇号)(ハ)東京地判昭和四六・一〇・一五(都教組無事件、判時六四五号)(ニ)高松高判昭和四六・一二・二四(全財務四国地本事件労旬八〇五)。とくに都教組事件東京地裁判決は地公法三七条一項は「(イ)公共性の強い職務に従事する地方公務員の、(ロ)国民生活の全体を害し、国民生活に重大な障害をもたらすおそれがあり、(ハ)他の手段による制限ではそのおそれを避けることができない争議行為に限って、これを禁止したものと解すべきである」として、刑事事件である最高裁都教組勤評事件判決の論理を、民事事件にも適用し貫徹した(私に言わせればワースト判決)。また、そもそもスト禁止法規違反の争議行為に対しては懲戒処分は科し得ないとする学説に立脚した裁判例として東京地判昭和四六・一・一二(全逓都城郵便局事件、労民集二二巻六号一〇三〇頁)がある。
 要するに、神戸税関事件判決の意義はこうした下級審の判断を全面的に否認したことにある。
 なおスト禁止法規を全面的に合憲とした国公法82条所定の懲戒処分をなしうるとした下級審裁判例として、東京高判昭和48.6.14(札幌郵便局事件、判時714号)、前橋地判昭和49.4.30(動労高崎地本事件、判時743)、東京地判昭和49.6.24(国労東京地本新宿駅事件、判時757)、東京高判昭和50.10.30(全逓東北地本事件、労民集26巻5号1017頁)、東京地判昭和50.12.24(総理府統計局事件、判時806)。
10105-6森捻樹「公務員懲戒処分と裁量審査」別冊ジュリスト181号
10105-7田村悦一「懲戒処分と裁量権の範囲」別冊ジュリスト150号
「本判決は、懲戒処分およびその内容の選択を懲戒権者の裁量に委ね、社会観念上の著しい不当、裁量権付与の目的逸脱・濫用の場合に限って司法統制を可能なものとしている‥‥公務員の懲戒処分の性格につき、単なる労使関係の見地からではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することを本質的内容とする勤務関係の見地から、処分権が課せられることを強調し懲戒権者の広範な裁量と司法審査の消極性を導いている」とし免職処分について裁量権行使の制約について言及がないなどと解説したうえ、環裁判官の反対意見に一定の評価をしている。 
10105-8宮田三郎「司法審査の密度」『ジュリスト』88号
「公務員の争議行為が国公法82条所定の懲戒事由に該当するか否かについては見解が分かれている。労働法学の多数説は、団体的・組織的行動である争議行為に対しては、職務秩序違反に対する個別的制裁である懲戒処分はなじまない、という。これに対して、争議行為は争議行為禁止規定に違反すると同時に上司の職務命令への服従義務ならびに職務専念義務にも違反することとなり、当然に、国公法八二条の懲戒事由に該当するといいう見解が対立し、行政事務はこの立場に立っている。本件の最高裁判決は、原審の判断を退けて後者の見解を採用」と明瞭に解説。
10105-9清水敏「時間内職場集会の指導者を理由とする懲戒免職処分-全税関神戸事件」『季刊労働法』108
10105-6★★★全財務四国地本高松支部事件控訴審判決 高松高裁昭和46.12.13 行政事件裁判例集22巻11~12合併号 民集31巻7号1433頁
神戸税関事件が争議行為の民事事件としては重要な判例であるが、内容的にはむしろ四国地本事件に関心がある。というのは、いわゆる事務室内「頭上報告」類似行為を執務妨害として懲戒処分理由として認めたことで参考になるからである。

昭和37年10月2日のマイク放送について
   「全財組区愛四国地本及び高松支部において‥‥三七年九月二八日‥‥一審被告に対し勤務評定に関する合同交渉を申し入たが、‥‥交渉が進捗しなかったところ、その間において一〇月一日午後二時頃、一審被告が各課長からそれぞれ第一表停車に勤務状況報告書を交付して、勤務評定実施を命ずるや、組合側は直ちに掲示板、局庁舎食堂入口等に「勤評反対」「オールA・公開」等と記載したアジビラを貼付する等これに対抗する措置に及んだ。かような状況下において。一審原告Kが、一〇月二日午後四時五分頃勤務時間中、四国財務局の階上、階下事務室において、前後約五分間にわたり、携帯拡声器で、第一次評定者に対し、勤務状況報告書に記入しないことを要請する趣旨の放送を行なった。‥‥当時階下事務室には約三〇名の職員が執務しており、また階上の事務室にも約三〇名の職員が執務していた。そして右放送の音量は、無職員のなす電話の通話の邪魔になりかねない程度のものであり、各事務室全体に聞こえる程度の大きさであったのである。従って、いずれの事務室においても執務中の職員の妨害になった。‥‥‥」
   10月5日の放送について
  「一〇月五日午後三時頃勤務時間中、右原告Tが、局階上事務室において、携帯拡声器を用い、執務中の職員に対して午前中の局長と共闘役員との会談及びその後の状況について約四、五分にわたり放送した。そうして、M総務課長がS総務係長をして、この放送の中止命令を伝達させたのであるが、同原告は右中止要求を受けた後も、なおこの放送を続けたのである。右放送の当時、局階上事務室において執務していた職員は焼く三〇名であり、右放送は、形態拡声器によって、階上広間事務室全体に聞こえる程度の大きさでなされ、執務中の職員がその方に気を取られていたのであるから、その口調が淡々としたものであったかに否かなどにかかわらず、執務中の職員がこの放送によって執務を妨害されたことは明らかである。」
  懲戒事由に当たるかの判断
  「一審原告Kは公務員として職務専念義務があるにもかかわらず、前認定のとおり、勤務時間中において、本件勤評反対闘争の目的達成のためで第一次評定者に対し‥‥勤務状況報告書を記入しないでくれと要請する放送を、前認定の相当時間にわたって行ない、勤務中の他の職員の執務を妨害する結果を惹起したのであるから、その際用いた言語が刺激的なものであったかどうかは問うまでもなく、その行為の態様からみて、他に特段の事情がない限り、この放送は違法を免れないというべきである。‥‥その放送の内容、並びに時間、方法などの態様からみて、及びそれが多数の職員の執務の妨害になっている事実等からすれば、本件放送は、本件勤評反対闘争の一環として行われた組合活動であるが、たやすく組合運営のため必要最小限度のものとはいえないものであって、勤務時間中の組合活動としては正当なものとは認められず、あえて当局の中止命令等を待つまでもなく、違法を免れないものというべきである。‥‥Kはみだりに職務を放棄して右マイク放送により他の職員むの勤務を妨害したというべきである。」
  「一審原告Tの放送に対しS係長が制止したのは‥‥M総務課長がその中止命令を伝達させたものであり、その制止にもかかわらずTはその放送を続けたのである。‥‥右放送そのものがその際、内容的にも、時機的にも組合側にとってある程度必要なものであり、淡々と報国が行われたものであったとしても、前認定の右行為の態様からみて、勤務時間中の組合活動として全く違法性を欠くものとはいえない。従って右原告Tの子非初が、みだりに職務を放棄して、放送を行ない、もって職員の執務を妨害したものとされるのは止むを得ない。」
10105-7法律時報50巻4号
10105-10はやししうぞう「争議行為をした郵政職員を国家公務員法によって懲戒免職にしたことは違憲・違法ではない(上・下)『時の法令』1037=1038号
10105-11四国財務局勤評反対闘争事件第一審判決 高松地裁昭和41.6.23判決 判タ272

10106★★国立新潟療養所事件 昭和53.3.28最高裁三小 判例タイムズ362
 国家公務員の団体協約締結権を認めていない旧国公法98条2項の合憲性を初めて判示したことで知られる。
10106-1★★矢崎秀一「国家公務員(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの)九八条二項但書の合憲性」最高裁判所判例解説民事篇昭和53年

10107★★★佐教組事件(民事-懲戒処分取消請求)上告審判決 昭和63.1.21最一小判『判例地方自治』46号 判時1284
本判決の意義は、地公法37条1項に違反する争議行為が行われた場合、懲戒事由を定めた地公法29条1項に一項によって懲戒処分は免れないとし、争議行為=懲戒処分と直結する判断を示し、懲戒処分の対象を違法性の強い争議行為に限定する上告人らの主張を一蹴したことである。蔦川判例評釈参照。また懲戒処分について「それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したものと認められる場合でない限り違法とならない」という神戸税関事件最高裁判決を引用し地方公務員事件にもこの基本論を採用した。
10107-1佐教組事件(民事-懲戒処分取消請求)控訴審判決 福岡高裁昭和58.5.27
10107-2都教組勤評事件(民事)控訴審判決 東京高裁昭和51.7.3 判タ337
10107-3静岡県教組事件 静岡地裁昭和47.4.7判決
10107-4佐教組事件(民事)佐賀地裁昭和46.8.10判決 判タ266
10107-5★★都教組懲戒処分取消事件 東京地裁昭和46.10.15判決
教職員の1日限りのストは地公法37条で禁止した争議行為に当たらないとして懲戒処分が取り消されたワースト判決
10107-6大浜恵弘「教育公務員の争議行為と懲戒処分・上・下」-(青法協裁判官部会研究ノート-19--20-)『法律時報』 44(7)、44(9) 1972
10107-7中山和久「教育公務員の労働基本権(2)佐教組事件」別冊ジュリスト118号
10107-8蔦川忠久「地公法違反の争議行為と対する懲戒処分と裁量権-佐賀県教組事件」ジュリスト臨時増刊935号
10107-9阿部泰隆「公務員の懲戒処分における裁量-佐賀県教組事件」『法学セミナー』412
10107-10静岡市教組事件 東京高裁昭和47.4.7判決 判タ365 

10108★★★全逓東北地本役員懲戒免職事件上告審判決 昭和53.7.18最三小判決 民集32巻5号1030頁、労働判例302号
判例時報906号
 違法なストライキ、局庁舎でのステッカー貼付行為及びシュプレヒコール等集団示威行動を指導した全逓地方本部委員長に対する懲戒免職を是認。神戸税関事件についで懲戒処分の指導的な判例。
 『労働判例』の解説は、「違法の相対性」を前提とした全逓都城郵便局事件第一審判決(東京地裁昭和46.11.12労民集22-6)のような判断を明確に否定したと説明。
10108-1★★矢崎秀一 法曹時報34巻4号 最高裁判所判例解説民事篇昭和53年度379頁
10108-2佐藤繁 ジュリスト682号「郵政職員が公共企業体等労働関係法17条1項違反の争議行為を行なった場合と国家公務員法82条による懲戒処分」
10108-3岸井貞男 ジュリスト「公労法一七条違反の争議行為の国公法八二条による懲戒処分-全逓東北地本事件」
10108-4玉田勝也 警察学論集「全逓東北地本役員懲戒免職事件上告審判決について」
10108-5田村和之 民商法雑誌80巻5号
10108-6季刊労働法110号
10108-7法律時報51巻2号
10108-8全逓東北地本事件控訴審判決 東京高裁昭和50.10.30 労民26-5-1017頁 民集32-5-1139頁
10108-9全逓東北地本事件第一審判決 東京地裁昭和549.7.1 労民26-5-1017頁 民集32-5-1139頁
10109★★日本専売公社山形工場事件 最一小昭和56.4.9 民集35-3-477頁 判例タイムズ442号 
専売公社山形工場包装課職員が3時間のストライキを実施したことにつき参加者に戒告処分にな処したことが懲戒権の濫用に当たるかが争われ、一審山形地裁昭和47.11.27判決は、全逓東京中郵判決を基礎として、専売公社の事業については憲法28条の趣旨から公労法17条1項(争議行為禁止)が適用されないとし、懲戒処分を無効とした、控訴審は一審判決を取り消し、懲戒権の濫用には当たらないとした。

10109-1時岡泰「日本専売公社職員に対する公共企業体労働関係法一七条一項の規定と憲法二八条」昭和56年4月9日第一小法廷判決
最高裁判所判例解説民事篇昭和56年
10109-2日本専売公社事件 山形地裁昭和47.11.27 労民 23巻5~6号580頁
10109-3専売公社山形工場事件 仙台高裁昭和53.3.31判決 労民29-2-197頁 民集35-3-565頁
10109-4中村博「専売公社山形工場戒告無効確認事件判決」『法令解説資料)25

10110全林野広島事件 昭和62年.3.20最高裁第三小法廷判決 判例時報1228 判例タイムズ634
10110-1全林野青森事件 昭和52.12.13青森地裁 判例時報885
10110-2全林野広島営林署分会第一審判決 広島地裁51.4.21判決 判例時報812
10110-3全林野前橋地本富岡分会事件 東京地裁昭和54.3.22判決
10110-4全林野旭川地本事件 旭川地裁50.7.17民集33巻5号900頁 判例タイムズ328 労働判例235
10110-5★★全林野旭川地本事件 最二小昭和52.3.27判決 判タ634 労働判例496
10110-6全林野旭川地本事件控訴審判決 札幌高裁 昭和57.10.27 労民33-5-893頁
賃上げ等の要求貫徹を目的として行なわれた勤務時間内職場集会に参加し1時間45分ないし4時間欠勤したことを理由として、戒告以上の懲戒処分をしたことが、その後に行われた争議行為の一般参加者に対して戒告以上の懲戒処分が行われなかった場合でも懲戒権の濫用には当たらないとされた例。
10110全林野広島事件 広島地裁昭和51.4.21判決 判タ346
1
0111★★全運輸近畿支部兵庫分会事件 最二小昭和60.11.8判決 民集39巻7号 1375頁 判例タイムズ580
10111-2新谷真人「出勤簿整理時間中の職場大会と懲戒処分」『季刊労働法』139号
10111-3法律時報58巻6号
10111-4山川隆一「争議行為-出勤簿整理時間の職場大会-」『ジュリスト』88号
10111-5全運輸近畿支部兵庫分会事件 大阪地裁昭和54.8.30判決 判タ396
10111-6北川弘治「いわゆる出勤簿整理時間の設定と右時間中の職務に従事する義務」『最高裁判所判例解説民事篇昭和60年』

10112★★総理府統計局事件 最一小昭60.9.13判決 労判467
 昭和36年10月26日統計職組は午前9時頃から9時20分頃までの間統計局裏門において職員約80名の参加をえて勤務時間内の職場大会を実施した。これに対し当局はピケなどに参加した約400名に対し有給休暇請求を承認せず賃金カットとしたが、統計職組は賃金カット理由を求める運動を行うため、11月8・9・16・17日の各休憩時間に部外者を含む80~100名の職員を集めて勤務時間に食い込むオルグ活動を開催したほか、当該職場の係長らに対し、長い時間で一時間内外にわたって、話し合いを強要し、その執務を妨げ、かつ他の職員の勤務を妨げた。対して総理府総務長官は統計局職組委員長を免職、副委員長1人と執行委員1人を停職四か月、その他執行委員など3人を減給三か月の懲戒処分に付した。判決は懲戒者の裁量権を濫用したものではないとして是認している。

10113★電電公社長岡局事件 最一小昭和62.2.19 労判510

10114★★★★北九州市交通局事件 昭和63.12.8最高裁一小判 民集42-10-739頁 判例時報1314 判例地方自治63 
10114-1★★★盛誠吾「地公労法上の争議行為禁止規定の合憲性」ジュリスト936 1989
10114-2北九州市交通局事件 福岡高裁昭和55.10.22判決
10114-3★★★佐藤敬二「判例研究北九州市交通局事件・最高裁第一小法廷判決(昭六三・一二・八)の研究「地方公務員労働組合による三六協定締結拒否と争議行為」『労働法律旬報』1216 1989
10114-4田中館照橘「現業地方公務員の争議行為禁止と憲法二八条-北九州市現業公務員に対する不当労働行為救済命令取消事件」『法令解説資料総覧』93号
10114-5中島茂樹「地方公営企業労働関係法一一条一項の争議行為禁止規定の合憲性」『法学教室』別冊付録113号16頁 
10114-6法律時報61巻9号(最高裁新判例紹介)
10114-7森英樹「地方公営企業の争議行為と憲法28条」『法学セミナー』(最新判例演習室)412号
10114-8静内郵便局事件 札幌高裁昭和54.1.31判決 郵政職員の時間外労働義務に関する判例
10114-9日立製作所武蔵工場事件・最高裁判決を契機に 盛誠吾「時間外労働義務論と最高裁判決」討論「時間外労働の法理と最高裁判決」盛誠吾・浜村彰・深谷信夫
10114-10北九州市交通局事件 福岡地裁昭和52.11.18判決 『労働法律旬報』943.4合併号 民集31-5-1049頁 判時874
10114-11東洋鋼鈑事件上告審判決 最二小昭和53.11.20判決 判タ373
10114-12日立武蔵工場事件 最一小平3.11.28 民集45-8-1270判タ774
10114-13日立武蔵工場事件 東京高裁昭和61.3.27 民集45-8-1395頁判タ594判時1185
10114-14 日立武蔵工場事件 東京地裁八王子支部 昭和53.5.22 民集45-8-1361 判時906
10114-15北九州市病院局事件 最三小判平成元.4.25 判タ719 労旬1221号
10114-16都水道局時間外勤務拒否事件 東京高裁昭和43.4.26判タ222
10114-17増井和男「いわゆる時間外労働の義務を定めた就業規則と労働者の義務」最高裁判所判例解説民事篇平成3年
10114-18★★★★岩渕正紀「地方公営企業労働関係法一一条一項と憲法二八条」最高裁判所判例解説民事篇平成63年
10114-19東洋鋼鈑事件控訴審判決 広島高裁昭和48.9.25判決 判時724
10114-20討論判例研究 秋田成就 近藤吉雄 山本吉人「三六協定締結後の残業義務 -明治乳業事件・東京地裁(昭44・5・30)」『季刊労働法』19-4 1969
10114-21★★★前田正道編『法制意見百選』ぎょうせい766頁所収
「労働基準法第三六条に基づく協定の更新の拒否」昭和32年9月9日法制局一発第22号労働省労政局あて法制局第一部長回答(法制局意見年報6巻36頁 解説君島護男
10114-22岩渕正紀「時の判例 地方公営企業労働委関係法一一条と憲法二八条」『ジュリスト』939 1989

10115-1 野間賢「単純労務職員の争議行為-北九州市病院局事件」『季刊労働法』153号1989
10115-2北九州市病院局事件 福岡高裁昭和56.9.29 判タ534
10115-3石井将「地公労法一一条の合憲性判断をめぐって」『労働法律旬報』12211989

10116★北九州市清掃局事件 最高裁一小 平元.1.19 『労働判例』№540
10116-1★増井和男 「地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業以外の単純な労務にこようされる一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項目と憲法二八条」最高裁判所判例解説民事篇昭和63年
光栄企業労働関係法附則北九州市清掃事業局事件
10116-2北九州市(市労43年闘争事件)昭和63年12.16最高裁二小判 労働判例534
北九州市小倉西清掃事務所事件二件昭和62年.12.9最高裁二小判、北九州市小倉東清掃事務所事件昭和63.12.9最高裁二小判
10116-3北九州市職組・病院労組事件 福岡地裁昭和55.5.7判決 判例時報980
10116-4★北九州市(48年闘争事件)福岡地裁昭和62.9.29 労判511
争議行為の指導参加を理由とする53人の懲戒処分が有効とされた例。
北九州市労連と市職労は自治労の指導に基づいて、昭和48年春闘において、人事院勧告体制打破スト権奪還等の目標を掲げ4月17日に1時間、27日に半日の各ストライキを実施し、また自治労の指導に基づいて、九月中の賃金確定を目標としてね市職労のみで、9月14日に30分、市職労と市労連で20日・27日に各1時間のストライキを実施し、49年1月29日付で停職1月4人、減給21日、戒告28人の懲戒処分に付した。処分された者は1人を除いて少なくとも二回以上のストに参加し、スト参加を呼びかけ、ピケに参加したり、職場集会を主宰した者である。判決は神戸税関事件を引用して、本件争議行為の目的、原告ら組合役職並びに原告らの本件各更衣の性質、態様及び情状に照らすと、原告らに対する本件各処分が社会観念上著しく妥当を欠くものと思われない‥‥として裁量権の範囲を超え、濫用したものと判断することはできないとしている。
10116-5★福岡県職組事件福岡地裁昭和62.4.28判決
以下の3件の争議行為の企画・指導・参加を理由とした懲戒処分を有効とした
(1)県職労は昭和43年10月8日公務員共闘の秋期年末闘争の一環として、人事院勧告の5月実施等を要求して約1時間のストライキを実施し、被告は44年2月22日委員長名義のスト指令を配布する等などした原告の県職労執行委員(専従)を減給三月の懲戒処分に付した。
(2)県職組は44年11月13日公務員共闘の秋期年末闘争の一環として、人事院勧告の5月実施等を要求して早朝30分から1時間のストライキを実施した。被告は45年1月14日自治労県本部執行委員・県職労特別執行委員(専従)としてストの具体的方法の協議決定に参画し、スト指令を配布する等した原告を停職一月、教育長粕屋出張所総務課長の職にありながらストに参加した原告を減給一月、ストに参加し45~60分職務を放棄した原告31人を戒告処分に付した。
(3)県職労は46年7月15日公務員共闘の秋期年末闘争の一環として、大幅賃上げ人事院勧告の5月実施等を要求して、三〇分から一時間のストライキを実施した。被告は46年8月28日ゼッケン・腕章等を着用して文化会館入口付近でのピケに参加し、職員の登庁を阻止した3人を減給一月、ストに参加した2人を戒告処分に付した。
 神戸税関事件を引用し、本件欠く処分は裁量権を濫用したものとはいえないと判示。
10106-6★北九州市(49年闘争)事件 福岡地裁昭和62.4.28判決
ストライキの参加、管理職に対しピケッティングで庁舎外に押し出す等の行為なしたことを理由とする懲戒処分を有効とした。
 (1)市職労は昭和49年春闘における自治労の全国統一行動の一環として、市労連とともに3月1・5日に各30分も、26日に1時間、4月11・13日に各半日のストライキを実施。
(2)市職労は49年4月27日自治労福岡県本部の指令に基づいて、市労連とともに4月11日の日教組のストに対する福岡県警の強制捜査に抗議して30分のストを計画し、右ストは実施直前中止されたが、勤務開始時間の早い清掃関係職員1490名中404名が勤務時間に食い込んだ職場大会に参加した。
(3)市職労は、48年11月27日、12月4日、49年1月31日に行われた争議行為の懲戒処分への抗議として、49年7月12日30分のストを実施。
(4)市職労は自治労の秋期年末闘争の一環として、市労連とともに賃金確定、弾圧処分反対、スト権奪還等を要求して49年11月19日30分のストライキを実施。市職労、市労連のピケにより2262名の入庁不能者が生じた。原告らは右のいずれのストライキにも参加し、時間内職場集会を主宰したり、ピケに参加する等した。またストに参加しようとしなかった係長ら管理職に対し、ストに参加するように執拗に強要し、これに応じないため実力で庁舎外に押し出す等の行為をなした。これに対し市長は50年2月22日原告2人を停職一月、17人を減給、16人を戒告の各処分に付した。
判決は、全逓東北地本判決を引用し「争議が集団的行為であるからといって、その集団性のゆえに争議行為参加者個人の行為としての面が、当然に失われるものではないから、地公法11条違反者に対して、地公法30条以下の服務規律を適用して同法29条1項に基づく懲戒処分は許されるものというべきである」としている。
10116-7北九州市清掃局事件 福岡高裁 昭和58.3.16判決 民集34-2-169労判422
10116-8北九州市清掃局超勤拒否事件 福岡高裁 昭和57年4月27日判 民集42-10-997判タ473
10116-9北九州市清掃局事件 福岡地裁昭和51.7.22 民集42-10-940 労判259 判時837
10116-10 福岡地裁昭和58.6.14 判タ534
10116-11★★全道庁釧路総支部事件 札幌高裁56.9.29 労民32-5-231 判時1034 判タ473
10116-12北九州市清掃局ビラ貼り事件 福岡地裁56.8.24 訴務月報28-1-109
10116-13北九州市清掃局休日勤務事件 福岡地裁56.8.24 労民32-3~4-513
10116-14北九州市清掃局事件 福岡地裁56.2.26 判時1011 労判362
10116-15★長崎県職組事件 最一小平1.9.28判決 判タ729
10116-16全農林(82秋期年末闘争)事件 東京高裁平成7.2.28判決 労判674
10116-17★大分県教組事件 大分地裁平5.1.19判決 労判627 人事院勧告完全実施を目的としたて公立学校教員のストが許容された争議行為であるとして戒告処分を無効とした異例の判決

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10117国鉄檜山丸事件上告審判決 刑集17巻2号23頁 昭和38年3月15日最二小
10117-1野村平璽「公労法一七条違反の争議行為と刑事責任-国労檜山丸事件・全逓長光事件最高裁判決に関連して-」『法律時報』35巻4号9
10117-2吉川経夫「公労法一七条違反の争議行為刑事免責(国労檜山丸事件)」別冊ジュリスト1号
10117-3中山和久「公労法一七条と刑事免責-最高裁第二小法廷三月一五日判決めぐって-」『法学セミナー』86号
10118三鷹事件 最高裁大法廷昭和30年6月22日
10119盛誠吾「フランスにおける労働時間と団体交渉」『一橋論叢』99巻1号1988 http://hdl.handle.net/10086/11189
10120岸井貞男「アメリカにおける労働協約の履行強制」関西大学法学論集 47巻2号1997
10121岸井貞男「アメリカにおける団体交渉義務(二)」関西大学法学論集 47巻3号1997
10122岸井貞男「アメリカにおける被用者の「団体行動」と使用者の対応」関西大学法学論集 47巻1号1997
10223 中嶋陽子「ワグナー法成立の由来(翻訳)」『英米法学』11号1960
10224 荻澤清彦「労働判例研究」全道庁釧路療養助事件『ジュリスト』682 1979
10225塚本重頼「労働組合の不当労働行為(1)連載アメリカの不当労働行為制度4」『季刊労働法』153
10226佐藤敬二「アメリカにおける公務員の争議権保障-一九八〇年代の展開」『季刊労働法』153
10227毛塚勝利「労働協約における労働者義務条項の法的意味」『一橋論叢』99巻3号1988http://hdl.handle.net/10086/11187
10228国労仲裁裁定実行請求事件控訴審判決 東京高裁昭和49.9.25判決労民25巻4・5号392頁
10229国労仲裁裁定実行請求事件上告審判決 最三小昭和53.7.18 判例タイムズ369 
10330諏訪康雄「労働組合法一七条をめぐる基礎的考察」『一橋論叢』99巻3号 http://hdl.handle.net/10086/11186
10331政令201号(国鉄弘前機関区)事件 最高裁大法廷昭和28.4.8刑集7-4-755頁
10331-1園部逸夫 「公務員の団結権・団体交渉権-政令二〇一号事件」ジュリスト臨時増刊(憲法判例百選)276-2号160頁
磯田進の引用のようであるが「『公共の福祉』のただ一言でその争議権をなでぎりにして呪文で人を『折伏』するつもりであるかのような内容空疎な」などと判決を批判し、公務員の労働基本権確立を標榜する立場を表明。
10332馬渡淳一郎「企業施設利用拒否等と支配介入-池上通信機事件」『ジュリスト』昭和63年度重要判例解説
10333(座談会)夫婦別姓の検討課題 加藤一郎・星野澄子、鳥居淳子・利谷信義・大森政輔『ジュリスト』936 1989
10334深瀬忠一「国際学会から見た象徴天皇制(下)」『ジュリスト』936 1989
10335公務員制度研究会 公務員の勤務条件 『法令解説資料総覧』25号
10336木下毅「駅前ビラとパブリックフォーラム」『ジュリスト』832
10337阪本昌成「修正一条のパブリックフォーラム」判タ535
10338丸山英二「アメリカ連邦最高裁と堕胎-州法による堕胎規制の合憲性-」判タ535
10339国鉄松山電車区事件 高松高裁平元・5.17判決 労判540 
10340★★★国鉄池袋電車区・蒲田電車区勤務時間内洗身入浴事件 東京地裁昭和63.2.24判決 判タ676
 本件は、旧国鉄職員(車両の点検・保守を業務とする旧国鉄電車区勤務)の原告らが、勤務時間内に洗身入浴したことを理由に、右時間分の賃金控除を受けたため、その違法を主張し賃金支払いを請求した事件である。
この判決で注目されるのは次の労使慣行の成立要件を一般的に述べた点であった。
(1)同種行為又は事実が長時間反復継続されていること、(2)当事者が明示的にこれによることを排斥していないこと、(3)当該労働条件についてその内容を決定し得る権限を有し、あるいその取扱いについて一定の裁量権を有する者が規範意識者が規範意識を有していたことの3条件を示した。
 そのうえで、洗身入浴が電車区長の承認のもとに長期間反復継続して行われていたとしても、電車区長には勤務時間を短縮する権限が付与されておらず、しかも原告らの作業に伴う身体汚染の除去については、顔、手足の洗浄、衣服の更衣等により十分可能であり、勤務時間内の洗身入浴を許さなければならないほどのものではない等から、労使慣行の成立を否定。被告において洗身入浴が就業規則に抵触する違法なものであることは認識していたとし、少なくとも昭和58年2月頃には洗身入浴を禁止する旨告知しているから、警告として欠くところはむなく、被告の行った賃金控除措置は不当ではないとした。
 また電車区長と国労電車区分会長との間で勤務時間内の洗身入浴を認める「確認書」が交わされていたが、電車区長には就業規則改正をもたらす労働協約締結の権限が付与されてない以上、労働協約としての効力はもたないとしている。
10342済生会中央病院事件 東京地裁昭和61.1.29判決 労判467
10343★★★茂田忠良・内田淳一「昭和郵便局掲示板撤去事件に関する昭和57年10月7日最高裁判決について-庁舎管理権をめぐる問題-」『警察学論集』36巻1号 1983 庁舎管理権の法律関係の性質について要領よく説明している。(枝番は参照指示文献)
10343-1原龍之介法律学全集13ーⅡ『公物営造物法』新版昭和49年 有斐閣
10343-2長野士郎『逐条地方自治法』第12次改定新版学陽書房1995
10343-3加藤富子「公の施設の利用関係」『法学教室』第二期1号
10343-4村上敬一「郵政省庁舎管理規程(昭和四〇年一一月二〇日公達七六号)六条に定める許可の性質」最高裁判所判例解説民事篇昭和57年

10344槇重博「国公有財産の種類と管理」『法学教室』第二期1号
10345根橋正一「産業革命とスリランカの国際観光」『社会学部論叢』17-1 (ネット公開)
10346渡邉義浩「王莽の革命と古文学」『東洋研究』 (179) 2011
10347本吉邦夫「英国における法の支配と確立-ヒュームの英国史によって-(1)」『法の支配』164 2012
10348★★今野正規「民事責任と社会秩序(1)ー社会思想からみた19世紀フランスにおける民事責任の変遷ー關西大學法學論集 第60巻 第5号http://hdl.handle.net/10112/5009今野正規「民事責任と社会秩序(2・完) ー社会思想からみた19世紀フランスにおける民事責任の変遷「民事責任と社会秩序(2・完)」 http://hdl.handle.net/10112/6541
 引用に加えて私自身の見解も述べる。
 18世紀の啓蒙主義者は封建制や同業組合のような中間団体によって経済的自由が阻害されていることが貧困の原因と考えた。市場を歪める封建制や中間団体を排除し、労働への自由なアクセス、市場と契約を機能させることにより、労働の価値を回復させれば貧困は解決できると考えた。同業組合を廃止し、営業の自由を確立したフランス革命期の自由放任的な社会政策の理念は明確である。国家は個人の労働の自由なアクセスと正当な利益を保障すればよいのであって、怠惰や不運によって貧困に陥っている個人はそのまま放置すべきで、国家がかかわる必要はなく、強制力のない道徳的領域に委ねられる。本来の自由主義とはそういう自己責任を基調とするものである。
 
 市場と契約を通じての社会秩序の形成が近代市民社会である。ところが現代社会は民事責任が過重になりすぎ、本来の自由社会が窒息しそうな状況にある。例えば労災である。フランス民法典が編纂された19世紀初期段階では、労災をはじめとして事故は、意識的に法的領域から切り離されてきた。事故とは非意図的にもたらされた、予見することも回避することもできない性質の出来事であり、それによってもたらされた損害は、法的には偶発事故または不可抗力を原因とする損害であるため民事責任の対象とはならない。
 たんにそれはたんに不運として甘受すべき事柄だったのである。
 フランスにおいて無過失責任の採用により労災補償法が定められたのは19世紀末葉の1898年である。
 ここからは本論文と無関係だが、フランス民法は英米法にも影響を与えており、コモンローでも同じことである。アメリカでは1910
年代まで労災補償制度などなかったのである。さらにいえばアメリカでは英国のような、退職時の予告義務制度がとられなかったため、労働者の一方的契約破棄つまり退職は自由だった。アメリカ人に過労死はないというのは、死ぬほど頑張る前に仕事を辞めるからだといわれる。勝手に辞める自由があるのでそれで使用者の解雇自由と対等という考えかたである。本来の自由社会であれば過労死の責任を使用者になすりつけるようなことは間違っているといえる。

10349松林和夫、平野毅「労働基本権判例年表」『法律時報』40-8 1968
10350和田英夫「三菱樹脂訴訟についての感想」阿部照哉「人権規定の私法関係への適用」判時724
10351三菱樹脂本採用拒否事件上告審判決昭和49.12.12判決 判時724
10352角田邦重「我国における同盟罷業権の生成-治安警察法一七条をめぐって」『日本労働法学会誌 (35), 1970
10353下井隆史「争議行為と物権の関係についての一考察-職場占拠をめぐる諸見解の検討を中心に-」北大法学論集28(1)1977 http://hdl.handle.net/2115/16231
10354★★★船田三雄「一地方公務員法三七条六一項四号の合憲性 二地方公務員法六一条四号の適用が許されないとされた事例」(都教組勤評事件の解説)『最高裁判所判例解説民事篇昭和44年』
10355石井保雄「最近フランスにおけるストライカーの損害賠償責任をめぐる議論」『一橋論叢』99巻3号 http://hdl.handle.net/10086/11185
10356盛誠吾「フランス・労働協約拡張精度の展開」『一橋論叢』102巻1号 http://hdl.handle.net/10086/11129

10357「一 公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度が、代償機能を喪失したと認定された事例」大分(県教組・高教組)人勧完全実施闘争処分取消訴訟第一審判決 大分地裁5.1.29判時1457
10358★★本吉邦夫「争議中の労働組合員が会社側管理職員の行っているテレビ生放送に騒音を混入せしめた威力業務妨害行為が刑法上の違法性及び責任に欠くことはないとされた事例」『最高裁判所判例解説刑事篇昭和51年』
 毎日放送事件の解説であるが、久留米事件方式により当然の判決だと思うが、解説は、三友炭坑事件や札幌市労連事件との状況の違いを解説し、ストの実効確保という目的自体は正当と述べたうえ、会社側が組合対策として管理職員を累次増加させてきた点など同情の余地ありとし、比較的組合側に好意的な言及に疑問を感じる。
 私は三友炭坑事件と札幌市労連事件にしても久留米事件方式を採用すれば無罪とされることはなかったのではないかと考えていたので疑問なのである。この2判決は理由において、刑法上、違法性及び責任をほ欠くものではないと判示し、しかしながら、かつ、その理由づけをもって実質的な違法性責任が軽微なもので刑罰をもって臨まなければならない程のものではないとして無罪とした判決だが、可罰的違法性論に消極的になった昭和48年以降の最高裁が実力ピケを容認することはないと素人的には思うからである。
 三友炭坑事件と札幌市労連事件は最高裁が実力ピケを威力業務妨害罪としなかった例外的判決と考えるが、札幌市労連事件は市電の車庫からの発進を30分阻止し、三友炭坑事件はそれより長時間車両運行を阻止している。にもかかわらず無罪とされた背景として、本吉は「三友炭坑事件では例えば社宅の飲料水は山麓に約一間半四方のコンクリート製の水槽をつくり、僅かに山間より湧出する山水を鉄管で之を引き込み、その溜水を手押ポンプで汲み出すという粗悪な設備で、殊にその溜水に対しては何等消毒等の衛生的設備なく、渇水期は勿論平素でも行列を作って汲水の順番を待つという状況に放任されていた等の劣悪な労働条件のものにあった等争議について大方の深い同情の得られやすいものであったこと。」といい、札幌市労連事件については、市当局が勤務条件の改善等を目指した団体交渉の要求を受け、かつ、この要求について早期解決を図るべき旨の地労委の調停や市議会総務委員会かにらの勧告があったのにかかわらず不当に団体交渉の拒否や引き延ばしを図ったため、一年有余の長時間無駄に過ごさせられ当局からストをやるならやれなどと誠意のない返答をされたとの事情があったことが斟酌されたと解釈されている。
10359長谷川正安「労働者の政治的意見-宮沢鑑定書を機縁として-」恒藤武二「従業員の政治活動」『季刊労働法』19-3 1969
10360門田信男「施設管理権、平和義務違反の争議行為を理由とする解雇」弘南バス事件最高裁第三小法廷昭四三・一・二四判『季刊労働法』19-3 1969
10361三島宗彦「時間外職場大会と地公法三七条一項の争議行為との関係」鶴岡市職職場大会事件 山形地裁昭44.7.16判 『季刊労働法』19-4 1969
10362★菅野和夫「違法争議行為における団体責任と個人責任(一)-損害賠償責任の帰属の問題として-」『法学協会雑誌 』88-2 1971 菅野和夫「違法争議行為における団体責任と個人責任(二)-損害賠償責任の帰属の問題として-『法学協会雑誌 』88-4 1971
 イギリスがピースフルピケッティングを合法化したのは1906年の労働争議法であり、それまでは平和的説得であっても労働者を説得して労務を放棄させる行為は「雇用契約違反誘致」の法理により不法行為責任を課されただけでなく、争議行為は「民事共謀」の法理が適用されることが1901年のタフヴェイル判決で明確になっていたのである。それを覆すために制定したのが1906年労働争議法であり第二条によって、平穏に行われた情報の授受や労働の放棄の呼びかける行為である限りは、工場や建物の前または周辺の公道に対するトレスバス〔ふつう不法侵入と訳される〕を成立させないし、工場、建物へ私的ニューサンス(ふつう不法妨害、財産共有妨害と訳される)にもならない。しかし菅野によればそれだけだという。
(一)の 236頁「ピケ員が許可なく使用者や第三者の土地、建物へ立入れば依然としてそれら財産へのトレスパスが成立するし、不当な仕方で工場や建物へり出入を妨害しまたはそれらの安寧を害すれば私的ニューサンスを成立させるのである。たとえば、坐りこみスト(シットダウンストライキ)による職場の占拠はトレスバスとなり、、スクラム、集団的ピケ(マスピケッティング)、喧噪なピケは右のニューサンスを成立させる。このほかピケ員が就労しようとする労働者や顧客に暴行や脅迫を行い、侮辱的言葉を発し、工場の設備、備品を破壊したりする行為はそれ自体、暴行、脅迫、口頭誹毀(ひき)等々の不法行為を成立させる‥‥」

これに対して、我が国のピケッティングに関する公式見解として昭和29年11月6日労働次官通達(労働省発労第四一号都道府県知事宛「労働関係における不法な実力行使の防止について)があるが、これによれば「我が国においては、事業場の出入口付近に多数の者が集合していること自体は、ピケットとしては違法とならない。然し乍ら、ピケットは平和的説得の範囲に止まるべきものであって、例えば、工場事業場に正当に出入しようとする者に対しては、暴行脅迫にわたることはもとより、一般に、バリケード、厳重なスクラムや坐り込み等により、物理的に出入口を閉塞したり、説得又は団結力の誇示の範囲を越えた多衆の威嚇や甚だしい嫌がらせ等によってこれを阻止する如きピケットは正当ではない」とする。
 英米では不法行為となりうる、制定法(英国は1980雇用法、米国は1947年タフト・ハートレー法)罰により禁止されている)マスピケッティングを是認している点で問題である。また、プロレイバー労働法学では野村平爾のようにスクラムのような物理的有形力を是認し組合の強制力を是認したり、そうでなくてもスクラムで立ち止まらせることによって説得の機会を得ることも平和的説得の範疇にあるというような詭弁のような学説が流布されただけでなく、可罰的違法性理論の席巻により、昭和48年の国鉄久留米事件以前の下級審判例においては、逮捕罪に該当するような有形力行使もピケットにおいて是認する下級審判例があったことからみて、我が国はピケッティングの規制においてもっと厳格であるべきだったとの感想をもつものである。

10363山崎俊光 一労働者が整理休暇を取得することにより精解禁手当等の経済手は利益を得られない結果となる措置と労働基準法六七条 最高裁判所判例解説民事篇昭和60年
10364高橋利文「一いわゆるチェック・オフと労働基準法二四条一項」最高裁判所判例解説民事篇平成元年
10365荻澤清彦「労働時間の現状と課題」『季刊労働法』通号110
10366長谷川登鯉男「労働時間短縮の行政指導について」『季刊労働法』通号110
10367新谷真人 野間賢 休憩時間の署名活動 大日本エリオ事件 『季刊労働法』通後上153号 1989

(争議行為及びピケッティング等の基本的な刑事判例等その9完)

10368★★★岩教組学力調査事件上告審審決 昭和51.5.21大法廷判決 刑集30-5-1178 判時814

 この判決は非現業地方公務員の争議行為について刑罰から実質的に解放した都教組事件(昭和44.4.2大法廷判決を判例変更を明言したものである。理論的には全農林警職法判決は(昭和48.4.25大法廷判決)を踏襲したため目新しいものはないとされる。本判決は地方公務員の労働基本権制約の調整原理を「地方住民の共同利益ないしは国民全体の共同利益」といい、都教組判決のとったいわゆる「二重の絞り論」(争議行為を違法性の強いものと弱いらに分け、前者のみを争議行為にあたるものとし、争議行為に通常随伴する行為は可罰性を認めない)を次のように明確に否定したことが最大の意義である。

「地公法六一条四号の規定の解釈につき、争議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して、前者のみが同条同号にいう争議行為にあたるものとし、更にまた、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為についても、いわゆる争議行為に通常随伴する行為は単なる争議参加行為と同じく可罰性を有しないものとして右規定の適用外に置かれるべきであると解しなければならない理由はなく、このような解釈を是認することはできないのである。」
 都教組判決・全司法仙台判決の「二重の絞り論」の「通常随伴行為不罰論」については全農林警職法判決は「一般に争議行為が争議指導者の指令によって開始され、打ち切られる現実を無視するばかりでなく、‥‥このように不明確な限定解釈は、かえって犯罪構成要件の保障的機能を失わせることとなり、その明確性を要請する憲法31条に違反する疑いすら存する」と厳しく批判されたが、本判決においても「労働組合という組織体における通常の意思決定手続に基づいて決定、遂行される違法な争議行為については、実際上、当該組合の何人に対しても個人的な責任を問うことがないということに帰着するのであって、とうてい容認することのできないところといわなければならない」と排斥している。
 プロレ-バーの批判としては比較衡量を捨て「国民全体の共同利益」概念で禁止を合憲とするのが抽象的すぎる。地方公務員も国家公務員と同じく「私企業における労働者の場合のように団体交渉による労働条件の決定という方式が当然に妥当せず、争議権も団体交渉の裏づけとしての本来の機能を発揮する余地に乏しく」ということを前提としていることについて地公法55条の趣旨から、国家公務員と同じレベルで処理することを疑問とする見解(山本吉人10368-3)

 ピケッティング事案にといて
 原判決仙台高裁は、人垣をつくって立ちはだかり交通の妨害をしたことが道交法120条1項9号違反であるとしながら、労組法1条2項の正当行為として違法性が阻却され無罪という判断をを下していたが、それを破棄して有罪としたものである。本判決では国労久留米駅事件最高裁大法廷昭和48.4.25判決を引用せず、その判断方式をとっていない。
 その問題と関連して本件ピケ事案の判決について詳しく解説しているのがプロレーバーの横井芳弘(10368-2)である。それによると、「法律で争議行為が禁止され、しかもその規定が合憲と解される場合には、当該ピケッティングが「争議行為の一種」と認められるかぎり、違法性が阻却される理由はないとしていることについて、これは一刀両断的に割り切ったものであり、久留米駅事件方式のように「諸般の事情を考慮に入れ‥‥法秩序全体の見地から‥‥判定」するものとは違って頭から違法性を肯定するものとの評価である。つまり久留米事件より厳しい判決との評価のようである。
 ただし、岩教組判決は「争議行為の一種」としてのピケッティングの違法性は阻却されないとしているのであり、国労久留米事件は「争議行為に際して行われるもの」の判断基準としての違いはあるということも指摘している。「争議行為の一種」と「争議行為に際して行われるもの」とはどう違うか問題の解答は、全逓名古屋中郵判決の臼井滋雄の判例評釈(10369-1)にあった。それによると、国鉄檜山丸判決(昭和39.3.15刑集17-2-28頁)は争議行為の正当性・違法性の問題と争議行為に際して行われた個々の犯罪要件該当行為の正当性・違法性の問題を区別し論じることなく、後者として行われた艦船侵入行為を有罪としているのであるが、国労久留米駅事件(昭和48.4.25刑集27-3-419頁)は二つの問題を明確に区別した。つまりすでに久留米判決において「公労法一七条一項に違反する争議行為が刑法その他の罰則要件に該当する場合には、労組法一条二項[刑事免責]の適用はなく、他に特段の違法性阻却事由が存在しない限り、刑法上これを違法と評価すべきものであるがせ、そのことと、右の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成該当行為についての違法性阻却事由の有無の判断とは、区別をしなければならない。」と判示していたのである。
 名古屋中郵判決では建物侵入罪の成否について「このような付随的な行為は、直接公労法一七条一項に違反するものではないから、その違法性阻却事由の有無の判断は、争議行為そのものについての違法性阻却事由の有無の判断とは別に行うべきであつて、これを判断するにあたつては、その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならないのである。」としたうえで、「これを本件における建造物侵入の行為についてみると、被告人らは、公労法一七条一項に違反する争議行為への参加を呼びかけるため、すなわち、それ自体同条項に違反するあおり行為を行うため、立入りを禁止された建造物にあえて立ち入つたものであつて、その目的も、手段も、共に違法というほかないのであるから、右の行為は、結局、法秩序全体の見地からみて許容される余地のないものと解さざるをえない。」と判示し久留米事件にのっとった判断方式をとっているとする。
 つまり争議附随行為は「諸般の事情」を考慮に入れたうえ実質的違法論に立脚し「法秩序全体の見地から」違法性阻却事由を判断するということであるが、重要なことは、基本となる争議行為自体が公労法一七条一項に違反する点も「諸般の事情」の一素材になるといういことを久留米判決は暗に前提としているということを臼井は説明している。
 そうすると、ピケッティングが刑法その他の罰則要件に該当する場合、それが、「争議行為の一種」であれ「争議行為に際して行われるもの」であれ、争議行為が禁止され、労組法の刑事免責が適用されないす公務員の場合、問題のピケットの違法性を阻却する理由はなく、アメリカ判例の違法目的のピケッティングの違法性が阻却されなんいという判例の考え方と、さほど大きな差異はないと考えるものである。
 一方、横井芳弘はプロレーバーの立場から組織労働者側に全く不利な判断をとっていないこということも言っている、この判決はピケッティングが団体行動権の行使として違法性が阻却される場合もあることを認めているというのである。「法律上争議行為が禁止されている者の行うピケッティングについても、争議行為=争議権の行使と区別される団体交渉その他の団結行動を団体行動権の行使として違法性が阻却される場合もあることを示した点で重要な意味をもつ」という。
 したがって組合側に「争議行為の一種」でないと言い張ることにより、つけこむ余地を残しているともいえるが、争議行為に際しておこなわれるものについては、。
 私が思うに、幅員4.3メートルという狭隘な橋上で50人のピケ隊が待ち受けるのは、英米ならマスピケッティング(大量動員ピケ)で違法とされるのではないか。またアメリカ合衆国では、違法目的のビケッティングを違法とする判例がいくつかあり、正当な業務である学力テスト立会人の通行を阻止することが違法目的である以上、このような大量動員ピケも当然に違法であるという判断をとりたい。
 団藤重光反対意見は表現の自由として保障されてしかるべきであり、本件を平和的説得行為として違法性は阻却されるというのであるが、本件のような執拗なマスピケを平和的説得とする理屈は理解不能である。

ピケ事案の判決を抜き出すとこうである。

「政治的目的ないしは市町村教委の管理運営事項についての要求貫徹のためのものである点において、憲法二八条の保障する団体行動権の範囲に属するものではないと考えられることに加えて、原判決の認定したところによつても、被告人Hらは、本件学力調査実施の当日、テスト立会人であるs町教育委員会教育長及びテスト補充員の同町役場吏員ら一四名の一行がその職務遂行のためW中学校に赴くのを阻止すべく、同校校舎に通ずる道路のうちの狭隘な橋上部分(幅員四・三メートル、長さ四メートル)を扼して、右の一行を待ち受け、一行が同所に差しかかるや、被告人Hを含む約五〇名の者がその前面に集合し、人垣をつくつて進路を遮断し、この人垣を背景として調査実施の中止を要求し、そのためやむをえずいつたん通行を中止した上記テスト立会人らが改めて通行を試みようとすると、再び前同様の行動に出で、このようにしてテスト開始時刻前の午前八時ころから終了予定時刻に近い午後二時ころまでの約六時間の長きにわたり、前後約五回、一回につき約一〇分ずつ断続的に執拗に右行為を反復し、結局同人らをして右中学校に赴くことを断念するに至らしめたことが認められるのであるから、その間暴力等の有形力の行使がなかつたとはいえ、その手段、態様において道路上における正当なピケツテイングとして是認しうる程度を超えるものがあつたといわざるをえないことを考えると、被告人Hらの前記所為に正当な団体行動権の行使として刑法上の違法性を阻却すべき事由があるとすることはできない。また、右所為を団体行動権の行使の観点からでなく、憲法二一条の意見の表明の観点からみても、前記のようなその手段、態様に照らすときは、同条の保障する意見表明活動として正当化される限度を超えているといわざるをえないのである。」
 
(多数意見)
被告人らに対する本件公訴事実の要旨は、被告人Aは、岩手県内学校教職員をもつて組織するB組合(以下「B組」という。)の中央執行委員長、同Cは同組合書記長、同D、同E、同F、同G、同Hは、いずれも同合中央執行委員であるところ、第一 岩手県下の各市町村教育委員会(以下「市町村教委という。)がその管理する各市町村立中学校第二、三学年生徒に対する昭和三六年度全国中学校一せい学力調査を実施するにあたり、これが実施に反対し、同組合傘下組合員である市町村立中学校教員をして、これが実施を阻止する争議行為を行わせるため、 一 被告人ら七名は、他の同組合本部役員らと共謀のうえ、被告人らにおいて、昭和三六年一〇月一三日ころより同月二〇日ころまでの間に、同組合I支部長Jら各支部長あて、B組中央闘争委員長A名義の、「一〇月二六日学力調査を行う場合は、全組織力を傾注して阻止せよ。テスト責任者、補助員任命は完全に返上せよ。当日全組合員休暇届を提出し、午前八時三〇分より中学校区単位の措置要求大会に参加せよ。九時五〇分から一〇時の間に学校に到着して授業を行え。」等、全組合員相結束して右調査の実施に関する職務の遂行を拒否しその調査の実施を阻止すべき旨を記載した指令書(指令第六号)及び「テスト責任者、テスト補助員等の任命を絶対に返上せよ。当日全組合員午前七時中学校区単位に集結し、教育委員会の行動に対応できる体制を確立されたい。早朝テスト実施の任務をもつて来校し、テストに入ろうとする者がある場合には中学校の担任は直ちに生徒を掌握し、授業の体制にうつり教室を防衛する。外来人が教室に入ることを断乎阻止せよ。特に生徒の扱いについては、テストが事実上不可能な状態におくこと。休暇届は一括分会長保管とする。」等と記載した右指令の内容を敷衍強調する指示書(指示第七号)を発出し、右各支部、支会、分会の役員らを介し、そのころ岩手県一関市ほか同県各市町村において、傘下組合員であるK外岩手県下の市町村立中学校教職員約四三〇〇名に対し、右指令、指示の趣旨を伝達してその趣旨の実行方を従慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をあおり、 二 被告人Dは、(一) 同年一〇月一九日ころ、花巻市abc番地のd、L中学校において、前記組合員である同中学校長Mに対し、「校長も組合員の一人であるから、組合の方針に従つてテストを実施しないことに協力してくれ。テスト責任者を命ぜられてもこれを返上するようにしてくれ。」等と説得強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をそそのかし、(二) 同月二四日ころ、同市ef番地N会館において、前記組合員であるO外約四〇名の小、中学校長に対し、「校長も組合員だから、組織の決定に従つてテスト責任者を返上し、テスト拒否にふみ切つて貰いたい。」等と力説強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をあおり、(三)同月二六日、同市ghi番地のj、P中学校において、前記組合員である同中学校長Qに対し、「テストは反対である。テストはやめるように。」等と説得強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をそそのかし、 三 被告人Fは、(一) 同年一〇月二五日、久慈市k町lm番地のn、R会館において、前記組合員であるS外約五〇名の小、中学校長に対し、「組合の方針はあくまでテストを阻止するので、校長はテスト責任者を返上して貰いたい。」等と力説強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をあおり、(二) 同月二六日午後二時ころ、同市o町字p)qr番地T中学校において、前記組合員である同中学校長Uに対し、「テストはこのままやめて貰いたい。」等と説得強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をそそのかし、 四 被告人Gは、同年一〇月一六日ころ、前記R会館において、前記組合員であるV外約五〇名の小、中学校長に対し、「今度の学力テスト阻止闘争は指令六号によつてやつて貰いたい。テスト責任者を返上しテスト補助員を任命するな。」等と力説強調して右指令の趣旨の実行方を慫慂し、もつて地方公務員である教職員に対し争議行為の遂行をあおり、第二 被告人Hは、W中学校に赴くテスト立会人X、テスト補充員Yら一〇数名の来校を阻止しようと企て、同年一〇月二六日午前八時ころより午後二時半ころまでの間、上閉伊郡s町W中学校約三〇〇米手前の通称t橋上の道路において、前記組合員Zら約五〇名と共謀のうえ、相ともに人垣を作つて右道路上に立ち塞がり、もつて交通の妨害となるような方法で立ちどまつていた、というのであつて、右第一の各事実は、いずれも地方公務員法(以下「地公法」という。)六一条四号、三七条一項(なお、第一の一につき刑法六〇条)に、第二の事実は、道路交通法(以下「道交法」という。)一二〇条一項九号、七六条四項二号、刑法六〇条に各該当するとして、起訴されたものである。
 第一審判決は、右の各事実は関係証拠によりすべて認めることができるとして、ほぼ右公訴事実に沿う事実関係を詳細に認定したうえ、前記各法条等を適用して被告人ら全員を有罪とした。
 原判決は、被告人らの各控訴を容れ、第一審判決を破棄し、本件公訴事実につき全員を無罪とした。その理由の骨子は、次のとおりである。すなわち、まず地公法違反の事実については、いわゆる全逓中郵事判決(最高裁昭和三九年(あ)第二九六号同四一年一〇月二六日大法廷判決・刑集二〇巻八号九〇一頁)に示されたところに従い、憲法上地方公務員の争議行為に対して刑事制裁を科するのは必要やむをえない場合に限られ、かつ、反社会性の強いもののみを処罰の対象とすべきものであるとの基本的立場に立つとともに、他方、地公法六一条四号が地方公務員の争議行為そのものを処罰の対象とせず、争議の遂行を「共謀し、そそのかし、若しくはあおり又はこれらの行為を企てた」者のみを処罰すべきものとしていることに照らし、右規定にいう共謀、そそのかし又はあおり等の行為の意義につき、争議行為に必要不可欠か又はこれに通常随伴する行為であつて、その手段、態様において正当性の限界を超えないもの、換言すれば、単なる争議行為と同等の評価を受ける行為はこれに含まれず、右の限界を逸脱し、もはや法律上の保護に値せず、刑事制裁を科するのもやむをえないと認められる程度に強度の違法性を帯びる場合に限り、これを処罰すべきものと解すべきであるとし、本件争議行為は、その目的、手段、態様に照らし、許容される限度を逸脱し、刑事制裁を科さなければならないほど強度の違法性があるものとは認められず、また、このような争議行為を単に指令、指示し、その遂行を慫慂したにとどまる被告人らの各行為は、争議行為に通常随伴する行為として、争議行為の遂行と同等に評価するのが相当で、可罰的違法性がなく、地公法六一条四号所定の罪は成立せず、この点において第一審判決は法令の解釈適用を誤つたものである、また、道交法違反の事実については、被告人Hの行為は、道交法七六条四項二号に該当するが、労働組合法(以下「労組法」という。)一条二項の正当行為として違法性を阻却されるものと解すべきであるから、これを有罪とした点においても第一審判決には法令の解釈適用を誤つた違法がある、というのである。
 検察官の上告趣意は、原判決の右判断につき、憲法二八条、一八条、一五条二項違反、高等裁判所の判例違反、法令の解釈適用の誤りを主張するものである。
 (当裁判所の見解)
 一 地公法違反の各事実について
 当裁判所は、さきに、昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁において、国家公務員法(昭和四〇年法律第六九号による改正前のもの。以下「国公法」という。)九八条五項、一一〇条一項一七号の合憲性について判断をし、その際、非現業国家公務員の労働基本権、特に争議権の制限に関する憲法解釈についての基本的見解を示したが、右の見解は、今日においても変更の要を認めない。そして、右の見解における法理は、非現業地方公務員の労働基本権、特に争議権の制限についても妥当するものであり、これによるときは、地公法三七条一項、六一条四号の各規定は、あえて原判決のいうような限定解釈を施さなくてもその合憲性を肯定することができるものと考える。その理由を若干敷衍して説明すれば、次のとおりである。

 1 地公法三七条一項の争議行為等禁止の合憲性
 地方公務員も憲法二八条の勤労者として同条による労働基本権の保障を受けるが、地方公共団体の住民全体の奉仕者として、実質的にはこれに対して労務提供義務を負うという特殊な地位を有し、かつ、その労務の内容は、公務の遂行すなわち直接公共の利益のための活動の一環をなすという公共的性質を有するものであつて、地方公務員が争議行為に及ぶことは、右のようなその地位の特殊性と職務の公共性と相容れず、また、そのために公務の停廃を生じ、地方住民全体ないしは国民全体の共同利益に重大な影響を及ぼすか、又はそのおそれがある点において、国家公務員の場合と選ぶところはない。そして、地方公務員の勤務条件が、法律及び地方公共団体の議会の制定する条例によつて定められ、また、その給与が地方公共団体の税収等の財源によつてまかなわれるところから、専ら当該地方公共団体における政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮によつて決定されるべきものである点においても、地方公務員は国家公務員と同様の立場に置かれており、したがつてこの場合には、私企業における労働者の場合のように団体交渉による労働条件の決定という方式が当然には妥当せず、争議権も、団体交渉の裏づけとしての本来の機能を発揮する余地に乏しく、かえつて議会における民主的な手続によつてされるべき勤務条件の決定に対して不当な圧力を加え、これをゆがめるおそれがあることも、前記大法廷判決が国家公務員の場合について指摘するとおりである。それ故、地方公務員の労働基本権は、地方公務員を含む地方住民全体ないしは国民全体の共同利益のために、これと調和するように制限されることも、やむをえないところといわなければならない。

 ところで、他方、右大法廷判決は、国家公務員の労働基本権が国民全体の共同利益のために制約を受ける場合においても、その間に均衡が保たれる必要があり、したがつて右制約に見合う代償措置が講じられなければならないとして、国家公務員の勤務関係における法制上の具体的措置を検討し、国家公務員につき、その身分、任免、服務、給与その他に関する勤務条件についてその利益を保障するような定めがされていること、及び公務員による公正かつ妥当な勤務条件の享受を保障する手段としての人事院の存在とその職務権限を指摘し、これを労働基本権制限の合憲性を肯定する一理由としているので、この点を地方公務員の場合についてみると、地公法上、地方公務員にもまた国家公務員の場合とほぼ同様な勤務条件に関する利益を保障する定めがされている(殊に給与については、地公法二四条ないし二六条など)ほか、人事院制度に対応するものとして、これと類似の性格をもち、かつ、これと同様の、又はこれに近い職務権限を有する人事委員会又は公平委員会の制度(同法七条ないし一二条)が設けられているのである。もつとも、詳細に両者を比較検討すると、人事委員会又は公平委員会、特に後者は、その構成及び職務権限上、公務員の勤務条件に関する利益の保護のための機構として、必ずしも常に人事院の場合ほど効果的な機能を実際に発揮しうるものと認められるかどうかにつき問題がないではないけれども、なお中立的な第三者的立場から公務員の勤務条件に関する利益を保障するための機構としての基本的構造をもち、かつ、必要な職務権限を与えられている(同法二六条、四七条、五〇条)点においては、人事院制度と本質的に異なるところはなく、その点において、制度上、地方公務員の労働基本権の制約に見合う代償措置としての一般的要件を満たしているものと認めることができるのである。

 右の次第であるから、地公法三七条一項前段において地方公務員の争議行為等を禁止し、かつ、同項後段が何人を問わずそれらの行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為をすることを禁止したとしても、地方住民全体ないしは国民全体の共同利益のためのやむをえない措置として、それ自体としては憲法二八条に違反するものではないといわなければならない。

 2 地公法六一条四号の罰則の合憲性
 次に、地公法六一条四号の罰則の合憲性についてみるのに、ここでも、国公法一一〇条一項一七号の罰則の合憲性について前記大法廷判決が述べているところが、そのまま妥当する。

 原判決は、地公法の右規定が同法三七条一項の争議行為の遂行それ自体を処罰の対象とせず、その共謀、そそのかし、あおり等の行為のみを処罰すべきものとしているのは、憲法上労働基本権に対して刑罰の制裁を伴う制約を課することは原則として許されないことを考慮した結果とみるべきものであるとの見地から、右の共謀等の行為の意義を限定的に解釈すべきものと論じているのであるが、しかし、公務員の争議行為が国民全体又は地方住民全体の共同利益のために制約されるのは、それが業務の正常な運営を阻害する集団的かつ組織的な労務不提供等の行為として反公共性をもつからであるところ、このような集団的かつ組織的な行為としての争議行為を成り立たせるものは、まさにその行為の遂行を共謀したり、そそのかしたり、あおつたりする行為であつて、これら共謀等の行為は、争議行為の原動力をなすもの、換言すれば、全体としての争議行為の中でもそれなくしては右の争議行為が成立しえないという意味においていわばその中核的地位を占めるものであり、このことは、争議行為がその都度集団行為として組織され、遂行される場合ばかりでなく、すでに組織体として存在する労働組合の内部においてあらかじめ定められた団体意思決定の過程を経て決定され、遂行される場合においても異なるところはないのである、それ故、法が、共謀、そそのかし、あおり等の行為のもつ右のような性格に着目してこれを社会的に責任の重いものと評価し、当該組合に所属する者であると否とを問わず、このような行為をした者に対して違法な争議行為の防止のために特に処罰の必要性を認め、罰則を設けることには十分合理性があり、これをもつて憲法一八条、二八条に違反するものとすることができないことは、前記大法廷判決の判示するとおりであるといわなければならない。

 また、原判決は、労働組合が行う争議行為は、組合幹部による闘争方針の企画、立案に始まり、民主的な組織内における自由な討議、討論を経て決定され、次いで上部機関から下部機関ないしは各組合員に対する指令、指示の発出、伝達となり、その間組合機関や組合員相互間のさまざまな行為が集積した結果として遂行されるのが通常であり、争議遂行過程におけるこれらの一連の行為は、集団的行為としての争議行為に不可欠か又は通常随伴する行為であるところ、これらの行為は多くは争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる行為等に該当することとなるから、これらの行為者を罰することは、実質的には刑罰をもつて争議行為を全面的かつ一律に禁止することとなつて不当であると論じているが、国公法や地公法の上記各規定にいう争議行為の遂行の共謀、そそのかし、あおり等の行為は、将来における抽象的、不確定的な争議行為についてのそれではなく、具体的、現実的な争議行為に直接結びつき、このような争議行為の具体的危険性を生ぜしめるそれを指すのであつて、このような共謀、そそのかし、あおり等の行為こそが一般的に法の禁止する争議行為の遂行を現実化させる直接の働きをするものなのであるから、これを刑罰の制裁をもつて阻止することには、なんら原判決のいうような不当はないのである。

 原判決は、更に、組合の執行役員等が、組合大会の決議等に従つて指令を発するような行為は、組合規約上の義務の遂行としてされるものにすぎず、争議行為に不可欠か又は通常随伴するものとして一般組合員の争議参加行為とその可罰的評価を異にすべきものではないとも論じているが、組合の内部規約上の義務の履行としてされているかどうかは、当然にはそそのかし、あおり等の行為者の刑事責任の有無に影響すべきものでなく、右の議論は、ひつきよう、労働組合という組織体における通常の意思決定手続に基づいて決定、遂行される違法な争議行為については、実際上、当該組合の何人に対しても個人的な責任を問うことができないということに帰着するのであつて、とうてい容認することのできないところといわなければならない。

 したがつて、地公法六一条四号の規定の解釈につき、争議行為に違法性の強いものと弱いものとを区別して、前者のみが同条同号にいう争議行為にあたるものとし、更にまた、右争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、又はあおる等の行為についても、いわゆる争議行為に通常随伴する行為は単なる争議参加行為と同じく可罰性を有しないものとして右規定の適用外に置かれるべきであると解しなければならない理由はなく、このような解釈を是認することはできないのである。いわゆるAa事件についての当裁判所の判決(昭和四一年(あ)第四〇一号同四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号三〇五頁)は、上記判示と抵触する限度において、変更すべきものである。そうすると、原判決の上記見解は、憲法一八条、二八条及地公法六一条四号の解釈を誤つたものといわなければならない。

 3 本件地公法違反罪の成否
 地公法六一条四号にいう「そそのかし」とは、同法三七条一項前段に定める違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りる慫慂行為をすること(最高裁昭和四一年(あ)第一一二九号同四四年四月二日大法廷判決・刑集二三巻五号六八五頁参照)をいい、また、「あおり」と、右の目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、又はすでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺戟を与えること(最高裁昭和三三年(あ)第一四一三号同三七年二月二一日大法廷判決・刑集一六巻二号一〇七頁、同昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁参照)をいうと解されるとろ、右の「そそのかし」又は「あおり」に該当する行為のうち、更に原判決の説くような限定を付したもののみが、前記規定違反の罪として成立するものと解すべき理由のないことは、上に述べたとおりである。
 ところで、原判決の確定した事実によれば、本件学力調査は、文部大臣において企画案し、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項に基づき、岩手県教育委員会に対し、所定の調査実施要綱による調査及びその結果に関する資料、報告の提出を求めたものであつて、これを受けた同教育委員会は、県下各市町村教委に対して同旨の調査及びその結果に関する資料、報告の提出を求め、これを受けた各市町村教委は、その監督権に基づき、管下の各中学校長を当該学校のテスト責任者に任命し、実施日である昭和三六年一〇月二六日の教育指導計画を変更のうえ、校務として学力調査を実施すべき旨の職務命令を発し、各中学校長は、これに従つて右実施日の教育指導計画を変更のうえ、当該学校の職員らに対しテスト補助員として調査実施の補助作業を行うべき旨の職務命令を発すべきものとされた、そこで、B組は、岩手県下各市町村教委の本件学力調査の実施に反対し、その実施を阻止する目的をもつて、傘下組合員である公立中学校教職員をして右実施阻止の争議行為を行わせる闘争方針案を企画して、機関決定を経てきたものであるが、同年一〇月一二日開催の拡大闘争委員会において、中央執行委員長の被告人A、書記長の同C、中央執行委員であるその余の被告人ら五名(当時、いずれも公立の中学校又は高等学校の教諭で、組合業務に専従。)は、他の中央執行委員及び県下各支部書記長(一名の副支部長を含む。)と討議した結果、本件公訴事実第一の一記載のごとき内容をもつ指令第六号及び指示第七号を承認して、適宜発出することとし、併せて中央闘争委員(中央執行委員が兼ねる。)をオルグとして各支部に派遣することをも決定したうえ、そのころ順次右指令、指示を発出し、各支部、支会、分会の役員らを介し、県下各市町村において、傘下組合員である市町村立中学校教職員約四三〇〇名に対し、右指令、指示の趣旨を伝達してその実行方を慫慂し、更に被告人D、同F、同Gは、前記決定に基づくオルグ活動として、公訴事実第一の二ないし四記載の各日時場所において、各記載のようにB組組合員である各中学校長らに対し、口頭をもつて前記指令、指示の趣旨の実行方を慫慂した、というのである。 そこで、前記の解釈に立つて、右の事実関係をみるのに、原判決において被告人らがその実行方を慫慂したという行為の内容は、B組の組合員である校長や教員らにおいて市町村教委又は校長から命ぜられた本件学力調査実施当日におけるテスト責任者又は補助者としての職務の遂行を拒否すること、及びテストが実施されようとする場合には、担当教師において生徒を掌握し、平常授業の体制をとつて教室を占拠し、テスト実施を阻止することであるところ、右学力調査及びその一環としてされた市町村教委等の職務命令が適法であることは、当裁判所昭和四三年(あ)第一六一四号昭和五一年五月二一日大法廷判決の示すところであるから、右の慫慂にかかる行為は、校長や教員らによる地公法三七条一項の禁止する同盟罷業又はその他の争議行為の遂行にあたるものといわなければならない。この点につき、原判決は、右行為が争議行為にあたることを肯定しながらも、その目的が単なる政治的目的にすぎないものとはいえず、その手段、態様も、職場放棄というよりはむしろ教師本来の職務である平常授業を行い、ただ本件学力調査のためのテストを実施しないという消極的な不作為にとどまるものであるとして、そそのかし、あおり行為が違法性を有しないものと認めるべき理由の一つとしているが、それが地公法三七条一項の禁止する争議行為である以上、そのそそのかし、あおり行為が違法性を欠くものとすることができないことはさきに述べたとおりである。のみならず、前記争議行為は、その目的が文部大臣の文教政策に対する反対という政治的性格のものであり、また、市町村教委の管理運営に関する事項に属する学力調査の実施に対する反対の主張の貫徹をはかるためのものである点において、あるいはまた、その手段、態様が、市町村教委の管理意思を排除して、テスト実施場所である教室を占拠し、テスト対象者である生徒を掌握して、テストの実施を事実上不可能ならしめるという積極的な妨害を行うものである点において、それ自体としても、正当な争議権の行使として憲法上保障される限りではなく、たとえ右行動が主観的には被告人らをはじめとする組合員の教育をまもるという信念から発したものであるとしても、その故に原判決のいうように被告人らの行為が法的に正当化されるものではない。この点に関する原判決の上記見解は、不当というほかはない。そして、前記認定事実によれば、被告人らが前記第一の一の指令、指示を発出伝達してその趣旨の実行方を慫慂した行為は、地公法三七条一項違反の争議行為を実行させる目的をもつて、多数の職員に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、又はすでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺戟を与えたものであつて、地公法六一条四号にいう「あおり」行為に該当するものというべく、この点において、被告人らは、その余の前記中央執行委員らとともに共同正犯として同条同号による罪責を免れず、また、被告人D、同F、同Gが、オルグとして組合員である各中学校長に対し前記指令、指示の実行方を慫慂した各行為は、公訴事実記載のごとき区別に従い、前同様「あおり」行為に、又は違法な争議行為を実行する決意を新たに生じさせるに足りるような慫慂行為をしたものとして同条同号の「そそのかし」行為に、それぞれ該当するものといわなければならない。
 以上の次第であるから、原判決は、憲法一八条、二八条の解釈を誤り、ひいては地公法六一条四号の解釈適用を誤つたものであつて、それが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決は、破棄を免れない。論旨は、理由がある。

 二 道交法違反の事実について
 所論は、憲法二八条、一五条二項違反をいうが、原判示に沿わない違憲の主張であつて、その前提を欠き、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ職権で調査すると、原判決は、その認定する事実関係に照らして被告人Hらの行為が道交法七六条四項二号にいう「道路において、交通の妨害となるような方法で立ちどまつていること」に該当することを認めながら、右行為の実態は、管理者であるs町教育委員会を相手とした本件学力調査のためのテスト実施をめぐる団体交渉であり、これを実施しようとする町教育委員会側に対してその中止を求めるためにする平和的説得行為の域を超えるものではないから、労組法一条二項の正当行為として違法性が阻却され、したがつてこれを無罪とすべきものとしているのである。労組法の右規定は、地公法五八条により地方公務員についてはその適用を排除されているから、原判決が右労組法の規定を適用すべきものとしたのは明らかに誤りであるといわなければならないが、原判決は、被告人Hらの上記所為が憲法上の団体行動権の正当な行使にあたるものとしてその違法性が阻却されると判断した趣旨とも解されないではないので、同判決が適用すべからざる労組法の規定を適用したその一事をもつて直ちに破棄事由となる法令違反があるとすることは妥当ではない。
 しかしながら、被告人Hらの前記所為は、それが行われた時機、場所、態様等諸般の状況に照らし、s町教育委員会に対する学力調査実施についての団体交渉とみるべきではなく、右実施を阻止するための行為として、争議行為の一種であるピケツテイングとみるべきものと考えられるところ、地方公務員については地公法三七条一項により争議行為が禁止され、かつ、同法六一条四号によりその遂行の共謀、そそのかし、あおり等の行為につき刑事上の制裁が定められており、これらの規定がいずれも憲法に違反するものではないと解されることは、上に述べたとおりであるから、被告人Hらの前記所為が、憲法二八条の争議権の正当な行使として違法性が阻却される理由はない。のみならず、前記のように、本件B組の学力調査実施反対の行動は、政治的目的ないしは市町村教委の管理運営事項についての要求貫徹のためのものである点において、憲法二八条の保障する団体行動権の範囲に属するものではないと考えられることに加えて、原判決の認定したところによつても、被告人Hらは、本件学力調査実施の当日、テスト立会人であるs町教育委員会教育長及びテスト補充員の同町役場吏員ら一四名の一行がその職務遂行のためW中学校に赴くのを阻止すべく、同校校舎に通ずる道路のうちの狭隘な橋上部分(幅員四・三メートル、長さ四メートル)を扼して、右の一行を待ち受け、一行が同所に差しかかるや、被告人Hを含む約五〇名の者がその前面に集合し、人垣をつくつて進路を遮断し、この人垣を背景として調査実施の中止を要求し、そのためやむをえずいつたん通行を中止した上記テスト立会人らが改めて通行を試みようとすると、再び前同様の行動に出で、このようにしてテスト開始時刻前の午前八時ころから終了予定時刻に近い午後二時ころまでの約六時間の長きにわたり、前後約五回、一回につき約一〇分ずつ断続的に執拗に右行為を反復し、結局同人らをして右中学校に赴くことを断念するに至らしめたことが認められるのであるから、その間暴力等の有形力の行使がなかつたとはいえ、その手段、態様において道路上における正当なピケツテイングとして是認しうる程度を超えるものがあつたといわざるをえないことを考えると、被告人Hらの前記所為に正当な団体行動権の行使として刑法上の違法性を阻却すべき事由があるとすることはできない。また、右所為を団体行動権の行使の観点からでなく、憲法二一条の意見の表明の観点からみても、前記のようなその手段、態様に照らすときは、同条の保障する意見表明活動として正当化される限度を超えているといわざるをえないのである。

 そうすると、被告人Hに対する道交法違反罪の成立を否定した原判決には、法令の解釈適用を誤つた違法があり、その違が判決に影響を及ぼし、かつ、これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認める。

 0368-1★★反町宏「一地方公務員法三七条一項。六一条四号の合憲性 ほか」『最高裁判所判例解説刑事篇昭和51年
10368-2★★★★横井芳弘「労働事件にみる村上コートの思想と論理」『労働法律旬報』
 石田コートに比し、スマートでソフトムードの村上コートであるが、労働事件に関してはタカ派的保守的本質になんらかわりはないとする。ピケッティング判例について詳しく考察している。
10368-3山本吉人「教育公務員の争議行為禁止規定-最高裁大法廷「岩手県教組事件」の争議行為禁止
10368-4岩教組学力調査事件第一審判決 盛岡地裁昭和41.7.22判時462
10368-5高橋清一「岩教組事件」『労働法律旬報』908 1976
10368-6松岡三郎「学力テスト判決をめぐって地公法三七条一項・六一条四号の合憲性」判事814
10368-7岩教組事件控訴審判決 仙台高裁昭和44.2.19 判時548
10368-8岩教組事件第一審判決 盛岡地裁昭和41.7.22 判時462

10369★★★全逓名古屋中郵事件上告審判決 刑集31-3-182 判時848
判旨1 公労法17条1項は憲法28条に違反しない
2公労法17条1項違反の争議行為は労組法一条二項(刑事免責)の適用はない。
3公労法17条1項違反の争議行為が犯罪構成要件に該当し、違法性があり、責任がある場合であっても同盟罷業、怠業その他単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであって、同条項が存在しなければ正当な争議として処罰を受けることのないようなものであるときには、争議行為の単純労務者に限り、その罰則による処罰を阻却される。
4郵政職員が争議行為として行った勤務時間内二時間の職場大会に参加を呼びかけた行為は、郵便法79条1項の罪の幇助罪による処罰を阻却されない。
5公労法17条1項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為(本件では建造物侵入)について違法性阻却事由の有無を判断するにあたっては、その行為が同条項違反の争議行為に際しこれに付随して行われたものであるという事実も含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならない。
6公労法17条1項違反の争議行為に参加を呼びかけるために行われた本件建造物侵入行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。

公務員の争議行為に関する最重要判例であるが判決は詳細多岐にわたるので要所のみを抜粋する。

○勤務条件法定主義
全農林事件判決が、非現業の国家公務員につき、これを憲法二八条の勤労者にあたるとしつつも、その憲法上の地位の特殊性から労働基本権の保障が重大な制約を受けている旨を説示していることに、留意しなければならないであろう。すなわち、「公務員の場合は、その給与の財源は国の財政とも関連して主として税収によつて賄われ、私企業における労働者の利潤の分配要求のごときものとは全く異なり、その勤務条件はすべて政治的、財政的、社会的その他諸般の合理的な配慮により適当に決定されなければならず、しかもその決定は民主国家のルールに従い、立法府において論議のうえなされるべきもので、同盟罷業等争議行為の圧力による強制を容認する余地は全く存しないのである。これを法制に即して見るに、公務員については、憲法自体がその七三条四号において『法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること』は内閣の事務であると定め、その給与は法律により定められる給与準則に基づいてなされることを要し、これに基づかずにはいかなる金銭または有価物も支給することはできないとされており(国公法六三条一項参照)、このように公務員の給与をはじめ、その他の勤務条件は、私企業の場合のごとく労使間の自由な交渉に基づく合意によつて定められるものではなく、原則として、国民の代表者により構成される国会の制定した法律、予算によつて定められることとなつているのである。その場合、使用者としての政府にいかなる範囲の決定権を委任するかは、まさに国会みずからが立法をもつて定めるべき労働政策の問題である。したがつて、これら公務員の勤務条件の決定に関し、政府が国会から適法な委任を受けていない事項について、公務員が政府に対し争議行為を行うことは、的はずれであつて正常なものとはいいがたく、もしこのような制度上の制約にもかかわらず、公務員による争議行為が行われるならば、使用者としての政府によつては解決できない立法問題に逢着せざるをえないこととなり、ひいては民主的に行われるべき公務員の勤務条件決定の手続過程を歪曲することともなつて、憲法の基本原則である議会制民主主義(憲法四一条、八三条等参照)に背馳し、国会の議決権を侵す虞れすらなしとしないのである。」これを要するに、非現業の国家公務員の場合、その勤務条件は、憲法上、国民全体の意思を代表する国会において法律、予算の形で決定すべきものとされており、労使間の自由な団体交渉に基づく合意によつて決定すべきものとはされていないので、私企業の労働者の場合のような労使による勤務条件の共同決定を内容とする団体交渉権の保障はなく、右の共同決定のための団体交渉過程の一環として予定されている争議権もまた、憲法上、当然に保障されているものとはいえないのである。
 右の理は、公労法の適用を受ける五現業及び三公社の職員についても、直ちに又は基本的に妥当するものということができる。それは、五現業の職員は、現業の職務に従事している国家国務員なのであるから、勤務条件の決定に関するその憲法上の地位は上述した非現業の国家公務員のそれと異なるところはなく、また、三公社の職員も、国の全額出資によつて設立、運営される公法人のために勤務する者であり、勤務条件の決定に関するその憲法上の地位の点では右の非現業の国家公務員のそれと基本的に同一であるからである。三公社は、このような公法人として、その法人格こそ国とは別であるが、その資産はすべて国のものであつて、憲法八三条に定める財政民主主義の原則上、その資産の処分、運用が国会の議決に基づいて行われなければならないことはいうまでもなく、その資金の支出を国会の議決を経た予算の定めるところにより行うことなどが法律によつて義務づけられた場合には、当然これに服すべきものである。そして、三公社の職員の勤務条件は、直接、間接の差はあつても、国の資産の処分、運用と密接にかかわるものであるから、これを国会の意思とは無関係に労使間の団体交渉によつて共同決定することは、憲法上許されないところといわなければならないのである。
○立法政策論
もつとも、現行の法制度をみると、公労法‥‥一七条一項において、同法が適用される職員と労働組合の争議行為及びそのあおり等の行為を禁止しながら、四条において、職員に対し団結権を付与しているほか、八条において、五現業及び三公社の管理運営に関する事項を除き当局側との団体交渉権、労働協約締結権を認めている。
しかしながら、このような労働協約締結権を含む団体交渉権の付与は、憲法二八条の当然の要請によるものではなく、国会が、憲法二八条の趣旨をできる限り尊重しようとする立法上の配慮から、財政民主主義の原則に基づき、その議決により、財政に関する一定事項の決定権を使用者としての政府又は三公社に委任したものにほかならない。そして、五現業及び三公社は、法律上、資金の支出を国会の議決を経た予算の定めるところにより行うことが義務づけられ、職員の給与については特に国会の議決を経た当該年度の予算中の給与総額を超えることができないものとされているとともに、公労法一六条によつて、予算上又は資金上不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も国会が承認するまでは政府を拘束せず、その承認によつて初めて資金の支出が許容されるものと定められており、その団体交渉権は、私企業におけるそれに比して、重大な制約を受けているが、これは、国会が、右の財政民主主義の原則に基づき、政府又は三公社に対する委任に特別の留保を付したことを意味するものと解すべきである。
○争議行為の政治過程歪曲論
全農林事件判決が、非現業の国家公務員の社会的、経済的関係における地位の特殊性について判示するところによれば、「私企業の場合と対比すると、私企業においては、極めて公益性の強い特殊のものを除き、一般に使用者にはいわゆる作業所閉鎖(ロツクアウト)をもつて争議行為に対抗する手段があるばかりでなく、労働者の過大な要求を容れることは、企業の経営を悪化させ、企業そのものの存立を危殆ならしめ、ひいては労働者自身の失業を招くという重大な結果をもたらすことともなるのであるから、労働者の要求はおのずからその面よりの制約を免れず、ここにも私企業の労働者の争議行為と公務員のそれとを一律同様に考えることのできない理由の一が存するのである。また、一般の私企業においては、その提供する製品または役務に対する需給につき、市場からの圧力を受けざるをえない関係上、争議行為に対しても、いわゆる市場の抑制力が働くことを必然とするのに反し、公務員の場合には、そのような市場の機能が作用する余地がないため、公務員の争議行為は場合によつては一方的に強力な圧力となり、この面からも公務員の勤務条件決定の手続をゆがめることとなるのである。」というのである。右判示の趣旨は、五現業及び三公社の職員についても、基本的にあてはまるものといわなければならない。けだし、これらの事業は、経済的活動を伴うものではあるが、私企業のように利潤の追求を本来の目的とするものではなくて国の公共的な政策を遂行するものであり、かつ、その労使関係にはいわゆる市場の抑制力が欠如していることの結果として、非現業の公務におけると同様、争議権は、適正な勤務条件を決定する機能を十分に果たすことができず、競合する国民の諸要求を公平に調整すべき行政当局や国会等に対する一方的な圧力と化するおそれがあるからである。のみならず、これらの事業は、それが独占的なものないし公共性の強いものであるところから、その争議行為のもつ圧力は著しく強大となり、公正な決定過程を歪めるおそれをさらに増大させることにもなるといいうるのである。

○東京中郵判決の誤り(略)
以上の理由により、公労法一七条一項違反の争議行為についても労組法一条二項の適用があり、原則としてその刑事法上の違法性が阻却されるとした点において、東京中郵事件判決は、変更を免れないこととなるのである。

○単純参加者について
公労法一七条一項に違反する争議行為が郵便法七九条一項などの罰則の構成要件に該当する場合に労組法一条二項の適用がないことは、上述したとおりであるが、そのことから直ちに、原則としてその行為を処罰するのが法律秩序全体の趣旨であると結論づけるのは、早計に失する。すなわち、罰則の構成要件に該当し、違法性があり、責任もある行為は、これを処罰するのが刑事法上の原則であるが、公労法の制定に至る立法経過とそこに表れている立法意思を仔細に検討するならば、たとい同法一七条一項違反の争議行為が他の法規の罰則の構成要件を充たすことがあつても、それが同盟罷業、怠業その他単なる労務不提供のような不作為を内容とする争議行為である場合には、それを違法としながらも後に判示するような限度で単純参加者についてはこれを刑罰から解放して指導的行為に出た者のみを処罰する趣旨のものであると解するのが、相当である。‥‥‥ 公労法一七条一項に違反する争議行為の単純参加行為につき刑事法上の処罰の阻却を認めるべき範囲は、処罰の阻却を認める根拠の面から、これを限定しなければならない、ということについて述べておきたい。
 まず、国公法の罰則があおり、そそのかしなどの指導的行為に処罰対象を絞つているのは、東京中郵事件判決が指摘するとおり、同盟罷業、怠業その他単なる労務不提供のような不作為を内容とする争議行為に対する刑事制裁をいかにするかを念頭に置いてのことであるので、単純参加行為に対する処罰の阻却も、そのような不作為的行為についてのみその事由があるとしなければならない。ここで単純参加行為に対する処罰の阻却を肯定するのは、もとよりその行為を適法、正当なものと認めるからではなく、違法性を阻却しないけれども、右に述べた諸般の考慮から刑事法上不処罰とするのが相当であると解されるからなのである。
 さらに、この場合の処罰の阻却は、その根拠となる立法経過からみるとき、公労法一七条一項の争議行為の禁止規定が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けることのないような行為に限定される。けだし、政令第二〇一号が施行される以前においては、前述のとおり、現業公務員の争議行為は許されていたが、その当時においても、違法な争議行為に対しては、それが単純参加行為であつても、争議行為として行われたものでない一般の行為に対するのと同様に、郵便法七九条一項その他の罰則が適用されていたのであるから、争議行為が禁止されるようになつて、かえつてその処罰が阻却されることになつたと解するのは、明らかに不合理であるからである。
○郵便法七九条一項の罪の幇助罪の成否
 冒頭に記載したMら九名の行為は、郵便の遅延を招くおそれのある業務の不取扱いであつて、郵便法七九条一項に該当するものというほかはなく、かつ、これを幇助した被告人らの行為は、国公法の罰則における「あおり」に該当するような指導的行為であるから(全農林事件判決及び岩教組判決における「あおり」の定義を参照)、処罰を免れない。
○建造物侵入について
一 争議行為に付随する行為の刑事法上の評価
 右のように、公労法一七条一項に違反する争議行為が刑法その他の罰則の構成要件に該当する場合には、労組法一条二項の適用はなく、他の特段の違法性阻却事由が存在しない限り、刑事法上これを違法と評価すべきものであるが、そのことと、右の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為についての違法性阻却事由の有無の判断とは、区別をしなければならない。すなわち、このような付随的な行為は、直接公労法一七条一項に違反するものではないから、その違法性阻却事由の有無の判断は、争議行為そのものについての違法性阻却事由の有無の判断とは別に行うべきであつて、これを判断するにあたつては、その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならないのである。
二 本件における建造物侵入罪の成否
 これを本件における建造物侵入の行為についてみると、被告人らは、公労法一七条一項に違反する争議行為への参加を呼びかけるため、すなわち、それ自体同条項に違反するあおり行為を行うため、立入りを禁止された建造物にあえて立ち入つたものであつて、その目的も、手段も、共に違法というほかないのであるから、右の行為は、結局、法秩序全体の見地からみて許容される余地のないものと解さざるをえない。
10369-1★★香城敏麿『最高裁判所判例解説刑事篇昭和52年』93頁
10369-2★★★★臼井滋夫「五・四名古屋中郵事件大法廷判決について-公企体職員の違法行為と刑事罰-」『警察学論集』30(7)1977本判決の意義について、東京中郵判決の「違法二元論」(民事上の違法と刑事上の違法を区別し違法であっても刑事制裁を課さないとすることができる理論をさすとみられる)を「相対的合憲論」(二重のしぼりを指すとみられる)を否定し、「違法性一元論」をとったとわかりやすく解説している。違法性が強いから違憲で、違法性が弱いから合憲というような判断をとらず、違法性の強い弱いで憲法判断を異にしない判断ということをいっているようだ。
10369-3★★★★臼井滋夫「公務員等の争議行為をめぐる刑事判例の動向-名古屋中郵事件判決までの軌跡」『法律のひろば』30(8) 197
10369-4★桑原昌宏「名古屋中郵事件大法廷判決-米国公務員スト権判例理論の変遷との対比」判タ359
 名古屋中郵判決が全農林判決と異なる点は、立法政策論を展開するに当り、争議権のみならず団体交渉権を否認したことである。その理由は、財政民主主義に表される議会制民主主義の原則により勤務条件法定主義をとる公務員は私企業労働者のごとき労使共同決定を内容とする団交権の保障はないことに求める。著者は批判するが、私は妥当な判断だと思う。公労法で団体協約締結権が認められているのは立法裁量であり、逆に言えば、インディアナ州のようにいつでも剥奪できるということである。

10369-5★第二次名古屋中郵事件上告審判決 最二小昭和53.3.3 判タ360
 本件は、第二次事件としてあまり知られてない。昭和34年12月3日名古屋中央郵便局で受入係事務補助員数名が小包課長の指示により、滞貨小包袋140個を運搬し受入開袋するため、5~6個を運搬車に積載し、年賀予備室から搬出しようとするや、全逓役員四名が前面に立ち塞がり、押し返し、課長が入室しようとすると前面に多数とともにスクラムを組み、郵便業務を妨害し、局長の退去要求にも従わなかった。右の事実が威力業務妨害罪、不退去罪にあたるかが争点となり、一審は、当時労働基準法の三六条にもとづく時間外協定の締結年末年始繁忙期の取り決めがなかったことから、本件臨時小包便を扱う義務が全逓組合員にはないので、正常な業務とはいえないという全逓側の主張を容れ正当な組合活動として違法性を阻却する判断をし、控訴審も結論を同じくしとたが、最高裁は、威力業務妨害罪、不退去罪の違法性を阻却する事由は見当たらないとしている。
10369-6「労働基本権確立・名古屋中郵事件最高裁判決粉砕の闘いについて(全逓)」『労働法律旬報』31(1036)1977

10370★国鉄松山駅事件 最二小 昭和53.3.3 刑集32-2-159
10371★国鉄南延岡機関区事件 最一小 昭和53.6.29 刑集32-4-759
10372★岡山県庁事件 最一小 昭和54.12.19 刑集33-7-966頁
10372★★山陽電機軌道上告審決定 最二小昭和53.11.15 刑集32-8-1855 判時907判タ382

10374★★日教組事件 最一小平元.12.18 刑集43-13
10374-1★★永井敏男「一地方公務員法六一条四号のあおりの企ての罪を構成するとされた事例二地方公務員法六一条四号のあおりの罪を構成するとされた事例」『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
 「あおり」については判例上、次のように定義されている。「違法行為を実行させる目的をもって、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、又は、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えること」(全農林警職法判決刑集27-4-560頁、岩教組学力調査事件刑集30-5-1192頁)あおりの企てとは「違法行為のあおり行為の遂行を計画準備することであって、行為発生の危険性が生じたと認めうる状態に達したもの」(全農林警職法判決刑集27-4-560頁)
 本判決の上告趣旨は、あおりはもっぱら感情に訴える慫慂行為を指し、感情に訴える要素のないものはこれに当たらない等、あおりを限定的に解釈すべきという構成要件該当性を争ったが、本判決はこの上告趣旨を退けた。従って、判例の定義にいう「勢いのある刺激を与えること」が必ずしも感情に訴える慫慂行為のみを意味するものではない。
 なお「あおり」」の訴因の内容について、過去の例では、会議あおり、議案の提出そのもの及び趣旨説明をあおりとした例、激励のあいさつ、指令あおり、オルグあおり、現場(演説)あおりがあったことを類型的な説明している。
 私が注目したのは、頭上報告や休憩時間職場集会との関連で争議行為の現場でなくても書記官の解説が多数の面前で演説を行った場合などは、現場あおりと呼ぶこともある。このような広い意味での現場あおり(演説あおりとも呼ぶべきもの)を含むものとさして北教組主任制事件(昭和51年起訴礎、被告人死亡により公訴棄却)があると言っている点。
 この判決では次の行為等を地公法61条4号「あおりの企て」に当たるとしている。
○昭和49年2月25日及び26日に開催された日教組第四四回臨時大会において、日教組傘下の小中学校職員らをして同年4月中旬に同盟罷業を行わせること等を決定し、同年2月28日ころ、日教組中央闘争委員長M名義の傘下欠く都道府県教組委員長あて指示第一八号を発出して、右鈴自体簡易なおける同盟罷業の実施についての決定を伝達するとともに同盟罷業実施体制の確立を指示し、、同年三月一九日に開催された日教組第五回全国戦術会議において、右同盟罷業は第一波同年4月11日全一日、第二波同月13日早朝2時間などと配置すること等を決定。
○同年3月8日に開催された都教組第五七回において、傘下の小中学校教職員らをして同年四月中旬に同盟罷業を行わせることを決定し、同年三月一三日ころ、都教組執行委員長代行M名義の都教組各支部長・分会長あて指示八二号を発出して、右臨時大会における同盟罷業の実施についての決定を伝達するとともに同盟罷業時摂氏体制の確立を指示するなどした。
また次の行為を「あおり」に当たるとしている。
○昭和49年3月29日、日教組本部名義の『春闘共闘戦術会議の決定を受け、公務員共闘は4月11日第一波全一日ストライキを配置することを決定した。各組織は闘争態勢確立に全力をあげよ。』との趣旨の指令を北海道、東京都、岩田県、埼玉県、広島県の各教組あてに発出し、右指令の趣旨を同各県教組傘下の小中学校教職員数に対し伝達し、○同年4月9日、日教組本部名義の『日教組第五回全国戦術会議の決定に
もとづき予定どおり4月11日全一日ストライキに突入せよ。』との趣旨の行動要請を北海道、岩手県、広島県の各教組あてに発出し、右行動要請の趣旨を各県教組傘下の教職員多数に対し伝達。
○同年3月29日ころから同年4月8日ころまでの間、同年3月29日に日教組本部名義で発出された指令の趣旨を傘下の小中学校教職員多数に対し伝達し、同年4月3日に開催された第一回都教組支部長・書記長会議において『七四春闘一日・半日スト行動規則』及び『七四春闘一日および半日ストを成功させるための取組みの基本』と題する都教組執行委員会名義の文書を配布して同月11日の同盟罷業に際し組合員のとるべき行動を指示し、同月3日ころから同月10日までの間、右指示の趣旨を傘下の小中学校多数に対し伝達するなどした。

10374-3日教組事件 東京高裁昭和60.11.20判決 判時1177

10375★岩教組事件 最一小平元12.18 刑集43-13-882 労判553 判タ717 判時1332
10375-1★永井敏男「地方公務員法六一条四号のあおりの企ての罪を構成するとされた例」『最高裁判所判例解説刑事篇平成元年』
10375-2金谷暁 刑事判例研究 「地方公務員法六一条四号にいう「あおり」「あおりの企て」の意義[盛岡地裁昭五七・六・一一判決、判時一〇六〇-四二]

10376★埼教組事件 最三小平2.4.17判決 刑集44-3-169頁
 埼玉県教組中央執行委員長が、関係役員と共謀のうえ、同組合拡大戦術会議において傘下の支部役員などに対し、上部団体からの指令により同盟罷業の決行日が正式に決まった旨及び今次の同盟罷業を成成功裡におこなうべきことを申し向けるとともに、同盟罷業に際して組合員のとめべき行動を指示し、右会議参加者らを介し傘下の組合員多数に右指令の指示の趣旨を伝達した本件行為が地方公務員法61条4号のあおりの罪を構成すると判示した。
 園部逸夫判事の反対意見あり。労働基本権保障の立場から既に判例変更されている東京中郵判決、都教組判決の二重の絞り論に従って地方公務員の争議行為禁止と処罰規定について制限解釈をとるべきとして、一日の教職員ストライキは国民生活に重大な影響を及ぼさないこと、本件埼教組の指令は、同盟罷業に通常随伴して行われる程度のものであるなどとして、本件行為はあおりに該当しないなどと言っている。

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