10415 ★栗原良子「ドイツ革命と『ドイツ工業中央労働共同体』(一)(二)」『法学論叢』91巻3号、1972、91巻4号、1972
イギリスでは今日でも労働協約に法的拘束力はない。コモンローの営業制限の法理により違法と認識されるからである。個人契約に団体協約の内容を取り込むことで事実上運用されているだけである。労働契約はあくまでも使用者と被用者との一対一の相関的債務であって、それに干渉し制限することは、取引の自由を侵害するもので営業制限に当たるからである。本来の自由競争、自由企業体制とはそういうものであり、欧州大陸においても第一次世界大戦前は、労働協約を法認することはなかった。世界で初めて労働協約を法認されたのが1914年のスイスである。今から百年前だが、今日欧州大陸の多くの国にみられる中央集権的な労働協約制度の流れをつくったのが、1918年11月ドイツ革命のさなかに生まれた「中央労働共同体」であり、同年12月23日に公布された「労働協約、労働者委員会及び職場委員会並びに労働争議に関する命令」(労働協約令)によって労働協約が法認されたことによる。これにより、ドイツは個人の自由を犠牲にして、団体主義への以降が明確になった。以上は私の見解であり、この論文とは直接関連しない。
我が国ではドイツ革命史は、社会民主党、スパルタクス団、労働者評議会(レーテに関してロシア革命との比較の観点で研究はなされているが、労使関係に関する論文はさほど多くないなかでこの論文は中央労働共同体の専論である。
社会民主党は1914年に戦争協力の方針をとる。戦争遂行に労組の協力は不可避だった。1918年敗戦と革命の危険を予想した電機工業独占資本が政策を転換して労組に接近する。大戦中にイニシアティブをとったのは労組である。終戦後の物価の騰貴、賃金闘争の激化は不可避と考えられ、資本家は革命によって経営権を脅かされることに恐怖していた。組合側の要求はあらゆる職業における団体協約の締結、労使対等の調停機関、八時間労働の即時実施などだが、戦前は組合を無視していた独占資本も革命により一転して労働組合を承認することとなったのである。
私なりに要約すれば中央労働共同体とは、急進化した武装兵士の帰還と革命の尖鋭化を恐れた独占資本が、労働組合右派と結びつき、組合側の要求である労働協約制度などを認めるのと引きかえに経営権を認めさせ、ソヴィエト・ロシア型革命の阻止により資本主義を維持したうえ平時経済に移行するための方策であった。実際、西部におけるストライキ防止と革命の進行をやわらげる効果があったという。
中央労働共同体は、1924年にドイツ労働組合総同盟の脱退で意味を失った。20年代以降衰退するのはワイマール憲法165条に基づき1920年に全国経済協議会が設置されたためであると著者は説明。協議会はナチス政権成立の前まで存続した。
ここからは私の意見だが、労働協約法認は歴史的必然とは思えない。二度の世界大戦は、戦時協力した労組の力を大きくする結果を招いた。ILoも英仏などの戦勝国が労組の戦争協力の見返りとして設置された戦後処理のため作った機関であって、第一次世界大戦と革命の恐怖がなければ、労働協約の法認にはならなかったものと考える。逆に言えば革命の恐れがないのだからもとに戻すという主張が可能だろう。
10416 ★長崎県職組事件上告審判決 最一小平元.9.28判決 判時1349
本件は1時間ストの参加を理由とする県職組支部役員の減給ないし戒告処分を是認したもの。
10417 動労糸崎駅事件 広島地裁尾道支部昭43.2.26判決 下刑集10-2-195
10418★都教組勤評反対闘争事件 東京地裁昭37.4.18判決 判時304
10419★全農林警職法事件第一審判決 東京地裁昭38.4.19 判時338
10420藤永幸治「全逓東京中郵事件に対する東京高裁判決について 『法律のひろば』25-11 1967
10421菊池高志「労働契約論と企業秩序-最高裁二判決と批判の視座について」『労働法律旬報』948 1978
10422高島良一 高島良一「労働法律関係と労働契約(二)」『独協法学』21 1984
10424和田肇「西ドイツ労働契約における忠実義務と配慮義務(二)」『名古屋大学法政論集』96 1983
10425和田肇「「西ドイツ労働契約における忠実義務と配慮義務(三)」『名古屋大学法政論集』100 1984
10426高島良一 高島良一「労働法律関係と労働契約(二)」『独協法学』23 1986
1-164佐々木恵介『日本古代の歴史4平安京の時代』吉川弘文館2014-新刊書
九世紀の政治・文化・外交など要領よくまとめた感じ。
1-165廣瀬憲雄「古代日本外交史-東部ユーラシアの視点から読み直す」講談社2014-新刊書
一般向けの書下ろしと言いながら結構専門的で五世紀から十世紀まで言及されている。
1-166E・アラン・ファーンズワース著笠井・高山訳『アメリカ法への招待』勁草書房2014-新刊書
入門書だが、ざっとみて良書と判断。
1-167小谷順子・新井誠・山本龍彦・葛西まゆこ・大林啓吾現代アメリカの司法と憲法』尚学社2013
大沢秀介還暦記念論文集なのに表題にない。表現権に関する重要判例(憎悪表現規制を違憲とした1992年R.A.V判決の論文2本などの論文が収録されている。だいぶ昔の話だが、三田祭の大沢研究室のアメリカ憲法研究の発表は興味があって3回ぐらい足を運んだことがある。
1-168桂木隆夫編『ハイエクを読む』ナカニシヤ出版(京都)2014 新刊書
1-169小宮文人『イギリス労働法入門』信山社1996
1-170R.エメット・マレー著小畑・山崎訳『アメリカの労働社会を読む事典』明石書店2012
1-171ディビット・S・ロー著西川訳『日本の最高裁を解剖する-アメリカの研究者からみた日本の司法』現代人文社2013
1-172井上祐司『争議行為と可罰違法論』成文堂1973(古書)
1-173西谷敏『ドイツ労働法思想史論-集団労働法における個人・団体・国家』日本評論社 1987
プロレイバー学者の業績。十九世紀の団結禁止時代以降のワイマール、ナチス時代から戦後まで法制史、ジンツハイマーの集団主義的思想などにも言及。ドイツの営業の自由の歴史を調べるためまた、プロレイバーの思想のよりどころとしているジンツハイマーが大嫌いなのので、批判的に検討するために買った本。
10427★国分寺郵便局事件 東京高裁昭56.3.23判決
10428★★中野次郎 東京中郵判決調査官解説『最高裁判所判例解説刑事篇昭和41年』
10429「判例紹介都教組幹部の一せい休暇闘争指令は争議行為をあおる行為にならない州和37.4.18の東京地裁判決」『時の法令』435
10430三島宗彦「ドライヤー報告書の意義」『日本労働法学会誌』27 1966
10431★★全農林賃金闘争懲戒処分事件第一審判決 東京地裁平2.4.19判決 判時1349
10432★★横浜郵便局前ピケ事件第二次上告審決定 最一小49.7.4決定 判時748
10433全農林長崎県本部・統計本所分会事件 長崎地裁41.7.1判決 下刑集8-7-9725
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